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Bulwark Between Worlds

Juliette Blancheneige

Alexander (Gaia)

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『Mon étoile』(第二部三章後編)一

公開
3-3-1

 パスファインダーズの面々は塔内部の転移装置を用いて、『ゲヘナ試練場』の入口へと来ていた。
 フィンタンによれば、『大師の塔』は岩肌から半分ほど露出している“塔”の部分はほぼ居住区域で、その本領は埋まっているように見える山の内部である。魔法による空間操作も用い、そこに広大な空間を有している、とのことだった。
 この『ゲヘナ試練場』も同じく、山の内部に存在するようだ。
 魔法陣の刻まれた転移装置の台座から降りると、大きめのトード類がすっぽりと収まるほどの空間が広がっていた。正面に大きい扉があり、ソファやテーブルが置かれている。ロビーのような場所なのだろう。
「こっち」
 先頭に立つノノノの案内で、壁に嵌め込まれた大きい円形の鏡の前に来る。ノノノが手をかざすと、鏡は波紋を生じて青黒い光を放ち始める。鏡ではなく画面になったそこに、ノノノの名が記されていた。その下に、『戦績』『踏破達成度』などの文字が続く。
「最初は、皆も登録しないと、だと思う」
 もそもそと喋るノノノに、メイナードが言った。
「オマエ緊張してねえか」
「…………してる」
「ノノは経験者なんだよね?」
 ちらりと振り向いたノノノは、リリの問いに曖昧な唸り声を出した。
「…………個人用のしか行ったことない。だから、トロメーアがどんなものか知らなくて……師匠がああ言うってことは……かなり……きついと思う」
「さっきから言ってるその“トロメーア”ってなんだよ」
「……メイナードにわかるように難しいとこはしょると」
「おい」
「難易度。リンボが一、ミノスが二、って続く」
「個人用って言ってたけど?」
「そう。リンボからディーテまで個人用。それで……」
『このしもぶくれは集団戦用の階層があることをすっかり忘れていたわけだ』
 突然、フィンタンの声が響いた。声だけだ。この場には姿が無い。
『カイーナからコキュートスまで、五階層のフロアに区切られている。トロメーアは第三深層、挑む敵のことを考えれば優しい難易度選択と言える。――しかし当然、個人用と集団戦用は仕掛けも異なる。お前の知っている試練場とは何もかも違うぞ? 予習無し初見ダンジョン! 楽しいなあ! なあノノノ!』
「運営横暴だぞ!」
『ははは、文句は勝ってから聞こうか』
 心底愉しそうなフィンタンの笑い声にノノノが地団太を踏む。
 そのとき、冒険者たちの前に翠緑の光が発生した。光は人のかたちに凝ると、十代前半のミッドランダー少女のような姿になった。ただし、その背には蝙蝠の羽根のようなものが生え、頭には角――アウラ族のそれとは異なる羊のような角――がある。肌の色もノフィカグリーンで、ミッドランダーにはあり得ない肌の色だった。
 少女は床に降り立つと、くるりと一回転してからウィンクをした。
「はーい! ここから先はワタクシがご案内いたしまぁーす!」
「ビログたん!」
 ノノノが笑顔で少女に手を振る。少女もノノちゃんやっほー、と言いながら手を振り返した。
「誰だコレ」
 指差したメイナードに向き直ると、少女は敬礼の真似事をした。
「はい! ワタクシはフィンタン様に創造された魔法生物、ビログと申しまぁす! このゲヘナ試練場のナビゲーターでございますっ」
『あとの説明はソイツから聞け。私はお前たちの阿鼻叫喚をここから眺めていてやろう』
 フィンタンの声はそれきり途絶えた。とゆーわけでっ、とビログが後を継いだ。
「ゲヘナ試練場、集団戦用階層の説明をさせてもらいますね!」
 ビログが語る『ゲヘナ試練場』集団戦用階層とは、おおむね下記のようなものだ。

