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❖ ノアの仲間たち — 自由のために

公開
石の家に戻ると、待ちわびていたかのようにシドが現れた。

忙しい合間を縫って駆けつけてくれたらしく、グ・ラハ・ティアと固い握手を交わす姿に、胸の奥が温かくなる。

アラグの球体──“玉っころ”に隠された情報。

その解読を進める中で、辿りついた答えは、驚くほど簡潔なものだった。

パスワードは「自由」。

解放された記録には、かつての魔科学者オーエンによる研究が刻まれていた。

闘神の加護を浴び、魂そのものが歪められることで生まれる「汚染者」──

今でいうテンパード化の原理を解き明かし、遮断する素材までは開発したものの、治療法を求めた彼は弾かれ、追放されたという。

ページの行間に滲む悔恨。

それでも未来に希望を託すように記された言葉を、わたしたちは黙って受け止めた。

「魂を活性化し、自我を呼び戻す……だが、信仰心まで増幅させては意味がない」

グ・ラハ・ティアの思案に、アリゼーも深く頷く。

アラグの記憶継承術を応用し、活性化すべき記憶を選り分けられれば──

偽りの信仰を取り払い、本来の意志を呼び覚ます道が拓けるかもしれない。


難題に思えたその試みも、シドの発想で一歩進んだ。

魔導端末を使い、膨大な術式を短時間で試し続けることができるというのだ。

「技術は自由のために」

グ・ラハ・ティアとシドが交わした言葉は、単なる研究を超えて、ひとつの信念として胸に残った。


レヴナンツトールに工房を整え、仲間たちの手を総動員する段取りが決まる。

その熱意に引き込まれながら、わたしもまた力を尽くそうと心に決めた。


自由のために。

そして、テンパードとなった人々を救うために。
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