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White Knight

Juliette Blancheneige

Alexander (Gaia)

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『Mon étoile』(3)後編2

公開
3-3-2

 仲間たちとの合流は、それから二時間ほど後だった。
 テオドールは気付いていなかったが、あの穴から降りた先にはいくつもの地下川が流れていて、あとから辿り着いた時点ではどこへ落ちたのか分からなかったのだという。結局、滝から少し離れたところに下り坂の支流があり、そこを降りてきたメイナードたちがテオドールを発見した形となった。
 また、川の周りには魔物が潜んでいたそうだ。蛇型の魔物で、強くはないが数が多く、闇に紛れて不意を突こうとする。それらへの対処にも手間がかかったと、メイナードは言った。
 ヤヤカは皆との再会をとても喜んだ。彼女が自分たちのことを仲間だと思ってくれること、仲間たちが彼女を受け入れてくれていること。そのどちらもが、テオドールには誇らしく、嬉しかった。

 帰還しようと準備を始めたその時だった。
「ちょっと待って」
 ヤヤカが皆を止め、小川が流れていく穴のひとつを指さした。大きい穴だ。ルガディン男性が三人並んでも平気な広さで、高さもエレゼン男性が飛びあがっても頭を天井にぶつけないほどの高さだ。穴の入り口は、上部がまるでアーチのように見えた。
「あの、アーチに見える穴の上のところ、よく見たい」
 以前なら走って行ってしまったかもしれない。しかし今のヤヤカは皆に、特にテオドールに許可を求めている。
「行きましょう」
 彼女の優れた観察眼を信頼して、テオドールは先頭を歩いた。穴の入り口、アーチ状の部分で立ち止まる。最も上背のあるテオドールが見上げるほどの高さ。そこには――
「……これは、本当にアーチだったのでは」
 苔が生えて隠れてしまっているが、それは確かに石細工のアーチだったのだ。
「――見せて」
 手を差し出すヤヤカに応え、ヤヤカを抱えると肩に乗せた。いつもならば恥ずかしがってやらないようなことも、研究が絡めば簡単に乗り越えてくる。飽くなき探究心の塊だ。
「……メイナード。槍で苔を払ってもらえる? 慎重に」
「おう」
 アーチを見つめながら、ヤヤカが指示をする。茶化すことなく請け負った槍術士が、槍の穂先でびっしりと張り付いた苔を取り払った。
 間違いなく、人工的に作られたアーチだ。穴の入り口を削り加工して、しつらえたようだ。途中から崩れ、苔に覆われていたほんの一部しか残っていない。
 周囲の穴も見たが、人工的に手が加えられた場所はここだけだった。
「おいおい、ツキ過ぎだろヤヤカ」
「かもね。自分でもびっくりしてるわ」
 メイナードに答えながら、ヤヤカの目は穴の先、暗闇の向こうへ向けられている。
 ここが『入り口』であるのなら、この先には何かがあるはずだ。
「行きましょう」
 テオドールの声に、全員が表情を改めた。武装を構え、隊列を整える。慎重に、先頭のテオドールの足が穴の入り口へ踏み入り――
 次の瞬間、穴の奥から光が発せられるのを、全員が見た。
 先頭のテオドールだけが、光に照らされた穴の中を見た。奥行きはさほど無く、十歩も歩けば行き止まりに当たる。扉という行き止まりに。
 扉には、中央に人の顔を模した仮面が付いていた。その額にある石が、光を放ったのだ。
 テオドールが見てとれたのはそれだけだった。なぜなら、光が放たれた直後に、一行の隊列の真ん中――つまりはヤヤカのすぐ横に、異形の魔物が突如姿を現したからだ。咄嗟に振り返ったのは、冒険者としての勘としか言いようがない。
「散開!!」
 叫びながら、テオドールが振り向きざまに盾で魔物を殴りつけた。ヤヤカを連れたリリとノノノがそれぞれ別方向に走る。メイナードが素早く魔物の背後をとる。
 魔物は、奇妙な形をしていた。人間大の黒い襤褸布のあちこちに、仮面とも死者の顔ともつかぬ真っ白い顔が埋まっている。ペルソナと呼ばれる妖異――異界ヴォイドの住人だ。物理的な膂力はないが、魔法に長け、様々な状態異常攻撃も有する。個体差はあるが、決して侮れない妖異であった。
「妖異とは穏やかじゃねえなァ!」
 メイナードの槍が妖異の顔を抉る。妖異は苦悶の声を上げたが、それ自体が呪詛として妖異の周囲にばら撒かれた。下がるテオドールとメイナード。入れ替わりにノノノとリリの魔法が立て続けに妖異に降り注ぐ。しかし、妖異は倒れない。
 冒険者たちは妖異を攻め続けた。盾役であるテオドールはしばしば妖異の状態異常攻撃を浴びたが、その度にリリが治癒をした。ダメージはあったが、それでも戦闘は冒険者たちが優位に進めていた――の、だが。
 異変は、またも穴の奥からだった。
 再度、穴の奥――扉に嵌められた仮面が額の石を光らせた。次の瞬間、
「ノノ――後ろ!」
 ノノノの背後に、もう一体のペルソナが現れていた。リリの警告を聞くが早いか、ノノノはメイナードの横へと瞬間移動した。黒魔道士の技、エーテリアルステップだ。すかさずテオドールの盾が飛ぶ。
「増えた」
「どうなってんだコレ!」
 敵が二体になったことで、攻撃の圧力は増した。それは護り手と癒し手、テオドールとリリの負担が増したことを意味する。それを減らそうと、攻め手であるメイナードとノノノは攻撃の密度を上げる。やがて最初の一体が倒れた。黒い魔力がほどけるように消えていく。
 その時、再々度の発光が穴の奥から放たれた。今度はテオドールの背後に、忽然とペルソナが現れた。
「くっ……!」
「これ……キリがないのでは!?」
 冒険者たちはようやく悟り始めたが、眼前の敵を倒すしか道はなかった。
「さっき一瞬だけ見えた! 穴の中に扉がある! その扉についている仮面の額、そこに嵌った石が光っていた!」
 テオドールが戦いながら説明する。
「そいつを壊せばいいんじゃねェのか!?」
 メイナードの叫びに、リリが応じる。
「あり得るかも! これが侵入者用に設置された罠なら、解除方法も存在するはず!」
「決まりだ! 行くぜ!」
「頼む!」
 テオドールの声を背に受けて、メイナードが俊足を発揮する。――が。
「くそッ!! 魔法障壁がバカみてえに硬ェ!」
 叫んで穴から駆け出してくるメイナードの背後には、新たなペルソナが一体迫ってきていた。
「もう! 増やしてどうするんですかあぁ!」
「しょうがねえだろ、障壁攻撃したら出てきたんだよ!」
 喚きながら、冒険者たちは都合三体のペルソナを撃破したが、メイナードの連れてきたものと新たに出現したもの、二体を相手にさらに戦わなければならなかった。
「……攻撃したら、出てきたのね」
 ヤヤカが言う。
「その前は、何も起きなかった?」
「ああ! ――いや待て! なんか扉に文字っぽいのが光ってたぞ!?」
「文字……!」
 ヤヤカが、意を決したように叫ぶ。
「わたし、見に行ってもいい!?」
「ああァ!?」
「無茶です!」
「わたしも行く。それなら無茶じゃない。それが謎解きならわたしたちが行った方がいい」
 冒険者たちは口々に叫ぶ。叫びながら戦っている。残り一体。だが、ヤヤカの背後にペルソナが現れ、テオドールは慌てて敵視を奪った。また二体になった。
 これ以上は自分たちの、特に要であるリリの魔力がもたない。そう判断したテオドールは、全員に言った。
「分かりました。ノノノとヤヤカさんは扉の方へ。もしそこに敵が現れるなら即座に引き返してください。そうでなくとも、見てすぐに解けるものではないと判断したら、そこを離れてください。ここから逃げます」
「――分かった」
「おまかせ」
 駆け出すララフェルたちを横目で見ながら、テオドールは妖異に剣を振るう。叶うことなら自分がヤヤカと共に行きたかったが、やむを得まい。せめて、目の前の敵を一体でも多く倒し、撤退の安全を確保するのみだ。
「戦神ハルオーネよ、ご照覧あれ!」
 決意を固め、刃を走らせる。仲間たちを、大切な人を護るために。

