※ご注意ください。
本作は、FF14の世界を舞台に、作者の妄想で勝手に創作しているパラレルワールドです。
そういったものが苦手な方はご遠慮下さいますよう、よろしくお願いいたします。m(__)m
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過ぎ去りし生命の輝きと、魂の慟哭] ~Ⅳ. 許し難い世界~数名の神殿騎士に連れられ、アンリとフィーナは決闘場へと向かった。
アタシとレン、シオンは全体が見渡せる傍聴席に誘導された。
裁判長…とは名ばかりの、教皇庁の息のかかった役人が仰々しく発声を行った。
裁判長
「これより戦神ハルオーネの御前において、決闘裁判を執り行う。
告発人、前へ!」
シャリベル「ワタシはシャリベル・ド・ルジニャック。
蒼天騎士の名誉にかけ、そこなる者どもをドラゴン族との内通による異端容疑で告発しマス!」
裁判長
「被告人、前へ!」
アンリ「我が名はアンリ・デュシャン。
彼女はメ・フィーナ。
異端容疑による告発とのことであるが、我らは旅の一団であり、貴国に敵対する意思は全くない。
先のドラゴン族の襲撃においても皇都防衛及び市民の救援にも尽力した。
異端などと言われる道理はなく、潔白を証明するため決闘裁判による裁定を乞い願う」
アンリとフィーナのことを ”被告人” と呼ばれ、すごく嫌な気持ちになった。
何一つ悪いことなんてしてない。
むしろ傷ついた人たちを助けたのに、なんで…
アタシの中でくすぶっていた闇の炎が静かに揺らめきだした瞬間だった…
裁判長
「両者前へ。
これより決闘裁判を始める。
戦神ハルオーネよ!ご照覧あれ!
そして願わくば真実を明らかにしたまえ!」
アンリ「先手必勝!ハァッ!」
決闘開始の合図とともにアンリはシャリベルに飛びかかり、大剣を振り下ろした。
アンリのスピードが想定外だったみたいで、一瞬たじろいだシャリベルは慌てて杖で斬撃を捌き間合いを取った。
そこに間髪入れずフィーナが追い討ちをかけたの。
フィーナ「こっちにもいるのよ!くらいなさい!」
杖に込められた魔力が大きく光り、矢のように放たれた。
シャリベルはさすがに避けることができなくて、防ぐだけで精一杯って感じだったわ。
フィーナの白魔法は威力はもちろん、詠唱のタイミングが絶妙だったの。
シャリベル「ホッホッホッ、思ったよりやるじゃナイ?」
アンリ「私たちの力を過小評価したようだな、このままけりをつけさせてもらうぞ!」
シャリベル「ならばこれではどうですか?
衛兵!」
アンリが一気にたたみかけようと大剣を構えたときだった。
物陰に潜んでいた神殿騎士が闘技場に現れて、小さなドラゴン族を乱暴に差し出したの。
フィーナが助けたあの子だった……。
神殿騎士に掴まれたその子は、身体を魔法でできた鎖みたいなので縛られてた。
ドラゴン族の子ども「うぅ………お姉ちゃん、ゴメン……」
フィーナ「あぁ!!どうして!!」
シャリベル「クックック、聡明なアナタ達ならこれがどういう状況か、分かりマスね?
さぁ、武器を置きなさい!」
アンリ「なんと卑劣な………
しかしこれでは裁判の正当性が保たれぬぞ!
早急にあの子を解放させるのだ裁判長!」
裁判長
「どうしたのですか?戦わぬと言うのならその場で有罪となりますよ?」
シオン「な………なにが決闘裁判だ……!
神の御前ではなかったのか!?」
シャリベルはドラゴン族と敵対する国是のためにとか、異端審問官としての責務とか、そういう理由で今回のような告発をしてるんじゃなくて、ただ権威権力を振りかざして立場の弱い者を嬲り、愉悦に浸っているだけだった。
司法さえもそれを許しちゃってるくらい、当時のイシュガルドは腐敗しきってたの。
でもこの状況で2人はシャリベルの言われるがままにするしかなかった…
シャリベル「こんなドラゴンの子ども1匹のために……クックック…
さぁ愚かな者どもよ、決闘裁判の続きと行きましょうか!」
フィーナ「武器は置いたわよ……その子を離しなさい!」
シャリベル「そんなに焦ってはいけませんねぇ?
アナタたちにもじっとしてもらいましょうか……」
シャリベルが両手に魔力を込め始めると、ドラゴン族の子どもが縛られてる鎖と同じ魔法でアンリとフィーナも動けなくされてしまった。
アンリ「くっ………卑怯なやつめ………
我らをどうする気だ!
動けなくして決闘裁判に勝利しようというのか!」
シャリベル「そうですねぇ、有罪となれば異端者として扱われ、その処遇は私に一任されることになるでしょう……
もちろん、異端者は例外なく極刑ですがね…!ホッホッホッ!
