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Moonlift Dancer

Ququluka Mumuluka

Alexander (Gaia)

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【小話】夢で逢いましょう・前編【蒼天祭】

公開
こちらは二次創作です。

オルシュファンと蒼天祭を一緒に歩きたくて書きました。がっつりネタバレしているので蒼天祭に参加できるようになってからお読みください。漆黒蛮族クエストの設定を少し使っています。ちょっとしたネタバレも気になる方は漆黒クリア後にどうぞ!







「今回もありがとう! きれいなコインね。みんなにも見てもらおうっと」

 花咲くイル=メグの片隅で、ウィン=ニイはくるりと回って喜びを表した。

「ねえ、たまにはあなたに何かお礼をしようと思うのだけど、何がいいかしら?」

 ピクシーの言葉に、私は露骨に驚いてみせる。
 ここは妖精の園イル=メグ。そこを訪れるたび、ピクシーたちに厄介な頼まれごとをされてきた。しかしその日湖の底から拾ってきたコインを届けると、依頼主のウィン=ニイは上機嫌で出迎えてくれた。

「何よ、私たちだって嬉しいことをしてもらったらお礼くらいするんだから。……そうね、今夜あなたの見る夢がちょっと素敵なものになるように、おまじないをしてあげる」

 返事も待たず、ウィン=ニイはその場でくるりと回った。光の欠片が降り注ぐ。「おまじない」とやらがかかったらしい。やれやれと苦笑し、――妙ないたずらでなかっただけよかった、と既に達観している――私は次なる目的地へとチョコボを飛ばした。
 「光の戦士」を待つ者は多い。この後はミーン工芸館に納品する魚を釣り、蒼天祭に顔を出し、シドの調査に付き合い、南方ボズヤ戦線のレジスタンスの様子も見に行くつもりだった。今日も今日とて忙しい。イル=メグを離れる頃には、ウィン=ニイのおまじないのことが頭から抜けてしまったとしても――仕方ない、と言ってもいいのではなかろうか。

   ***

「やあ、友よ。誘ってくれたこと、心の底より嬉しく思うぞ!」

 聞き覚えのある声に呼ばれ、私は顔を上げた。蒼天の下で輝く銀髪とはちきれんばかりの笑顔がそこにある。
 ああ、そうか。彼と一緒に蒼天祭をまわろうって約束してたんだっけ。どうして忘れてたんだろう。

「オルシュファン! 来てくれて嬉しいよ。よく仕事を抜けてこられたね?」

「何を言う。お前の一段とたくましくなった肉体を目にする機会とあらば、できる限りの都合をつけようではないか」

 ぐっと拳を握りしめ、彼はいつものように力強く言った。

「実際のところ、ひとときに比べればずいぶん仕事に余裕はできたのだ。お前の活躍のおかげで、キャンプ・ドラゴンヘッドにおいても竜の脅威は大きく減った。もう異端を追う必要もないのだ」

 満たされた笑顔でひとつ頷き、オルシュファンは蒼天街の街並みに目をやる。赤や青の風船に彩られた蒼天街は、ずいぶん華やいで見えた。

「荒廃した皇都の復興にまでお前が力を貸してくれたと聞いている。本当に……お前にはいくら礼を言っても足りぬな」

「いいんだよ、礼なんて。今日きみと一緒にお祭りをまわれたら、それだけで十分だよ」

「そうか。皇都の英雄となってもお前は変わらぬな。ふふふ……お前に誘われたときから、この日を楽しみにしていたのだ。では今日は力の限り! 全力で! 楽しむことにしよう」

 街の中心部をびしっと指差し、オルシュファンは歩き始める。

「うん……でも、今日の催し物っておもに職人さんのためのものだよね。オルシュファンが一緒に行って楽しめるかな……?」

「何を言う。私も自分の剣や鎧の手入れくらいはしているのだ。もちろん一流の職人には及ばぬが、多少の心得はある」

「そうなんだ! じゃあお手並み拝見といこうかな」

 オルシュファンはいつもより――キャンプ・ドラゴンヘッドにいるときよりもゆっくりと大通りを歩いていく。イシュガルドの風は冷たいけれど、今日は雪は降っていない。晴れてよかった。お祭りの日に雨が降ったら悲しいもの。
 通りのあちこちに屋台が並び、大道芸人の声や楽器の音も聞こえてくる。この街にこんな明るい賑やかさが戻るのは、いったい何年ぶりなのだろうか。

