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White Knight

Juliette Blancheneige

Alexander (Gaia)

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改訂版【魂を紡ぐもの セイン】第一話『思慕のマテリア』7

公開
1-10

 満天の星が、空を埋め尽くしていた。
 時刻は深夜。ザナラーンの夜は冷えるが、今夜は特に冷えた。雲一つない空へ昼の熱気がすべて旅立ってしまったかのようだ。
 前日と同じ丘に、セインたちはいた。前日と異なるのは、アステルがいること、“生き残り”リアイラブル・クラブがいないことだろう。
 クラブに関しては、前回の状況から、積極的に妖異に狙われる可能性は少ないだろうという判断がなされた。
 ただし念のため、呪術士ギルドの協力の元、アルダネス聖櫃堂の魔術結界の中にて監視されてはいる。
 前日と同じ様に、丘には動きを止めるトラップの魔術刻印が描かれている他、いくつかの魔法陣が同心円状に刻まれていた。
「むざむざ罠とわかっていて、来るかね?」
 ポポヤンがセインへ尋ねる。前夜とは違い、ポポヤン自身が隠れそうなほどの大きさのタワー・シールドを背負っている。
「来ざるを得ないはずだ」
 前夜と同じ装備のセインが応じる。
「俺たちは勘違いをしていた。妖異はミリアムさんをただ弄んだ末に融合しようとしていたのではない。きちんと過程を踏んで彼女の魂を闇に堕さねばならなかったんだ。
 ――彼女の魂の強さ故に、力ずくで侵略することができなかったのだろう」
 ポポヤンが目線で続きを促す。それに頷いて、セインは語り始めた。
「昼の内に、ルーシーに召喚された現場を再検証してもらった。結果、分かったことがある。
 〈最後の群民〉の男の持ち物から、召喚に使用された祈願文が発見された。
 それと、ルーシーがアビサル・アイから聞き出した情報(ここでポポヤンたちは一斉に身震いをした)を合わせると、〈最後の群民〉の男が召喚したのは、“アストー・ウィザートゥ”のようだ」
「妖異の中でもかーなーり、上位のヤツだね」
「本来なら、僅かな時間でも俺が一人で戦える相手ではない。ならばなぜ、彼女は依代の少女一人侵略しきれず、ナイト一人を殺しきれなかったのか。
 ――生贄の数が、足りなかった。
 ゲートを維持し、巨大な存在を完全に召喚するだけの血を、魔力を、魂を、男は用意できなかったんだ」
「十人以上の人間が生贄にされていたではないか……」
 ポポヤンはセインから、〈最後の群民〉の男の隠れ家を報告され、現場を確認しに赴いている。
「全く足りない。アストー・ウィザートゥを完全に召喚するならば、それこそ先の暴動の犠牲者すべてを生贄にするくらい、つまりは何百人単位の生贄が必要だ」
「結局『群民くん』がちゃんとできたのはヴォイドゲートを開く魔法陣をちゃんと書けたことだけだったてコトだぁね。呼び出すモノは分不相応の上位存在、しかも制御が全くできないときた。よく来たよなアストー」
 ルーシーが肩をすくめる。前日とは違い、頭まですっぽりと覆う濃紺のカウル姿だ。
「アストー・ウィザートゥにとっても予想外だったろう。――そのうえで、さらなる予想外もあった。ミリアムさんの魂が、とても強いものだったことだ。
 それは、不完全な召喚によって大きく力を減じられたアストー・ウィザートゥでは、強引な侵略ができないほどの強さだ」
「だから、アスの奴は“きちんとした魔族のお作法”に則って、ミリアムの魂を堕とそうとしたワケ」
 ルーシーの“アストー・ウィザートゥ”の呼び方がどんどん雑になる。が、構わずセインは先を続けた。
「だが、それも覆った。昨夜のアステルの呼びかけに、ミリアムさんの魂は『我に返った』。正確には、返りかけた、と言ったところか。これは妖異にも計算外のことだったろう。ここまで強いものだとは思っていなかったと思う。――だからこそ、妖異はここに来ざるを得ないんだ」
「今日を避けて、虎視眈々とアステルを狙うという選択肢は……」
「無いね。ぐずぐずしてたらミリアムが完全に自我を取り戻すかもしんないだろ? そうなったら、やることなすことすべての局面で主導権争いに勝たないと一歩だって進めやしない。
 アっちゃんからすればそれは許容できないトコだろさ。たぶん、かなり強引にミリアムを一時封じて攻めに来るんじゃないかな?」
