キャラクター

キャラクター

Dark Knight

Arusena Prele

Valefor (Gaia)

このキャラクターとの関係はありません。

フォロー申請

このキャラクターをフォローするには本人の承認が必要です。
フォロー申請をしますか?

  • 0

Once Upon a Time in Eorzea―黄金の炎―(前編)「2、ミスト・ヴィレッジ②」

公開
                      ◆

 「真っ黒くて……」
 ルルカが呟いた。
 「天井まである大きな影か……」アルセナが言葉を継ぐ。「しかもそれが部屋を動き回って、息をして、光る眼で見つめてきたと来たもんだ。なるほどそれは確かに異質だね」
 新聞をカウンターの上に置くと、アルセナは体をエリスの方へと向けた。
 「ごめん、謝る」
 頭を下げたアルセナに、エリスは怪訝な表情を浮かべた。
 「正直に白状すると、あたしは話の頭の方を聞いたときに、ただの妄想かなって踏んでたんだ。けどいまの話を聞いて変わった。夢や幻覚だったらそこまで具体的な描写は無理だからさ。現れたのは一度きり?」 
 「いいえ。その後も何回か現れました。それが現れた後は決まって、さっき言ったような熱気がこもったり、臭いが漂うんです」
 「何か危害とかを加えられたりとかは?」とキサカ。
 「いままでは特に何もありません。でも現れる度に殺されるんじゃないかと思うと恐ろしくて……」
 エリスは震える肩を抱きしめた。嗚咽が自然と口から漏れた。
 その様子を見たルルカは、スツールから飛び降りるとエリスのもとへと駆け寄りその手にそっと優しく触れた。
 全員はエリスの震えが治まるのを待った。彼女の恐れようからずっとこの事を心にしまい込んでいたのだろうと悟る。
 やがて震えが治まり落ち着きを取り戻すと、エリスは側についていたルルカに弱々しく微笑んだ。
 「ありがとうございます。もう大丈夫です」
 「そっか」
 ルルカはニッコリとした笑みを返すとエリスから手を離した。
 「私の方から少し尋ねたいことがあるのだけれどいいかしら?」とセラ。
 「はい」
 「街角で行商人から変な物を押し売りされたとか無い? 本の形をしたようなものや紙切れなようなものでもいいのだけれど」
 エリスは頭を振って応えた。
 「ありがとう。となると偶発的な召喚の可能性はなしか……」
 セラは目を細め顎に手をやる。
 「エリスさん、この依頼引き受けるわ」
 キサカは固い意志を込めた口調で言った。
 「ほ、本当ですか……!?」
 嬉しさより驚きのほうが勝った。エリスは目を瞬かせ椅子から腰を浮かせかけた。その様子にキサカは快く頷く。
 「一応確認するけど、みんなもそれでいい?」
 キサカはアルセナ、セラ、ルルカ、それぞれに視線をやった。
 「おやっさんの紹介もあるし」アルセナは大きく伸びをした。「ここは実況検分と行こうじゃないの」
 「そうなるわね」
 駒の最後の一体をしまい終え、セラは箱を閉じた。
 「あたしもみんなと同意見!」
 ルルカが挙手をして答える。
 「決まりね。ルアンさん、留守と帰ってきた人たちに伝言を頼める?」
 カウンター越しに突き出た握り拳が親指を立てた。
 キサカは頬を流れる赤い髪を掻きあげエリスへと向き直った。
 「それじゃ、今夜はゆっくり体と心を休めて、明日の朝一番のリムサ・ロミンサ行きの便でここを発ちましょうか。ところで今夜はどこかに宿を?」
 「あっ……」
 そういえばすっかり忘れていた。この街の宿屋がどこにあるかをエリスは知らなかったし、それ以前にいまから予約が取れるかもわからなかった。表情で察したのだろう。
 「ルルカ、エリスさんを二階の部屋に案内してあげて」
 「は~い」
ルルカは敬礼するように額に手をやった。
 「え、そ、そんな悪いです……」
 「遠慮しない。遠慮しない。ささ行こ」
ルルカはエリスの手を取って立ち上がらせた。
 「は、はあ……」
 
