紅蓮4.0のネタバレありです。コーヒーに入れるミルク分ぐらいの
暗黒騎士Lv70ジョブクエ・三闘神・機工城アレキサンダーのネタバレもあります。ネタバレしない範囲で言うと
紅蓮で色々あってつかれたPCが盟友に愚痴手紙を書きました という内容です。
PCは少しつかれているようですが、PLは毎日楽しく遊んでいます。ごめんミナトくん……。
【これは雪の家で書かれ、燃やされた手紙に綴られていた文字であり、その残滓たるエーテルは本来常人に読めるものではない】――最愛の友へ。
お久しぶりです。ずっと遠方にいて、君に手紙を出す機会がなかなかありませんでした。
君に語りたいことはいくつもあるのですが……今日は、旅のことよりも、少し君に話を聞いてほしいと思いました。
遙か遠くのドマという国と、アラミゴが、ガルマール帝国からひとまずの解放をみました。
様々な思いと、多くの命の上にもぎ取られた自由です。
……ただ、それは本当に自由だけだったのか、と。ふと考えます。
私は変わらず、何かを頼まれる度にあっちへ行ったり、こっちへ行ったりと……君のいう「七面倒くさい任務」ばかりを受けていました。
正直気乗りしなかったものもあれば、自分から進んで引き受けたものもあります。
……なんだか君のあきれ顔が目に浮かびました。
私の共犯者にも「人が良すぎる」と怒られるかもしれません。
今度会えたら謝っておかないと。
そういえば、変な人たちに好かれるようになりました。
どちらも帝国の人です。帝国の人はやっぱりちょっとどこか不思議な人が多い気がしています。
一人はグリーンワートという軍人。知略こそ脅威ではないものの、耐久力がかなり高い相手です。
何度かやり合いましたが、未だ倒すに至っておらず……この間再闘したときなどは、身体のあちこちを機械化していました。
求められるまま戦う私とは異なり、明らかに何かを欲するギラついた眼をしていました。
あの執念はどこからくるのでしょう。
彼の望みは、一体何なのでしょう。
彼は、どうなりたかったのでしょう。
もう一人は帝国皇太子のゼノス=イェー=ガルヴァス。
私からみた印象としては、ひたすらに生きることに飽きた人、という感じでした。
何もかもができるが故に、何もかもに飽いている、というか。
眼のギラつきという点では彼の方が上ですね。倦怠の闇の奥に、渇望が渦巻いていました。
実際腕も立ち、私も何度か膝をつく始末です。最後の戦いこそ、辛くも勝てただけで……戦いに勝って勝負に負けたという感覚がとても強い。
全てを渇望し、全てに絶望し、その先にただ戦いだけに命の感覚を得ている。
それはどこか、
お前の写し身だと、お前も"そう"なるのだと言われているようで。
……尻尾が総毛立ったことを覚えています。
最近、食事の味があまりわからなくなってきました。
ファルコンネストで薬を盛られたことが未だに尾を引いているのかな、とも思ったのですが、そればかりではないような気がしています。
アイメリクさんと食事をしたときはそうでもなかったと思うのですが。
ああ、モル族でもらった食事は美味しかった気がします。
冷えた風が吹く中、広い草原を見つつ口にした乳酒が甘く温かかったのを覚えています。
ただその後、ギラバニアのメ族のところでもご飯をもらいましたが、あれはいろんな意味で味がしませんでした。
私はムーンキーパー族ですし、経歴が経歴ですから、サンシーカー族の習慣とは違うと頭でわかっているのですが……。
やっぱり一人のヌンがいる集落に、男のミコッテが入り込むのは非常に肩身が狭かったですね。
……話がそれました。
おそらくこれが原因だろう……というものはわかっています。
気づいてしまうとなんとも情けなくて恥ずかしい話ではあるのですが、君ならば笑わないで聞いてくれると思います。
アラミゴ解放直前の事でした。
私は、ラウバーン局長に勝利の象徴、英雄として在れ、と言われたのです。
そう、それはまさしく道化でした。
