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Bulwark Between Worlds

Juliette Blancheneige

Alexander (Gaia)

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『Mon étoile』転章1

公開
注意

本章は、『Mon étoile』(5)その五の重大なネタバレとなります。
必ず、『Mon étoile』(5)その五を読了してからお読みください。




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転章1

 暗い迷宮の中で、イーヴ・アシャールは息を潜めていた。
 手練れの暗殺者である彼は、気配を消す術に長けている。攻撃を躱しながら駆け抜けた後であったが、呼吸の乱れを一瞬で調息し、物陰に潜んだ。
 通路をうろつくデーモンたちは、完全にイーヴを見失ったようだ。
 その成果には満足するが、現在の状況に対しては不満しかなかった。
 ――冗談じゃないヨ……
 内心で愚痴を吐く。結局殺せているのは妖異ばかり。隙あらばあのムーンキーパーを攫い、思うがままに愉しもうと思っていたのに。
 まあいい。
 こうやって分断されたということは、あの連中も同じように分断された可能性は大いにある。だとすれば、気配を遮断して移動し、妖異をやり過ごせる自分は絶対的に有利だ。
 誰よりも早く彼女を見つけよう。
 攫って、そのあとは。
 ああ。考えただけで興奮する。早く、早くここをやり過ごさねば。
 そのイーヴの思考は、激痛で遮られた。背中を刺されている……!
「!?」
 痛みで気配遮断が切れる。姿を現したイーヴの前で、猿のような体躯の妖異が嗤っていた。
「ククク……オマエ、それで隠れたつもりか?」
 三つ目の猿妖異が、消えた。物理的に消えただけではない。気配そのものが希薄になっている。
「チッ……!」
 だが――追えない迅さではない。
 双剣を抜き、妖異へと切りかかる――が、その攻撃は空を切った。物理的に透過されている……!
 驚愕したイーヴの背を、何者かが刺した。二度目の不意打ちに、暗殺者は態勢を大きく崩す。
「ククク……コッチだよ?」
 ぬかった。二体だ。敵は二体いたのだ。二体の妖異が、こちらを嘲る様に姿を現したり消えたりしている。
 焦りと怒りを感じながらも、イーヴは逃げる手段を求めて周囲を見渡し――
 絶望した。
「ククク」
「キヒヒ」
「どうした」
「どうした――人間」
 二体ではなかった。十体以上の三つ目の妖異が、現れては消えを繰り返していた。
「――冗談じゃ……ないヨ……」
 震えた声は、嘆きか、怒りか。
 イーヴを取り囲む妖異が、笑いながら一斉に襲い掛かった。


 通路には、無数の焼け焦げた妖異たち。やがて彼らは黒い霧になって消えていく。
 迷宮の壁に寄りかかりながら、ムムショ・フフショは血まみれになって歩いていた。
「ふ……ざけやがって……!」
 怒りが口を吐く。なんで独りだ。盾はどうした。雑魚が寄ってたかりやがって。おかげで血まみれじゃねえか。
「……ビアストめ……クソ仕事じゃねえか……!」
 魔法薬は使い切った。あとは止血や膏薬を使うしかない。
 ――どこかで傷を癒さねば。
 背後から妖異の足音がする。雑魚どもを一掃することは訳もないが、その間にわずかでも殴られる。斬られる。それが不愉快だ。
 舌打ちして、扉を開け、部屋のひとつに入る。
 何もない真っ暗な部屋だ。
 戦闘になることを覚悟して入ったのだが、幸運だったのか。
 いや、油断することはできない。
 用心しながら踏み出す。
 そう。ムムショは用心していた。敵に備え、不意打ちの可能性を考え、臨戦態勢で歩を進めていた。
 だが。
 部屋の床すべてが泥に変わるとは思っていなかった。
「おわ……ッ!」
 慌てて扉のほうを向く。――無かった。
 最初からなかったように扉など無く、天井と、壁と、泥の床。
 いや。
 天井も壁も泥になって落ちこんでくる。
 ふざけるな。
 俺は。
 俺はこんなところで。
 組織も立て直せずに、アイツに復讐もできずに、死ぬのか。
 くそ――くそ……ッ!!
 その思考さえ泥に呑まれて、ムムショの意識は消えた。
 

 斧の旋風が吹き荒れ、妖異がまとめて屠られた。
「どうした! もう終わりか!」
 吹き抜けの広場のような場所で、ギード・オーレンドルフは勝ち誇って吠えた。
 周囲には、無数のデーモン。
 だが、妖異たちはギードを囲むだけで、襲い掛かってこない。
 最初は総がかりで攻め込んだ妖異たちだが、ギードが一向に倒れず、それどころか益々勢いを増していくに至って、ついに躊躇し始めたようだ。
「来なければ、こちらから喰いに行くぞ」
 恫喝を浴びせて斧を構え直しながら、したたかな戦士は撤退の頃合いを図っていた。
 囲みに隙がある。
 そちらへ逃走し、追いすがったやつを叩く。数を減らしながら連れ回し、もし他の者と合流できれば手間が省ける。そうでなくとも、殲滅すればいい。
 一歩踏み出した、そのとき。
 デーモンの囲みが割れた。
 明らかに、後から来たものを通すための動きだった。広場の奥の大扉が開いた。
 黒い妖馬に跨った、首無しの騎士が五騎。
 巨体であった。馬から降りても、ギードの倍は身長があるだろう。それが、五騎。
 妖馬がいなないた。騎士たちが、槍を構える。戦闘の騎士が前に出て、左右の騎士たちがやや下がった。三角形の先端をギードに向ける陣形――峰矢の陣。
 蹂躙する。そういう意図がはっきりと伝わった。
 恐怖を獣性でねじ伏せて、ギードは今までの計算もかなぐり捨てた。
「いいだろう……すべて喰らってやる……俺が……その強さを奪ってやる……!!」
 轟音を鳴らして妖異の騎馬が駆け出す。
 すべてを捨てて獣と化した戦士が、牙を剥き出して襲い掛かった。

(転章1 了)
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