・一つの位階に十のエリアが用意されている。

・突入時及び次のエリアに進むたびに、何らかの禁則事項が課せられる。
 禁則事項は、物理攻撃禁止、魔法攻撃禁止、回復魔法禁止といった行為そのものの禁止から、技能(例えば剣術士やナイトの用いる“ファイト・オア・フライト”など)や戦技(同じくナイトや剣術士の用いる“ファストブレード”など)といった技を封じるもの、あるいは攻撃性能の低下や詠唱速度の低下といった能力そのものの低下も存在する。
 なお、禁則事項はランダムであり、どれが禁止されるかはエリアに侵入するまで分からない。また、侵入した者全員に同一の制限を課す。
 禁則事項を受けたエリアに、必ず解除するための“鍵”がある。解除しないで進むこともできるが、その場合はその階層そのものを踏破するか、途中退出を選ぶまで解除されない。
 戦闘不能になると禁則事項は一旦解除されるが、蘇生魔法等で回復した時点で復活する。

・突入時及び次のエリアに進むたびに、『オーダー』が示される。そのオーダーを完遂しなければ、次のエリアへの扉を見つけても開かない。
 オーダーは、
①敵の全滅:エリア内の全魔物を倒す。
②強敵の排除:特定の強力な魔物を倒す。魔物によっては、(いわゆるボスにもかかわらず)巡回している場合がある。
③エリア踏破:エリア内のすべての通路と玄室を踏破する。侵入したと見做される通路や玄室にはそれを示す幻影の印が出現する。
④ランプの点灯(一):エリアのどこかに存在する魔法のランプを点灯させる。これは一つ点灯すれば完遂の場合。
⑤ランプの点灯(二):エリアのどこかに存在する二つから四つ(ランダム)の魔法のランプを点灯させる。点灯はすべて同時でなければならない。
⑥ランプの点灯(三):エリアのどこかに存在する三つから五つ(ランダム)の魔法のランプを点灯させる。ランプには『正しい順番』が存在し、その順番通りに点灯させなければならない。失敗は三回まで、間違えるとランプは姿を消し、エリア内に再配置される(順番は継続)。

・敵は(オーダーが全滅の時以外)一定時間経つと自動で補充される。全滅オーダーの場合は補充無し。

・エリア内に稀に存在する宝箱からは、この試練場内でだけ使用できる薬・魔具の類が入手できる。踏破及び自主的に途中退出を選んだ場合は無くなってしまうが、全員戦闘不能(いわゆる“全滅”)による排出の場合、持ち越すことができる。

「……禁則事項ってぇのがえぐいな。場合によっちゃ一発アウトだぞ」
「回復魔法禁止はちょっと……」
「……ランプの点灯が、嫌。分散しなきゃいけないの、きつい」
「…………」
 各人が顔を曇らせて感想を述べる。黙していたテオドールに、皆の視線が集まった。
「……“鍵”の発見が最優先と考えます。それと、どのオーダーにしてもエリアの地図は埋めたほうがいい。――ビログさん、制限時間はあるのでしょうか」
 顔を上げて問うたテオドールに、ビログが微笑んで答える。
「エリア一つあたり三時間ですね! 時間を過ぎると強制退出でぇす!」
「もう一つ。倒した魔物が再補充される間隔は?」
「約十五分です!」
「……なるほど。わかりました」
 頷いたテオドールが、皆に向き直る。
「可能な限り地図を埋めながら“鍵”を探す。魔物への対処は、敵の能力や禁則事項の内容によって変えよう。焦らず、確実に進む」
「応」
「了解です」
「かしこま」
 各自がそれぞれの返答をするのを見届けてから、テオドールはビログに言った。
「では、挑戦します」

 事前の登録をビログの案内でスムーズに済ませると、一行は扉の前に立った。
「それでは、『ゲヘナ試練場』、第三深層トロメーア。開錠します!」
 ビログの声と共に、扉が開き――パスファインダーズの面々を魔法空間へと吸い込んだ。
 
