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White Knight

Juliette Blancheneige

Alexander (Gaia)

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『Fire after Fire』1(後)(『Mon étoile』第二部四章)

公開
1-4

 峡谷の奥に、崩壊した神殿の跡地があった。
 点在する石柱や土台の間を、ゴーレムたちが行きかっている。その奥の岩壁に、地下へと続く洞穴が口を開けていた。
「あの奥か」
「ええ」
 離れたところに飛空艇を止め、五人は物陰からそれを確認したところだ。
「おし、行くか」
 ハルドボルンが斧を構える。だが、リシュヤはそれに首を振った。
「いや。ここは一瞬で仕留める。――ノノノ。いけるな?」
「もち」
 即答するノノノに、リシュヤはにやりと笑みを返した。
「二人でいくぜ。消し炭だ」
 宣言してから、仲間たちに告げる。
「ぶっ放したら突入。派手に暴れて潰しながら進む。ラクヨウはその間に潜入してくれ」
「応」
「了解」
「……かしこまりました」
 返事を返した三人に頷くと、リシュヤはノノノを促した。
「いいか」
「うん」
 互いに視線を交わした後、二人は物陰から姿を現した。魔法の射程内かつ、ゴーレムの感知範囲外。そこから、呪文の詠唱を開始する。
「――」
 魔力を集中させる。自身の中で暴れるような炎を、どこまでもどこまでも圧縮するイメージ。膨れ上がる内圧を、意志の力でさらに圧縮する。
 圧縮の限界点で、一気にそれを解き放つ。叫びが、口をついた。
「「フレア!!」」
 その瞬間。
 轟音と閃光、そして衝撃が神殿跡地を激震させた。
 ほぼ同時に炸裂した二つのフレアによって、ゴーレムたちは一瞬にして消し炭と化した。リシュヤの予告通りだった。
「はっ。雑魚が」
「……!」
 当然と言った風情のリシュヤ。その横をハルドボルンたちが走り抜けていく。
「行くぜ、ノノノ」
 声をかけられて、ノノノは我に返った。慌てて頷く。駆け出す姉弟子の背を見つめながら走った。
 魔力の集中の仕方。激発のタイミング。呪文詠唱から発動までの一連の流れが、自分とそっくりだとノノノは思った。自分の魔法は師であるフィンタンの教えに依るものだ。それと同じと言うことは、リシュヤもまたフィンタンの弟子だということがノノノにはよくわかった。今までの中で、一番はっきりとそれが分かった。
 加えて、今のフレアに関して言えばリシュヤにはかなり余裕があった。ノノノの呪文完成にタイミングを合わせて発動したのだとわかった。そして、その威力も、自分のフレアよりも明らかに強力だった。
 同じ流派。同じ師の弟子。そして、自分よりも上の術者。
「ほんとに姉弟子だあ……」
 ぽつりと呟いた。千の言葉よりもたった一回の魔法で、ノノノは彼女を認めた。姉弟子だと確信した。