「おや、あそこ……人だかりができているな」

 前方の広場に、たしかに人が集まっている。あれは冒険者の、それも職人たちの集まりだ。Fêteとやらが始まるのだ。オルシュファンは興味津々な顔でその人だかりを見ている。

「私でも参加できる催しだろうか?」

「最初の催しはポーズをとるだけだから大丈夫。きっと私よりオルシュファンの方が上手くできるよ」

 予想は正しかった。飛び入り参加したオルシュファンはさらりと「ムキムキポーズ」を決め、最後尾ながら長い手足でスタッフに十分アピールしている。時々周囲からチラチラと「あの人はもしかして……?」という視線を感じるが、皇都でのそのような視線には慣れているので気にしない。

「あのモーグリの着ぐるみを着た男……あの鍛え上げた筋肉、美しい立ち居振る舞い、もとはひとかどの兵であったとみた。あのようなつわものが戦いのためでなく、ただ純粋に筋肉を誇れる世になったのだな」

 「モフモフポーズ」をとりながら、オルシュファンはしみじみと言った。そうだね、と私もうなずく。皇都は変わった。そして今も変わりつつある。竜との戦いを何よりも優先してきた人々が、今では自分や家族の生活を豊かにするために働いている。

「引退した騎士の人なのかもしれないね」

「ああ。これからは人々を笑顔にできる力こそが必要なのだからな」

 言われて、私は「クルクルポーズ」のまま自分の片手を見下ろした。そうか。そうだね。必要なのは戦いのための強さだけじゃない。平和な世界にこそ、それ以外の強さが求められる。

「どうした? 急に神妙な顔をして」

 オルシュファンが私の顔を覗き込んでいる。

「ん……私も、みんなを笑顔にできる力を身につけなくちゃいけないなって」

「何を言う!」

 急にお手本ポーズを無視して、オルシュファンは両腕を広げた。

「ここにいるすべての者に笑顔を与えたのは、お前ではないか。お前は最初に私とフランセルに笑顔をくれた。それからキャンプ・ドラゴンヘッドの皆にも。のみならず、イシュガルドの民すべてを笑顔にしたのだぞ。もっと誇ってイイ。私も友としてこれ以上ないくらい誇らしく思っているのだからな」

「ちょ……声が大きいって」

 さすがに周囲の視線が気になるよ!
 でも、そっか。彼にそう言ってもらえると、私もなんだか誇らしい気持ちになってくる。イシュガルドの民すべて、なんて言われてもピンとこないけど、オルシュファンを笑顔にできたのはわかるし、それはとても誇らしい。
 もらった参加賞をかばんにしまい、次のFête会場へと向かいながら、私はふと道端の石像に目をとめた。名も知らぬ職人が作ったその石像は、蒼天へと剣を掲げている。

「ね、オルシュファン、見て!」

 私は石像へと走ってその隣に並び、ポーズを真似た。今は剣のかわりに鍛冶のハンマーを持っているけれど。

「どう、どう? 前に言ってたでしょ、屈強な石像にまぎれてポーズをとる私が見たいって」

 オルシュファンの目がぱあっと輝くのを私は見た。

「す……素晴らしい、素晴らしいぞ! そのたくましい肉体! 美しい立ち姿! ほとばしる生命力! 一枚の絵画と見まごうほどではないか! ああ、このままこの姿を我が居室に飾っておくことができたら……」

「だ、だめだめそんなの! ポーズはおしまい、次いこ!」

 そんなの恥ずかしいし、あの勢いだと石化の魔法でも使いかねない。私は早々にハンマーをしまい、オルシュファンに先立って歩き始めた。背後で彼が「惜しい」だの「せめてもう少し」だの呟いているが、聞こえないふりをする。

