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White Knight

Juliette Blancheneige

Alexander (Gaia)

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改訂版【魂を紡ぐもの セイン】第一話『思慕のマテリア』2

公開
1-4

「一週間前のことだ。パールレーンの銅刃団詰所の前に、惨殺死体が放置されていた」

 無造作に散らばったバラバラ死体は、すぐには身元が判明しなかった。
 首から上が無かったからだ。
 残った首に絡まっていた部隊の認識票から、銅刃団の一員と判明した。
 ただちに捜査網が敷かれた。被害者は前日の勤務が終わり、酒場で飲食をして自宅に帰るまでは足取りを辿れたが、そこからの目撃者が皆無だった。
 その一日後。
 ルビーロード国際市場の警備に当たっていた銅刃団の一人が勤務中に行方不明となり、翌朝、路地に遺体となって転がっているのを発見された。
 またしても、遺体には頭が無かった。
 銅刃団を標的とした連続殺人に、ウルダハ市民は色めきたった。しかしそれは恐怖や不安よりも、ゴシップ的な興味本位の要素が強かっただろう。
 犯人についての憶測が乱れ飛び、首の行方についても、
「怪しい呪術士の儀式に使われる」「腕試しの豪傑が勝利の証に切り取った」「愛した者の首を斬らないと快感が得られない変態の仕業」
 等々、好き勝手な自説を披露する者たちで市井は溢れた。
 そして。
 翌日、ナル大門からさほど離れていないアラグ星道の街燈に、腹部を突き刺されて死んでいる銅刃団兵士の首なし死体が発見された。
 すぐに箝口令が敷かれたが、噂はすぐに広まった。今やウルダハ市民で三人目の犠牲者のことを知らぬものはいないだろう。

「ことここに至って、銅刃団上層部は事態を早期に解決するため、我々ライラック連隊に捜査権を与えたのだ。
 連続殺人や薬物犯罪、組織的誘拐などといった凶悪犯罪に立ち向かう専任捜査官集団の我々にな」

 ポポヤンによれば、今回の処置には昨今の治安状態が強く影響しているという。
 当初、被害者の所属していたアイリス連隊――ウルダハ都市内及び、スートクリーク以南の中央ザナラーン、サゴリー関所を担当する部隊――が捜査を担当した。
 所轄内の事件ゆえにそれは当然のことであったのだが、部隊内での、犯人への報復の空気が強いことが問題視されたのだ。

「銅刃団に恨みを持つものの犯行、という予想は誰でもできる。――そして、今ウルダハで最も『そうであろう人々』は誰か。これも、誰でも思いつく。霊災難民だ」

 先の暴動の先触れは、難民と銅刃団のトラブルであったともいわれる。
 暴動では双方に死傷者が出ており、この事件をきっかけにして再び暴動へ向かうのは避けたいと、銅刃団上層部――つまりは砂蠍衆が判断したということだろう。

「まあ、捜査はスムーズに進まなかったがな。被害者たちが親しい友人であったということさえ、周辺の聞き込みの後、彼らの上司に捜査権を盾にねじ込まなければ認めなかったのだ」

 ここで、ポポヤンはアステルをちらりと見た。
 が、すぐに顔をそらすと、セインとルーシーへ向けて話を再開した。

「『親しい友人』たちは、被害者を含めて五人。そして、聞き込みから、彼ら五人が最近パールレーンで起こした悶着も知れた」
 小さくため息をつき、ポポヤンは続けた。
「……難民の少女に絡み、その後で現れた同じく難民らしい青年に路地で暴行をくわえたらしい」
「――っ!」
 思わず立ち上がろうとしたアステルは、セインに肩を掴んで止められた。というより、いつの間にか肩に手が回されていたのだ。まるで自分が立ち上がることを見越されていたかのように。
「まだだ」
 小さいが鋭い囁きが、アステルを縫いとめる。
 まだ、聞かなければならないことがあるのだと、この冒険者は告げている。アステルが聞くべきことが、まだあるのだと。
「『暴行を加え』て――それから?」
「む? うむ……聞き込みでは、そこまでしかわかっておらん」
 アステルに食って掛かられることを覚悟していたのだろうポポヤンが、セインからの質問に意外そうな顔をして答える。
「残り二人に確認をとることは」
「できん」
「何故だ」
「一人は今朝、ササガン大王樹の枝に『左右二つになって』ひっかけられているのが発見された。首は無い」
「もう一人は?」
「こちらで保護している。まともに話ができる状態ではなくなっている」
「――見たのか」
「何だと?」
 セインの指摘に、ポポヤンの顔が訝しげにひそめられる。
「四人目が連れ去られるのを目前で見て、恐怖でおかしくなってる。違うか?」
「…………どうしてわかる」
 よもや関係者なのではあるまいな、という疑いすら持った顔で、ポポヤンが問う。
 残る二人は、自分たちへの報復だとさすがに気付いていたようだ。
 仕事を休み、知人宅の地下室で戦々恐々と過ごしていたらしい。
 さらに、身内びいきの非番の同僚たちが何人も警備し、あるいは『任務中たまたま通りかかった』同僚らが周囲を警戒して回るなど、後で聞く限りでは居場所を教えているに等しい状態だったという。
 ただしその分警備は厚く、監視の目は多数あった。
 にも、関わらず。
 四人目は連れ去られた。
 鍵のかかった部屋の中で。誰にも見とがめられず。
 そして、残った男は正気を失った。
「経験則だ。割とこういう事件には縁があってな。おそらく“犯人”はわざと姿を現したんだ。恐怖を与え、エーテルに感情のスパイスを加えて、最後の瞬間を味わうつもりだ」
「エーテル……に、スパイス? つまり呪術士が犯人と言いたいのか? ミリアムが実は呪術士だったとでも?」
「だからなんで! そこで姉ちゃんが出てくるんだよ?! その残った奴ってのが、姉ちゃんを見たとでも言ってんのか?!」
 思わず口をはさんだアステルに、セインは淀みなく答えた。
「その生き残りが喋ったんだろう。“犯人はあの女だ。あの女がアイツを、闇に引きずり込んで消えた”とでも。だからあんたたちは、ミリアムを追いはじめた」
「そ……その通りだ。お前は本当に関係者じゃないのか?! 一言一句そのままだったぞ?!」
「ただの経験と推理だ。だが断言しよう。
 この事件は人間の仕業じゃない。――ヴォイドの妖異の仕業だ。少なくとも、実行犯は」

