「偽りに救いなんてない。
私たちが求めているのは、過去じゃなくて未来を生き抜く強さだ」
その言葉は、光のように心を貫いた。
どんなに厳しい現実でも、リセは仲間と共に戦い抜いてきた。
未来がまだ霧の向こうにある不確かなものだとしても、彼女はその霧を振り払い、前へ進む。
その夜、宴が始まった。
温かい料理が次々と並び、香ばしい匂いが辺りを満たす。
メ・ナーゴの母ハトアが振る舞う料理はどれも絶品で、自然と心がほぐれていく。
リセは料理を口に運び、満足そうに笑った。
だが、その笑顔はふと遠い記憶に沈む。
「父さんが狩ってきた獣の肉を、香草で焼いて食べてたんだ……」
どこか懐かしげな声には、少しの寂しさが滲んでいた。
「母さんは早くに亡くなったから、イダ姉さんが料理をしてくれてね。決して豊かじゃなかったけど、笑顔が絶えない家族だったんだ」
彼女の瞳が揺らぎ、そして硬い決意へと変わる。
「でも、そんな小さな幸せさえ、暴君と帝国に奪われた……。自由のために戦った父さんも、イダ姉さんも、もういない」
場を静寂が包む。彼女の拳がわずかに震えた。
「もし、本物の神様がいるなら……こんな世界をどう思うんだろうね」
だがその問いに答えを求めるわけでもなく、リセは笑った。
「でも、アタシたちは戦うよ。この悲しみの連鎖を、どこかで止めるために!」
その言葉に、誰もが頷いた。
リセの決意は、共に戦う仲間たちの心に深く響いていく。
夜が更ける頃、リセは静かに席を立った。
「明日も厳しい戦いが待っているけど……がんばろう。おやすみ」
その背中は、確かな未来を信じていた。
偽りの夢ではなく、現実の中で――新たな未来を掴み取るために。