『待って、どうして!?どうして出ていくなんて言うの!?』
「仕方がないんだ、もう僕たちは沈黙を楽しめなくなったんだ」
『どうして?どうしてそんなこと言うの!?』
「判ってくれ、もうみんなを守るためには、これしかないんだ」
『…出ていくのね。私の居るところから』
「違う、そうじゃない。還るんだ、あるべき場所へ」
『飾った言葉なんて聞きたくない!』
「聞いてくれ、よく見てくれ」
『何よ…なんだっていうの』
「よく見るんだ、この場面を。僕が行くしか、他に手がないんだ」
『貴方じゃなくてもいいじゃない!貴方じゃなくたって、他に誰が行ったって構いやしないじゃない!』
「いいや、ダメだ。落ち着いてよく見てくれ」
『…なによ』
「よく見るんだ。この盤面、もう既に二人リーチしている」
『それが何よ』
「安パイが、もう無いんだ」
『だからって、何も貴方が行くことないじゃない!』
「いいや、ダメなんだ」
『どうしてよ!何なら、私でもいいじゃない』
「ダメだ。君だけは絶対に行ってはならない」
『何でよ、あなたが行くくらいなら、私が代わりに…』
「いいか、よく聞いてくれ。君は、この局において、ドラなんだ」
『それが何だって…』
「君の名前を、よく思い出してほしい」
『私の…名前……?』
「そうだ、君の名は、發だ」
『私の名前…』
「發、それが君の名前」
『私の…私は…』
「そうだ、發。場をよく見てくれ。二人リーチのこの場面。まだ君の他に發は捨てられていないんだ」
『…あっ』
「君が当たり牌の可能性は、十分に高いんだ」
『そんな…』
「君はドラで、もし相手が發単騎で待っているなら、ドラを献上してしまうことになる。いや、それだけならまだいいかもしれない。相手が發を二枚もっていて、それで發の役もついてしまったら、もう追い上げることは難しいんだ」
『そんな…』
「その点、僕ならまだダメージは小さい」
『そんな…もうすこしでイーシャンテンなのに…』
「遅かった」
『遅かった…?』
「そう。僕たちは、あまりにも遅すぎたんだ」
『貴方が…行くしかないのね』
「そうだ、わかってくれたかい」
『わからない、どうして、あなたが、捨てられなきゃいけないのか。理屈ではわかっても、私は、どうしても納得できない』
「判ってくれ、發。じゃあ、もう行くよ。さよならは、言わずに」
『もうすこしで、テンパれるのに…』
「その場合でも、結局はリーチのみ、待ちは君、發の単騎になる。他に發が眠っているならいいが、もう、ここまで来てしまったら、あまりにも代償は、大きい」
『行くのね…この盤面を守るために』
「ありがとう、發。分かってくれて」
『ねぇ、また会える?』
「会えるさ、何度でも。何度でも」
『私、あなたのことを覚えておくね』
「ありがとう。僕も、君を忘れない」
『ありがとう九索。あなたの隣にいたこの時間、私は決して忘れない』
「また会おう。この東三局から、東四局になったときに、同じ場所で、また会おう」
『さようなら…』
「さよなら、發…」
ガンブレ君
「ロン、立直・七対子・ドラ2w」
俺
「ウソ!!??」
なにこれ