過去から戻ってきた。あの子たちがいる果てへと向かうことになり、最後の休息。みんな思い思いに休んでいる様子が……なんか良い。
これまでずっと走り続けてきて、休みという休みなんてほとんどなかった仲間たち。そんな仲間の安息の時間がとても和む。
特にウリエンジェ、ヤシュトラ、サンクレッドの三人がレストランで飲み食いしながら歓談する様子は、大人な三人らしい過ごし方だと思った。
サンクレッドは酒に強そうだし、よく話してよく食べそう。普段は寡黙な感じのウリエンジェは、少し酔ったほうが饒舌になると言うか、飲み食いより話す方が多くなりそう。
ヤシュトラはそんな二人に相槌を打つ聞き上手。ヤシュトラ自身、人の話を楽しんで聞きつつ、その合間にお酒や食事も楽しんでいそう。
個人的な経験から言うと、聞き上手な人はワインや日本酒好きが多い。ワインは時間経過と共に味わいが変わるので、話も楽しみつつ酒も楽しめることから、長い時間をかけて飲む人に好まれる。日本酒も温度変化によって味わいが変わるので、ワインと同じく時間をかけて飲む人が好む。そういった着眼点で見ると、ヤシュトラがワインを好むのは彼女らしい。
話し好きは麦酒や酒精の弱めな火酒飲みが多い。サンクレッドはたぶん、よく喋る分だけ酒精の弱い酒を多く飲みそう。
ウリエンジェはサンクレッドと逆で、三人の中では一番酒精の強い酒を飲みそう。大声を出さず、仲間内にだけ聞こえる程度の声量で話すからあまり喉が渇かず、細身で多く飲めない分やや強い酒を少しずつ飲んでそう。
いい大人だからこそ馬鹿騒ぎはしないけど、いい大人らしく雑談や思い出話で盛り上がる。そんな三人と自分が一緒に楽しんでる様子を見ていて嬉しくなった。
若いうちは飲み会とか宴会なんて何が楽しいんだ?って思うけど、少し歳をとると酒飲みの良さが分かる。もっと具体的に言うと、飲み食いしながら誰かと話せる良さは、誰かと話したくなったときに初めて気がつく。
誰にも邪魔されない一人での家飲みにも良さがある。店へ行って一人カウンターで黙々と晩酌するのにも良さがある。同じように、人と一緒に酒を飲むことにも良さがあるけど、その良さは他人に言われても理解することは難しい。
一人は気楽だ。気兼ねなく自分の時間を謳歌できる。誰にも邪魔されない良さが一人にはある。
生きていれば嬉しいこと、楽しかったこと、悲しかったこと、つらかったり大変だったりしたことだってあるだろう。そういった経験をしたときに、その経験を誰かに話したくなる。あるいは、先に同じような経験をした人がいたら先見の明を聞きたくなる。
理由はなんであれ、遅かれ早かれ、誰もがそういったことを他の誰かと話したくなるのだ。そしていざ話したいと思ったときに、初めて友人や知り合いの大切さや、話せる場のありがたみを知るのだ。
彼ら三人は、飲もうと誘われたり誘ったりしたときに、行くよ、付き合うよと集まってくれて、そしてお互いに気兼ねなく話ができるほど仲がいい。それがよく分かってしまい羨ましかった。