「ほら、次はあれ! ぬいぐるみ組立競争だよ」

 十字鍬通りはすでに職人たちでごったがえしている。さっきよりも人が増えているのは、仲間からFête開催を聞きつけた冒険者が駆け付けたためか。

「ぬいぐるみ……組立……競争」

 通りに並べられた材料と道具をぽかんと見つめるオルシュファン。おそらく「競争」の部分しか理解していない。

「そこに用意された布や糸を使ってぬいぐるみを作るの。ぬいぐるみってわかる? 木人じゃないんだよ」

「う、うむ、フォルタン邸にはそのようなものはなかったが、貴族の子女の中にはチョコボやモーグリを
模した人形を持つ者もいるな。あれを作るのか、私が」

「無理だったら参加しなくても、横で見学してたら……」

 正直なところ、私としてもオルシュファンがまっとうにぬいぐるみを作れるとは思えない。だが彼は大きな困難を前に挫けるような男ではなかった。

「私を見くびってもらっては困るぞ。『競争』と名がついているということは、職人たちがその腕を競い合うのだろう。勝負事を目前にして逃げたとあらば、騎士の名折れ。たとえ不利な戦いとわかっていようとも、立ち向かってこそのイイ騎士ではないか」

「いやそこまでシビアな競争じゃないんだけど……」

 言い終わる前に笛が鳴り、Fêteが始まってしまった。集まった職人たちが一斉に材料に飛びつき、またたく間にぬいぐるみを作り上げていく。
 私も参加するからには腕を振るいたい。生地を切り、するすると縫い合わせる。横で苦戦するオルシュファンを後目に、モーグリのぬいぐるみを完成させた。

「おお、さすがに手慣れたものだな、友よ。私のことは気にせず、納品してくるがイイ!」

 そう言われ、私はぬいぐるみを抱えると納品所まで走りだした。この道は走り甲斐がある。
 ぬいぐるみを納品し、次なるぬいぐるみに取り掛かる。あのぬいぐるみは誰のところに届けられるんだろう。蒼天街の孤児院? それとも他国への輸出品になるのだろうか。そんなことを考えながら、オルシュファンと並んでぬいぐるみを作り続けた。私が三回納品する間に彼が一度も立ち上がらないのが気になったが、彼がこれを騎士としての「勝負事」だと考えている以上、手出しは無用なのだろう。
 やがて笛が鳴り、私は最後のぬいぐるみを納品してオルシュファンのもとに戻ってきた。彼はがっくりとうなだれ、膝をついている。

「終わってしまったか。なんと不甲斐ない……奮闘及ばず時間切れとは。私もまだまだ未熟ということだな……」

 彼の手には丸められた綿が握られている。まだ完成には程遠いようだ。

「そんなに落ち込まないで。初めてにしては頑張ったよ……。イイ騎士かどうかは、ぬいぐるみを作れるかどうかで決まるものじゃないと思うし」

「そうか……」

 それでも彼は綿切れを手放さない。未完に終わるのがよほど心残りらしい。私はぽんと手を叩いた。

「ね、オルシュファン、そのぬいぐるみを完成させよう! もう納品受付は終わってしまったけど、せっかく作り始めたんだもの。で、出来上がったら私にちょうだい!」

 私の言葉に、彼はぱちぱちとまばたきを繰り返す。

「いいのか?」

「うん、私はここで待ってる。今日のお祭りのお土産にするんだ」

 オルシュファンはきらきらと目を輝かせて頷いた。彼がこういう細かい手作業に向いているとは思えないが、祭りに参加する以上、民や冒険者と同じ目線で楽しむことが彼にとっても大事なのだ。きっと。
 そんなオルシュファンの様子を見ていて、イイことを思いついた。祭りのスタッフに声をかけ、箱の中に少しだけ残っていた端切れと綿をもらってくる。これでもうひとつ、小さなぬいぐるみを作るのだ。作業に集中する彼の隣で、私も針と糸を構えた。

「――で、できた……!」

 それからしばらくの後、彼は高らかにぬいぐるみの完成を宣言した。その手には骨折したパイッサのようなものが握られている。私と同じ型紙でモーグリのぬいぐるみを作っていたはずなんだけど。

「やや不格好ではあるが、私の作った初めてのぬいぐるみだ。もらってくれるだろうか?」

「ふふ、ありがと。部屋に飾るね」

 私は笑ってそれを受け取る。ところどころ綿がはみ出ているのは、後で自分で補修すればいいか。

「ああ、お前にもらわれていくぬいぐるみ……イイ! できれば私がその立場を変わりたいくらいだ!」

「あなたは部屋でおとなしくお留守番できる人じゃないでしょ」

 私の言葉に、彼は「それもそうか」と眉を寄せて納得する。

「私が見たいのはあくまでお前の雄姿。剣や杖を振るうその躍動こそを見たいのだ。いや……自宅で装備を解いてくつろぐお前の姿も見たくないといえば嘘になるが……お前がキャンプ・ドラゴンヘッドに滞在していた頃はずいぶん堪能させてもらって……」