決闘裁判の後に異端審問などウザったいだけですから、この場で処刑を初めることにしましょう!」
レン「処刑……!?そんな……!」
シオン「こんな横暴、俺が黙ってる訳がないだろう!!」
業を煮やしたシオンが声を荒らげ、傍聴席から身を乗り出した。
その時アンリがいつも通りの冷静な……それでいて迫真に満ちた眼差しでシオンに何かを訴えかけた。
(レンと共にあんずを連れて逃げるのだ……!
そして私の意思を継ぎ、このような理不尽から人々を守ってくれ……!)
シオン「…………!!
そんな………そんなこと………
イヤだ……!逃げてたまるか……!
この場でこいつらを倒せばいいだけだ!!
ハァァァッ!!!」
シオンが暗黒の闘気をまとい大剣を振りかざした、その時……
もう1人の蒼天騎士「おぉっと!!
部外者は手を出すんじゃねーよ!
何せこれは神聖な ”裁判” なんだからよぉ!?」
そこに現れたのはシャリベルと同じ鎧をまとい、大きな斧を持った男だった。
蒼天騎士の1人でグリノーって名前。
こいつもシャリベルと同じで卑劣なやつだった。
グリノーは堪えきれなくなったシオンを抑えるためにフィーナを人質にとったの。
グリノー「いいかぁ?動くんじゃねーぞ?
このあまちゃんがよぉ!?
ちょっとでも手ぇ出したら、この女の命はねーぞ?」
シオン「こいつら…………こいつら……!!!」
このあたりからアタシの記憶が曖昧なの……闇に呑まれかけたからなのか、目の前の光景を受け入れることができなかったからなのか………
でもこの時のことは、しばらく日が経ってからレンが教えてくれた。
シャリベル「あの坊やにも後ほど審問する必要がありますね……クックック…
ですがまずは貴方から裁かねばなりませんねぇ。
さぁ自らの行いを認め、我が国と教皇に仇なす異端者であると白状なさい!」
アンリ「……………」
シャリベル「どうしました?
もはや抗う気力も失せましたか?
黙秘権などありませんよ?
それはすなわち罪を認めたとこととみなしマスからねぇ!
ホッホッホッ!」
アンリは黙っていたんじゃなくて、手にかけられた枷を外すための魔法を込めていたみたい。
それでフィーナと2人で蒼天騎士を相手取り、アタシ達を逃がすための隙を作ろうとしたの。
アンリ「………………
すまない……フィーナ……
共に……」
フィーナ「……………わかったわ」
シャリベル「クックック……別れの挨拶は済みましたか?
ではこの者らを異端者として、神の名のもとに処刑いたし………」
アンリ「はぁぁっ!!」 パァァンッ!
アンリが魔力を込め手枷を解除した。
同時にフィーナの枷も解き放ち、間髪入れずグリノーに斬りかかった。
咄嗟に斧の柄で防いだけど、さすがの蒼天騎士もアンリの斬撃の強さにたじろいでた。
グリノー「ぐ……この野郎……
ナメるんじゃねぇぞ!!」
フィーナ「これでもくらいなさい!」
フィーナが魔力を解き放った。
瞬間、あたりが眩い光に包まれた。
アンリの攻撃を抑えるのに精一杯だったグリノーは、背後から強烈な霊属性の光を浴びせられ僅かな時間だったけど身体の自由を奪われた。
グリノー「ぐっ………クソッ!」
アンリ「今だ!シオン!レン!
あんずを連れてここから逃げるんだ!!」
シャリベル「そ、そうはいきませんよ………!
者ども!この異端者達を絶対に逃がすな!」
シャリベルの命令に闘技場の裏に控えていた神殿騎士団の軍勢がなだれ込んできた。
とてもじゃないけど、一度に相手にできる数じゃなかった。
シオン「何言ってるんだ師匠!こんな奴ら………!
俺も戦うぞ!」
レン「シオン!!
このままじゃ全員殺される!
あんずを守らないと!!」
シオン「ならお前はあんずを守って逃げろ!
俺は刺し違えてでもこいつらを倒してやる!」
アタシは何もできず、震えながらアンリとフィーナの方をただ見ているだけだった。
続々と押し寄せる神殿騎士はアタシ達を捕えようと傍聴席の方へと迫ってきた。
アンリ「貴様らの相手はこの私だ!!
捕えられるものなら捕らえてみよ!」
アンリはアタシ達から敵視を惹き付けるため、暗黒の闘気を神殿騎士に向け放った。
四方を取り囲まれてたけど怯むことなく剣を薙ぎ、波動を放ち続けた。
フィーナもアンリを援護しつつ白魔法で応戦していた。
グリノー「ち、調子に乗るなよ……!!
いちいち目障りなオマエから片付けてやる!」
身体の自由を取り戻したグリノーが、標的をフィーナに変えて禍々しいオーラを纏った巨大な斧を振り降ろした。
フィーナ「きゃあ!!!」
フィーナは直撃こそ免れたけど、強烈な風圧で吹き飛ばされ地面に身体を強く打ちつけられた。
そして動けなくなったフィーナを仕留めようと、神殿騎士達が一斉に弓を構えた。
シャリベル「今です!!