                      ◆

 「こちらがお部屋になりま~す」
 マホガニー製のドアが勢いよく開け放たれる。
 「さ、入って、入って」
 「お、お邪魔します」
 ルルカに招かれてエリスはおずおずと部屋へと足を踏み入れた。
 「……わあ!」
 エリスは思わず目を輝かせた。そこは高級な宿の一室かと見紛えるような部屋だった。
 身を横たえなくても寝心地がよさそうだとわかる白いシーツと毛布に覆われたベッド。質素な鉄製の装飾が逆に目を惹きつけるテーブルと衣裳棚。格子戸にガラスの嵌め込まれた本棚の中には分厚い本が大きさ色と背表紙を揃えてぎっしりと詰めこまれていた。高級感溢れる柱時計が柱に背中をくっつけて時を刻んでいる。床には細やかな刺繍で縁取られた青地の敷物が敷かれていた。
 「そっちの扉」ルルカは右奥にある扉を指差した。「洗面所と浴室に通じてるから。自由に使ってね」
 「すみません。依頼を受けていただいただけでなく、泊まる部屋までご用意していただいて……」
 「気にしないで。ウチのマスター気前がいいからさ」
 ルルカは入り口のドア横の壁に設けられたつまみを回した。
 天井に据え付けられたシャンデリア。その内にあるソケットの中に挿し込まれた触媒に、[エーテル]伝導率の高い繊維で編んだ紐を通して地脈からの[エーテル]が注ぎ込まれる。
 「それにね。この部屋はもともとお客さん用のだから」
 「私のような人は頻繁に来るんですか?」
 「う~ん、エリスちゃんのような仕事を依頼する人はそうそう来ないかな? 来るとしたら他のFCに所属しているお友達とか、ここに商品を卸しにやって来る商会の人とか」
 ルルカが部屋の窓のカーテンを開けながら言った。
 「ごめんなさい」
 「ん?」
 ルルカはエリスの方を振り返った。
 「私が来たことでみなさんががくつろいでいるのを邪魔してしまったみたいで……」
 「あはは、大丈夫」ルルカはウインクをして人差し指を振った。「ちょうど暇してたところだったし。それにね、人を助けるのが冒険者の仕事なの」
 「そうなんですか?」
 「いや、これはあたしのモットー」
 ルルカはエリスにニッと笑って見せた。それにつられてエリスも口元を綻ばせる。
 自然に笑うのが随分久しぶりのように感じられた。
 「それよりエリスちゃんの方こそ、ここを探し当てるのにかなり時間がかかったんじゃない?」
 ルルカは浴室の扉を開けると中へ入る。
 「そうですね。ここに船で着いたのがお昼過ぎで……。それから休憩を挟んで一時間くらいかかりました」
 リムサ・ロミンサを発ったのは東の空が薄紅色に染まる早朝。そこから七時間近く船に揺られてここへ到着した。エリスは休憩とは言ったものの、実際は船酔いであった。心配した船員に薬を渡され、それを服用してから体調が回復するまで一時間くらい船室で横になっていた。
 「ミストに来るのは今回が初めて?」
 「はい」
 「じゃあ、あたしと同じだ」
 ルルカが浴室の入り口からピョコりと顔を出した。
 エリスは目を瞬かせる。
 「あたしもさ、「紅牙団」に入るためにここに初めて来たとき、屋敷を探すのにちょうど同じくらい時間かかっちゃった。「ハーバーへラルド」社発行の「ラノシア旅行ガイド」のミストの紹介ページに『用事を足しながら景色を楽しむのもいいかもしれない』なんて気楽に書いてるけど、用事があると景色なんて楽しんでる暇ないよね」
 「坂道と段差が多くて足が疲れました……」
 ため息混じりに素直な感想を吐露した。体調が万全ではないのによく探し当てることができたと自分でも思っている。ほとんど執念に近かった。
 「歩き慣れてないと辛いよね。あたしも屋敷に着いたときはもうヘトヘト」
 「それに屋敷が港のすぐ近くにあったなんて……」
 「そうそう。この居住区の不便なことと言えば地図を掲示したボードが設置されていないことかな。まあ、冒険者が次々に住み始めているせいもあるから地図の更新が追いつかないっていうのもあるけど。……よし浴室の備品のチェック終わり!」
