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White Knight

Juliette Blancheneige

Alexander (Gaia)

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『Light My Fire/ignited 2(後)』

公開
2-8

 フォールゴウドの宿屋、『浮かぶコルク亭』。
 水の上に浮かぶコルクのように、柔らかいベッドでの安眠を約束する――というのが名前の由来だと言う。
 北部森林一の大きさを持ち、質も高いと評判の宿屋だ。
 第十四小隊は、その中でも広めの一室を臨時の詰め所として借り受けていた。
 ベッドの一つには、先の戦いで倒れたエールと名乗った竜騎士が寝かされている。
 鎧を脱がせると、まだ若々しい容貌であった。おそらく、メイナードらよりも二、三歳若いくらいだろう。

 アーシュラはすぐに戻ってきた。
 高く飛んだ竜たちは、曇天の雲に隠れる飛び方をしたのだという。そのため、地上からの追跡には限界があった。
 ただ、飛び去ったのはダラガブの爪がある方だ。クルザスに戻ったのではないようだ。
 
 さらに半日後。
 ウェアドラゴンの群れは国境近くで散開したと報告があった。
 山中や、人が降りられない絶壁を降下するなどして、数匹単位で潜伏するようだという。
 リ・ジンは斥候部隊にそのまま監視を命じた。潜伏したすべてのウェアドラゴンたちを監視することは難しいが、森の中に潜伏した集団など、監視しやすいものたちもいる。
『ひとつだけ、所感を述べてもよろしいでしょうか』
 報告してきた斥候部隊の隊長がリンクパール越しに言った。
『彼らは非常に統制が取れている。人間の軍人もかくやという、迅速で無駄のない行軍を行い、じっと潜伏しています。これほどのものとは思いませんでした』
「ウェアドラゴンとは、魔力を込めた竜の血を人が飲んで変ずる『竜の眷属』の最上位種だそうだ。人としての知性が残っているのか、変異後に新たに獲得した知性なのかは知らん。が、おそらくその所感は正しい。お主が感じた通り、敵を“訓練された特殊部隊”として認識し、油断なく監視を行なってくれ。重要な報告、感謝する」
『は。恐縮です。隊員にも徹底させます』

「……ふぅむ」
 一人掛けのソファにどさりと腰を落とすと、リ・ジン・キナは思案げに溜息をついた。
「いまひとつ釈然とせん」
「なにが?」
 窓際に腰かけたシャルロットが、竪琴を爪弾く。どこか物悲しい、それでいて心癒されるような旋律。
「もどーり」
 全員分の夕食が入ったカートをアーシュラとメイナード――無理やり手伝わされた――が押して入室してくる。
「奴らが退いた理由がよくわからん。勝つ気でいたなら、あそこは完全な好機だ」
 ウェアドラゴンと、さらに現れたドラゴンたち。それらを一気に投入すれば、あの場にいた兵力ではそれを防ぐことはできなかったろう。
「なぜ退いた? そもそも何のための襲撃だったのだ? 敵の――スアーラとやらの目的が分からんではな」
「……ドラゴンどもの目的なんざひとつしかねえ。ヒトを滅ぼすこと。それだけだ」
 全員の目が、ベッドへと向いた。言葉の主――エールが体を起こしていた。
「千年前にアバラシア山脈へと移住したエレゼンの集団が、邪竜ニーズヘッグに襲われた。のちに征竜将と呼ばれる王子ハルドラスがニーズヘッグの片目を刳り貫き邪竜を撃退。以後、イシュガルドの民と邪竜たちは千年に亘り戦い続けてきた……だったか」
 メイナードの言葉に、エールがおや、という顔をした。
「グリダニア兵のわりに詳しいな」
「仲間がイシュガルド人なんでな。ついでに言っとくが、俺は双蛇党員じゃねえ。協力してる冒険者だ」
「興味ないな」
 言ってベッドから降りるエールに、リ・ジンは尋ねる。
「なるほど。確かにドラゴンからしてみれば、ヒトはヒト。国家などと言うヒトの都合など考える必要はないか。だが、それならばこそ疑念が残るのじゃよ。なぜ、増援が来た場面で我らを根絶やしにしなかったのか、とな。
 ――それについて、お主は何か心当たりはないか?」
「……」
 無言で部屋を見渡したエールは、リ・ジンの質問に答えずに、「俺の槍と防具は?」と訊いた。
「ここだよ」
 アーシュラがクローゼットを開ける。双蛇党で使用している防具を収納し移動するための背負い袋と、穂先を革鞘で覆った槍があった。
 近付いて中身を改めながら、エールはぼそりと言った。
「スアーラは、襲った村の家畜やサイロから壊す」
「――ほう」
「食料を――生活を奪い、住居を奪い、それから殺しにかかる。万が一逃げた奴がいても、もうその村では暮らせない。そいつをわざとやる竜だ。人を滅ぼすことを愉しみながらやる」
「うっわ性格悪ゥ」
 エールはアーシュラをちらりと見たが、無言だった。
「一気に殺すのは趣味ではなかった、か……。しかしそこまで狡知に長けた竜ともなれば……ふむ」
 自分の思考に沈むリ・ジン。それには構わず、エールは装備の確認を済ませると、袋を背負い槍を持った。
「お前これからどうすんだ」
 去ろうとしているエールに、部屋の扉横に寄りかかったメイナードが声を掛ける。
「スアーラを探し、討つ。それだけだ」
「……独りでか」
「関係ねえな。独りだろうと、俺は俺だ。――槍と防具、修理してくれたのは礼を言うぜ。世話になったな」
「待てエールよ」
 顔を上げたリ・ジンがその背へ声を掛ける。
「共闘ならしねえぜ」
 立ち止まらずにエールが言う。
「俺は俺の好きにやる。そっちはそっちでやってくれ」
 硬く厳しい声色で拒絶を告げると、エールは扉を閉めた。
 