1-5

「妖異……妖異なのか」
 唸るポポヤンの後ろで、トゥイグが腕組みをしながら思い出すように言った。
「妖異って言うと……あれか。〈見えざる都〉のインプどもみたいなヤツか」
「その程度で済めばいいが、おそらく比較にならないくらい強力だ」
「うげ」
「……妖異、ってなんだ?」
 アステルのもっともな問いに、ルーシーが答える。
「異界、つまりはこの世界じゃないところからやってくる魔物だな。
 低位のモノは自然にできる世界の裂け目、『ヴォイドクラック』てのから、こっちの世界にやってくる。今ハナシに出たインプとかはコレな。
 けど、高位の――強力な妖異は、『ヴォイドゲート』っていうでっかい裂け目をわざと作らないと、こっちにゃ出てこれない。
 しかも、こっちに来れるのは魂だけ。
 マテリアライズ、つまり実体化するには、何がしかの“依代(よりしろ)”に憑依する必要がある。乗り移って、支配して、作り替える。
 儀式のイケニエ、儀式の陣による効果、それから依代のエーテルを糧に、本来の自分の姿に似た姿を作り出すのさ。
 だいたい人間が選ばれるな。なんでかっていうと、人間がこの世界じゃ一番感情が豊かだからさ。ヤツらは、エーテルと一緒に感情を喰う。
 さっきセインが言ったように、ヤツらにとっちゃヒトの感情は極上の調味料だからだ。
 ま、単純に、人間は憑依がしやすい割に能力値がそこそこ高くて便利、ってのもあるけど。
 ――で。“実行犯”てのは、その行動から高位のやつなんじゃないか、ってセインは言ったのさ」
「……姉ちゃんは、どうなっちゃったんだ?」
 アステルは意味を完全に理解したわけではなかった。しかし、姉の顔をした魔物が現れた、つまりは姉が依代とやらにされたのではないか、ということは理解できた。
「そんなの……もとに戻せるのか……?」
 手足の先が冷たくなる。絶望が、足元で口を開けてこちらを見ている。そんな気がした。
「今の時点では、分からない。ミリアムさんが依代にされたのかどうかもな」
 淡々と告げるセインの声が、その想像を打ち切る。
 励ますわけでも、ことさらに明るく振る舞うわけでもない。なのに、このひとの声は、どうしてこんなに落ち着くんだろう。
 見返したアステルに、笑うでもなく、ただ一回だけ小さく頷いて、セインは言葉を続ける。
「状況をミスリードさせるために、わざと“ミリアムの顔をして”最後の男の前に現れた可能性もある。
 妖異の依代になったのか、術者に依頼して妖異を使った復讐をしているのか、それとも『妖異が封じられた本』を拾ってしまったか。
 他にも可能性はいくつかあるんだ」
「妖異が封じられた本、というと『妖異全集』か。まれに犯罪組織の取引品目にあるな」
「そう。そういうヤツだ」
 ああ、とダックが手を打った。
「確か先日もありましたね。バート商会が手に入れたとか……」
「――だから、今の時点では、君のお姉さんは何らかの形で事件に関わっている、としか言えない。最悪からちょっと巻き込まれただけ、まで、無数の可能性がある」
「無数の……」
 セインは、「心配するな」とも「大丈夫だ」とも言わない。
 この青年がそう言うのだから、それは本当にそうなのだろう。それはアステルの確信だ。不安が消えたわけではない。けれど、不安しかなかったさっきまでよりは、よっぽどましだ。
「でも……」
 状況は分かった。でも。
 自分はどうすればいいのだろう。金はもちろん、強さも、知恵も無い自分に、何ができる……?
「アステル」
 ルーシーの声に、いつの間にか俯いていた顔を上げる。最初に会ったときから変わらぬ悪戯っぽい笑みのルーシーが思ったよりも間近にいて、アステルはうろたえた。
「あたしらに依頼しな。お前の望みを」
 気恥ずかしさから離れようとしたアステルは、その言葉に虚を突かれ、動きを止めた。
「俺の、望み」
「そ。あたしらは冒険者だから、依頼されなきゃ動かない。たぶんこのままでいくと、ポポヤンに事件解決を依頼される。そうしたら、事件の解決だけを最優先にして、お前の姉のことは二の次になる」
 ポポヤンが複雑な表情でこちらを見ている。
「だから、お前が先に依頼しな?」
「でも……俺、難民で……っ」
「? だから?」
 きょとんとしているルーシーにそれを告げるのが恥ずかしくて、アステルは言葉に詰まる。
 エーリヒを殺した犯人捜しを、フェスカ冒険者キャンプの冒険者たちに持ちかけたときのことを思い出したからだ。

