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White Knight

Juliette Blancheneige

Alexander (Gaia)

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『Light My Fire/ignited 5』(中)

公開
5-3

「――!」
 甲高い咆哮と共に、雷のブレスが放たれる。広範囲に薙ぎ払う攻撃だが、当たれば盾役といえどただでは済まない。
 それを、ロジェが後方に下がりながら躱す。躱しきれないものは盾で防いだ。
 ブレスが不首尾と見るや、スアーラは己の尾に雷を集中させた。その瞬間、リ・ジンが杖を掲げる。
『足元へ!』
 エーテル振動により、言葉よりも速く、意思が仲間たちへと直接伝えられる。ロジェを含む全員がスアーラの足元に駆け込むのとほとんど同時に、邪竜は足元を起点に一回転した。凄まじい轟音が巻き起こり、光と熱がかなりの広範囲で炸裂する。唯一、スアーラの足元を除いて。
『!?』
 まただ。
 この戦いが始まってからというもの、スアーラの攻撃はことごとく躱されている。完璧にではないとしても、直撃した攻撃はほとんどない。
 エールの跳躍攻撃が右の大翼に刺さるが、スアーラは意に介さない。後方から同じ翼を攻撃するメイナード、その影から現れたアーシュラが大振りの短剣をスアーラの右足へと打ち込む。ダメ押しの様にメイナードがその短剣の柄を蹴った。短剣は楔のように足に残置したが、それでどうと言うこともない。スアーラは無視した。
 眼前のロジェへと両前肢の鉤爪を同時に繰り出す。盾で防がれるが、それをものともしないダメージを与えたはずだ。
 だが、それを見越したかのように角尊が唱えていた治癒魔法が即座にロジェを回復させる。
『おのれ!』
 スアーラは苛立ちを隠さずに叫んだ。もはや疑うべくもない。何らかの方法で、己の行動を読まれている。
 それが、角尊リ・ジン・キナの異能――すなわち、『超える力』であるとスアーラは知らない。リ・ジンのそれは、魂の心意を読む力。魂持つものが動くとき、肉体やエーテルの動きよりもほんの数瞬速く『そうしよう』という意思、すなわち心意が発せられている。リ・ジンはそれを察知すること、及び角尊としての極めて強力なエーテル感知能力を以て、予言めいた行動予測を可能にしているのだ。
 だがこれにはリ・ジン本人の魂の力そのものやエーテルの消費が伴う。別の事情によってエーテル枯渇の状態に陥ることが望ましくないリ・ジンにとっては、諸刃の剣でもある切り札だった。
 スアーラには『超える力』のことは分からない。だが、こちらの手を読まれていることは確信した。ならば。ごうっと獰猛に唸ると、スアーラは大きく息を吸い込んだ。
 それならば逃げられなくするだけだ。
「ッ!」
 リ・ジンが察する。が、遅い。
『――――――!!!!』
 絶叫。
 魔力を込めた叫びは広範囲攻撃となり、魔法攻撃として周囲のものすべてへダメージを与え、エーテルを歪めた。
「ぐ……!」
 悪意と魔力の奔流が、メイナードたちをスタンさせる。それを見て取りながら、スアーラは空へと舞い上がった。
『消し炭となれ、ヒトども!』
 スアーラから奔り出た無数の雷が天へ昇り、数瞬ののち落雷となって地上へ降り注ぐ。
『中央へ! そこが一番マシじゃ!』