「妖異は不利を承知でアステルを殺そうとする。一方俺たちも、単純に妖異を討滅すればいい、という話じゃない。ミリアムさんを助け出す。
 そのためには、アステルにここにいてもらわないといけない。どんなに怖くても、この戦いからは――」
 皆がアステルを見る。
「逃げない」
 決然と、アステルは言った。緊張でやや青ざめているし、その声は震えているけれど。それでも彼はここにいた。
「まあ、深刻に考えんなよ。オマエのことは、俺が守ってやるぜ」
 どん、と胸を叩いて、ラージ・トゥイグが笑う。ポポヤン以下のライラック連隊の面々の仕事は、トゥイグの言うとおり『アステルのガード』である。
「……ぷっ」
 そのトゥイグを見上げて、アステルはちょっと吹き出した。
「んだぁその笑いは!」
「トゥイグが守るとか、微妙」
「なーんーだーとー!」
 大仰に言って、トゥイグがアステルを捕まえにかかる。笑いながら逃げるアステル。しかしすぐに捕まり、こめかみをトゥイグの太い指でぐりぐりと抉られる。
「あははは痛い痛い! ――いやホント痛いから!」
「二人とも、その辺にしておけ」
 苦笑しながら、ポポヤンが二人を制する。
「……いい緊張のほぐしかただ」
 セインがルーシーに囁いた。ルーシーも囁き声で返す。
「気が合うんだろね。――なあ」
「ん?」
「『兄弟』って、あんな感じ?」
「――そういう感じの兄弟もいれば、そうじゃない関係の兄弟もいる。一概に、その関係性を規定できないが……あれは“仲の良い兄弟”の例として見られると思う」
「ふぅん」
 一瞬だけ眩しそうに眼を細めて、ルーシーはアステルとトゥイグを見た。が、すぐにそれを引っ込めると、正面――魔法陣の中心を見る。
「来る」
 ルーシーは警告を発した。その声に、アステルやライラック連隊の面々に緊張が走る。
 丘に刻まれた魔法陣の一つは、一定の範囲内の瞬間移動・転移系の魔法の出現点を魔法陣の中心に誘導する、という効果があった。これも作成に時間がかかるため、普段から簡単に使えるものではない。が、その効果は上々のようだ。
 魔法陣の中心に、闇がわだかまり始めていた。夜の闇よりもなお黒い球状の霧が生まれ、そして弾けた。
 闇の気配が横溢する中、妖異――アストー・ウィザートゥが現出した。
「贄を差し出すとは殊勝な心がけよな、塵芥ども……!」
 毛ほどもそう思ってはいない口調で、憎悪の毒を撒き散らし妖異が嘲る。その目は殺戮の情欲と報復の瞋恚を宿し、炯々と燃え盛っていた。
 そして妖異の右半面、ミリアムの側。目が、耳が、口が、かなり乱雑に縫い付けられていた。むろん物理的にただ縫い付けたのではない。呪力を込めた封印が視覚化されているのであるが、あまりの暴虐にアステルも、ライラック連隊の面々も言葉を失った。
 冷静にトラップを発動させたのはルーシーだった。
 魔法陣が起動し、地面に濃紫の光が宿る。魔法陣の効果により、妖異は妖異は身動きを封じられた――が。
「鬱陶しい……ッ!」
 侮蔑の叫びと共に、アストー・ウィザートゥは魔力をその身に纏わせる。己の魔力の高さそのもので、強引に魔法陣の効果を破棄しにかかり――
「ウザさ倍♪ さらにどーん☆」
 底意地の悪い笑みを浮かべて、ルーシーが魔道書の魔術刻印を起動させる。たちまち、残りの魔法陣が起動し、更なる拘束を妖異へと仕掛けた。最後に魔法陣から飛び出た幾本もの魔力の鎖が、妖異を縛る。
「――ッ!」
 侮った相手に足を掬われる様な陥穽に、妖異はもはや言葉も無いほどに怒った。先ほどよりも強引に、呪縛を解除しにかかる。
 だが。
 それこそが、妖異がこちらへの攻撃よりも、束縛の解除を優先にする十数秒の確保こそがこの罠の最大の目的であった。
「――ルーシー」
「んー」
 ルーシーの瞳が、ライムグリーンの光を発していた。目を少し細めた彼女は、“観察”の結果を告げる。
「『ミリアム自身の身体』と『エーテルを物質変換して作った妖異の身体』が複雑に絡まってる。表面上半分こだけど。中身はもっとフクザツ系。エーテル視力の精度が無いとキツいね。予測は合ってたけど、ここまで内部が混濁してるとは思わなかった」
「……できるか?」
「召喚獣じゃ無理だな。あたしが行かんとダメだろ」
「行ってくれるか」
「ご褒美欲しいぞ。あとで。たっぷり。一晩中」
「わかった」
 即答するセインを見て、にひひ、とルーシーは笑う。それから、淡く光っていた瞳を瞼で閉ざす。目を瞑ったその様子はカウルのフードの下で、アステルたちには分からない。だが、もしも彼らがそれを見たなら、十中八九こう思うだろう。人形のようだ、と。