 到着した場所は、小部屋だった。武装した四人が腰を下ろして休息できる程度の広さだ。これがルガディン男性四人組などだったら、かなり狭苦しいことになっているだろう。
 壁も床も天井も白い。天井そのものが光り、室内を明るく照らしていた。
『ここはスタート・ピットです。新しいエリアに到着したときは、必ずスタート・ピットからだと覚えておいてください』
 ビログの声がした。ずっと見てるから、退出するときとかは声を掛ければすぐに処理を行ってくれる、とノノノが解説した。
『それでは早速、禁則事項とオーダーの発令を行います』
 彼らの前に、幻影の文字が現れた。物理攻撃禁止、と書かれたものと、敵の全滅、と書かれたもの。げぇ、と呻いたメイナードに、ビログが言った。
「慌てないでいいですよー。これはルーレットが回る前の状態です。これからこの二つのルーレットが回ります。自動で止まりますので、そのまま待っていてくださぁい」
 言い終わる前に、二つのルーレットは高速で回転を始めている。皆が固唾を飲んで見守る中、徐々にそのスピードはゆっくりになっていき、

 禁則事項:詠唱速度低下
 
 オーダー:ランプの点灯(二)
 ランプ数:四
 
 ここで止まった。
「えっ待って」
「やだよう」
 リリとノノノ、二人のキャスターが悲嘆の声を上げる。詠唱速度低下というが、実際は呪文詠唱によるエーテル変容のスピードの低下である。呪文そのものの発声が遅れるわけではない。だがどちらにせよ、魔法を扱う者たちからしてみれば自身の手数を低下させられるのだ。致命的になり得る禁則事項だった。
「ランプの二、ってこたぁ」
「複数同時点灯。やはり地図を完成させた方がいい」
「四だから全員分散だな。ルート上の敵は叩いておかねえとだな」
「ああ。否応なしに時間がかかりそうだ」
『よろしいですか? ピットオープンしますよ!』
 ビログの声に、全員が武装を確認し、頷いた。
『スタート!』
 声と共に扉が開け放たれ、四人は第一エリアへと足を踏み入れる。
 そこは、長い廊下の途上だった。
 全員がスタートピットから出ると、ピットの扉は消えた。
『一度出たらピットへは戻れません。次のエリアへの扉を見つけて先へ進むか、ワタクシに申し出て途中退出するか――』
「全滅、か」
 メイナードの呟きをビログが肯定する。
『その通りです。それでは良い試練場ライフを!』
 励ましなのかおどけているのかよく分からないビログの声を受けて、パスファインダーズの面々は探索を開始する。
 廊下は狭い。グーブゥーなどの大型魔獣ならば二体並べないほどだ。
「詠唱速度低下ってどんなもんだ?」
 メイナードがリリに訊く。リリは自分にケアルを詠唱したが、普段の倍近くかかっていた。
「……酷いです」
 眉根を寄せて、リリが顔をしかめる。
「戦闘を極力避け、“鍵”とランプを発見しよう」
 テオドールの宣言に、全員が頷いた。一列に隊列を整えた四人は、テオドールを先頭に歩み始めた。

