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Veteran Mercenary

Sidh Malaguld

Ultima [Gaia]

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【RP】七罪:契約

公開
当PCの第一世界verのキャラの設定に基づく創作になりますので、苦手な方はご注意ください。




























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「契約」
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 眩しい。

 左目に、突き刺すように光が入ってくる。

 嗚呼。


 姉さん、姉さん……。


 既に仲間の影は無かった。
 罪喰いの姿も見えなかった。
 先刻切り裂いた、あの小さな”はぐれ”が最後の一体だったようだ。
 しかし、私の剣は、あの”七体”の内の一つにも、小さな傷すらつけられなかった。



「ああ……」
 見えない筈の左目に何かを感じる。
 うっすらと見える光芒が、視力の残る右目よりも、私の覚束ない足を導いていた。
 
 目元を抑えると、ぐしゃり、と音がした。
 左目から涙が、零れているのだ。
 絶え間なく、そしてそれは驚くほど粘つく不快な感触をして、溢れ出ていた。



 私の、終わりが近い。

 呼吸の回数が減りつつある。
 心の臓が、止まりつつある。
 私という存在のすべてがこの焼き付くような白光の中に、停滞していくかのようだった。

 それは、徐々に、そして確かに――最初はこの手足の先から広がり、やがて足に絡みつき、また目の光を少しずつ奪い、呼吸を奪い、やがては思考を――魂を奪っていく。

 ただ、残る微かな残滓のような物が、私を動かしていた。 

 「ああ……一度だけでも」

 全身が蝋燭になって溶けていく、そんな感覚の中、私は確かに”その”存在を感じていた。

 一目見たい。
 
 「姉さんと約束した……あの場所へ」

 私は譫言を繰り返しながら、一歩一歩、壊れた機械人形のように、歩を進めた。


 




 人が来たよ

 人が来た

 罪喰いがつれてきた。





 耳に何かが聞こえた気がした。

 が、その言葉は今や私には形とならない。

 


 
 溶けていく魂を感じながら、私はようやく、光の袂までやって来た。

 「ああ……」
 ”私”が、何かに支配されていく。

 

 だが、私は感じていた。



 「……リ……ク」
 「ああ……姉さん……!」

 私を呼ぶ声。
 ――すると、左目に激痛が走った。


 「あっ……がっ……!!」

 痛みにのたうち回ると、一層、激しい光が左目に差し込んだ。
 だが――。



 「あ……れは……!!」

 そこに現れたのは、幾度も夢見た、私たちの”本物の光”――理想郷だった。


 グリュネスリヒト(緑の光)と詩に呼ばれる、絵本で見たのと同じ、我らが祖先の故郷、フッブート王国の王城だった。

 「……!」
 途端に、この体を溶かす光が止んだ。
 そしてそれは暖かなものとへと変わって、私を包んだ。



 それは、幾度も、幾度も、姉に貰った沢山の言葉達だった。
 その言葉を貰う時は、いつだって罪喰いから逃れるため、小さな物陰に隠れた時だ。
 息を、声を潜めて、私は恐怖を忘れる為、目を閉じて、姉の言葉だけに耳を傾けた。
 そうすると、世界には姉と私しか居ないような気持ちになれた。
 ――姉は私に語ってくれた。
 祖先の、フッブートの騎士の物語を。
 ロッドフォートとソーラード……そして、私たち「シドゥルファス家」の物語も。
 その言葉こそが、私にとっては安らぎの陰であり、心に灯される光だった。


 しかし、唐突に姉の言葉は途切れた。
 
 物陰や灯火とは程遠い、闇と光に似た何かが、私を”今度こそ”捕らえた。



 「姉さ……」 
 私は、再び膝をつき、そして全ての力を失い倒れた。


 ……姉さん、許しておくれ。




 私は――罪喰いをこの手で殺せなかった。




 「――リク  ……起きて」


 ああ、どうして私は立てないのだ?
 どうして私は剣を握れないのだ。
 この身が朽ちて魂が溶けようと、私には為すべきことがあった筈だ。

 
 「起きて」
  
 ああ、姉が呼んでいる!!
 姉さんが、読んでいるのに!

 ああ、何故! 何故!!

 何故……!



 『――起きて! ねえ、起きて! ってか? ギャハハハハハ』


 私の意識を、白濁した溶解から救ったのは、酷く、けたたましい笑い声だった。 
 ただそれは――声、では無かった。
 頭の中に直接響いてくるようだった。
 遠くから聞こえる鐘の音の様に、私の頭の中にそれは反芻された。


 『お前の夢、最悪だな? 独りよがりで汚くて弱くて、クソみてーな人間の夢の最たるもんじゃねえか! ギャハハハ』

 
 ああ……これはどうしたことだ?
 私は、姉の声を聴きながら逝くことも出来ないのか?


 いや……それでいい、私は、まだ逝きたくない。

 『へぇ、そう? イキたくねぇンだ? そう? 逝かないの? 行かないの? じゃあなんでこんなところに来たの? お前が気持ちよくこの世から逝く為に来たンじゃねぇの』

 私は……私は……もう一度、姉の声を聴きたかった。
 
 そうすれば、そうすれば



 「――もう一度、罪喰いを滅ぼしに行ける、か、くく、ぎゃはははは」



 その声は今度は、確かな声として聞こえた。


 「……体の傷から光が入ってきてるな……でも、俺様が力を貸してやれば、まだ持つ、か、なあお前? お前の大事な宝物をくれたら、力を貸してやるよ?」


 大事な、宝物?

 「おう? 妖精の力だ――罪喰いだって殺せるかもしれないぜ?」


  あ、ああ……。

 
 「そうだ……一言言えよ、捧げるってさ」


 「捧げ……」


 ――ク、起きて――リク――。

 姉さんの声が聞こえる。

 ああ……姉さん……私は……!







 
 「……る」





 「契約成立だ、俺様は”ユル=ケン” お前の名は?」










 ――。


 「じゃあ、”お前”を”半分”もらうぜ?」










 姉の声は、それきり途絶えた。
 もう、私を呼ぶ声は聞こえない。



 
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