美しきエドヴィア姫人形
桃のつぼみの色づきを見て、すべての女の子のための祝日「プリンセスデー」(※)の到来を感じる今日この頃、彫金師ギルドに黒山の人だかりができているのをご存知だろうか。新作アクセサリーの発表日でもないというのに、客たちが長い行列を作ってまで求めているのは、何を隠そう「姫人形」だ。
今回、プリンセスデーでは祭典を盛り上げるべく、「エドヴィア姫人形コンテスト」が開催される。祝日の由来ともなったソーン朝時代のお転婆姫、「エドヴィア姫」に見立てて飾り付けた「魔法人形」を募り、各都市の淑女たちの投票にかけようというのである。
冒頭に紹介した彫金師ギルドの盛況ぶりも、その影響。コンテストの優勝者には、最高の栄誉と豪華な賞品が授与されるとあって、多くの人々が参加を考えているらしい。高度な魔法人形の製造で知られる同ギルドに、人々が「姫人形」の素体を求めて殺到しているというわけだ。
お陰でシャードや貴金属といった素材に加え、飾り付け用の繊維製品に至るまで、関連商品の売り上げが堅調な伸びを見せている。にわか景気とはいえ、利にさとい読者諸兄であれば、投資を惜しんでこの商機を逃す手はないだろう。
なお、年頃の娘を持つ筆者としては、「娘の心」という父親最大の利益を得るために、なけなしの小遣いを投資して姫人形を買って帰るつもりである。
論説委員:ハバク・アルバク
※エドヴィア姫失踪事件
3西紀前、ソーン朝の頃のウルダハにおいて、窮屈な宮廷生活に嫌気がさした王女エドヴィアが、同年齢の街娘と衣装や冠を交換し、宮中の家来や召使いたちの目を欺いて姿をくらました事件のこと。失踪発覚後、エドヴィアが発見されるまでの間、時の国王バルドリックは大いに狼狽し、軍隊を総動員しての大騒動に発展した。
騒動が収まった後、バルドリックは誤解から半壊させてしまった街娘の家を訪ね「すべての女の子は国の宝であり、王女として遇されるべきである」として宮廷設計士に再建を命じ、自らは執事として一日彼女にかしずいた。
その様子がそれまで厳格で知られた王のイメージとはほど遠い滑稽なものだったため、庶民は大喜び。「親しみを感じる」と、むしろ王室のイメージをも高める結果となったため、以後もバルドリックは毎年同じ日に抽選で選ばれた街娘の家に赴き、一日執事として働き続けた。
王の没後、この珍行事はソーン朝の桃花紋と共に、形を変えつつ庶民に、さらに他国にも広がっていき、やがて祝祭日としてエオルゼアに定着していった。