キャラクター

キャラクター

Master Weaver

Yaduru Shira

Shinryu [Meteor]

このキャラクターとの関係はありません。

フォロー申請

このキャラクターをフォローするには本人の承認が必要です。
フォロー申請をしますか?

  • 0

【ワシのヒカセン冒険記】第2話【FF14二次小説】

公開
■あらすじ
宿無しの爺ちゃん、御同輩と毎晩のようにクイックサンドで語り明かす。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【Lodestone】、【Pixiv】で多重投稿されております。
※画像はBlogから参照されております。

Twitter■https://twitter.com/hisakakousuke
Blog■https://sakatatsunorou.blogspot.com/
Pixiv■https://www.pixiv.net/users/2277819

第1話→https://jp.finalfantasyxiv.com/lodestone/character/34040203/blog/4661663/
第3話→まだ

◇◆◇◆◇>>><<<◇◆◇◆◇




「ヤヅル爺ちゃ~ん。やっほー」

 相変わらず宿無し生活を余儀無くされているワシの元に、明るい声を奏でながらツトミちゃんが駆け寄って来る。
 場所も変わらずクイックサンド。ワシの行動範囲がウルダハから広がっていない事も起因して、合流する場所、そして会合する場所と言えばここ、と言う認知でクイックサンドの一角で待ち合わせをするようになった。
 日銭を稼ぐのも程々に、格闘士ギルドの門扉を叩いた数日前から、冒険者稼業と並列して、木人と呼ばれる訓練用の木製のカカシを相手に格闘術の鍛錬も行うようになったワシは、恐らくは過去、ワシがこの少女の肉体に宿る前の肉体より、遥かに性能が良い事を改めて実感していた。
 思うように動く四肢。奮えば呼応する膂力。鍛えた分だけ湧き上がる筋力。どれもが昔日に置いてきた、今は遠き努力の結晶だ。
「今日も住民のお手伝いしてたのかな?」
「うむ。種々な話を伺いがてら、ワシに出来る事が有ればと」
 ウルダハ――砂の都の住人と話を交わす事で、せめてワシの活動範囲に於ける情報にだけでも精通しようと、貴賤も老若も男女も問わずに声を掛けていった結果、少しずつこの都の情勢、或いは現況、そして治安の悪さなどが明るみになってきた。
 貧富の差が極端な都だとは思っていた。それもその筈、難民の受け入れが盛んで、且つ職にあぶれた者が往々に路頭に迷っていると来た。そこここで起こる暴力沙汰や盗難事件、度が過ぎれば誘拐や殺人であっても、あまりに日常的に生じているのだから、その度合いは最早看過し難い域に達している事が窺い知れる。
 そんな中で冒険者とは何を為しているのかと言えば、普段の営みさえ碌に叶わない困窮者に対し手や知恵を貸し、改善できる点を改善し、是正せねばならない点は是正し、明日の日の目を見るために少しばかり背中を押す事が、主な職責だろう。
 例えば遅延している仕事の手伝い。例えば商隊を困らせるモンスターの討伐。例えば暴漢に襲われている市井の味方。などなど。
 数えれば枚挙に暇が無い程の膨大な依頼が、このウルダハには舞い込んでくる。依頼を熟している最中にすら新たな依頼が飛び込んでくるなど、あまりに茶飯事だ。
 ウルダハの治安維持を担っている銅刃団なる自警団が仲裁に入る事も有れば、逆にその銅刃団が問題を起こす事も有るなど、混沌を極めていると言って相違無い環境にある。
「わたしは普段は森の都にいるんだけどねぇ、あそこは電波が凄くてね~」
「森の中で電波とは妙だな。何かしらの悪巧みでも行われておるのだろうか」
「えぇと、そうじゃなくて~。党首が何かその、アレなんだよ~」
「ふむ」
 己の拳で仕留めたマーモットを、クイックサンドの料理長に調理を依頼し、タマネギとニンニクを添えてステーキにして貰ったものを突きつつ、ツトミちゃんの話に相槌を打つ。
 毎晩、示し合わせたようにクイックサンドを訪れては、その日の報酬を溶かして舌鼓を打ち、朝まで語り明かす。いつの間にかそんな日々を送るようになっていた。
 夜半、凍えて目を覚ます事が無くなった代わりに、昼間は安全を確認した木陰で長時間昼寝を取る事が増えた。ウルダハの近隣であればモンスターも凶暴ではないし、或る程度の人の目が有る場所での昼寝であれば、盗みを働かれる前に気づく事も出来る。
 冒険者としてまだ新兵の部類だろうが、ワシは今、日々が充溢していると自信を持って言える。
「そう言えばヤヅル爺ちゃんの噂、聞いたよ~」
「んぐ?」思わずステーキが喉に詰まりかけた。「ゴホッ、ゴホッ。……どんな噂かの?」
