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Once Upon a Time in Eorzea―黄金の炎―(前編)「3、痕跡」

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   3 痕跡

 世界最大の大陸――三大州。
 その西端に位置する〈アルデナード小大陸〉と〈バイルブランド島〉をはじめとした周辺の島々は濃密な[環境エーテル]に満ち溢れ、それによって育まれた極彩色の大自然とその下に眠る豊富な資源の恩恵の下で多種多様な種族が営みを送っている。
 そんなこの大地を人々はこう呼ぶ。
 神々に愛されし地[エオルゼア]と。
 [エオルゼア]は五つの都市国家で構成されていた。
 殺伐とした荒野と見渡す限りの大砂漠にかしずかれたウルダハ、鬱蒼とした深い大森林に取り囲まれたグリダニア、寒々しい霧と分厚い鉄の門に閉ざされたイシュガルド、峻険なる山脈の中に横たわり、現在はガレマール帝国の占領下にあるアラミゴ。
 そしてここ、広大な青い海に抱かれたリムサ・ロミンサである。
 陸路、海路、空路。どういったルートでやって来るにせよ、〈バイルブランド島〉南西の沖合いに築かれたこの都をはじめて望む者は、その景観に目を見張ることであろう。
 上甲板層と下甲板層と呼ばれる二つの広い階層で構成された街並み。島の陸地と都とを結ぶ長大な黒いアーチ橋。海面から突き出た岩礁や、顔を出した小島の上に天を突くようにして建てられた歪さと無骨さと壮麗さが渾然一体となった建造物群。林立するそれらの間には鉄橋が架けられ、太く頑丈なロープが建物各所に打ち込まれた金属の輪を介して、海中に繋ぎ止めるかたちで宙に張り巡らされていた。吹きつける強風と猛る荒波に耐え忍ぶことができるように。
 埠頭には漁船、交易船、軍艦といった大きさも目的もバラバラの船舶が今すぐにでも大海に繰り出さんと、色とりどりの帆を誇らしげに張って列を成していた。工房の入った建物からは鉄を打つ音が軽快なリズムを刻んで響いてくる。威勢のいい啖呵が飛び交う商通りには[ヒューラン族]や[ミコッテ族]をはじめとした人種だけでなく、他の都市では見かけない、ネズミを思わせる姿をした[キキルン族]や低い背丈に奇妙なマスクを被った[ゴブリン族]、爬虫類のような容貌の[マムージャ族]といった獣人たちも肩を並べて闊歩し、都に自由な気風を吹かせていた。
 かつてはその強行的ともいえる植民地政策と海賊行為によって周辺諸国に悪名を轟かせた「無法者の都」。
 現在は現首長のメルウィブ・ブルーフィスウィン提督が提言し、実行した数々の政策が功を奏し、国内外から「海の都」と謳われるまでになった。
 しかし、その内部は外観とは対照的だ。連綿と続いてきた無計画に等しい区画事業がたたったせいで、居住区と商業区が工業区が複雑に入り組んでおり迷いやすいことこの上ない。それに加えて、ここもミスト・ヴィレッジと同様に階段と坂道が多く、土地勘が無く歩き慣れていない者にとっては行き来が辛い構造となっている。
 エリスが暮らす部屋へ通じる扉もそんな区画の中を走る螺旋状の通路の途中にあった。

