「おのれ、これほどまでに使えぬ体だとは!!」
先ほどまでの余裕はどこへやら、ラハブレアは焦りの表情を見せる。
「簡単に手にはいるモノってのは、大抵役にたたないってのが世の常だ!勉強になったなラハブレア!」
キリシロが煽るようにラハブレアに言葉と刀を向ける。
「くっ……いいだろう。今回は敗けを認める。しかし、心せよ。闇は常に有ると言うことを」
サンクレッドの体から、ドス黒いエーテルが飛び出す。
あれがアシエン・ラハブレアの本体なんだろう。
エーテル体となったラハブレアは、そのまま空気に溶けていくように退散していく。
あとに残ったのは、パチパチという火の粉が弾ける音と焼け焦げた鉄の匂いだけ。
構えていた武器を下ろす。
「これで、作戦完了。皆お疲れ様」
「限りなく奇跡に近い勝利といったところかね。はぁあ、戦争ってのはこれだから」
キリシロは大きなため息をついて刀を納める。
鍔が鞘に当たるスチャッという音がなると同時に、床下で大爆発が起こった。
究極魔法アルテマの影響で損傷していた土台の上で、アルテマウェポンとの死闘を演じたせいだろう。
基礎が砕け散り、足場が急激に傾く。
「やっばい!走れ走れ!!せっかく勝ったってのに、落ちて死んだらせわねぇぞ!!」
焦るキリシロの声を聞いて、全員傷だらけの体を動かして全力で走る。
少し心配だった意識のないサンクレッドは、ヴォルフガングが背負って走っている。
ここまで戦って来てよくそれだけの体力が残っているものだ。 尊敬する。
もう一度大きな爆発と揺れ。
余裕ぶってヴォルフガングを見ている場合じゃない。
「やばい!死ぬ!やだ!!」
思わず情けない声がでた。
「いいから黙ってはしれぇぇえええ!!!」
「そういうキリシロが一番うるさいじゃないか!!」
騒がしく声を荒げて、崩れていく魔導城の出口を目指す。
青燐水に引火したのか、爆発はどんどん勢いを増しながら私たちに迫ってくる。
本当にやばい!
血眼で走っていると目の前に、煤にまみれた魔導アーマーが見えた。
「あれだ!魔導アーマー!!」
「あれ、使えるのか!?」
アルビオンが問いかける。
「わかんないけど!走ってたって逃げ切れないじゃん!!」
走っている勢いのまま、魔導アーマーに飛び乗る。
機器を確認し、動力に火を入れる。
少し異音がするが問題なく動かせそうだ。
「よしいける!皆早くのって!」
「さすがにこの座席に七人は大分無理がないか?」
「じゃあアルビオンは走ってく?」
「・・・・・・大人しく掴まっとくよ」
全員が魔導アーマーに飛び乗った瞬間に、操縦悍を前に倒す。
臨界ギリギリのフルスピード。
嫌な異音を発しながら、魔導アーマーは駆け抜ける。
しかし、魔導アーマーのスピードを持ってしても、爆炎を引き離すことができない。
「ダメだ追い付かれるッ!!」
キリシロが叫ぶその言葉は爆発音でかき消され、誰の耳にも届くことなく魔導アーマーごと全員炎の渦に飲み込まれた。