今！ リムサ・ロミンサは未曽有の危機に見舞われている！
沖合では、海の蛮神リヴァイアサンが再三の顕現を果たし、多くの冒険者と黒渦団の精鋭が、意気上がるサハギン族を迎え撃つべく出払っている。
有力者の居ない隙を突いて、街中で蜂起する海神のテンパード達。それを煽動しているのは、かつて冒険者達に成敗されたはずの、異形と化した海賊マディソン元船長！
「そこまでだ化け物め！」
「おおっと！ 遅かったじゃあないか、イエロージャケット！」
「オソカッタジャナイカ！」
大混乱を掻き分けて、ようやくアフトカースルに駆け付けた警備隊を、高らかに嘲笑う元凶。
「凡人に毛が生えた程度のテンパ共相手に、随分と手こずった様だなぁ！ クソダセェヒヨコ共がッ！」
罵声と同時に浴びせられるマスケット銃の凶弾！ 過剰に注がれた海神の力が、斧術士達による幾重もの防御さえも容易く撃ち抜いてしまう！
「く、くそっ……近付く事も出来ん！」
「てやんでえ！ こちとらサスタシャＨａｒｄだぜ。クソ冒険者共が居ない今、このしみったれた街でオレに敵う奴は居ねえッ！」
「取り敢えずトマホークッ！！」
「痛いッ！！ 居酒屋のノリで斧投げた奴ぁ誰だあッ！？」
「私だあッ！！」
手痛い不意打ち、野太い声に振り返ると、奴が居た。
円形広場のど真ん中で、仁王立ちする伊達姿。岩塊の如き巨躯、原木の如き四肢。弾けんばかりの筋骨隆々を圧し包むは堅牢無比、淡い桃色のヘヴィアイアンアーマー！
背に負うは凶悪な意匠の戦斧。そしてそう、潮香る海の街リムサ・ロミンサ！
「守護る為に、ぶっ飛ばす……」
陽の光受けて燦然と輝く、其の名は！
「魔法少女ミスリル☆ハート！！」
「お前のような少女がいるかあああああーッ！！」
「ちょっとちょっと？」
流石に困惑して、肩に留まったマメット・サキュバスが、契約者メイム・ヘヴィスイングに問い掛ける。
「ソレが貴女の理想な訳？」
「そうよ！ 可愛いでしょう？」
「何処が！？」
「パステルピンク！」
「否めないわね！」
「おい、あのイカレた一人と一匹はお前等の知り合いか？」
こちらも困惑して問い掛けるマディソン元船長。首を横に振るイエロージャケットの面々。そりゃそうだ。
「どっからどう見ても変態ルガディン野郎じゃねえか！」
「魔法少女！ ミスリル☆ハート！」
「声が！ 野太い！」
「イエロージャケットの皆さん、此処は私に任せて！ 黒渦団と共に、市民の安全を優先して下さい！」
「お、おう……」
いまいち了解し難い。が、其の身から立ち昇る凄まじい闘気は、古強者の格を顕していた。
「……了解した！ 頼んだぞ冒険者！」
逡巡しながらも後退するイエロージャケット。地団駄を踏むマディソン元船長。
「ぐぬぬぅ……ッ！ クソ冒険者の勘違い野郎が！ オレのオンステージでデカい口叩きやがって！」
「此処から先は正義の花道！ 私のオンステージよ！」
「指差すな！ 太い！」
怒りで赤く染まりそうな烏賊頭を、クソデカ深呼吸で何とか鎮めて。海神の使徒は、醜悪にほくそ笑んで見せた。
「そうイキってられんのも、今の内だけだぜ……野郎共、出て来いやあッ！！」
曲刀を天に突き上げ、高らかに号令を飛ばすや否や、眼下の海から水柱と共に、次々と手下の元海賊が飛び上がって来た！
その数……広場を取り囲む程に無数！
「むむっ！？ 意外な人望！」
「ハーッハッハッハッ！ 魔法少女？ ミスリル☆ハートよ！ 主役のオレとヤリてぇなら、先ずは下積みから始めるんだなあッ！」
「……望むところだッ！」
多勢に無勢か、はたまた鎧袖一触か。この苛烈な初陣を征して、愛する街を守護る事は出来るのか。
魔法少女ミスリル☆ハート！ 神殺しの冥斧が唸りを上げる次回！
刮目せよ！
刮目しないで下さい。
すっかり昼夜が逆転したソロぼっちです。色々遅々として進まない中、こんな事ばっかり考えてます。
穀潰し！
