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Shield of the Shroud

Punish Linkage

Masamune (Mana)

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ハッピーエンド

公開
Masamune怪談会-2019-で公開したボクの創作怪談、「ハッピーエンド」です。


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 音葉冬華はおばあちゃんっ子だった。

 おばあちゃんはいつも優しくて、冬華をかわいがってくれた。
 そんなおばあちゃんが亡くなったのは、冬華が小学校に入ってすぐのことだ。

 その一年ほど前には寝たきりになっていたが、暫くのうちは布団のそばで頭を寄せるとなでてくれた。それも次第になくなって、やがて冬華の目の前で動かなくなった。

 死を意識しはじめたのはその頃からだ。人はやがて死に、動かなくなる。この世界から存在がなくなってしまう。それはとても恐ろしいことに思え、だから彼女は死を恐れた。

 ある日、冬華が学校から戻ると、テーブルの上に奇妙な物を見つけた。
 それは四本の割り箸で支えられた胡瓜と茄子で、何かの動物を模しているように見えた。

「お母さん、これ何……?」

「ああ、これは精霊馬と精霊牛よ。もうすぐお盆だからねえ。おばあちゃんが帰ってくる時のためにね」

「おばあちゃん、帰ってくる、の……?」

「お盆にはね、ご先祖さまの霊が帰ってくるの」

「霊……ゆうれい?」

 そんな事があって、冬華はお盆がくるのを楽しみに待っていた。大好きだったおばあちゃんが帰ってくる。そのために胡瓜と茄子が必要な理由はわからなかったけれど、それはどうでもよいことだった。

 そしてまた、それは彼女にとって希望でもあった。霊となって帰ってくるということは、死は終わりではない、なくなることはない、ということでもあるからだ。

 お盆というのがいつになるのかを聞いて、カレンダーに印をつけて待った。
 しかし結局、おばあちゃんは帰ってこなかった。灯りを消して待ってみても出てはこなかったし、夢枕に立つということもなかった。

 だから音葉冬華は、幽霊を信じない。


 綾久瑞姫はいじめっ子だった。

 人並み以上に美しく、快活だった瑞姫はどこにいても集団にうちとけ、中心となった。
そんな彼女にとって、中学で同窓となった音葉冬華はどんくさく陰気で、何故かしら癪に障った。

 最初はわざと肩をぶつけるだとか、ちょっとした嫌がらせ程度だったそれは、周囲を巻き込みエスカレートしていって、凄惨ないじめに発展していた。

 その頃になると、実のところ瑞姫当人は冬華に同情さえ覚えるようになっていた。
 便器に冬華の顔をつっこみ、その水を飲めと命じながら、いくらなんでもこりゃキツイ、酷すぎると、そう矛盾した考えを持っていた。

 それでも彼女はいじめをやめられなかった。ここで手を止めて、自分がそちら側に行くのが怖かったからだ。

 ある日誰かが、冬華にドッキリを仕掛けて、その様を動画サイトにアップしようと言い出した。
 夜の学校にあらわれるという幽霊の噂を、冬華に確かめてこいと命じるのだ。

 幽霊役には、長いストレート髪の瑞姫が適任だろうと選ばれた。
 ”主犯”を押し付けてるだけだろうがと内心毒づきながら、満更でもない顔をしてみせた。


 音葉冬華は深夜の学校に居た。
 幽霊の噂などくだらない、そう思う一方で、わずかな期待を寄せながら。


 綾久瑞姫は深夜の学校に居た。
 幽霊の装束を身にまとい、早く終われと、この憂鬱な状況に沈みながら。

 背後では、スマホをかざした”友人”たちが見ている。
 だから手を抜くことは出来ない。人を騙す演技ならいつもしてきた。だから今回も。

 長い髪で表情を隠し、手を前へと差し出す。
 世界が、人が、妬ましい。全てを呪う、声にならぬ声というものを想像して振り絞る。

『あ、あ、ああああァァァ……』

『どうして、どうして……?……私は死んでしまったのに……貴方は…生きているの?』

 前髪の隙間から、ちらりと冬華のほうを見る。
 その目は驚愕で見開かれていた。でも。


(泣きわめいたりは、しないんだなあ)



 音葉冬華は震えていた。
 それからポケットに忍ばせたカッターを取り出すと、押し出した刃を自らの首に突き刺す。
 力を込めて、それをそのまま横にひいた。



 綾久瑞姫は震えていた。
 病室のベッドの上で、毛布にくるまって震えていた。

 目の前で自殺した冬華の姿が頭から離れない。
 首に突き刺さるカッターと、そこから溢れ出る血の流れを幻視する。

 そこまで追い詰めるつもりはなかったのに。

 つと、カーテンが揺れる。
 窓はあけていないのにと視線を向けると、そこに冬華が立っていた。

 意識がとびかけるほどの感情でもって、彼女は泣き叫び、謝罪した。
 ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。

 震えが止まらない。


 ゆっくりと冬華が近づいてくる。
 毛布にくるまり、蹲りながらもそこから視線が外せない。

 ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。


『そんなに震えないで。私は貴方に感謝しているんだよ』


-了-
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