 安全地帯はないと判断したリ・ジンは、最も手薄な場所へ走る。他の者も皆そこへ集まる。リ・ジンが結界を構築した直後、雷の雨が地上へ降り注いだ。
 結界に阻まれ防がれる雷。しかしそれは、雷の雨を防ぐためにはそこへ釘付けになるということだ。
「しまっ……!」
 リ・ジンが気付き空を見上げる。――もう遅い。
 高空へ上昇していたスアーラは、結界を張り閉じこもる人間たちに向け猛然と急降下を行った。カータライズ。雷を纏う黒紫の竜が、音よりも迅く彼らへと襲い掛かった。
「ぐぁ……ッ!」
 衝撃波と雷が駆け抜け、全員が吹き飛ばされる。慌ててリ・ジンが立て直すための全体回復を唱える。迅速魔による詠唱破棄が功を奏し、それだけは間に合った。――だが。
『では、これはどうか?』
 挑戦的に吐き捨て、スアーラは先と同じように落雷を発生させる。と同時に、魔力で凝縮した雷の塊を地へと吐き落とした。空中にいる自分自身の直下の地面だ。
 雷の塊はそれから離れれば離れるだけダメージが軽減される。
 だが、塊から離れた場所は――隙無く落雷が降り注いでいた。
「――!」
 再度治癒結界を張るには時間が足りない。落雷が降り注ぐ地帯のさらに先へ逃げる余裕はもちろんありはしない。
「ちぃ……ッ!」
 雷の塊が炸裂する。落雷の手前でそれを受けたリ・ジンたちは中規模のダメージを受ける。    
 受けた上で、それを治療するしかなくなる。
 たとえ読まれようが、逃れようのない攻撃を続ければいい。
『根比べといこうか? 苦悶する様を見せるがいい……!』
 咆哮からの落雷攻撃。スタンで行動の自由を一瞬奪われたリ・ジンが慌てて安全地帯を告げるが、やや遅い。被弾する者はいる。落雷を避けながら治癒魔法を詠唱するが、そのためにリ・ジンが落雷を受ける。
 これを数度。
 体力も魔力も容赦なく削られていく。
「そろそろじゃねえか!?」
 落雷に吹き飛ばされ、立ち上がりながらメイナードが叫ぶ。ほとんど同時に、リ・ジンはリンクパールによる連絡を受け取っていた。
「……ああ! 頃合いだ! かかるぞ!」
「心得ました!」
 リ・ジンの掛け声にロジェが応え、邪竜へと駆け出す。
「我らの誰も沈んでおらぬし折れてもいない! その程度か? スアーラよ!」
 挑発の台詞を叩きつけ、敵視を自分へと向けさせる。無論、空にいるスアーラに対し攻撃するすべは盾を投げる程度しか無い。挑発したところでロジェにはそれを持続させるだけの攻撃はできない。
 だが、一瞬でいい。一瞬でも注意が向けば。
 アーシュラが、エールにカラビナ状の金具を手渡す。それを持ったまま、エールは跳んだ。ジャンプの応用。スアーラに攻撃を加えることなく、邪竜の足に打ち込まれた短剣の柄に付いたリングへと金具をひっかけた。小さな目標へめがけてのジャンプ。練習無しの一発勝負だが、エールは完璧にこなしてみせた。
 着地したエールがアーシュラと笑みを交わす。
 エールが取り付けた金具はにはロープが紐付けられている。否、それはロープではない。
 黒衣森の精霊に加護を乞い、角尊であるリ・ジンが幻術皇カヌ・エ・センナと共に捩り合わせたツタの一種だ。そのツタが今、地上でその終端を握るリ・ジンとスアーラを繋いでいる。
『!?』
 微かな違和感をスアーラが感じたときにはもう遅かった。
「精霊よ……森の災いを退ける力を我らに!」
 リ・ジンが叫ぶ。同時に、その足元の地面に異変が起こった。硬い岩場であるアルダースプリングスの地に、草が芽吹いたのだ。リ・ジンの足元を埋めたその草たちは一気に成長すると、その体を這い上り、ツタへと触れた。