                      ◆
 
 「おじゃましま~す」
 溌剌とした声がランタンの明りで照らされた通路に反響した。
 表札をぶら下げた木製の扉が押し開かれ、ルルカは行進するような足取りで薄暗い室内へと足を踏み入れた。セラとエリスもその後ろへと続く。
 板張りの長い廊下が真っ直ぐに伸び、その先は廊下を間に挟んでリビングと寝室とに分かれていた。
 「カーテンを開けてきますね」
 エリスは早足気味にルルカを追い越すと、リビングに入り、窓を覆っていたカーテンをスライドさせた。
 いまは時計の針が北北東の方角を指す時刻。僅かに西に傾きかけた太陽に照らされてリビングの様子が日の目に晒される。
 「ここがエリスちゃんの部屋か~!」
 ルルカが翡翠色の瞳をキラキラと輝かせながら言った。
 エリスはというとルルカたちから視線を外し、肩を縮こまらせて絡めた両手の指を閉じたり開いたりしている。
 リビングは混沌としていた。
 中央に置かれた木製の長テーブルにはサイズもバラバラの書籍が雑然と積み上げられ、リムサ・ロミンサのグローバル情報誌「ハーバーへラルド」のバックナンバーが幾重にも重ねられてなだらかな丘陵地帯を形成していた。チラシの束がテーブルのあちらこちらに散らばり、中には裏に何かのデッサンをしたものが描かれているものもあった。
 リビングの入口近くには木の車輪がついた小さなテーブルと背もたれのついた椅子、イーゼルが置かれていた。イーゼルには真っ白い厚手の粗布を張った木の板が立てかけられていた。車輪付きのテーブルの上には白い布キレを巻きつけたコンテ、油絵の具が塗りたくられたパレット、油で満たされたガラス瓶、黒ずんだパンの切れ端らしきもの、端を反り返らせた絵の具のチューブ、人体の構造をデフォルメ化した木製の人形、何かの容れ物を流用したと思しき円柱状の金属製容器が所狭しと置かれていた。容器の中には平筆と丸筆が数本、平刷毛、羽ぼうき、パレットナイフが麦藁を束ねるようにして突っ込まれている。
 壁に目を向ければ、粗雑な作りをした奥行きのある木製の棚が二つ並んでいる。中にはイーゼルに立てかけられている物と同様のものが隙間無く差し込まれていた。そこから溢れ出たものは床に直に置かれて壁に頭をくっつけて天井を仰いでいる。色が塗られているものあれば、下書きだけで終わっているものもあった。
 「部屋はここと寝室、それに途中で見た浴室。これで大丈夫かしら?」 
 セラが寝室の方に目をやりながらエリスに問う。
 「そうです」
 「部屋の中は全て見ることになるけど問題ない? それと家具を動かすときに手伝ってもらうことになるかも」
 「はい。大丈夫です」
 エリスは頷いた。船の中で大まかな説明はセラから聞いていた。
 [妖異]と呼ばれる存在が残した痕跡。それを探すのがいまから行うことだった。
 セラは床に鞄を置くと、リビングへと視線を巡らせながら指を鳴らした。個人的に部屋の捜索は人の秘密を暴くようであまり気が進まないのだがこれも仕事だ。
 「さ、始めるわよ」
 セラはルルカに目配せをした。
 「は~い」
 「お願いします」
 エリスはセラたちに深く頭を下げた。 