 また話があやしくなってきた。

「ほら、これ! もらってばかりじゃ悪いから、私からもプレゼント」

 彼の話を遮り、私は端切れで作った小さなぬいぐるみを差し出す。

「これは……チョコボか」

「そう。オルシュファンにはモーグリよりチョコボの方がなじみがあるでしょ。黒く染色すれば黒チョコボにもなるんじゃないかな」

「おお、黒チョコボに……!」

 モーグリぬいぐるみの端切れで作ったから、今は白っぽいチョコボになってしまっているけれど。オルシュファンは両手でぬいぐるみを掲げ、うっとりと息を吐いた。

「ああ……イイ! お前が不在の間は、これをお前だと思って大切にしようではないか。どこに飾るべきか悩むな。執務室か、寝室か……」

「執務室にぬいぐるみを飾ってたら、騎士のみんなが動揺するんじゃないかな……」

 私は小さく呟いたが、それはもしかすると旧いイシュガルドのイメージなのかもしれない。竜との戦いから日々の暮らしへと目を向けるようになったこの国の人たちなら、ひょっとしたら執務室にぬいぐるみを飾るのだって普通になるかもしれない。たとえばアイメリク卿が仕事机の上にモーグリのぬいぐるみを飾っていたらルキアは驚くかもしれないが、それはすぐに日々の潤いのためだとか、融和の象徴だとか理由をつけて納得するに違いない。

「この国を救った英雄が手ずから作ってくれたぬいぐるみだ。執務室に飾れば必ずや部下たちの士気も上がろう。ありがとう、大切にすると誓うぞ」

 エレゼン式のお辞儀をするオルシュファン。ぬいぐるみで士気が上がるものだろうか? いや、私があまりつっこむのも無粋というものか。

「あ、見て。なんだか人がまた集まってきたよ。最後のFêteがここで始まるんじゃないかな」

「そんなに時間がたっていたか。最後は何を作るのだ?」

「作るんじゃないよ。最後はプレゼント配り競争」

「プレゼント……配り……競争!」

 オルシュファンがぐっと拳を握りしめた。

「なんと平和で温かく、かつわかりやすい言葉だろうか! 運ぶだけでいいのだな?」

「そうそう。あそこに並べられたプレゼントを、プレゼント対象者に運ぶの」

 私はくすくす笑い、スプリントに備えて準備運動を始めるオルシュファンを眺める。たしかに、これは
「オルシュファン向き」な催しかもしれない。

「子供たちには玩具とか、職人さんには新しい工具とかね。相手を間違えないように気を付けて」

「承知した。街の皆に笑顔を届けられるよう、クルザスの山道を走りこんで鍛えた健脚、今こそ披露しようではないか!」

 燃え上がるエーテルが目に見えるような気合いである。
 そしてその気合いと彼の健脚は本物だった。他の追随を許さない――まあ、この競争にそこまで必死になる参加者はそうそういないのだが――スプリントで大通りを爆走し、子供たちに、そして職人や商人たちにプレゼントを配ってまわる。ほかの参加者や通行人にぶつからないよう華麗にかわしながら、しかし速度は落とさず走り続けるあたりに、訓練を積んだ騎士の片鱗が見える。

「少年よ、この祝祭のひとときがお前にとって良き思い出となるよう祈っている」

 ひとりひとりにイイ笑顔とともにそんなふうに言葉をかけるのも忘れない。本当に――「オルシュファン向き」な催しだ。私は走っていく彼を目で追いながら、自分もプレゼントを抱えて走った。彼の友として、私だって手は抜けない。
 笛の音とともに私と再合流したオルシュファンは、満足そうな笑顔を浮かべていた。いつもの鎖帷子を着込んだままあれだけ走り回ったにもかかわらず息を乱していないのは、さすがと言うべきか。

「良き戦いであった! が、これは順位を競うようなものではないのだな」

「うん、お祭りだもん。参加してくれてありがとうってことで、みんなに賞品が行きわたるはずだよ」

「そうか。うむ、それこそ平和な世の祭りなのかもしれぬな。良い訓練にもなった。キャンプの皆にも参加してもらい、足腰を鍛える機会にすべきか」

 イイ騎士たちが職人にまじって蒼天街を疾走するところを想像すると、なんとも妙な具合だ。とはいえ、竜との戦いにあけくれているよりはずっといい。
 考えにふけるオルシュファンの手を引き、私は参加者用のプレゼントボックスを配る列に並んだ。出てくるのは大抵参加証なのだけど、箱を開けるときに出てくる魔法のくす玉はきれいで毎回楽しみにしている。
 しかしこのとき、オルシュファンの開けた箱からはちょっと珍しいものが出てきた。