 穴の中に入ると、すぐに扉が見えた。
 ヤヤカとノノノは、慎重に扉に近寄る。妖異は出現しない。どうやらメイナードの言う通り、障壁は攻撃に対して発生するもののようだ。そしてテオドールの証言通り、扉には、中央に人の顔を模した仮面が付いている。額には、緑色に輝く石が嵌っていた。
 そして。
 扉には、文字らしきものが光っていた。だが、それはエオルゼア文字ではなかった。
「むむむ」
「……第三星歴、世界を支配したアラグ帝国の時代に、言語と文字は統一された。それが今の共通語の先祖だと言われている。でも、素直に継承されてきたわけじゃない。
 第四星歴の文明否定の時代に文明は衰退し、アラグ語は各地方ごとに変化していった。それが第五星歴になるとさらに甚だしくなり、意思の疎通は難しくなっていった――そういう説を唱える人もいるわ。そうだとしたら、これは……マハの文字なのかもしれない」
 言いながら、ヤヤカは素早く文字を手帳に書きつけている。
「……それだけじゃない」
 文字を見つめ、目を細めていたノノノがぼそりと言った。
「え?」
「文字が光っているのは、エーテル振動しているせい。それは、呪文を唱えるのと同じ。――つまり」
「もしかして、発声の必要がない?」
 ヤヤカはかつて、今は亡き親友から呪術士としての手ほどきを受けている。呪術士としてはごく初歩の魔法しか扱えないが、知識だけは人一倍有していた。
 己の体内の内在エーテルと周辺の環境エーテル。それらに影響を与えやすくするための言葉。それが呪文だ。呪文は必ずしも発声の必要がない。より深く強く世界に影響を及ぼすためには唱えたほうがいいが、速度を重んじた場合はエーテル振動だけで事足りる。
「たぶんそう。文字の意味が分からないから、今は振動のさせようもないけど」
「うん……」
 手帳をしまったヤヤカが、悔しさを滲ませて扉を見上げた。
「行こう。そろそろみんな危険」
 ノノノに手を引かれ、ヤヤカは走り出す。最後に一瞬だけ立ち止まり、扉を振り返った。その目に、扉とその文字を焼き付けるようにして。

