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White Knight

Juliette Blancheneige

Alexander (Gaia)

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『Sweetest Coma Again』8(前)(『Mon étoile』第二部四章)

公開
8-0

 その日。
 銀泪湖畔にあった小国ウィンベルは壊滅した。
 マハとアムダプール――二つの大国どちらとも距離を置こうとして旗色を明らかにしてこなかった小国は、結果的に両国が激突する戦場となった。
 妖異が呪いと死を撒き、石の巨人がすべてを踏み潰す。黒魔法と白魔法、ふたつの凶気が吹き荒れ、ウィンベルは文字通り灰燼に帰した。

 サイラス・エインズワースは、ウィンベルの辺境に暮らす農夫の息子だった。
 戦火は彼の村にも及び、幼いサイラスは両親を殺され、自身も瀕死の重傷を負った。
 痛みと恐怖と絶望に狂いそうになったとき、彼はその場に駆け付けた魔道士によって救われた。白魔道士らしいその男は、サイラスを戦場から救い出すと、ウィンベルを離れた。
 サイラス以外にも何百人と言う人々が彼によって戦場から助け出されたが、そのほとんどはひどい重傷を負っており、治癒魔法のみでは救えない者たちばかりだった。大勢の民が、治療の甲斐なく死んだ。サイラスもまた、死を待つ身であった。
 男はサイラスに語った。
 自分はアムダプールの国家公認白魔道士だったが、戦場で人を殺すことが嫌で逃げだした。
 この世界には大きな破滅――第六霊災が迫ってきている。なのに、両国は戦争をやめようとしない。まるで、相手を滅ぼせば霊災から逃げられるとでも言うかのように。
 残された時間は少ない。
 たとえこの身が尽きようと、一人でも多くの人々を救わねばならない、と。
 男は、盟友である北洋出身の魔道士ニュンクレフの元へ赴いた。そして、彼の作った『箱舟』と合流する。
 サイラスはそこで、失った体を補填するために、生体複製技術での修復を受けた。
 生体複製技術。
 魔大戦後期に“再発見”された、アラグ帝国の技術だ。
 アムダプールがそれを戦場に投入し、遅れて他の国家も導入を開始した。なぜその技術が当時のエオルゼアに広まったかは謎だ。
 『箱舟』にもその設備は持ち込まれていたが、ニュンクレフもサイラスを救った男も、その技術の専門家ではなかった。あとで知ることだが、設備自体も最新鋭のものではなかった。
 体の一部を生体複製ではなく魔術的な義肢装具で代替もして、なんとかサイラスは一命を取り留めた。

 第六霊災の洪水が訪れた。
 大津波が世界を襲った。津波の届かぬ地域も属性の崩壊が起こり、河川が氾濫。続く豪雨が世界のすべてを打ちのめした。

 そんななか、ニュンクレフたち『箱舟』の乗り手は、多くの人々を救い、最終的には転移魔法でギラバニアの高地に辿り着いた。
 だが。
 ギラバニアには、『箱舟』で救われた者たちだけではなく、自力でそこへ辿り着いた者や、他の十二賢者によって救われた者がいた。
 彼らは、そこで僅かな糧を奪い合い、殺し合うようになった。
 
 それを嘆いたニュンクレフは北洋に去った。サイラスの命の恩人である魔道士は、マハの残党たちから力なき人々を護って死んだ。
 両親や村の人々に続き、サイラスはまたも大事な人を失った。

 『箱舟』の乗り手で、ニュンクレフと共に北洋へ去らなかった者たち――サイラスもその中にいた――は、争い合う人々から離れ、他の争いを厭う者たちと共にアバラシア山脈の奥地に隠れ住んだ。
 サイラスは、そこで赤魔道を生み出した導師たち――マハとアムダプールの導師たち――の最初の弟子のひとりになった。

 『滅びの運命に抗うため、旧怨を捨てて手を取り合った』
 現代では、赤魔道士の端緒はそれであったと記されている。
 それは正しい。
 そこに誤謬はない。
 だが。
 この霊災を招いた二つの国の者が、自分の村を焼いた二つの国の者が、禊が済んだとでも言うように、新たな魔法体系の確立に嬉々として励んでいる。
 それは、サイラスの胸に最初の炎を宿らせた。
 それでも、サイラスが彼らに師事することを選んだのは、力が欲しかったからだ。
 苦難に打ち克つために、そして――サイラスの目的を果たすために。
 天性の才能を開花させたサイラスは、赤魔道士として人々を霊災の苦難から救い続けた。自分を救ってくれた男の遺志を継いでいる。そんな気になっていた。