『――で、幾ら出せるんだよ』
『……百、二十』
『はあ?! 百二十? 全部でかよ!』
『……だって、これしか持ってないんだ……』
『話になんねえ。場合によっちゃ銅刃団ともめるんだろ? そんなハシタ金でウルダハ追放とか冗談じゃねえよ!』

「……あんたたちを雇える金なんか無い……」
「あー報酬かあ」
 全く想定していなかった、と言った感じの声にアステルは驚く。
「どうしよっか。考えてなかった。――セイン?」
 顔だけ振り向いたルーシーに、セインは答えた。ほぼ即答だった。
「アステル、ミリアムさんの大事にしていた物は何かあるか」
「え……」
 大事な物。貴重な物という意味だろうか? そんなことを言われても、霊災難民の自分たちにそんなモノはない。
「もしくは、君とミリアムさんの思い入れのある道具とかだ」
「それなら、あるけど……」
 霊災の時に持ち出せた数少ない道具。その中で、最後に残った物。
 アステルが取り出したのは、一本のナイフだった。
 随分と使い込まれた、年代物だ。しかし手入れは可能な限り行われているようで、実用品として十分に使用に足るようだ。
「元は父さんので、十歳の誕生日に姉ちゃんが譲ってもらって、それを、俺が十歳になったときに姉ちゃんがくれたんだ」
「見せてもらってもいいか?」
「うん」
 セインはナイフを受け取ると、それを持ったまま、目を閉じた。
 品定めするわけでも無く、片手で柄を握り、もう片手で軽く刃に触れている。
 一分ほどだったろうか。その間、誰もが口を噤んだ。そうしなければいけないような、予感めいたものを感じたからだった。
 ルーシーだけは、にやにやと皆を見つめていた。
「――これだ」
 唐突にセインが呟き、目を開けた。
「……え?」
 鞘に納め、ナイフをアステルへと手渡す。
「これを、報酬として貰おう。いいか?」
 アステルはナイフを見つめた。二年以上、自分の道具として使ってきたナイフだった。その前から姉が、父が使うところを見てきた。アステルが生まれた時から、近くにあったナイフだった。
 そう考えると、名残惜しく感じた。思い出を売り渡すような気がしたからだ。
 けれど。
 姉と引き換えだと言われたら、ためらう必要は無い。
「――わかった。これでいいなら、頼むよ。……姉ちゃんを、探して、助けてくれ……!」
 自分でも驚くほど、きっぱりとした声が出た。
「引き受けた」
「お任せあれ」
 二人の冒険者が応じる。男は穏やかだが決然と、女は余裕と自信を見せて。
 
「……まあ、やむを得ぬか。依頼は二重には受けんのだろう? 冒険者」
 やれやれと言った体で、ポポヤンが肩をすくめる。
「ああ。最後の一線で矛盾をはらむようなことはしたくない。だが、捜査の協力はさせてくれ」
 包み隠さぬセインの言葉に、ポポヤンはむしろ好感を持った。
「正直言って助かるが……我々の任務は事態の早期解決だ。それと相反するなら、協力はできんぞ」
「分かっている。――ミリアムさんを助けることが、犠牲者をこれ以上出さないことにつながるはず、だ」
「そう願うよ」
 二人はどちらともなく握手を交わした。
「さて。ルーシー」
「生き残りの検分に行く」
「分かった。聞き込みは引き受けよう」
 一切の打ち合わせ無しになされた役割分担に、ポポヤンが目を丸くした。
 そのことを問う暇も無く、ルーシーはさっさとザル大門のほうへ歩きだしている。
「銅刃団諸君、案内したまえよ!」
 足元で青いカーバンクルが偉そうに尻尾を立ててこちらを睨んでいる。
 慌てて走り出したポポヤンに、
「ミリアムさん失踪当時の状況を確認する。報告は後程」
 セインの声がかかった。わかった、と応え、ポポヤンと二人の部下は黒いコートの女冒険者を追った。

「さて。俺たちも行こう」
 残ったアステルの肩を叩いて、セインが同行を促した。
「どこいくんだ?」
「ストーンズスローで皆に失踪当時の状況を訊く。アステル、君もだ。ミリアムさんがいなくなった当時のことを、もう一度話してくれ。――できるだけ、詳しく」

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