「銅刃団の不正を暴いたとか何とか。あの冒険者は出来る奴だ~って、モモディさんニコニコだったよ~」
「あぁ……その事か」
 キャンプ・ホライズンを訪れた時の事だ。銅刃団の手伝いをすれば更なる報酬が賜れるぞと嗾けられ、どんなものだろうと首を突っ込んだのがそもそもの始まりだ。
 坂上から石が転がるように、勢いのまま止める事も出来ず、銅刃団の不正と真正面から対峙する事になり、結果的に本来であれば闇に葬られるであろう悪事を暴いてしまった、と言う出来事が、今日の昼間に遭ったばかりだった。
 モモディ殿に報告したのもつい数時間前の出来事だと思うのだが……人の口に戸は立てられぬとはまさにこの事で、であればツトミちゃんのようにワシに好感を懐く者もいれど、悪感情を持った賊にも気を付けねばならぬと言う事に他ならない。
 モモディ殿も人が悪い。わざわざ波風を立たせる必要もあるまいに、と思ってしまう。
「これで、宿屋解禁に一歩近づいたんじゃない?」
 人当たりの良い笑みを浮かべてグレープジュースの入ったグラスを傾けるツトミちゃんに、ワシも観念して頬を綻ばせた。
「いつまでも宿無しでいる訳にはな」
「代わりに泊めてあげたくても、入室の許可が下りないんだもんね~」
「そういう決まりなのだろう、仕方あるまい」
 ツトミちゃんの厚意には感謝しつつ、ワシは残りのステーキを平らげると、そう言えば話しそびれていた、と思い出して舌に載せてみる事にした。
「時に、ツトミちゃん。ワシもいよいよ他の都を訪れてみようと思うのだが」
「おっ、いいね~。まずはどこに行くの? 電波の都?」
「ワシの知る範囲に無い都だの……」
「あれだよ、グリダニアってところ。怪電波が流れてる都だよ」
「そこは森の都と言うのではなかったかの……?」
 冗談を交えながら笑い合う、この夜の会合もいよいよ場所を移す時かも知れない。
 話に聞く森の都グリダニア、そして海の都リムサ・ロミンサ。砂の都ウルダハしか未だ知らないワシではあるが、住民の話題に上がる度に関心は懐いていた。
 森の精霊の許しを得て暮らす事を許された、森の都。
 海賊が手を取り合って血の掟を築き上げた、海の都。
 どちらも、砂の都とは打って変わった様相を呈している事だろう。ウルダハも数日滞在して分かったのは、金と陰謀渦巻く都市である事は確かで、銭にがめつい住人が多く、貧富の格差による暴動に関しても一触即発の態を呈しているのは事実だが、その反面、その日を懸命に生き延びようとする逞しい住人が大勢いると言うのも実感として確かに有る。
 一面だけを捉えて判断するのは悪意に染まる可能性を秘めている。己の目で見て、聞いて、感じた側面、事実の客観視と言うのは、予想以上に大事なのだと思い知らされた数日間だった。
 その見識が更に広まる……他の都市から見たウルダハ、と言う新たな客観視を得られると思うと、今まで過ごしてきた数日の感覚すら覆されるかも知れないのだ、好奇心が抑えられる訳が無い。
「ツトミちゃんは、他の都でも活動されておるのだろう? もし良ければ、ワシもお供仕りたいのだが、どうだろうか?」
 己の先を行く冒険者が身近にいるのだ、毎晩のように語り聞かせてくれた話を、改めて己の感覚として落とし込むように、彼女と共に他の都市を渡りたいと、ずっと思っていた。
 何よりツトミちゃんと一緒であれば、どこに赴こうとも共に楽しめると、想像に難くなかった。
 故にこその申し出だったのだが、無論ツトミちゃんの都合も有る。毎晩のように付き合ってくれているとは言え、彼女も一介の冒険者なのだ、無理にとは言うまいと決めていた。
「いいよ~、わたしも爺ちゃんと一緒に冒険したかったんだ~」
 おおらかな微笑を浮かべて優しく首肯を返してくれたツトミちゃんに、ワシは内心安堵の吐息を漏らして、改めて「有り難う、助かる」と感謝の意を口にした。
「そうと決まれば早速準備しなくちゃね!」すっくと立ち上がるツトミちゃん。「ウルダハ・ランディングの場所は分かる? 手続きとか、大丈夫かな? 飛空艇パスはもう貰った?」
「……相済まぬ、聞いた事の無い単語が乱舞して理解が追い付かぬゆえ、初めから説明を願えぬか……?」
 聞いた事が無いと言う事は、また新たな世界に触れられると言う反証だ。
 大きな事が動き出す気配を全身に感じながら、ワシはツトミちゃんが訳した説明を一から聞いていく事になる。
 今夜の会合も、夜明けまで終わりそうに無い。
 そして夜明けにはきっと、ワシの前には新たな世界が広がっている事だろう。
コメント(0)
コメント投稿

コミュニティウォール

最新アクティビティ

表示する内容を絞り込むことができます。
※ランキング更新通知は全ワールド共通です。
※PvPチーム結成通知は全言語共通です。
※フリーカンパニー結成通知は全言語共通です。

表示種別
データセンター / ホームワールド
使用言語
表示件数