「おお、これは……?」

 くす玉から舞いおりた紙きれを髪につけたまま、オルシュファンは目を見開く。

「わあ、当たりだね! 風船だ」

「ほう……、街に飾られているものと同じだな」

 それはスカイライズバルーンだった。今日の蒼天のような青い風船だ。地面に固定できるよう支柱もついている。冒険者が自宅の庭にこの風船を飾っているのを見たことがあった。

「部屋に飾るにはちょっと大きいよね。庭に飾るためのものだと思う」

「なるほど、それではキャンプ・ドラゴンヘッドに持ち帰って飾るとしよう」

「……あそこに? この風船を?」

 私は首を傾げた。あの堅牢な砦にはいささか似合わないような気もするが。

「そうだ。ドラゴンヘッドで働く者たちの中には、まだ復興した皇都を自身の目で見たことのない者もいるのだ。もちろん話には聞いていようが、あの雪と道中の魔物たちのせいで、戦うすべのない者にとっては気楽に行き来できる距離ではないからな」

「なるほど……。お祭りの雰囲気だけでも味わってもらうにはちょうどいいかもしれないね」
 この冗談みたいにおめでたく楽しげなデザインの風船は、平和な皇都の象徴になりうるだろう。これを見れば、あのキャンプの皆も復興した皇都を想うことができるかもしれない。

「私としては皆にもっと休みをとってもらいたいところなのだが、なにぶん生真面目な連中が揃っているものでな。戦時とは異なる生き方にすぐに変えられる者ばかりではない。これを見て、少しは心なごませてほしいというのが私の希望だ」

「そっか」

 私は微笑み、あの砦にこの風船が飾られるのを想像した。
 ――うん、悪くはない、のかもしれない。

「さあ、それではFêteでイイ汗もかいたことだし、ともに温泉につかろうではないか!」

 高らかに宣言するオルシュファンの声に、私は顔を上げた。

「え、温泉?」

「そうとも! 復興事業で入浴施設の建設が始まったと聞いたときから、お前と入れる日を心待ちにしてきたのだ。ともに肌をさらし、鍛えた肉体を見せ合い、心も体も温める、それが温泉というものだろう!」

「あー……温泉。オルシュファンと、私が。温泉」

 蒼天街における温泉の意義の大きさについては私が改めて言うまでもない。この地の衛生状況や健康状態を大幅に底上げすることになっただろう。物理的な意義だけでなく国が豊かになりつつあることの象徴でもあるし、市民同士の交流の場としても機能している。
 しかしこの友は相変わらず語彙に難がありすぎる。ていうかあれくらいの走りこみじゃ全然汗なんかかいてないじゃん! いったい何が目的なのか。いや、単に一緒に温泉につかりたいだけだとわかってはいるけれど。

「さあ、我が友よ。温泉はどちらにあるのだ? 積もる話はそちらでじっくりとしようではないか。施設の建設にはお前もかかわったのか?」

「そうだね、石材の切り出しとか、あとは足場を作ったり……」

 無駄な抵抗はやめにして、私は素直にオルシュファンの先に立って蒼天街を歩き始めた。
 なんだかんだで、私も彼と温泉につかるのが楽しみになってきた。屋外の大浴場だ。きっと泳ぐんだろうな、なんて想像する。

「嬉しそうだな、友よ」

 オルシュファンが愉快そうに私の顔を見つめている。

「うん、嬉しいし楽しい。今日は来てくれてありがと。会えてよかった。結構久しぶりだよね?」

「そうだな。こうして直接顔を合わせるのは……久しぶりだな」

 彼の言葉に私は何かが引っ掛かり、ぴたりと足を止めた。彼もそれに合わせて足を止める。
 久しぶり?
 そういえば、オルシュファンって蒼天街に来たことがあったっけ?

「あれ……こうして会うのって、いつ以来だっけ?」

 見上げる顔は少し困ったような笑顔になっていた。

「お前と最後に会ったのは――」



 (字数制限のため後編に続く!)
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