 その瞬間、ツタは“森”になった。
 あらかじめツタに編み込まれた、黒衣森に生息する様々な草花の種と、木の枝たち。それらが一斉に成長したのだ。地と、リ・ジンと、ツタと、スアーラの右足を繋いだ、天へ伸びる橋のような“森”。それは人が登るのに十分な幅を有していた。
 “森”がスアーラを地へ落とさんと引く。
『小賢しい!』
 罵倒したスアーラが雷を纏い、それを“森”が絡んでいる右足へと集中させた――途端。
 “森”から茨が爆発的に増殖した。茨はスアーラの雷を喰らう。流し込まれた雷属性のエーテルを糧に、茨は瞬く間にスアーラの体半分を茨に埋めた。
『なんだこれは!?』
「主に言うても分からんじゃろうが、それは『シルフ領の茨』じゃよ。“悪い子シルフ”もドラゴンは嫌いだそうだぞ!」
 いまや“森”の一部のようになったリ・ジンが笑う。シルフの仮宿の者たちの協力を得ての交渉は危険な賭けであったが、意外なことに彼らはあっさりと協力を承諾してくれた。彼らの神であるラムウの意志かもしれない。
『ぬぅああ!』
 雷属性の攻撃は不利と見たスアーラは純粋な膂力で引きはがしにかかるが、その決断をするのは一手遅かった。茨はスアーラの体に食い込み、“森”はこの地と繋がっている。そう簡単に切れるものではなかった。
「いっくよー!」
 普段なら戦闘時は無口になるアーシュラが、いつものように笑って声を掛けた。そのまま、“森”を疾走して駆けあがる。地上と何ら遜色の無いスピードだ。
「へへっ! だが俺が先だ!!」
 おどけて言ったエールが、今度こそ本気のスパインダイブを放つ。一瞬にしてスアーラの高さを越え、その右翼の付け根へ槍を突き立てた。
『……!』
 槍が鱗を破壊し、深く抉る。エールは地上へは降りたたず、スアーラの背中に乗ったまま、翼の根元を集中攻撃する。
 駆けあがってきたアーシュラが、エールが作った傷口に黒い金属の筒を突き刺していく。
『ふざ……け……る、なァ!!』
 ついに絶叫したスアーラが、自身に風属性のエーテルを纏わせる。茨が切り裂かれ、“森”の束縛がほどける。瞬間的に発生した竜巻によって、エールとアーシュラも吹き飛ばされる。
 だが。
 それもまた――策のうちだ。
「メイナード!」
 空中でエールが叫ぶ。地で槍を構えたメイナードは無言で頷き、一瞬の溜めののちに槍を投じた。風属性のエーテル渦巻くスアーラへ――右翼の根元に埋め込まれた、鹵獲した帝国製高性能爆薬へ。
 狙い澄ました一投は竜巻を切り裂き、狙い通りに突き刺さる。その衝撃で最初の爆弾が爆発し、次々と連鎖して、大爆発を巻き起こした。
『ガァアアアァ!!!』
 その熱と衝撃はスアーラの右翼を吹き飛ばし、“森”も焼いた。かたちを失い、植物たちは燃えていく。炎が来る前に術を解いたリ・ジンが見つめる中、片翼を失ったスアーラの体が地へと落ちた。
「最後だぜスアーラ!」
 着地と同時にエールが突進する。
『最後? ――誰が?』
 地に伏したまま、スアーラは嘲笑した。次の瞬間。
 千切れて宙に舞っていたスアーラの右翼が空中で静止し、雷を纏いながら高速で回転した。
「ッ!」
 エールが咄嗟に横へ飛ぶ。翼は彼のいた地面を、鱗が変形した細かい無数の刃でごっそり抉り取り、同時に纏った雷で灼いた。
『飛べぬなら』
 体を起こしたスアーラの背へ右の翼が回り込むと、左の翼を根元から切り落とした。
