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White Knight

Juliette Blancheneige

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『黒と蒼』(中編)一 (『Mon étoile』第二部四章)

公開


 クルザスの寒村に、貧しいが心優しい羊飼いの少年がいた。
 ところがある日、奴隷商人に雇われた男たちがやって来て、
 問答無用で襲いかかり、少年を拉致したという。

 悪漢たちは、少年を奴隷商人に届けようとしたが、
 その道中でドラゴン族に襲われ、蹴散らされることに……。
 だがこれは、決して偶然の出来事ではない。

 なぜなら、このドラゴンは少年の友であり、
 危機を知って、助けるために飛来してきたのだから……。
 問題は、戦いの最中に少年が崖下に落ちてしまったことだ。

 瀕死の重傷を負った少年を助けるため、
 ドラゴンは己の血を分け与え、飲ませることにした。
 すると少年は、竜の眷属と化し、いずこかに飛び去ったという。

ドラゴンになった少年:初版
(グブラ幻想図書館蔵)



 凄まじい血臭と、肉を咀嚼する音。骨を噛み砕く音、唸り声。
 いくつも重なるそれらの音。間近で行われている惨劇をよそに、少女は天を見上げた。曇天の空から雪が降り注ぐ。少女の白い髪が風になびく。透き通るような白い肌。対照的に、伏し目がちにした瞳はルビーのように赤かった。
 美しい少女だ。長い睫毛、絶妙なラインを描く輪郭、やや低めだが整った鼻、小さめの口と艶やかな唇。細い首から下を包む漆黒のドレスは、この雪原には似つかわしくない。
 両手の指を重ねて、少女は白い息を吐く。一幅の絵のような立ち姿だ。
 その少女に、声がかけられた。
「今回の奴らは食欲旺盛でいいな」
 近寄ってくる青年は、エレゼン男性としてもかなり大きい。筋骨隆々で、太い首の上に乗る顔は獰猛な笑みを浮かべている。薄い眉、三白眼。鼻筋は通っているが、大きめの口でして見せる笑みの獰猛さが、土台の良さを打ち消している。
 薄手のシャツと、動きやすさを優先させた膝丈のボトム。彼もまた、この雪原を行くには似つかわしくない軽装だ。
「そうね。貪欲なのはよいことだわ。更なる目覚めの萌芽かもしれないから」
 青年に微笑んで答えると、少女は軽やかな足取りで横転したチョコボキャリッジの横を通り抜ける。『それら』が立てる音を一切気にする様子はない。青年が、その後をゆっくりと歩いて追う。
 雪に埋もれた街道の上に、一人の男が座り込んでいた。
 否、座り込んでいるのではなく、その姿勢しかできないのだ。彼の片足は膝下からすっぱりと断ち切られている。血は流れ、男は徐々に顔色が青白くなっていく。その視線はキャリッジに群がる『それら』に向けられ、恐怖で泣き笑いのようになっていた。
「仲間を見捨てて一人で逃げようとする。いいわね。とても“人間”って感じがする」
 春の日向で知人に行き合い微笑むような、朗らかな笑顔を少女は男に向けた。状況と全くそぐわない。
「頼む……助けて……助けてくれ……命だけは……」
 ガチガチと歯を鳴らしながら、男が懇願する。少女は可憐な微笑みのまま、男に近付く。
「そんなあなたに、さらに自分だけ助かるチャンスをあげるわ。――この付近で、大きな剣を背負った十六、七の女の子を見なかった? 黒髪で、女の子には不釣り合いな黒い鎧を着ているの」
 男の目が見開かれた。最後の希望を引き当てた、そんな喜色が現れていた。
「み、見た! 話もした!」
「あら。訊いてみるものね?」
 少女は振り向いて、追いついた青年に笑いかける。青年は皮肉げに唇を歪め、肩をすくめた。
「それで、どんな話をしたの?」
「……ロッシュ村への行き方を……訊いてきたんだ!」
「ロッシュ村? エバーフロストの?」
「そ、そうだ!」
 小首を傾げる少女。
「当たりかしら?」
「そうだな。行ってみる価値はあるんじゃねえか? どっちみち“村”なら、こいつらの食欲も満たせるだろうぜ」
 青年の同意に、少女は嬉しそうに頷き返した。
「そうね。じゃあ、決まり」
 くすりと笑って、少女は男に背を向け、軽やかな足取りで歩き始めた。
「え!? ま……待ってくれ! 助けてくれるんじゃないのか!?」
 男は愕然として叫んだ。
 少女に続いて背を向けていた青年が振り向く。
「うるせえなあ。奴らのエサにしねえで見逃してやるんだろうが。これが助けるじゃなくてなんだよ」
「せめて……血止めを……」
「ああ!? そんなもんぁ自力でしろよ! 甘ったれるんじゃねえ! 男なら根性見せてみろ!」
 まるで徒弟を叱る親方のような口調で言い切ると、青年は男に背を向ける。
「そんな……! 自力でなんて……!! 待って! 助けてくれえ!!」
 男の悲痛な叫びに二人の男女は振り返ることなく、『それら』を連れて立ち去った。
 あとに残された男は泣きながらもがき、歯を食いしばって這いずり始めた。
「ちくしょう……ちくしょう……!」
 その男の周囲に、白い毛皮の狼たちが姿を見せた。実は血の臭いにひかれ集まってはいたのだが、『それら』を恐れ、遠巻きに眺めていただけだったのだ。
 横転したキャリッジの傍にはもはや肉の欠片も無く、ただ一つ残っている“肉”は――男だけだった。
「やめろ……! やめてく」
 殺到する狼たち。悲鳴、そして再び場を満たす、血の臭いと肉を咀嚼する音。

 そんな惨劇などもう一切忘れ、道中の少女は嬉し気に天を見上げ笑った。
「レティシア。もうすぐよ。もうすぐ貴女に会えるのね。ああ、楽しみ……!」

(中編二に続く)
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