「またせたな! むりだった!」
 ノノノが大声で言いながら、そのままヤヤカの手を引いて戦う皆を置き去りにする。来るときに使った支流の坂を駆けあがる。
「テオ! 撤退を!」
 ヤヤカが叫ぶ。
「ええ! リリ、メイナード! 先に行ってください。殿は引き受けます!」
「おう!」
「わかりました!」
 二人が駆け出す。それにやや遅れて、テオドールも駆け出した。ペルソナたちが魔法を撃つ。インビンシブル。敵の攻撃を一身に受けながらも無効化し、テオドールは坂を走った。
 幸いなことに、ペルソナたちは追ってこなかった。守護者として設定されているからかもしれない、とノノノは言った。
 ひとまずは逃げ切ることに成功した一行は、地下の川沿いに歩き(途中蛇型の魔物との戦闘もあった)、メイナードたちが垂らしたロープを登って地上へと戻った。穴のそばに置いていた『石壁』を回収して拠点に帰るころには、すっかり日も暮れていた。
 ヤヤカは疲れてあっという間に寝てしまい、冒険者たちは交代制で見張りを立てて眠った。

 そして翌朝。
 一行は、今後について話し合った。
 地下の扉は大発見である。だが、仕掛けを解除しないことには先へ進めず、それでは評価のしようもなかった。
 厄介なのは守護者の存在だ。最初に足を踏み入れた時点で発動するため、守護者との戦闘は避けられない。しかも、出現時及び一定時間後の再召喚時に『その場にいる人間誰かの背後』に現れるため、常に警戒が必要だった。
 さほど強くはないが、片手間では倒せなかった。四人でなければ攻撃の速度が落ちる。攻撃の速度が落ちれば、扉が妖異を召喚する速度に負ける。
 また、扉の文字についても、現時点では手掛かりがなかった。
 ヤヤカはここでは資料が不足していると言う。悔しいが、これを解読するための資料も時間も、ここでは足りなかった。
 以上を鑑みた結果、今回の探索はここで終了し、『石壁』の調査と扉の文字の解読を優先するべきということになった。
 帰還の連絡を入れ、向かいの船を待ち、リムサ・ロミンサへ。さらにフェリーでベスパーベイへ。
 チョコボ・キャリッジをベスパーベイで借り受けると、一路ウルダハへ。

 キャリッジの客室で、テオドールは目を覚ました。うたた寝をしていたようだ。向かいの席には、ヤヤカとノノノが並んで座り、やはりうたた寝をしていた。ベスパーベイからウルダハは決して手放しで安全ではないが、未開のヤフェームと比べれば遥かに安堵できる『人里』だ。油断してしまうのも無理はない。
 くすりと笑って、テオドールはヤヤカとノノノを見つめた。二人で扉へ向かって以来、ノノノは何かにつけヤヤカの側にいることが多くなった。二人が打ち解けていくのを見るのが嬉しかった。
 孤独を生きたヤヤカが、報われてくれればいいと思う。仲間たちと――自分が、彼女の心を安らかにできる一助になるなら。
 テオドールは、ヤヤカの寝顔をずっと見つめていた。
 
「……なあ、そろそろ交代の時間だと思うんだがよ」
 御者台のメイナードが隣のリリにぼそりと言った。言われたリリが振り返って客室に目を向ける。それからメイナードの口に、剥き終わったシュラウドアップルの一切れを放り込んだ。
「もうしばらくこのままで、ね?」

(4章前編へ続く)
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