 それまでのルーシーとは全く違った冷たい声色で、ルーシーはセインへと問う。
「命令を。我が主君」
「――“切り札”完成まで、奴を足止めしろ。攻撃許可は、妖異の部分のみ。分離完了後、妖異を全力攻撃。討滅だ」
「拝命した」
「行け――“ルクレツィア”!」
 セインの声と同時にカウルを脱ぎ捨て軽装になったルーシー――セインに“ルクレツィア”と呼ばれたその姿が、変貌を遂げた。
 全身に幾本もの直線状の紋様が現れ、その中央をシアンの光が貫いていく。アラグの魔科学によって作られたモノに共通する特徴を、何故かルクレツィアは備えていた。
 瞳が真紅に光る。両腕は肘から先、両足は膝から下に、ヴァイオレットの光の渦が現出した。それは流動し、激しい明滅を繰り返していた。
 変化は一瞬のことだった。
「あっははははぁー!」
 高らかに、楽しげに、獰猛にルクレツィアが笑う。一瞬前の無機質なそれの反動どころか、突き抜けてしまった哄笑とともに、ルクレツィアが妖異へと踏み込んだ。モンクの羅刹衝に勝るとも劣らぬ速度でなされた踏込に妖異は虚を突かれ、その間隙にルクレツィアの手から伸びたヴァイオレット光の爪が、アストー・ウィザートゥの肩を切り裂いた。
「ようミリアム。初めまして。あたしはルクレツィア・エゼキエーレ。ルーシーでいいよ。アステルに頼まれた冒険者さ」
 妖異の触手が猛攻撃を仕掛ける。それ紙一重で躱しながら、ルーシー――ルクレツィアは語りかける。
 アストー・ウィザートゥではなく、ミリアムに。
「今からアンタを救い出すよ。ていうか、アンタが自分の中からコイツを追い出す手伝いをしてやる」
「救い出す? 一度(ひとたび)なされた召喚の依憑(よりわら)を取り戻せると? ははは! 無知にもほどが――あるッ! ヴォイド・サンダガァッ!」
 妖異の魔法詠唱。自身を中心とした範囲に巻き起こった紫電の嵐を、ルクレツィアは妖異よりも高く跳躍して避ける。
「そう、手伝いだ」
 触手が空中のルクレツィアへ殺到する。それを、あろうことか空気を蹴って、彼女は躱して見せた。子細に見れば、彼女が蹴りつけた場所には黒い靄のような魔力の力場が発生していた。手のひら大のそれは、彼女に蹴りつけられた後、霧消していった。
 蹴りつけた勢いのまま、下へ。アストー・ウィザートゥの真後ろへ。妖異が気付いて対応するよりも早く、ルクレツィアは妖異の左足を斬りつけた。
「ぐっ……!」
 痛みと怒りに声を詰まらせながら、妖異は振り向きざまに爪でルクレツィアを攻撃する。――が、既にその時には彼女の姿はそこにはない。もう一度跳躍したルクレツィアは、飛び越えざまに妖異の左側頭部を蹴りつけてから着地した。
「アンタ自身が戦わないなら、何も変わらない。――けど」
 着地の寸前に一本の触手が地を這い跳ね上がってルクレツィアの眉間を狙う。それを跳ね上がった直後に踏みつける。足を覆う光の渦がさらに輝いて、触手を破壊した。
「戦うなら、変われる。そのときは、戦うときは、もうすぐ来る。だからカクゴを決めときな!」
「戯言をッ! ありもせぬことを――」
「さっきから五月蝿(うるさ)いな。アタシはミリアムと話してんだよ。ひっこんどけババア!」
 言いざま駆け抜けた小柄な体躯が、地上すれすれまで落ちていた妖異の鳩尾へと肘を撃ち込んだ。セインの突きさえ阻んだアストー・ウィザートゥの羽根が間に合わず、ルクレツィアの身体が通り抜けた後に重ねあわされた。
 しかし、羽根はそのままルクレツィアへと押し付けられた。
「塵灰となれッ!!」
 妖異自身と羽根の間に、夥しい紫電が発生した。直撃を受けたルクレツィアの身体が硬直し、その肌を容赦なく電撃が灼く。
「うるぁあああっ!」
 両手を合わせ、開く。妖異と羽根へと魔力を纏った掌を叩きつける。纏った光が爆発して、妖異と羽根、双方を弾き飛ばした。
 妖異の羽根が片方千切れる。しかし、ルクレツィアの負ったダメージも決して軽くは無かった。
 それでも。
 ルクレツィアは歯を剥きだして笑った。真紅の瞳が、燃えるように光る。
 妖異に対し、掌を上にして人差し指を幾度か曲げ、差し招くジェスチャーをした。
「さあ――どんどんイこうか?」

改訂版【魂を紡ぐもの セイン】第一話『思慕のマテリア』8へ続く
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