『翼などいらぬ』
 落とした左翼も右翼同様に空中で回転し、おそるべき雷刃と化した。全員が驚愕する中、二つの刃が同時に襲い掛かる。
 雷刃は極めて迅く、リ・ジンはスアーラの心意を読み取れても、それを指示する暇もなかった。それどころか、己が躱すことさえ間一髪と言う状態だった。
「く……!」
 二つの雷刃の攻撃を放ちながら、スアーラは咆哮を放った。一瞬とはいえ動きを縫われると、もう雷刃を躱す隙はなかった。
「あ……!」
 アーシュラが躱し損ねる。回復魔法を唱えるリ・ジン。そのとき、スアーラが細い光条を放った。収束させた雷属性のブレスだ。帝国軍の魔導レーザーに酷似したそれは、雷刃に当たり角度を変えて――リ・ジンへと突き刺さった。
「ぁッ!」
「リ・ジン様!」
 胸を貫かれ、リ・ジンが吐血する。倒れる角尊へロジェが駆け寄る。
『終わりだ、ヒトども』
 スアーラが淡々と言う。二つの雷刃は形を崩し、周囲を覆う雷のドームとなった。そして、スアーラは口だけではなく全身から収束光を放った。光はドームに当たると反射する。逃げ場のない、予測もできない破壊光線の乱舞。
『死ね――死ね――死の舞踏を踊り続けろ!』
 己が体が裂けるのも構わず、スアーラは収束光を放ち続ける。全員が光に貫かれて体を跳ねさせる。彼ら全員が地に伏すまで、スアーラは攻撃をやめなかった。
 やがて。
 誰も動く者がいなくなったところで、スアーラはようやく収束光を止めた。雷の結界も消える。
『我が愛、ここに成就せん。……汝を喰らおう、エール』
 歌うように言う。ゆっくりと後肢を進めた――そのとき。
 矢が。
『あ?』
 真紅の走り羽を持つ矢が。
 スアーラの右目に突き刺さった。
『ァアアアアアアアアアアア!!』
 絶叫が迸った。
 遥かなる伝承に曰く。初代『蒼の竜騎士』ハルドラスは、邪竜ニーズヘッグから魔力の源である“眼”を奪い撃退したという。
 高位のドラゴンにとって、“眼”とはただの感覚器官ではない。己の魔力を蓄積させた分身であり、最強の武器にして唯一の弱点といえる存在なのだ。
 その、眼を。
 シャルロットは射抜いた。
 このときのために、スアーラに対する殺意も傷つく味方への想いもすべて消し去り――ただ、目標を射抜く、そのことだけを考え、じっと待ち続けたのだ。

「完璧。完璧だわ。――もう、悔いはない。弓術士としてのわたしは、今ここに完成したわ……!」
 戦場より離れた岩の上で、シャルロットはひとり感涙していた。己の思い描く完璧な一射を成し遂げた。少女の頃に森で見た、あのひとの弓術に、やっと手が届いた。
 もう、スアーラさえ目に入らず、シャルロットは独り感慨にふけった。

『我が眼が……我が眼が!!!!』
 射抜かれたほうはそうはいかない。貫かれた痛みよりも、今この瞬間も魔力が漏出し続けることよりも、“眼”を傷つけられたことそのものの恐怖から、スアーラはパニックに陥った。
「……その矢は長老の木より戴いた枝でできておる。もはや抜けることはない」
 荒い息を吐きながら、リ・ジンが立ち上がる。あの矢もまた、リ・ジンとカヌ・エが共同で魔力を込め、それを木工師ギルドマスター、ベアティヌ・マンロカが矢にした入魂の一矢であった。
『貴様らぁああ!!』
 叫ぶスアーラの視界に、自身の体を駆けあがってきた黒衣の女――アーシュラが映る。
 ……まさか。
 父祖ニーズヘッグの故事が思い出された。
 もう一方の“眼”も潰そうというのか!?