§

「……暇だな」
 地下の隠し神殿跡。天井がかなり高く、広さもかなりのものだ。そこかしこにベラフディアの者と思しき石像がそびえ、または壊れ、あるいは打ち捨てられている。
 アジトにしているその場所の真ん中で、犯罪者集団『黒犬一味』のリーダーであるドギー“ザ・ブラック”は大あくびをした。
 寝床として使っているテントの横に、ハンモックを吊るして横になっている。
 黒に近い褐色の肌をした、ハイランダーとしては細身の男だ。
 日没まであと数時間。
 相棒のルガディン、エインズ“ザ・ハリケーン”は相変わらず斧を振るっている。三度の飯より鍛錬が好きで、その鍛錬よりも血飛沫を浴びるのが好きというド変態女だ。
 シェーダーのジャック“ザ・ステーク”とムーンキーパーのフラン“ザ・カース”は一番奥の壊れた石像が折り重なっているところへ二人で潜り込みに行った。この男女は年がら年中サカっている。さすがに『仕事』中はほどほどにしろと以前苦言を呈した。声も聞こえる場所で喘がれてもうっとうしい。
 店側からの、身代金支払いを了とする旨の報は届かない。わざわざ連絡用のリンクパールまで付けて脅迫状を届けたのに。
 襲撃から一日経った。
 ウルダハに潜ませている部下からは、「特に話題となっていない」旨の報告を受けている。『騒ぎにすれば店主を殺す』と言った脅迫はうまく働いているようだ。
 しかし、肝心の回答が来ない。脅迫状には、今日の日没までに回答しなければ店主を殺す、と書いている。繰り返すが、日没まであと数時間だ。
「ま、来ねえなら来ねえで、サクッと殺すだけだ。そうすりゃ名が上がる。『黒犬一味』は、ドギー“ザ・ブラック”はやる男だ、ってのを見せつけられるからな。なあ店主さんよ!」
 最後の呼びかけは、振り向いてのものだ。視界の先、壁際に設けられた椅子に、人質であるゴゴロ・ゾゾロが縛り付けられている。
「……!」
 口に猿ぐつわを噛ませているため、ゴゴロは声を出したくても出せない。だが、その顔は恐怖に歪んでいた。
 げらげらと、ゴゴロを囲んでいる男たちが笑う。
「いっそ先に顔ぐらい焼いちまうか?」
 自身の呪具であり、古代ベラフディアの『守護者』と『守護将』を呼び出せる片手杖――上端がループした楕円形になっている十字型――を片手で弄びながら呟く。
 『生かして返す』とは書いたが、顔面を焼かない、とはどこにも書いていない。
 ドギーはハンモックから降りた。
 そのときだった。
 振動が地下神殿全体を揺らした。それと同時に、
「全滅だと!?」
 ドギーは愕然とした表情で天井を見上げた。彼は、ベラフディアの呪具を用いて己が創ったゴーレムの、現在位置や状況を把握することができる。その能力が告げている。
 地上を警備させていたゴーレムたちはすべて破壊された、と。
「なんだよドギー、どうなってんのさ?」
 エインズがドギーに駆け寄る。全滅という言葉が引っかかったのだろう。ほとんど同時に、石像の裏からジャックとフランも出てきていた。脱いではいないが着ているとも言い難い格好で、慌てて装備を整えている。
「上のゴーレムが全滅した」
「あ?」
「敵なの? じゃあ、殺そうよ」
 フランが散歩にでも誘うような口調で言い、笑った。ジャックが無言で頷いた。
 そこで、再度地下神殿は揺れた。今度はさっきよりももっと近くなのだろう、何かが爆発する音とほぼ同時に振動がした。しかも連続している。
 外の入り口からこの地下神殿までは一本道だが、そこには手下どもがたむろしている。その連中と、ゴーレムを一瞬で消し飛ばした連中が戦闘しているのだと思うのだが……
「お頭ァ!」
 外へ通じる扉を開けて、部下の一人が駆け込んできた。
「敵だァ!!!」
 大声で喚いた――次の瞬間。
 部下の背後で火球が炸裂し、彼は光と熱の中に消えていった。
「……!!」
 発生した大爆発は地下神殿と通路を隔てる扉を破壊した。地上すれすれで発生したため、床に堆積した砂が爆発によって巻き上げられる。わずかな間だが、地下神殿の中は砂が濃い霧のように見る者の視界を奪った。
「な……!?」
 砂ぼこりが晴れていく。唖然とするドギーたちの前に、四人の男女が姿を見せていた。
 先頭に立つ斧術士らしいルガディンの横に、顔の両側にねじくれた角のある女が立った。それから、ドギーを見て――笑った。
「よう、誘拐犯」
 にこやかに笑い、挨拶の手を上げた。その表情のまま、彼女は言った。いい天気ですね、と同等の気軽さだった。
「燃やしに来たぜ」