 ルルカは浴室から出ると扉を閉め、エリスの前を横切ってホール型の壁で仕切られた部屋の左側の方へ歩いていく。 
 「次に来るときは観光目的で訪れてみるといいよ。きっと楽しいから。このあたしが保証する」
 冷蔵箱の触媒の取り入れ口を覗き込みながら言う。
 「はあ……」
 エリスは要領の得ない返事をした。次に来る機会なんてあるのだろうか?
 そんな風に考えてるとルルカがエリスのいる場所へと戻ってきた。
 「冷蔵箱も確認終わりと」
 「ありがとうございます」
 エリスはルルカに頭を下げた。
 「いえいえ。これくらいお安い御用のなんのその。冷蔵箱の中に入っている飲み物は自由に飲んでいいからね。それと何かあったらベッドの側の壁に付いてるベルを鳴らして。すぐに駆けつけるから」
 頼もしさに満ちたその言葉がエリスの心を和ませた。
 「はい」
 その時、エリスのお腹がくぐもった声を上げた。いまさらながらお昼を食べていないことに気づいた。恥ずかしさがこみ上げてくる。
 「あっ……」
 「あはは。それじゃ夕ご飯はこのあと持ってくるからね。それまでごゆっくりお過ごしくださいませ~」
 ルルカは部屋から出ると、エリスに手をひらひらと振りながらゆっくりとドアを閉めた。
 舞い降りる静けさ。窓越しから聞こえてくる通りの喧騒と柱時計の振り子の音が潮騒のように波打っている。 
 エリスはテーブルから椅子を引き出し腰を下ろした。背もたれに身を預けると朝から気を張りっぱなしだったせいもあって、どっと疲れが溢れ出てきた。 
 慣れない船旅に見知らぬ土地、存在は知っていたが面と向かって接したことがない人々。そして抑圧していた感情の解放。体力と神経を消耗させるには十分だった。
 こんな長旅、故郷を出たとき以来だな。
 一年前の記憶が頭の中を駆け巡った。
 夜明け前の林道。チョコボキャリッジ。灰色の雲間から射し込む光の階。街道を照らす街灯。風に波立つ緑の丘陵。街道から見た海都の威容……。
 エリスは椅子から立ち上がると、屋敷の正面に面した窓へと歩み寄った。錠を外してそっと窓を開ける。
 潮の香りが溶け込んだ柔らかな風が頬を撫でた。
 窓からは屋敷の名前どおり海を正面から眺めることができた。
 船の甲板の上から見た宝石のように青く輝いていた海は今はオレンジ色へと染まり、水平線の彼方へと沈みゆく夕陽が輝片を散りばめている。 
 空に目をやれば色彩は淡く澄んだブルーへと薄らぎ、白く霞む雲がナイフで引き延ばしたかのように細く長くたなびいていた。
 静謐さと雄大さを秘めた光景は記憶というカンバスの上に素描しておきたいと思えるほどに美しかった。
 そう、描きたい……。いまは無理でもいつの日か。
 でも、その「いつ」はこれから来るのだろうか? 
 エリスは顔を俯かせた。すると、さきほどの坂道とその先にある広場、そして船が横づけされている桟橋が視界に入った。
 坂道と広場にはまだ人がいた。道端で談笑する者。別れの挨拶を交わす者。胸壁に腰掛けて自分のように海を眺める者。
 行商人達の姿も見える。
 ある者は敷物を丸めて、ある者は杖を片手に大きな鞄を背負って、そしてある者は――治安が行き届いているのだろう――積んだ木箱や並べた樽の上へ布を掛けて、いそいそと店じまいをしていた。
 桟橋には釣り道具を持ってこちら側へ歩いてくる者の姿が見えた。
 長い長い一日が終わりを告げようとしている。
 エリスは再び太陽が沈む方角へと目を向けた。
 今日の訪れが問題の解決に至るかどうかはまだわからない。
 だけど信じてみよう。
 八方塞がりな状況に射し込まれた微かな一筋の光明。エリスにはそう思えた。
コメント(0)
コメント投稿
フォーラムモグステーション公式ブログ

コミュニティウォール

最新アクティビティ

表示する内容を絞り込むことができます。
※ランキング更新通知は全ワールド共通です。
※PvPチーム結成通知は全言語共通です。
※フリーカンパニー結成通知は全言語共通です。

表示種別
データセンター / ホームワールド
使用言語
表示件数