 結論から言えば、パスファインダーズはこのエリアを攻略した。
 だが、内容で言えば大苦戦だったと言わざるを得ない。
 まず、出現する敵の強力さ。
 この試練場に配置されている魔物はすべて、フィンタンにより創られた『強化改造魔骸』なる存在だ。
 それらは容姿こそエオルゼアに存在する魔物とほとんど一緒だが、攻撃の内容は全く異なる。このエリアに出現する魔物はすべて百蟲綱に属するモノで、
 突出した攻撃力を持つマンティス、体力こそ少ないが、異常な攻撃速度で襲い掛かってくるチゴー、常に密集し、火力集中を行ってくるクロウラー、そして強力な物理防御力を持つスカラベ、と言った改造体たちだった。
 そして彼らには共通する特徴があった。
 極めて高い感知能力だ。
 それらが場合によっては複数の種類が混合した周回部隊を構築し、迷宮の中を移動している。
 極力戦闘を避けよう、と言ったテオドールのプランは敵の感知能力の前に瓦解した。
 結局、敵を発見もしくは敵から発見されて襲撃を受けた場合は、なるべく別の周回部隊に発見されないよう、敵の周回ルートを読んで移動するしかなかった。
 そうした経験を得るころには一行はかなり疲弊した。
 どうにか“鍵”を発見し禁則事項を解除し、その過程で見つけたランプへ全員が散るために敵部隊に攻撃を仕掛け、安全を確保してから分散し――ランプを同時に押した。
 次のエリアへの扉をくぐりスタート・ピットへ辿り着いたときには、全員が声もなく床にしゃがみ込んでいた。
 
「ふむ」
 自室でこの様子を見ていたフィンタンは、肩をすくめて椅子から立ち上がった。
「これでは踏破は難しかろう」
 そう呟くと、魔法で投影されていたスタート・ピットの映像が消え去る。最初のエリアでこの疲弊では、最後まで到底もつまい。どれだけ幸運に恵まれたとしてもだ。
 あとは、敗北した彼らを諦めさせれば、この話は終わりだ。
 彼らがレース・アルカーナと呼ぶ、オズマ・トライアル。それを放置しておくことが災禍となることは承知している。
 だが。
 フィンタン自身はオズマを使っていた主戦派では無い。クェーサルと出会う前はただ戦うことのみを求める戦鬼のような存在で、彼女に出会い感化されてからは、第六霊災を食い止めるために動いていた。
 彼にとって主戦派の者たちは敵だし、中でもクェーサルを幽閉し、最終的にアークを奪回するための人柱にした者たちには今でも消せぬ憎悪がある。
 フィンタンからしてみれば、オズマ・トライアルは釣り餌だ。それを見つけ、姿を現わすかもしれないのだ。――主戦派の残党が。
 それは敵だ。千五百年に亘り暗闘を続けてきた、フィンタンが死ねない理由の一つ。第六霊災を経てもなお諦め切れない、狂った妄執の継承者たち。
 彼らごと、オズマ・トライアルは破壊する。救う手段が無い以上、手の施しようは無い。そのためにも、ノノノたちには諦めて貰わなければならないのだ。
 部屋の片隅に設置された小型のエーテライトを起動させ、工房へと向かう。どうあれ、オズマ・トライアルの現在位置を調査する必要がある。オズマ・トライアルにも主戦派残党にも感知されず、継続して監視する方法も作り出さねばならない。やることは多い。
「見に行くのは三時間後だな……」
 呟くと、フィンタンは工房を起動させる。助手の役割を与えられた魔法生物たちも起動し、集まってくる。
「ふむ。始めるか。まずは仮想空間上にオズマ・トライアルを再現する。オリジナルのオズマの、『操者なし自律都市防衛モード』に準じるものとする。データはアーカイヴ三十六より再現」
「了解」
「残党どもは前回の戦闘時のデータを参照。四年前のオ・ゴロモ戦だ」
「受諾。実行します」
 フィンタンの目の前に、幻影による映像――縮小された山間部のフィールドが構築されていく。次々に現れる異形の物体を見つめながら、フィンタンは一人呟いた。
「悪く思うな、ノノノ。お前の友人は――せめて苦しまずに生を終わらせてやろう」

(第二部三章後編二へ続く)
コメント(1)

Juliette Blancheneige

Alexander (Gaia)

Juliette ‘s note
『ゲヘナ試練場』の仕様に既視感を感じる方もいらっしゃるかと思います。
このギミックにはオマージュ元があります。
FF 11の『ナイズル島踏破指令』です。
(それをもっと簡略化しました)
ランダムダンジョンで制限がかかるところはDDにも似ていますが、よりめんどくさい仕様になってます。
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