§

「なんだてめえ!」
 リシュヤの挑発に、黒犬一味は即座に反応した。全員が武器を抜き放つ。
「こっちには人質がいるんだよ!」
 斧を構えながらエインズが叫ぶ。だが。
「……あれ?」
 後ろを振り向いたフランがきょとんとした声を出す。
 そこには、ゴゴロ・ゾゾロの見張りをしていた手下たちが倒れており、彼を縛り付けていた椅子には誰も縛られていなかった。
「いない……」
「!?」
 思わず全員が振り向き、フラン同様に驚きで固まった。
「そんなはずは……!?」
 動揺する黒犬一味の四人。彼らは知らない。当の本人ゴゴロ・ゾゾロは、ラクヨウに抱えられて天井近くの壁にいることを。
 ラクヨウが短刀で壁を穿ち、それを支えとして壁に貼り付いている。その技もさることながら、騒ぎに乗じて雑魚とはいえ三人ほどの男たちを無音で倒し、さらにはララフェルとはいえ人一人を抱えてそこまで跳躍しているのだ。只者ではない。
「ま、いても関係なく灼いたが。いないなら加減もクソもねえ」
 両手杖を肩に担いだリシュヤが、もう片手を黒犬一家へと伸ばした。指で、差し招く動作をした。見せつけるように、はっきりと。
「来いや三下。綺麗に焼いてやるからよ」
「……上等だァ!! テメエらこそ踏み潰してやんよォ!!」
 ドギーが吠えた。エインズとジャックがリシュヤ目掛けて突進するが、その前にハルドボルンが立ちはだかった。
「行かせると思うか? オマエらの相手は俺だよ」
 ルガディンとしても巨漢であるハルドボルンが全身を金属鎧で武装すると、さながら帝国の魔導コロッサスのごとき威容となる。
 無造作に振るわれた斧の一撃。その鋭さは、まともに受ければただでは済まないことを二人に理解させた。かろうじて躱したエインズとジャックだが、この時点で二人はハルドボルンから目を離せない。
「フラン! あいつを弱らせろ!」
 ヒーラーでもあり、呪詛を扱うキャスターでもあるフランが頷く。毒や麻痺などのデバフを次々にハルドボルンへと与えるが、それは与えられる片端から無効化されていく。
「……!」
 それが、ハルドボルンの後方に立つララフェルの仕業だとフランは理解した。彼女――ファタタ・ファタは淡々としている。なにも特別なことなど起きていない、といった風だ。
「ハッ! 黒犬一味はここからなんだよォ!」
 ドギーが叫び、呪具を掲げる。神殿の壁際に立っていた石像――古代ベラフディアの闘士然とした、両手に巨大なメイスを持ったゴーレム『守護者』と、剣と盾を持ち黄金色に輝くゴーレム『守護将』が、轟音を立てて動き出した。
「行けよ『守護者』! 『守護将』! ぐしゃぐしゃにしてやれ!」
 ドギーの魔力で操られた二体は、地響きをさせながら猛然とハルドボルンへと襲い掛かる。
 四対一。しかも二体は大型のゴーレム。
 それらすべてを相手取り、ハルドボルンは――
「がはははッ!!! どうしたぁ!? 思い切りが足りねえなあ!」
 笑いながら敵の猛攻をいなしていた。
 それはハルドボルンをが凄まじくタフであること、防御技の使いどころが絶妙であることを示していた。が、それだけではない。
 彼の周囲を、光に包まれた小さな人型の魔法生物が飛ぶ。学者の使い魔、フェアリーだ。
 フェアリーがもたらす癒しの魔法。それから、ファタタの施す障壁と治癒魔法。それらが絶妙な間隔で挟み込まれ、ハルドボルンを支えている。
「こいつ……バケモノか!?」
 同じ斧術を使う者として、エインズは恐怖すら覚えて眼前の斧術士を見る。兜の奥で、その瞳が赤く輝いたように見えたのは気のせいだろうか?
「くそッ! どうなってやがる!?」
 呪具を掲げたドギーが焦る。ゴーレムを操っている間は、それ以外の行動ができない。
 黒犬一味が動揺する中、ハルドボルンは笑い――突然走り出した。
「!?」
「だーはははは!!」
 全身を金属鎧に包んでいるとは思えないスピードで、ハルドボルンはドギーめがけて突進した。突進しながら投げ斧を投擲。やや離れたところにいたフランへと命中させる。
「う……!」
 そこへ、エインズとジャック、それから『守護者』と『守護将』が雪崩れ込んでくる。たちまち、そこは戦闘の中心地となった。
「はい、敵は全員集めたわ。あとは好きにして」
 今もハルドボルンを支えながら、こともなげにファタタが言う。
「おう。あとは任せな」
 リシュヤが鷹揚に言い放つ。それからノノノへ、敵の一体――『守護将』を指さして見せた。
「見たとこ、一番タフなのはあいつだ。それに、アレは術者が死んでも動くタイプだ。一番めんどくせえ。周りはあたしがやる。アレは、オマエがやれ。どれくらい灼けるか、あたしに見せてみな」
「……分かった」
 ノノノは神妙に頷いた。ここは、本気でやらなければならないところだ。
 二人は同時に杖を構えた。息を吸い、止め――同時に詠唱を開始した。
「フリーズ」「ブリザガ!」
 範囲と単体、二つの氷撃魔法が戦場に降り注いだ。
 二人同時に魔法ダメージを上昇させる技『エノキアン』を使用し、
「サンダジャ」「サンダガ!」
 二つの雷撃が荒れ狂う。
「ファイガ」「ブリザジャ!」
 リシュヤは『守護者』へと、星極性の引き金となる火炎魔法を唱えた。一方ノノノは、魔力の消費を抑制する効果を自身へ付与するために、最上級の氷結魔法を唱えた。
「『三連魔』――フレア!」「ファイガ!」
 熱と光の暴虐が荒れ狂う。リシュヤは詠唱無しで三つの魔法を唱えられる『三連魔』を使用してのフレア。ノノノは一手前のリシュヤと同じ、星極性へ一気に偏らせるためのファイガ。
 ここから先は――二人の黒魔道士による、ほとんど一方的な殲滅だった。
 フレアがさらに二回。『守護将』には、さらにノノノのファイジャが三回。
 ――すごい。リシュヤの魔法を見て、ノノノは改めて感嘆する。わたしが知らない技術、知っているけど何倍も上手な技術。ハルドボルンとファタタによって、相手がほぼ固められて木人に等しい状態ではあるが、それゆえにノノノは間近でリシュヤを観察できた。
 リシュヤは笑みを浮かべない。
 戦う前までどれだけ傲岸不遜で勝ち気に笑っていても、始まれば表情は消える。
 殺意。決意。読み取れるとすれば、そういうものだ。鋼の意志が、殺戮のハンマーを振り下ろす覚悟となる。
 わたしはどうだったか。
 そんな覚悟もなく、この破壊の力を振るっていなかったか。
 この力は、剣や槍とは違う。肉を裂き、血を浴び、死を与える感覚を体感したりしない。
 だから。
 尚更必要なのだ。
 殺意と覚悟が。