 やがて赤魔道士の組織も拡充し、彼一人が飛び回らずともよい時期が来た。
 サイラスは彼の師である導師たち、マハとアムダプールの生き残りである二人の元に赴いた。
「師よ。俺はあなたたちのお陰で、力を手にすることができた。感謝している。その恩返しを、今、ここでさせてもらう」
 サイラスは、二人に戦いを挑んだ。最初、手合わせの類だと思っていた二人は、サイラスの殺意を感じ取り認識を改めた。
 この男は、本気で自分たちを――黒魔道士と白魔道士を殺しに来ている、と。
 死闘の末に、サイラスは二人を殺した。
 結局彼らは、本気で抗うときには赤魔法を使用することはなかった。彼らそれぞれの魔法を使い、マナを消費して破壊をもたらそうとした。
 サイラスはそれが哀しかった。
 しかし深く傷ついたサイラスは瀕死であった。必死でこらえ、かつて自分を救ったニュンクレフの箱舟へと辿り着く。内部には、命の恩人が遺した生体複製素体と調整槽があった。それを使い、彼は新たな肉体に己の魂を移植させた。
 誤算は、サイラスの未熟な技術と箱舟の設備では乗り換え自体に十年単位の時間が必要だったこと、複製素体の寿命が短かったことだ。
 最初の素体は半世紀をかけて移植を行い、十年ほどを生きた。以降、彼は幾度となく素体を乗り換える。

 複製技術を独学で習得しながら、世界の均衡を乱す悪を殺し続けた。残っていた魔道士たちも、クリスタルを喰らう蛮神も勿論敵だ。
 時は流れる。徐々に長く生きるようになった複製を乗り換え、彼は生き続ける。乗り換えの度に、彼は魂を消耗し続ける。
 悪夢のような第七霊災を箱舟の中でやり過ごしたはいいが、この時点でサイラスの魂はずたずただった。
 最後の群民の大掛かりな儀式を潰したところで、サイラスは心の限界を悟った。

 もう、いいか。もはやマハもアムダプールも過去のものとなった。
 グリダニアの角尊たちは白魔法を継承していたが、彼らは黒衣森と言う環境に縛られた上に、マナを浪費することを厳しく戒めている。
 ヤフェームのマハ首都や南部森林のアムダプール首都も気になるが、稼働させる人間が絶えたのだ。あのまま朽ちていけばいい。
 そうなれば、俺の役目はもう終わりだ。
 己を消去しよう、そうサイラスが決意したところで。