それで奮う人もいるならと渋々引き受けはしたものの、非常に気乗りはしませんでした。
これまでの勝利の立役者であり、隣にいたアルフィノも一緒に連れて行こうと思った時。
――ああ。
彼は、困ったように、恥ずかしそうに、そう告げたのです。
他ならぬ君が、そんなことを言うのか、と……。
一瞬、目眩のようなものを覚えました。
例えば私がエスティニアンだったらどうだったでしょう。
彼ならおそらく面倒だと言って逃げようとしたでしょうし、アルフィノはその腕をつかんでそんなことはさせないと引きずっていくのではないのでしょうか。
例えば私がイゼルだったらどうでしょう。
彼女はきっと自分がそんな尊敬に値する人間ではないと告げるでしょう。それを励まし、共に進んでいくのではないでしょうか。
例えばここに――オルシュファン、君がいてくれたのなら。
お前はそれだけの事を成したのだ、胸を張って行くとイイ!とか言って、気乗りしなさそうな私に小さく肩をすくめてから、その憂鬱を笑い飛ばして共に歩いてくれたのではないでしょうか。
私が受けるべき敬意……そんなものが本当にあるのか、その有無を問うことはしません。
それ自体はアルフィノの感じたことなのですから、そのことを否定するつもりはありません。
けれど。
君の隣は荷が重すぎる――思わず、変な笑いが出ました。
それを悟られないために、言われるままに陣内をまわり、勝利の英雄として笑顔でありました。
アルフィノが私に憧憬を持っていることは知っています。
まだ若い彼は大きな絶望を宿し、けれど立ち上がり、なんとか皆に追いすがろうと懸命に駆けている姿を、誰よりも近くで見ていたつもりです。
そして同じように年若いアレンヴァルドと親しいことも。
私もおそらく年齢はさほども違わないでしょうし、親しい友人だと思っていたのですが――
【下記部分は殴り書いたような筆跡があるが、瓶を倒してしまったかのように大量のインクがこぼれ落ちている】そんな彼ですら、ぼくを英雄と呼ぶ。
近づきがたい、光なのだと。
守ったのに。
戦ったのに。
英雄などである前に
ぼくはただのヒトであったはずなのに
――――嗚呼
痛い。
何かを守るために、手に入れるために、ひたすらなにかを殺し続けた報いがこれだとでもいうのだろうか。
――こんな痛みを、ずっと彼は抱えてきたのだろうか?【インクの海はここまで広がっていた】オルシュファン。
「英雄」だと、「反逆者」だと。
私が人から何と言われようと、ただ隣に立ち続けてくれた、かけがえのない盟友よ。
君がいないこの世界の寒さが、今強く身にしみています。
叶うならこうして落ち込んでいる私の話を聞いて、珍しく真面目な顔をして二言三言真摯な助言をした後、こういう時こそ身体を動かすべきだ! ……なんて朗らかに笑う君の笑顔を見たいと思います。
それは決して叶わぬ事だと、叶ってはいけないことだと理解しているのですが。
どうしても君に相談したくて、賑わうラールガーズリーチから抜け出してこの雪の家にやってきました。
ここは落ち着きます。君の迎えてくれる暖かさそのままに。
こんなどうしようもないことを考えてしまうのもきっと、このところずっと世界でおこる大きな事件にばかり関わっていたせいでしょう。
そうです、私は冒険者なのですから。心に連れたものとともに、本来はもっと気楽な……心躍るような旅をするべきなのでした。
さすがにすぐにすぐ帝国とどうこうという話にもならないでしょうし、英雄業も少しお休みしても良いはずです。
冒険者らしい旅に出て、少し考えを整理したいと思います。
君に話を聞いてもらえてよかった。
君が遺してくれた優しさは、私にとっては竜の千年にも勝る贈り物です。
今度の手紙では、元気な姿を見せて君を安心させたいと思います。
それでは、またいずれ。
――――君の盟友 ミナト=フィス【炭化した手紙の燃えさしが暖炉の中で崩れ落ちたのと同時に、手紙に残るエーテルは風に乗り静かに消えた】