 不意に、ファタタが言った。
「終わりね。……もう、燃やすものは何もないわ」
 戦場を指さす。
 ゴーレムは完全に破壊され、黒犬一味は誰一人として生き残っていなかった。
「雑魚が。まだ一巡しかしてねえ」
「こっちはまだ一巡も終わってない」
 同時に不満を表す二人を――特にノノノを、ファタタは眉を顰めて見つめた。
「貴方……本当にリシュヤの妹弟子ね。そういうとこそっくりだわ」
「へ?」
「そうか?」
 互いに顔を見合わせる二人。それを見てファタタは肩を竦めた。
「ま、相手が弱すぎたわね」
 二人に背を向け、いつの間にか降りているラクヨウとゴゴロのほうに向かいながら、
「『次』はこんな楽じゃないから。覚悟しておいて」
 釘を刺すように言った。
「はっ、違いねえ」
 リシュヤが笑って肯定する。
「『次』は『アビス』とやる。今回とは別の『網』に引っかかってきそうだからな」
 そう言った時には、もうリシュヤは笑っていない。
「ノノノ」
「うん」
「気付いてたか? オマエを連れてきて、普段は参加しねえラクヨウを除いて、四人だ」
「……いつも三人で、その都度補充してるのかな、とかちょっとだけ思った。でも、違うと思い直した。毎回『アビス』のことを説明して信じて貰って、って手間はかけられない。
 もう一人、いたんだね」
 ノノノの指摘に、リシュヤは少しだけ目を閉じて、ああ、と肯定した。
「シルヴェーヌっていう槍術士がいた。シェーダーのクセに底抜けに明るいバカ女でな。『アビス』には恨みも何にも無えが、気が合った。腕も立った。ソイツがいるだけで、場が明るくなったよ。
 だが、死んだ。殺された。――仇も討ててねえ」
 リシュヤは表情を浮かべない。無表情で、淡々と語る。だが、ノノノには視えていた。
 燃え盛る彼女のエーテルが、胸の裡から溢れ出す炎が、怒りと悲しみを湛えている。
 大好きだったのだろう。
「オマエの面倒を見てくれってクソ師匠から頼まれたとき、正直断るつもりだった。こっちは仲間殺られてんだ。ガキのお勉強に付き合うヒマなんかねえって思った」
 それは、そうだろう。自分の仲間が殺されたと考えたら一瞬で分かる。無理だ。自分でも断ると思う。
「けど、オマエの事情を聞いて気が変わった。
 コイツは必ず『アビス』と関わる。絶対に殺し合いになる。……だったら、今のうちに、『アビス』との戦い方を叩き込んでおいたほうがいいんじゃねえのか。そう、思った」
「うん」
 リシュヤはノノノを見た。ノノノもリシュヤを見た。
「『アビス』の奴らはクソ以下のドクズだ。現世人なんざ材料程度にしか思ってねえ。そのクセうんざりするほど強え」
「……うん」
「奴らを追い詰める過程で、ヒトの腐ったトコも見る。差し伸べた手なんざ掴まれて刺されることもある。報われた試しがねえ。何度か一緒に灼いた」
 乾いた笑いが、小さく漏れた。
「あたしは自分で言うのもなんだが、イカれてると思うよ。黒魔法しか知らねえ。やれるのはコレだけだ。『どうすりゃあより疾く確実に殺せるか』、コレしかねえ」
「うん」
「……けど。コレに関しちゃあ、師匠以外に負ける気がしねえ。負けちゃいけねえとも思ってる。だから。だからさ」
「わかってる」
 ただ見つめるだけではなく。瞳に覚悟を込めて、ノノノは決然とリシュヤを見た。
「だから、わたしに教えてよ。わたしの前に立ちはだかる奴らを燃やす方法を。もう、誰にも負けたくないんだ……!」
「……」
 リシュヤは少しだけ目を閉じて、それからノノノをまっすぐに見つめた。ノノノは逸らさない。もう一度目を伏せて、それからリシュヤは笑った。
「いいぜ。姉弟子らしいコトしてやろうじゃねえか。ゴリゴリしごいてやるよ。こんなザコどもじゃねえ、マジの死闘ってやつでな」
「うん。期待しかない!」
 ノノノも笑った。どちらともなく手を伸ばし、その手を互いに打ち付け合った。
「終わったかしら?」
 地下神殿の入り口で、救い出されたゴゴロを含む四人がこちらを見ていた。
「いや、見せ物じゃねえよ。見てねえで先に行ってろよ!」
 厭そうにリシュヤが怒鳴った。照れているのが丸わかりだった。
 ハリドボルンが豪快に笑う。ファタタは少しだけだが微笑んでいる。ラクヨウはいつもの通りの笑顔だ。ノノノも笑った。
 彼ら『アージ』は、地下神殿を出て、飛空艇でウルダハへと向かった。

