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White Knight

Juliette Blancheneige

Alexander (Gaia)

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『Mon étoile』(0)

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 その花は、淡い光を発していた。
 すらりとした茎をもつ花だ。茎の先では水鳥の羽のような白い総苞が広がり、中央に赤い花が咲いている。
「1.38……やっぱり、エーテルを放出している……」
 目の部分が張り出している奇妙なゴーグルを外すと、ヤヤカ・ヤカは手元の紙に数値を書き込んだ。室内は薄暗かったが、花の発する淡い光のおかげで記入に支障はなかった。
「これで光が可視性エーテルであるとわかった。だとすると、おとといまでの周辺植物の衰弱は……エーテルが吸われていた……? 飛躍しすぎかしら。興味深い……興味深いわ……」
 物思うときの癖で顔を上げると、天窓の隙間から光が漏れていた。ザナラーンは夏に入ろうとしている。外は光に溢れ、今日も暑いのだろう。採取してきた植物の保護のために、この室内庭園では日光を遮断する時間を設けてある。今はちょうどその時間で、氷属性のクリスタルを利用した冷却器によって室温も抑えられていた。
 首に掛けたゴーグルを外し、足元の鞄にしまう。細いつてを辿ってやっと手に入れた、シャーレアン製のエーテル計測器。もはや旧型もいいところらしいが、ヤヤカにとっては貴重な道具だ。
 貴重といえば、目の前の花もそうだ。ヤフェーム湿地で採取した『光る花』。10株ほどを土ごと移送したが、枯れずに残ったのはこの一株だけだった。
 ヤヤカの調査と考察では、この花は周囲のエーテルを吸収し、放出している。さながら呪術士が、霊極性と星極性を切り替えるかのように。
 そこに、魔法王国マハと何らかの繋がりを見出すのは夢想が過ぎるだろうか。――いや、そうであると信じたい。
 観察を続けようとした時、庭園の扉が開いた。

「……こちらでしたか。ヤヤカ様」
 聴き慣れた声。ヤヤカの好きな優しい声。その声が含んでいる強張りに、ヤヤカは庭園に入ってきたのが彼だけではないことを悟った。
 ゆっくりと首をめぐらせ、視線だけを送る。――本当はすぐに振り向きたかった。
 視線の先に、エレゼンの青年がいた。穏やかで人のよさそうな雰囲気。だが、立ち居振る舞いの凛々しさが、彼がただ優しいだけの青年ではないと物語っていた。焦げ茶の髪、白い肌。エレゼン特有の堀の深い顔立ちだが、厳めしさは感じない。
 テオドール・ダルシアク。遠いイシュガルドに故郷を持つ冒険者。
 この顔が温かな微笑みを浮かべることをヤヤカは知っている。意外と砕けた笑い方をすることだって知っている。なのに。
 今の彼は、“身辺警護に雇われた冒険者”としての表情――淡々とした、実務的な無表情さを浮かべてヤヤカを見ている。
 その原因の半分は、テオドールの後ろにいるヒューラン女性にある。クラリッサ・リーガンというこのミッドランダーは、ヤヤカの夫であるゴールデン・ビアストに雇われた、『側仕え』という名目の“監視役”だ。彼女からビアストに対し、どんな形で報告があがっているか、ヤヤカは知らない。ただ、監視されているという事実そのものがヤヤカには堪らなく不愉快だった。
 テオドールのそれよりもはるかに冷たく無機質な無表情さで、クラリッサはテオドールの斜め後方からこちらを――ヤヤカと、テオドールを見ている。
「何かしら」
 クラリッサを見ていたせいで、冷たく突き放す声が出た。本当は、こんな声で彼に話しかけたくなんかないのに。
「……レース・アルカーナの件、移送を担当する冒険者が到着しました。彼らを交え移送プランについて再確認しますので、おいで下さい」
 変わらぬ穏やかな声で、テオドールが告げる。冷たい声を出したことを、彼は気にしているだろうか。それとも。
「そう。わかりました」
 鞄を手にして扉へと向かう。扉の近くに立つテオドールに焦点を合わせないようにする。――ちゃんと見たら、見つめ続けてしまいそうだから。
 けれど。
 ふと見上げてしまった。彼の顔を見たいという欲に負けて、その顔を見てしまった。――苦悩を押し隠そうとしている、努めて平静を装おうとしている顔を。
「――っ」
 心が。砕けるかと思った。
 テオドールが苦しい顔をしている。それは嫌だ。自分が辛いより嫌だ。でも嬉しい。同じように、今を苦痛だと思ってくれている。だけど。だけど。
 この状況を作ってしまったのは自分だ。
 どんなに強要されていたとしても。親への情でがんじがらめにされたとしても。
 ビアストと結婚したのは自分だ。
 テオドールを苦しめているのは他ならない。ヤヤカ・ヤカ自身なのだ。
 なのに。
 テオドールと心が通じていることを望むなんて。
 なんて――なんて、浅ましい。
 泣きそうになるのを、歯を強く食いしばって耐える。
 テオドールの横を抜け、クラリッサには目もくれず、ヤヤカはただ廊下を歩いた。
 暗室だった庭園と違い、廊下にはいくつもの窓がある。強い日差しが照りつける廊下をヤヤカは行く。短い影が足元にできた。
 その後ろをテオドールが続く。彼の足元にも短い影。
 かつてはこの日差しでも重なった二つの影は――今は、決して、重ならない。

(1章へ続く)
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