「本当にそう思うかい?」

 語りかける者がいた。
 『それ』は、人の形をしていたが、人ではないことを一瞬でサイラスは悟った。
 肌を見せぬフード付きのローブ、顔を覆う仮面。
 アシエン……!
 サイラスは戦慄した。アシエン――不滅なる者。闇より現れる超越者。何のために行動しているかは不明だが、彼らは歴史の陰で蠢き、人を唆し、災いを呼ぶ。各時代の霊災に関与したという説さえある、超常の存在。
 その身は漆黒のローブと黒い仮面に覆われているという。
 だが、サイラスの前に姿を現したアシエンは、灰色の法衣を着て、黒銀の仮面を付けていた。
「お初にお目にかかるね。もっとも、ボクはキミをずっと見ていたけれどね。サイラス・エインズワース」
「俺を……? アシエンが?」
「うん。ああそれと、ボクの名はグレイという。アシエン、と呼ばれるよりはそっちで呼んでほしいな」
 グレイと名乗ったアシエンは言う。
「それはそうと、ボクが思わず声をかけてしまったのはね」
 グレイは声をひそめた。
「キミが無知だったからだよ。知らないということは哀しいね」
 憐れむ口調に、枯れた魂のサイラスも苛立ちを覚えた。
「どういうことだ」
「まだ、いるのに」
「……なに?」
 グレイは、サイラスの耳元で囁く。
「マハもアムダプールも、残党はいるのに」
「…………なんだと?」
 馬鹿な。第六星歴の初期に、生き残りは虱潰しに殺してきた。その後も、黒魔法を継承していた集団や白魔法を復活させようとしていた集団も潰してきた。それも星歴千年代を過ぎたころから見なくなった。
 もはや黒魔法は絶え、白魔法は角尊の秘法となった。
 だと、思っていたのに。
「戯言をいうな天使い!」
 否定するサイラスに、グレイは言った。
「マハの主戦派残党『アビス』。そしてアムダプール主戦派残党『純潔派』。彼らはどちらも、この世界に生きて、それぞれの国家の復活を――いや、場合によってはそれ以上の災いをもたらすために動いているよ」
 『アビス』。マハ主戦派の幹部会がそう名乗っていたはずだ。そして『純潔派』。魔大戦末期のアムダプール指導者層を構成していた宗派。
 そのどちらもが、生き残っている……?
「どこだ。そいつらはどこにいる」
 ひび割れた魂に、怒りと憎悪が火を灯す。だが、もはや手遅れだった。心がその気になろうとも、魂そのものが傷つき崩壊寸前なのだ。これでは戦うことはできまい。それでも。それでも、知らずにはいられなかった。
「教えないよ」
 笑いながら、グレイはからかうようにサイラスの周囲を一回りした。床から少しだけ浮き上がっている。
「それは自分で探しなよ、サイラス・エインズワース。キミの復讐は、キミの手で果たすんだ。今までと同じだよ。地を駆け、人と混じり、天の時がもたらす幸運を逃さず掴む。そうやって『生き』なよ」
「……無茶を言う」
 自分がいまどういう状態なのか、理解できぬアシエンではあるまい。
「ただ」
 正面に立ち、指を突きつける。
「『生きる』ための手助けなら、してあげるよ」
 突きつけた指の先に灯った光が、サイラスの裡へと入り込んでいく。
「なにを……!?」
 言いかけて、サイラスは己のなかで魂が修復されていくのを感じた。崩壊寸前だった魂は継ぎ足され、気力が漲ってくる。
「キミの魂を修復したよ。『ナニ』で修復したかは、まあ聞かないでおくれよ。今のキミにとっては、動けること、戦えること――魂を燃焼させられることのほうが大事だろう?」
 頷かざるをえなかった。
「修復に使った『ナニか』には、ボクの力も入っている。キミの魂は蛮神に灼かれない。消滅へ向かって燃え続ける魂には、もはやエーテル放射など意味をなさない」
 ああ、と再びサイラスは頷いた。
 消滅に向かって燃える魂。
 そうだ。グレイの与えた力は、己の魂を最後の一片まで燃やし尽くす力だ。死は魂の消滅。星へなど還らない。
「どれくらい保つ」
「安穏と暮らすなら三十年。それなりの冒険と共に生きるなら二十年。魂を焦がすような戦いを伴うなら――十年から一瞬まで」
「上出来だ」
 つまりは、十年以下。それだけの時間で、残党たちを探し出し、根絶やしにする。できるだろうか――いや、やるしかない。
 すべての、魔大戦の生き残りを殺す。
 それだけが、サイラスの生きる理由だ。
「だが……それにしても」
 サイラスはグレイを見つめる。
「なぜだ。なぜ俺にこんな肩入れをする。そもそもお前たちアシエンは何を考えている?」
 その問いに、グレイは盛大に肩を竦めた。
「他のアシエンと一緒にしないでくれるかな。ボクは“はぐれ”なんでね。ゾディアークのために動いているワケじゃない。アーダーを起こす気もない。むしろ逆さ」
「ゾディアーク? アーダー?」
 知らない単語に眉を顰めるサイラスを見て、グレイはくすりと笑う。
「そのあたりのことは、また今度教えてあげる。ボクは、人間が好きなんだよ。この世界で一生懸命に足掻く人間が。――そして、その人間が、ごくまれに限界を超えた力を出すのを見るのが大好きなんだ。
 それをエリディブスは『人ならぬもの』だと言って疎んじるが、ボクに言わせれば逆だ。人が、今のまま、ボクらを脅かすほどの力を持つ。
 ボクはそこに、魂の可能性を感じる。
 だからさ、サイラス・エインズワース。キミの魂の燃焼を、キミの執念と生き様の燃え盛るさまを、ボクに見せてよ。そしていつか――」
 もはや声だけを残し、灰色のアシエンは姿を消す。はるか遠くから聞こえるようなかすかな囁きが、サイラスの耳に残った。

「いつか、ボクに敗北を教えてほしい」


『Sweetest Coma Again』8(後)へ続く

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