キャラクター

キャラクター

Xeno Smith

Gungnir (Elemental)

このキャラクターとの関係はありません。

フォロー申請

このキャラクターをフォローするには本人の承認が必要です。
フォロー申請をしますか?

  • 0

【小説】名も無き君に、せめてもの祈りを

公開
「なん……だ、これは……」

グリダニアへと向かう道の途中、大きな川に架けられた橋の上で、男は呟いた。
眼前に広がる異様な光景に、思わず足を止める。
上流で大規模な戦闘があったのだろうか、流されて来た無数の屍体が、男が今立っている橋の下に転がってた。

ここ、黒衣森はイクサル族からの脅威に晒され続けている。
イクサル族と人類の争乱は年々激しさを増していき、ついに黒衣森に住う人々に避難命令が下された。
男はウルダハの生まれで、黒衣森に住む幼馴染みをウルダハへ避難させるためにやって来た。

だからこんな所で立ち止まっている暇はない。
次のウルダハ行きの飛空艇に乗れなければ、その先の出航はひと月も先になってしまう。
だが、それでも足を止めずにはいられなかった。
無数の屍体に、ではない――そんなものは、ここではもう飽きる程見た。
その中のひとつが、明らかに異常だったのだ。

浅黒い肌は至るところに傷があり、血で汚れている。
長く伸びきった金髪は身体中に絡まって、まるで本人を縛る鎖のようだった。
そしてその頭には同じ金色の耳が、尻には金色の尻尾が伸びている。
ミコッテ族の男だ。

否、ただのミコッテ族の男の屍体ではなかった。
その屍体が身につけている物は、その横にあるイクサル族の屍体が身につけている物と同様だった。
絡まった金髪の隙間からは、イクサル族が信仰する蛮神、ガルーダの紋章が刻まれた刺青が見える。

(どういう事なんだ……? この男は、イクサル族として戦っていたのか……?)

疑問に思うも、その答えを知る者はいない。

「どうしたの、ディルク?」

呼び掛けられて、男――ディルクはハッと振り返った。
マントを羽織った細身の女性、幼馴染みである彼女が不思議そうにこちらを見つめていた。

彼女の父親は、鍛治職人だった。
イクサル族との争乱激化の中でも、ここ黒衣森で武器を打ち続け、それを鬼哭隊や双蛇党へ卸していた。
だが、ある日の納品の時にイクサル族に襲われ、一人娘を遺してこの世を去ってしまった。
ディルクの父親はウルダハの採掘師で、彼女達親子とは家族ぐるみの仲だった。
「もしも自分に何かあれば、娘を頼む」と、過去に父親から託されている。
だからこそ、こうして彼女を迎えに来たのだ。

「何かあるの?」
「いや、何でもないよ」

この光景は見せまいと立ち塞がろうとするディルクの脇を、幼馴染みはするりと通り抜けてしまった。
橋の下の様子に気づいたのか、彼女は弾けたように走り出した。
そして、橋の欄干から身を乗り出すように、眼下の様子を喰い入るように見つめ出した。

「馬鹿っ……! 見るな、シオン!」

ディルクは慌てて幼馴染み――シオンの元へ駆け寄り、その肩を掴んだ。
だが、シオンはびくりとも動かず、その屍体の群れを見つめていた。
不審に思い、ディルクはシオンの顔を覗き込みぎょっとする。
その両眼からは、静かに涙が流れていた。
そして気づく。
シオンが見ているのが屍体の群ではなく、あの奇妙なミコッテ族の屍体ただ一点であることに。

「シオン……知ってる奴なのか?」

問いかけると、シオンは小さく首を横に振った。

「わからない……わからないけど、涙が止まらないの……」

震える声でそれだけ呟くと、シオンは再び押し黙り、涙を流し続けた。
その様子を見守っていると、ぽつり、ぽつりと雨が降り始めた。
遠くで雷鳴の音が聞こえている。

「急ごう。雨も降ってきたし、身体に障るだろう。お前に何かあったら、俺は親父さんに顔向けができない」

ディルクが促すと、シオンは小さく頷いた。
そして首の後ろに両手を回すと、掛けていたロケットを外した。
生まれてくる時に亡くした、シオンの母親の形見だと聞いている。
中には彼女と同じ名前の押し花が収められている。
シオンはそれを橋の下に落とすと、両手を組み、静かに目を閉じた。

「……忘れないわ、あなたのこと。あなたが……ここにいたこと」

そう呟いた後に、聞こえない程の声で、ぽつりと何かを言った。
「ごめんなさい」と唇が動いているように見えた。

「……行きましょう、ディルク。生きるのよ、私達は」

フードを被り、再び歩き始めたシオンに頷き、ディルクも荷を背負い直し歩き始める。
ふと先程の遺体を一瞥すると、心なしか、口元が笑っているように見えた。
コメント(0)
コメント投稿
フォーラムモグステーション公式ブログ

コミュニティウォール

最新アクティビティ

表示する内容を絞り込むことができます。
※ランキング更新通知は全ワールド共通です。
※PvPチーム結成通知は全言語共通です。
※フリーカンパニー結成通知は全言語共通です。

表示種別
データセンター / ホームワールド
使用言語
表示件数