1-X

 誰もいなくなった地下神殿に、魔力のゆらぎが生まれた。
 ゆらぎはやがて空間を歪め、ぱくりと開いた。
 中から現れたのは、黒衣の女だ。黒曜のような黒髪は肩口で切り揃えられ、真っ白な肌をより目立たせている。ミコッテのようだが、種族は判然としない。釣り目気味の目の中で、真っ赤な瞳が周囲を見渡した。
「おやおや。文字通り“消し炭”ですねえ」
 ドギーたちの焼死体を見下ろして、女は嘲る。
「けど、魂そのものまで破壊されたわけじゃありません」
 女の掌に、七色に輝く小さな水晶片があった。それが、ひとりでに浮き上がると、ドギーたちの死体へと入り込む。

「さあ、起きてください」
 
 その言葉と同時に、ドギーたち四人の死体――死体だったモノが、唸り、苦悶の声を上げた。
「あ……あ……痛てえ……」
「……いや……死なせて……」
「もう……いやだ」
「……治してよう……」
「起き上がったら治してあげますよ。甘えないでくださいね」
 にこやかに女は言った。四人は、震える声を上げながら起き上がろうとする。
「ふむ」
 女が指を顎に当てて、思案顔になる。
「興が乗りました。今回は、リセットせずにそのまま継続してみましょう」
 その言葉のなか、黒犬一味の四人はよろよろと起き上がっていた。ボロボロと炭化した部分が剥がれ落ちるが、その下から新たな皮膚が――無傷のそれが姿を見せていた。
「リミッターも解除してあげます。リベンジしましょう、オートモッドくん」
 女は笑った。真剣さよりも好奇心と思いつきに彩られた笑み。

 地下神殿に、四人の苦悶の声と、女の笑い声が響いた。
 
『Fire after Fire』2へ続く
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