あの女に弓を放ちなさい!」
フィーナ「うぅ………ぐ………
これまで………ね……」
バシュッ!ドスッ!ドスッ!
一斉に放たれた矢が標的を射抜く音が響き渡った。
でも射抜かれたのはフィーナじゃなく、咄嗟にフィーナを庇ったアンリの背中だった………
フィーナ「!?」
シオン「師匠ぉぉっ!!」
レン「くっ…………!!」
シャリベル「おや、順番が変わりましたがまぁ……いいでしょう。クックック……」
アンリ「シオン………逃げ………ろ………」
アンリは両手を広げ、全身でフィーナを守るようにその背に矢を受け倒れた。
シオンの絶叫、フィーナの涙、シャリベルの高笑い……
眼前の光景、響き渡る叫び声がアタシの五感を強く揺さぶった。
あんず「やだ……………いやだ…………
どうして………」
アンリは最期まで権威に刃をたて、その身を盾としてフィーナを護り倒れていった……
最期まで暗黒騎士としての誇りを貫き通した。
でもアタシは目の前に起きた事実を受け入れられなかった。
お義母さんを亡くしたときと同じように、強い拒絶と憤りが身体を駆け巡った。
シャリベル「さぁ次は貴女の番ですよ?
ひと時、生き長らえたとはいえすぐにあの男の後を追わせてやりますよ、ホッホッホッ!」
フィーナ「アン………リ………みんな………」
シオン「ならば次は俺が相手だ………!
俺も地獄へ突き落とすがいい……!!」
シオンは敬愛する師を目の前で殺され、復讐の炎をたぎらせていた。
けれど彼のその目は、残されたフィーナを護ろうと言うより、フィーナとともに死のうと考えているように見えた。
グリノー「お前の出る幕じゃねぇって言ってんだろぉ!オラァッ!」
シオン「くっ……!貴様……!
よくもフィーナを……よくも師匠を!!」
シャリベル「グリノー、その若造を抑えておきなさい。
私はこの女を処刑しますよ、ドラゴン族と内通していた張本人ですからねぇ…!」
フィーナ「みん……な………ごめんな……さい………
私……は…………もう………」
フィーナは結果的に自分がとった行動が今回の事態を招いたこと、父と慕っていたアンリが自分を庇い殺されたこと。
心身ともに深刻なダメージを負い、いくつもの受け入れ難い出来事を目の当たりにして、生きる力を失おうとしていた……
矢を受け倒れたアンリの傍らで……
シャリベル「やはり異端者を処刑するには火あぶり……でしょうかねえ………クックック」
シャリベルは得意の火炎魔法でフィーナにとどめをさそうと詠唱を始めた。
あたりがにわかに炎の熱気に包まれていった。
アタシは今起きた現実を受け入れられず、心の痛みに意識が遠のいていった。
けれど抑えきれない怒りの感情に強く支配された感覚だけは今でも残ってるの。
そして………
レン「もう………どうすることも………
!? あん………ず……?」
あんず「また…………アンタたちはアタシから大切なものを………
どうして…………なんで………?」
アタシは無表情だけど少し悲しそうな顔で、うわごとのように独り言をつぶやいてた。
そしてゆっくり歩きながら身体の周りに黒い炎をいくつも立ち昇らせていた。
グリノー「な、なんだこれは……!?
シャリベルの炎じゃない……!?」
シオン「暗黒の…………闘気………いや、炎……!?
あんずの魔法なのか………?」
アタシの周りに渦巻いてた黒い炎はやがて黒い火炎流となって炎の嵐を巻き起こし、その場にいるもの全てを焼き尽くそうとしてた。
あんず「ただ……笑い合って……生きてくことが………
そんなに…いけないこと………なの……?
なんで………アタシ……の……大好き……な人たち……を……奪おう……と……するの……?」
シャリベル「こ、これは!!なんという力なのですか!?
ワタシの炎まで飲みこまれていく……!」
レン「くぅっ!!
あ、あんず………!!
力を……!コントロールして……!!」
シオン「よせ!あんず!!
この場にいる全員を焼き尽くす気か!?」
周りの言葉が全く届いてなかった。
ただ衝動に駆られ心に生まれた歪みを、強大な負の感情を吐き出そうとしてた。
フィーナ「あん………ず……
もう………いいの……よ………
それ……以上………の魔力……は
あなた………自身………を……」
息絶えようとしてるフィーナの言葉さえも、アタシの衝動を止めることはできなかった。
いつかアンリが教えてくれた、闇の力による支配だった。
あんず「シャリベル………おまえ…………」
シャリベル「ひ、ひぃ!!
こ、こっちに来る気ですか!?」
どこを見るでもなく浮ついておぼろげだったアタシの意識が一点に集中し、目の前の”敵”を消し去るために魔力を凝縮していった。
11話 ~④許し難い世界~ おわり