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Yuki Nekomiya

Chocobo (Mana)

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小話: 騒々しくも愛しき日々よ 5話

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 ほう、と吐き出したツァスの白い息が、暗い夜空に溶けていく。吹き付ける潮風は身を切るように冷たいのに、不思議と寒さは感じなかった。
 チョコボキャリッジが行き交えるほどに広いオシュオン大橋の上は、いまや賑わう人々の姿で狭く感じるほどだった。流麗な音楽を奏でる吟遊詩人、その音色にうっとりと耳を傾ける恋人たち。精力的に客を呼び込む商人たちが露店を並べる前を、多くの客が思い思いに立ち止まり、また歩いていく。
 『青空市』と聞いて、再会の市のようなものかと思っていたのだが、その活気は予想以上だった。出来立てアツアツのフリカデレに舌鼓を打つ人、久々の再会を喜び合う冒険者たち。人々の熱気が渦をまいて、目が回りそうだった。おかげで、露店の冷やかしをほどほどに切り上げ、冷たい石の橋に背をもたれかけて休憩を決め込む始末だった。寒さなど感じている暇はない。
(みんな楽しそうだな)
 くすりと笑みが浮かぶ。
 ツァスにこの催しものを教えてくれたのは、ハルドクールだ。てっきり自分と同じ客として来ているのかと思いきや、露店を出す側だったのを見て驚いたものだ。行列ができててんやわんや、というほどではないが、かといってのんびりできるほど暇ではない、という絶妙な塩梅で客が訪れているようで、なかなかに忙しそうではあった。何か手伝えることがあればとは思ったものの、かといって何ができるかといえば首をひねるしかなく……結局、邪魔にならないよう早々に立ち去るほかはなかった。
 日ごろは目立つハルドクールの大柄な姿も、今は人の波に埋もれてしまって、見つけることができないぐらいだ。きっと休む間もないだろうから、あとで何か温かい食べ物を持っていったほうがいいかもしれない。
「……あ」
 ぼんやり夜空を眺めていたツァスの視界の端。人々の頭上をかすめるようにして、星がひとつ流れて群青の夜空に白い軌跡を描き、一瞬で薄れた。すぐに消えてしまう微かな奇蹟、何か願いをかけるいとまはなくて、気づいた人もきっと少ない。
 それでも、確かにそれは在ったことを、少なくともツァスは知っているから。
(どうか、良き年でありますように)
 市(いち)の閉会を告げる声を遠く聞きながら、そう祈った。
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