                      ◆

 作業自体はエリスの積極的な協力もありスムーズに進んだ。
 だが現状は収穫ゼロ。絵を引っぱり出し、家具を動かし、床の隅、テーブルの下、本と雑誌の裏、棚の中とその後ろ……。くまなく探したがそれらしいものは欠片も発見できずにいた。
 「ここも無しか……」
 セラは棚の後ろを確認し終えると屈めた背筋を伸ばした。右手に肘を乗せ指で頬を叩く。
 「痕跡ってどういうものなんですか?」
 エリスが問いかける。
 「五感に訴えてかけてくるようなものね。視覚、聴覚、臭覚、味覚、触覚。あなたが部屋で感じた蒸し暑さや、焦げた臭いといったものがそれに当たるわね」
 「てっきり、魔力って呼ばれているような目に見えないものを探すと思っていました」
 「たしかに私やルルカは魔法を扱うために[エーテル]――つまり魔力を感知する能力を高める修行を積んでいるのだけれど、妖異はその魔力を隠す能力に長けているの。その反面、気配隠して証拠隠さずって言えばいいのかしらね。彼らはさっき挙げたようなものを必ずと言っていいほど残していくのよ。一部には何かに擬態するも者もいるし、性質の悪い者になると疫病を撒き散らして行く者もいるわ」
 「疫病……。そんなものまで」
 慄くエリスにセラは頷いてみせた。
 「痕跡は視覚だけに限定するなら奇妙な落書きや口紅の跡、灰、羽毛、染み 粘液、手形、足跡、花びら、引っかき傷……。他にも色々とあるのだけれど大体そんなところかしら?」
 セラは一拍置いてから口を開いた。
 「正体がわかっていればギルドが支給してくれる道具を使って姿を炙り出せるのだけれど、いま私たちがやっているのはその前段階。屋敷で話してくれた情報だけだとまだ不足しているから、目に見える痕跡を見つけて、そこから[妖異]の正体を導き出す作業ね」
 話しているそこへルルカが戻ってきた。
 「こっちはダメ~。全部探したけど見当たらない」
 「すみません。どこの部屋も散らかってて……」
 なんだか部屋の片付けもついでにさせてしまったようで悪い気がした。
 「いやいや、全然! 前に都の近郊にあるゴミ屋敷を掃除したことがあるの。そのときはすごかったよ。家の中はまるで魔女の大鍋。カーペットをひっぺがしたらもう大変。ブリ虫が水の入ったバケツをひっくり返したみたいに一気にぶわ~って!」
 ルルカはエリスに腕を大きく広げて見せる。 
 「生まれて初めて『ギャー!』って叫び声が出ちゃった。そこに比べればエリスちゃんの部屋は天界だよ」
 「そ、そうなんですか……」 
 エリスは引きつった笑みを浮かべた。何だか比較対象が大きすぎるような気もするが……。それにしても、羽を振るわせながら飛んでくる大量のドクロ顔をした甲虫の群れ。想像するだけで恐ろしい光景だ。
 エリスとルルカの話を背で聞きながら、セラは腕組みをして考えていた。きっと見落としている場所があるはずだ。
 もう一度、部屋全体へと目を走らせる。床、壁、家具の上、そして天井。
 すると視界の隅――部屋の中央から少し離れた天井に奇妙なものを見つけた。
 ある一部分に何か黒く小さな物が張りついている。
 セラは眉をひそめると後ろの二人に手招きした。
 「ちょっといいかしら?」
 「はい?」
 「ん~?」
 「あれが見える」
 セラは先ほどの箇所を指差した。
 ルルカは手びさしを作り「カビ?」と小首を傾げた。だがこのところ〈ラノシア〉は晴れ模様が続いていたし、まだ湿気が猛威を振るうような季節ではない。
 「エリスさん、脚立か何か上がれるものはある?」
 セラはエリスへと顔を向けた。
 「いま持ってきます」
 エリスは答えると小走りにリビングを出て行き、折り畳み式の木製の脚立を抱えて戻ってきた。脚立には三段の足場がついていた。
 セラはエリスから脚立を受け取ると、脚を開いて件の箇所から少しだけずれた位置に置いた。
 ローブの裾を翻して踵を返すと床に膝を着き、鞄からコルクで栓をした小さな空瓶を一本取り出す。腰に帯びたベルトに差し込んだ革製の鞘からは手の平に収まるサイズの短剣を抜き出した。コルクを外し、それらを持って立ち上がると、脚立のもとへ歩いて行って段に足を乗せる。
 三段目まで上がると、右手に持った瓶を黒い箇所の真下に置き、左手に持ったナイフの刃を慎重にそれに滑らせた。
 カビではない。炭かそれに似た何かだ。天井からボロボロと剥がれ瓶の中へと落ちる様子を見ながらセラは思った。
 これでいいだろう。セラは天井からそれを綺麗に削ぎ落とし終えると、目を伏せて細く息を吐いた。
 脚立を下りて、すっかり片付いた長テーブルの上に小瓶を置く。
 「何だろうこれ?」
 テーブルの縁に手を突き、ルルカは目を細めた。
 「それを今から調べる」
 セラは鞄の中を漁ってさじを持ってくると、長テーブルの上に整然と積み重ねられたチラシの山の上から一枚手に取る
 「このチラシ、いただいても構わない?」
 エリスは緊張な面持ちで頷いた。
 セラはさじを小瓶の中に差し入れると、天井に張り付いていたもの少量だけすくってチラシの上へと落とした。細かな粒子が散らばる。
 試しにさじの腹で擦ってみる。粒子が潰れ紙の上に幾筋もの黒い尾を引いた。
 「炭だと思ったけど、どうやら煤のようなものね」
 「どうしてこんなものが天井に……」
 エリスは掠れた声で呟いた。不可解の一言だ。
 「間近で見たけど」セラは天井を振り仰ぐ。「焼けたり焦げたりした後は特に見当たらなかったわ。悪戯と考えるには凝りすぎてるし視認性が皆無だから可能性としては極めて低い」
 「じゃあ!」
 ルルカはセラの方を振り返る。
 「ええ」セラは返事に確信の色を込めた。「妖異が残した痕跡と見て間違いないわ」
 窓ガラスが作った格子状の陽だまり。その中を海鳥たちの影が羽ばたきの音と共に駆け抜けていった。
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