2-9

 『浮かぶコルク亭』を出たところで、エールは眉を顰めた。さきほど部屋にいたはずのミッドランダーの女が、宿と村の広場を繋ぐ橋の前に立っていたからだ。
「あんた……」
「二千ギル」
「あ?」
「修理代。抜いといたから」
 ミッドランダーの女――アーシュラは、唐突にそう言うとエールに小袋を投げて寄越した。エールが財布代わりに使っているものだ。
「抜い……ってテメエ!?」
 予想外の台詞に、エールは思わず大声を出した。今まで竜騎士団という国家戦力として活動していたエールは修理代など気にすることがなかったし、すでに抜かれているというのも理解できない。
「いつの間に抜きやがった……!」
「脱がせたついでに」
「脱がせた!?」
「うん。怪我の治療もしなきゃだし。で、リ・ジンたちが竜騎士の鎧よくわからんっていうから、あたしが脱がせました」
「……意味がわからねえ」
「人の鎧脱がせるの得意なんだよあたし。でも竜騎士の鎧を脱がせたのはさすがに初めて。腰回りが独特の機構してるよね。面白かった」
「……!」
 あっけらかんととんでもないことを言う。気恥ずかしくなってしまったエールは、アーシュラから顔を背けた。
「それと。コレ」
 今度は投げ渡さず、アーシュラは手を差し出した。その手に乗っているのは、蒼いクリスタルの欠片。――ソウルクリスタルだ。
「ッ!」
 今度こそ本気でエールは慌てた。己の体に等しい物、肌身離さず付けている物が無かったことに気付けなかったとは。それほどの疲労だったのだ。
「まあ、これを届けに来たのが本題だったワケです」
 冗談めかして言い、ソウルクリスタルをエールの手に乗せる。
「…………すまねえ。あんた……」
「アーシュラ。アーシュラ・ギブソンだよ」
「助かったぜアーシュラ。とんだ間抜け野郎に成り下がるところだった」
 深々と礼をするエールに、アーシュラは微笑みを返した。
「こっちもキミが起きてからすぐ渡せばよかった。ていうかさ」
 小首を傾げて、アーシュラがエールの掌上のソウルクリスタルを見る。
「竜騎士のソウルクリスタルって初めて見るけど、二つで一つなの?」
 エールの掌の上に置かれたソウルクリスタルは、二つ。共に竜騎士の紋章が刻まれている。
「……いや。片方は俺のじゃない」
 二つの欠片を握りしめ、エールはその手を見つめた。あの日、妹の手を握りしめていた手。――そして。
「――そっか」
 それだけで、アーシュラは察したようだった。勘のいい女だ。もっとも、霊災を経た今を生きている者ならば、人を喪ったことなど珍しくも無いだろうが。
「本当に世話になったな」
 歩き出すエールに、アーシュラが「ねえ」と声を掛けた。
「一緒に戦った方が楽じゃない?」
「ダメだ」
 間を置かず答える。橋の途中で振り返ると、真っ直ぐにアーシュラを見て言った。
「俺は独りだ。独りじゃなきゃいけないんだ」
 それ以上は問わせず、エールは跳躍した。星も視えぬ曇天の夜空へ、赤い髪の竜騎士が舞い、森のほうへ消えていく。
 あとに残されたアーシュラは、しばらくその方角を見つめてから、空を見上げた。
 昏い空から、ゆっくりと、静かに――雨が降り出している。
「独りは、つまんないと思うけどな」
 呟いてから、アーシュラは宿屋へと戻った。

(『Light My Fire/ignited』3へ続く)
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