先日のPLLは見てなかったのですが、アドオンとDPSメーターに関する話が出たらしいとのこと。
ふと昔フォーラムに書き込んだ文章のことを思い出して引っ張ってきました。(誤字修正有り)
個人的には今でもDPSメーターは公式では実装しない方が良いと考えています。
http://forum.square-enix.com/ffxiv/threads/128499-DPS%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC%E5%B0%8E%E5%85%A5%E3%81%AE%E6%8F%90%E6%A1%88/page26結構DPSメーター導入推進の意見が多く見られるように思います。
自分はWoWを長らくプレイしてきましたので、その観点から、DPSメーターの導入が
ゲーム自体にどのような影響を与えたのかを例に出したいと思います。
(なおWoWはアドオンという形で最初からアドオンでDPSメーターが存在したので、
「導入」というのは正しくありません。厳密には「流行」と言ったほうが正しいでしょうか)
WoWでプレイヤーのDPSに対する意識が高まったのは、拡張1つ目(TBC)の後期で、
エンドコンテンツで要求DPSが非常に高いボス(※1)が出てきたことが契機だったと思います。
当時Hybrid DPS(いわゆるbuffer class、詩人的な位置)は、pure dpsに比べてDPSが出ないのが
当然。その分をbuffで補うというデザインでした。しかしそのデザインへの風当たりが
強くなっていきます。ただこの頃はDPS差を問題にしてるのはエンドコンテンツに辿り着いた
数%の廃人だけでした。(※2)
拡張2つ目(WotLK)に入ると準廃人くらいのプレイヤーも徐々にDPSを気にするように
なっていきます。拡張1つ目まではローテーションが単純だったため、プレイヤースキルの
差が出ず、DPS=装備という感じでした。しかし拡張2つ目に入り今のFF14の様な複雑な
ローテーションが導入され、腕の差が反映されるようになったのです。
野良レイドが開催されると、in-gameのDPSメーターの結果が貼られるようになりました(※3)。
「DPS1000以下はアイテムneedすんなカス!」と罵声が飛ぶようなこともありました(※4)。
またこの頃からオープンソースのシミュレータ(※5)の開発が進み、クラス間のDPSの差が
数値となって可視化されるようになります。またウェブベースのlog parser(※6)も
使われるようになりました。DPSランキングが作成され、どのクラスのDPSが強い弱いの論議が
盛んに行われるようになります。
DPSが低いクラスは公式フォーラムでそのことに対する愚痴を続けます。
掲示板は自クラスについてのQQ(※7)で埋め尽くされ、開発はその対応に終始していました。
こうしたユーザーによるクラス間DPS格差の是正圧力がゲーム自体を徐々に変容させていきました。
例えば、前述のbuffer dpsとpure dpsのDPS差を、プレイヤーが許せなくなってきます。
もう皆DPSしか見ていません。raid buffがどれだけあっても本人のDPSには直結しませんから。
開発のブリザード社が採った道は、raid buffの弱化とpure dpsとのDPS差の圧縮でした。
こうした流れはクラス均質化(※8)と称され、以降WoWのゲームデザインの方向性となりました。
3つ目の拡張(Cataclysm)に入る頃には、クラス均質化が大きく推し進められました。
どのクラスでも、同じようにraid buffが使え、同じくらいのDPSが出るように徐々に
調整されていきます。結局、ユーザーからのDPSバランスへの過度な圧力によりそこに
割かれる開発リソースが増大し、バランス調整を簡単にするためにはクラス間の均質化へと
道を進めるしか無かったのです。
そして均質化はさらに進み、4つ目の拡張(MoP)でWoWの売りだったはずのタレントツリーは廃止。
果たしてこのような過度な均質化は、プレイヤーが望んだことだったのでしょうか・・・
WoWは2つ目の拡張をピークに、その人口を減らし続けています。
実はそれは、皆がDPSメーターを意識し始めた頃からだったとも言えるのです。おわり。
※1 Sunwell PlateauのBrutallus
※2 Sunwell Plateauへの到達率は全プレイヤーの1%未満だった
※3 DPSメーターは当時からin-gameチャットに結果を出力する機能があった
※4 WintergraspのVault of Archavonでよく見られた
※5 Simulationcraft。現在も継続している
※6 WoW Web Stats、WoW Meter Online、World of Logsと推移
※7 ネガること。QQは涙目に見えることが由来
※8 class homogenization
3行に纏めると
1. DPSを可視化してしまうとクラス間格差についてのプレイヤーの愚痴が増える
2. 開発がそれを無視できなくなりクラス調整への負担が増大する
3. 結果ゲームデザインは自由度(多様性)を減らす方向に進んでいく
ってことです。まあこういう見方もあるってことで。
ネタな理由は、3が起きた理由が2だとはブリザードが公式に認めていないからです。
FF14はもともと多様性が低めなのであんまり影響無いんでね?影響あるの詩人くらいでね?