 慌てたスアーラは激しく首を振る。アーシュラが投げ出され――ながら、矢を握った。最初から、これが狙いであった。
 “決して抜けない”矢が刺さった眼は、ダメ押しに首を蹴って落下するアーシュラに引かれ、ずるりと抜けた。
『―――――――――!!!!!』
 “眼”が。
 抜けた。
 すさまじい喪失感がスアーラを襲った。魔力を失ったという意味でも、心のよりどころを喪ったという意味でも。
 馬鹿な。あり得ぬ。許されぬ。下等で愚鈍な無毛の猿が、星の支配者たる進化の頂点たる高貴で絶対のドラゴンの眼を奪うなど。
 絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に許されない!!!!!!
 スアーラが完全に理性を失った獣と化す寸前。
 もう片方の“眼”に、跳躍し降下してくるメイナードの姿が映った。
 見様見真似のジャンプだ。
 スピードも威力もエールのそれには及ばない。
 だが、たった二回目の挑戦で、メイナードは跳び、降下し、加速し、突き立てたのだ。――もう片方の“眼”に。
『あああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!』
 視界が失せる。魔力が噴出する。ついに正気を失ったスアーラが、絶叫しながら暴れた。メイナードが振り落とされる。槍は“眼”に突き立てられたままだ。
「――すっげえな。そんなに高く飛ぶんだな」
 落下しながら、天を見上げてメイナードが感嘆した。
 遥かな高みより。
 炎を纏った槍を携え、エールが一直線に降下する。――ドラゴンダイブ。
「おおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
『ひいいいいいいいいいいいいいい!!!!!』
 視えなくても。
 それが、自分に破滅をもたらす降下であると、スアーラには分かった。
 絶叫を上げながら頭を振った。にもかかわらず、竜騎士の一撃は寸分たがわず先の槍へと加えられたのだ。
 炎が爆発的に吹き上がる。
 砂埃が舞う。
 それらがおさまったとき、そこには。
 頭蓋のほとんどを破壊されたスアーラと、槍の切っ先にもう一個の“眼”を奪い着地したエールの姿があった。
『あ……あ……エール……』
 頭がほとんど原型を残していなくても、意思を伝えることはできるらしい。
 呻きを伝えたスアーラは、切れ切れにエールの名を呼んだ。
「終わりだ、スアーラ」
 エールが告げる。万感の想いがこもった一言だった。
『……“眼”を……我の“眼”を喰らえ……力を……なん』
「やだね」
 懇願の途中で、エールは槍を地面に叩きつけた。槍が魔力を放ち、叩きつけられた“眼”は崩れ、エーテルへと還った。
『ぁああ…………!』
 スアーラの体――もはや遺骸と呼んでも差し支えないもの――が、崩れていく。
 だが。
 影だけが。
 邪竜の影だけが、矢に貫かれた“眼”を持つアーシュラに忍び寄っていた。
 その影が、エールを労おうとするアーシュラの影と交わろうとしたとき。
「無駄ですよ」
 ロジェの剣が、影を刺し貫いていた。
「『隙を突こうとする動作こそ隙がある』。丸見えでしたよ」
「わあ! 気付かなかった!」
「マジか! すげえなロジェ」
「今の言葉はワシが教えた!」
 口々に皆が騒ぐ中、エールはアーシュラに手を差し伸べた。
「ん」
 “眼”を渡す。受け取ったそれを地面に置くと、エールは槍の切っ先を向けた。
「ほんとうにさよならだ、スアーラ」
 槍が“眼”を貫く。エーテルを吹き上がらせて、邪竜スアーラの“眼”は完全に消失した。断末魔の叫びもなかった。
 同時に、スアーラの体も崩れ、エーテルへと還っていく。
 それを見ながら、エールは深く息を吐いた。空を見上げる。
「終わったね」
 アーシュラが優しく言う。そちらを見ないまま、エールは首を振った。
「いや、終わってねえ」
「ん?」
 目を閉じる。
 何も見えない。ただの暗闇があるだけだ。
 墓も、死体も、村も視えない。
 目を開ける。首を傾げるアーシュラのほうを向く。朝日がその笑顔を照らした。
「俺は――今日から始まったんだ!」

(後編へ続く)
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