※この物語はボクの脳内の産物であり、新生FF14の世界観に正確に準拠するとは限りません
※本編ネタバレが若干存在します。一応読む前に「新生FF14」メインクエクリア推奨。
登場人物
アグロ ‐
怪力自慢のルガディンの大男。己の肉体を駆使してあらゆる困難を突破する、脳筋の鑑。
ケミ ‐
錬金術師のララフェル。チームの頭脳プレー担当。怪しい薬品や魔法道具まで、幅広く扱う。
シェイド ‐
スリ・開錠・大道芸じみたアクロバットもこなす美貌のミコッテ。調査、工作のエキスパート。
マザー -
司令。シェイドを通じて様々な司令をもたらし、ウルダハの危機を水面下で阻止する。その正体は……
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夜の帳に包まれてなお、眠ることの無い都市、不夜城《ウルダハ》。
そのメインストリートである《ナル=ザル回廊》は、この時間になってもなお、様々な欲望にまみれた喧騒が飛び交っている。夜闇のなかで街灯のエキゾチックな光に浮かぶ、生き生きとしながらもどこか幻想的なその姿は、この街が《砂漠の宝石》と呼ばれる所以でもある。
露店に並んだ煌びやかな装飾品の数々、妖艶な香りを振りまく踊り子、肩を組んで歌う酔漢、湯気を上げる屋台の料理、声を張り上げる客引き。
人々は回遊するメルトールゴビーの群れのように、眠らないこの街を闊歩し続ける。
だが、にぎやかしい大通りから2度も角を曲がってしまえば、そこにはゴロツキや浮浪者の跋扈する不衛生で入り組んだ裏路地が、くもの巣状にはりめぐっている。
まるでこの街が、繁栄という薄いレースの幕の裏側に、得たいの知れぬ巨大な怪物を飼っているかのように――。
――そしてそんな裏路地の1つを今、3人の影が走っていた。
「おうケミ坊よォ、いったいこりゃあ何がはいってんだァ?」
一番後ろを走るひときわ大きな影が、張りのある低い声で言う。袖無しの暗褐色のツナギから、青黒い丸太のように太い腕が生えている。その手には大きな袋のようなものが担がれており、彼が進むたびにガチャガチャと音を立てる。ただでさえ大きな彼のシルエットを5割り増しにしている。
「ま、イロイロ、必要なモノだよ……」
幼い子供の声。ケミと呼ばれた先頭の小さな影が、振り向かずに言う。黒いフード着きローブに腰下げポーチ。
「それにシェイドは手ぶらかよォ!」
「彼には彼の、役割があるからね、今回は特別な、装備は渡してない」
「気に食わないな、手口は確かに全部お前に任せたが。前もってろくな説明もないというのはね」
シェイドと呼ばれた、2人の間を走るすらりとした影が、通る美声で不機嫌そうに言う。全身をぴっちりと覆うダークタイツから、銀色の尻尾が伸びている。
「言うと、きっと二人とも、嫌がったろうからね、とくにアグロは」
小さな影が息を切らせながら言う。
「なんだァ!?そいつはなおさら先にいっとくべきじゃあねえのかァ?!」
アグロと呼ばれた大きな影は、声を張り上げる。
「静かにしろ声がでかい!……でもケミ、どういうことだい?それって」
シェイドの美声が続く。
「確かに今回ばっかりは、正攻法じゃどうにもできないってのは判るけど。ほんとに俺たち3人でどうにかできるのかい?」
「シェイドも、アグロも、とにかく、いつもどおり、ボクを信じて、くれればいい、やり方は、間違っちゃいないって、確証はあるから、ほら、みえてきたよ」
小さな影がしめくくる。
やがて3つの影は、ウルダハの倉庫区画へと入っていった。
倉庫区画は、ウルダハで商売をする店子や職人達、それも大体が大手フリーカンパニーや貿易企業のような大規模な組織の、様々な商品や素材を保管しておくための倉庫が集まっている地区だ。
それぞれの倉庫の敷地周辺には、その規模に応じた数の警備兵の姿が見られる。警備が厳しいところは、比例して名だたる組織の看板がある。
3つの影はそれらの倉庫の間を、目立たぬように素早く走りぬけていく。
「あった……。きっとここだ」
小さな影が静止をかける。3人はある倉庫の手前で止まった。
ぐるりを塀で囲まれており、入り口に薄暗い門灯が1つ、ぼんやり灯っているだけで、錆びた門の奥は暗闇が広がっている。敷地内では枯れ草が乾いた夜風に揺られている。
そこは、一見して無人の廃倉庫のようであった。
「使われてない倉庫にしては、出入りする足跡の数が多すぎる」
小さな影は門の辺りの地面を指差していうと、ポーチをガサゴソやり始めた。隣でひょろりとした影が、右手を門灯のほうへかざす。
「2、4……ふむ、こっから見えるだけでも警備が7人。こりゃうさんくさいわ」
「ムーンキーパーってすげェな……ワシにァまったく何も見えんぞイ」
「ジジイは単に老眼だからじゃないの」
「アァ?」
小さな影が奇妙な形をした器具を取り出し、両目につけて倉庫のほうを見る。
「ビンゴ……!エーテル反応で視界が真っ白だ。間違いなくここだね」
大きな影が、腕組みして呟く。
「ここにあるってェのか……ウルダハマーケットから消えた、推定数億ギルのクリスタルが……」
続く
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