とも思いましたが、追加されるべき新ジョブがつまらないものになってしまう可能性はあります。
DPS調整に開発リソースを割くということは、その努力を活かしたボスを出すことに繋がります。
WoWが拡張を重ねるに従い、要求DPSがシビアに設定されたボスが増えていったのも当然の結果
でしょう。(つまりクラス間のDPSが均質化されてない状況では、PT構成によってDPSが
不足するので要求DPSをシビアにできない)
個人的には、ボスの難易度は、要求DPSを高くすることよりも、ギミックを工夫することに
よって設定して欲しい。
まあ、これは好みの問題ですが・・・
自分はFF14はWoWとは違う道を選んで欲しいなーと思っています。
--------------------------------
2020/2/8追記
FFXIVに復帰してからエゴサしたところこの記事がすっごい引っかかるのですが、
なんかまとめサイトとかでは「DPSメーターの導入がWoWの人口減の原因になった」
みたいなふうに取り上げられてWoW経験者にエアプだの何だの言われてるので
今更ながら補足しておきます。
(PLLでまた吉田PがDPSメーター(ACT)のことに言及したのに合わせて
そう言えば昔に記事書いたなーと思い出してエゴサした次第です)
ていうか大体そうした場所で書かれてる指摘は記事の下のコメント欄における
Creed Sanguinarさんとのやり取りで既に回答になってるんですが、
まとめサイトや掲示板では切り取られてそんなとこ誰も見ないようなので……
正直なところ、私としては、
「DPSメーターの導入こそがWoWの人口減を招いた」とは全く思っていません。
本文で言いたかったのは、記事末に3行でまとめて書いているように、あくまで
「DPSの可視化はゲームデザインの自由度の減少に繋がる」ということです。
(そしてそれもネタだと書いているように統一的な見解でなく個人的意見です)
WoWの人口減云々はおまけです。というか均質化の方針への不満をWoWの人口減に
当て擦っただけです。まあこんなにネタにされると思わず軽い気持ちで
そこの一節を書いたのがまずかったんですね。
とは言うものの示唆する形であれ書いてしまったので、Creedさんとの会話では
「均質化が人口減に繋がった」とまじめに考えているていで答えていますが。
しかしどちらにしろそれが人口減の主たる原因とは考えてませんし書いてません。
たとえそうであっても数ある要素の一つにしか過ぎないと言うことです。
一応WoWの人口減の原因についてコメ欄に書いた&書かれたのをまとめますと
1. WotLKでLich Kingを倒してストーリーの区切りがついた
2. WotLKとCataの辺りからカジュアル化が進んだ
3. WotLKとCataの辺りから均質化が進められた
(均質化はカジュアル化の方針を反映したものでもある)
と、これらを大きな要素として挙げています。
(あと挙げてないですが単純に飽きたというかゲームとしての寿命もあるでしょう)
1についてはWoWプレイヤーのほぼ全員が同意するところなのですが、
2については準廃人~廃人がそう思ってるだけで、普遍的な意見ではありません。
3に至っては私の個人的な意見が大いに含まれています。
ただ均質化が問題として認識すらされてないとか言ってる人もいましたが、
それはさすがにありません。ぶっちゃけそれってWoWがその中でも面白さを
うまく追求できるようになった今だからそう思うだけです。
https://www.reddit.com/r/classicwow/comments/7rau8o/wow_downfall_class_homogenization/↑とかのスレッド見ても書いてますが、均質化はたしかに当時の面白さを
損ねた問題として認識されていました。
均質化が進んでしばらくは、特にCataclysmではDPS要求にやたら偏重した
ボスが多かったと記憶しています。それが象徴的だったのがDragon Soulの
ラスボス1個前のencounterで、あまりにも高いバーストDPSが要求されたため
world 1stはlegendaryの杖(週制限のあるボスドロップを集めて作る杖)を
19本集めてゴリ押したっていうバカみたいな話に繋がりました。
(つまりサブや2軍を混ぜたレイドを複数開催して1軍にドロップを集めた)
(world 1stを取ったのが当時(何故か)週2回のレイドのリセットという
優遇を受けていたKRサーバーのギルドだったため少し荒れたりもしたり)
そして次の拡張辺りになるとclass/spec内まで均質化が進みました。
同じspecであれば必ず同じdpsになるように、talentの選択肢でdpsに差が
つかないように調整されていきます。この辺になるとさすがに同じ過ぎで
面白くないって言い出す人も増えてたように思います。
で、その次の拡張辺りから鰤は均質化の方針を改めていったように思います。
例えばLegionではlegendary itemでspellの性能が全く変わりましたしArtifactという
FFXのスフィア盤みたいなシステムもあり、人により特色が出るようになりました。
(そしてそうしたシステムを拡張毎に切り替えてマンネリ化を防ぐ方針のようです)
現在のWoWは個々のボスについて、specやtalent(と同類のシステム)、
特殊能力のあるgearの組合せによる最適解を見つけ出すことに楽しみを
見出せるような設計になっていると思います。
(勿論その設計自体は昔からあるのですがその幅が増えたという話です)
ちなみに、私が記事の初稿を書いたのはMoPの頃なので均質化が最も進んでた
時期だということは念頭に置いてほしいところです。その後に拡張を重ねていき
今のWoWは上で書いたような面白さはあるんじゃないかと思っています。
(ただBoAやってないんですがまた迷走してるとかも聞いたりもするのでなんとも)
振り返ってFFXIVですが、今の所WoWとは別の道を進んでるんじゃないでしょうか。
踊り子や赤魔が一応形になっているところを見ても明らかかと思います。
ただユーザー側を見るとウェブのlog parserが全盛になっていたりして
(ちなみに今主流のWoWのlog parserとFFXIVのそれとは作者が一緒らしいです)
クラス間のバランスに対する是正圧力は昔より強まっているのは確かかと。
現時点でのFFXIVへのDPSメーターの導入の是非については私には分かりません。
ただ私が記事を書いた当時においては、DPSメーターの導入は今よりも劇薬と
なっただろうことは間違いありません。log parserも存在せず、クラス間の
DPSバランスが可視化されていなかった当時、DPSメーターを実装すれば
hybrid dpsの立場は無くなり、赤魔や踊り子は今の形では実装されなかったでしょう。