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White Knight

Juliette Blancheneige

Alexander (Gaia)

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改訂版【魂を紡ぐもの セイン】第一話『思慕のマテリア』3

公開
1-6

 ナル回廊、クイックサンドの斜め向かいに、銅刃団ライラック連隊の詰所はあった。
 連隊、とはいうが、実際はそこまでの規模は無い。せいぜい一個中隊程度の規模であり、詰所も元店舗であったものを借り受けて運営されている。
 それが『連隊』の名を冠しているのは、この組織が銅刃団のどの連隊の麾下でもないこと、規模は小さくとも権限は同等である、ということの表明であった。
 元来、銅刃団とは砂蠍衆の私兵団であり、それが徐々に規模を大きくして、治安維持部隊としての性格も持ち合わせてしまった経緯がある。
 ゆえに兵卒も将校も基本的には傭兵上がりであり、『犯罪捜査』の経験があるものなど極少だった。
 事実、『三国で一番安全な都市』と言われながらも、ウルダハの犯罪に対する検挙率はエオルゼア三国では最低であり、『金で何とでもなる』という他国からの風評を一蹴できぬ抜きがたき現実がある。
 そこで設立されたのが、犯罪捜査を専門とする、彼らライラック連隊なのだったが――
「まあ、一筋縄ではいかんわな、これが」
 ザル大門からサファイアアベニューを通り、ナル回廊へと向かう道すがら。
 暇つぶしと称してライラック連隊の成り立ちを語っていたラージ・トゥイグは、大きく嘆息して肩をすくめた。
「『現場保存』も『遺留品署名』も知らん連中が場当たり的に捜査してるとこに入っていくんだぜ。当然、モメる」
「ふうん。そういうアンタはずいぶんと詳しいのな」
 ルーシーの指摘に、トゥイグは「まあな」と言いながらウインクして見せた。出来てはいなかった。
「先生の教え方がよかったんだよ」
「先生?」
「トゥイグ。余計なことは言わんでよろしい」
 先を行くポポヤンが振り向かずに言った。
 へいへい、と軽く答えながら、トゥイグは小声でルーシーに「ポポヤンさんが、俺とダックの先生なんだよ」と言った。
「ポポヤンさんに会わなかったら、俺は今でもケチな海賊だったし、ダックはアラクランの使い走りのままだったよ。たぶんな」
 トゥイグの横で、ダックが恥ずかしそうに頭をかいている。
「へえ。やるなポポヤン」
 背中を向けたまま、ポポヤンがわざとらしく咳ばらいをした。そんな話はいい、とでも言いたげだった。
「あ、そこを右です」
 ダックが指差した建物は、外見からは銅刃団の詰所とは見えない。衛兵もおらず、看板も無い。近付いてみると、やっとドアに『銅刃団ライラック連隊』というプレートが張り付けてあるのが見える、程度であった。
「しかし……。『検分』と言っても、まともに話ができる状態ではないぞ」
 事務所の鍵を開けながら、ポポヤンが言った。
「その状態を見に来たのさ。――ていうか留守番もいないのか? 出払ってるのか?」 
「件の生き残りを『保護』している部屋の番で残している者がいるだけだ。ここのところ多忙でな、隊員はあいにく昨日からほとんど出払っているよ」
 詰所の内部はかなり雑然としていた。あちこちに積み上げられた資料と思しき本や巻物が道を塞いでいる。壁や机に様々な地図が広げられ、そのどれにも書き込みやピンが刺さっている。
 散らかっていても、荒んだ様子は無い。むしろ、活気に溢れるが故の混沌と見える。
「二個確認。一個目。生き残りを“ぶち込んだ”のは今朝だっけ?」
「そうだ」
 苦笑しながらポポヤンが頷く。
「その時点では、ここには人は?」
「変わらんよ。我々と見張りの一名だけだ」
「そか。そりゃ楽でいい」
「……? 楽とはどういう――」
 事務所を抜け、奥のドアを開けると短い廊下があった。階上と階下への階段がそれぞれ左右に設けられている。それを階下へと進むと、狭い廊下に外から施錠できる扉が三つ並んでいた。
 突き当りのドアの横に寄りかかったハイランダーの青年が、こちらを見た。
「アステル追っかけてたときのお前らと一緒だ。やたら攻撃的になってたろ? さっき」
「うむ」
「それと同じことが起きてる」
 言いながら、ポポヤンたちよりも先に青年に近付いたルーシーへ、青年が歯を剥きだして威嚇した。
「ああ?! んだテメ何勝手に入ってきてんだよクラァ!」
「おいグレッグ――」
 グレッグと呼ばれた長身の青年は、ずかずかと近付き、ルーシーを睨みつけ、胸倉を掴んだ。
「な。こゆこと」
 全く意に介さずポポヤンたちを振り向くルーシーに、グレッグが顔を朱に染めて拳を振り上げたとき。
 青いカーバンクルが、ルーシーの背中からひょいと顔を出し――
 青年に水魔法をお見舞した。
「ぶぎゃっ!」
 顔面を直撃した水魔法の衝撃で、グレッグが廊下へ倒れる。そこへもう一発、水魔法が飛んだ。
「ぎゃっ!」
 さらにもう一発。
「ごぼが」
 グレッグの傍へ降り立ったカーバンクルがにたりと笑ってとどめを撃つ――前に、
「やめとけ。溺れてるぞ」
 と、苦笑しながらルーシーが言った。口と鼻に大量の水が浸入した青年は呼吸困難に陥り、激しく咳き込んでいる。
「コイツは普段からさっきみたいな感じ?」
 ダックが、グレッグの背中をさすりながら答えた。
「いいえ。普段はとても気のいい青年ですよ」
「だろうね。確認二個目。生き残りをぶち込むときにいたのは、ここにいる四人?」
「そうです」
「ん。じゃあ後は生き残りの『友人たち』だけど……そっちはいいかなあ。メンドい」
「……我々四人が攻撃的になっていたのは……その、生き残りと接触したから、だというのか?」
「そゆこと」
 ようやく回復したらしいグレッグが、皆を見上げて言った。
「あの……僕は一体……なんでびしょ濡れに……」
 その問いを無視して、ルーシーはグレッグの横に落ちていた鍵を拾い上げる。
「ポポヤン、開けるよ」
「……いいだろう」
 言いながら、ポポヤンも扉へと向かう。ポポヤンとルーシーの関係を判じかねたグレッグが、困惑して顔をあちこちに向けた。
「おら、行くぞ」 
 トゥイグに促されて、ダック、そしてきょろきょろしたままのグレッグが続いた。
「上位の妖異の中には、喰らう相手を敢えて逃がして、恐怖や絶望を相手の心に刻み込ませてから美味しくいただくヤツらもいる。
 そういうヤツらは大抵、エモノにマーキングすんのな。同族同趣味の奴らに獲られないように」
 ルーシーが語りながら鍵を開けた。開錠の音がやけに大きく廊下に響いた。
「――せっかくだから見られるようにしてやろう」
 左手でドアノブを押し開けながら、右手一本で取り出した魔道書を開く。
 頁に刻まれた魔紋がライムグリーンに淡く輝くと、そこから胞子のような小さな光がいくつも浮かび上がり、銅刃団の男たちに触れては消えていく。
「ちょ、これダイジョブなんですか、なんですかコレ?!」
「これを俗称して、“闇の口づけ”と呼ぶ。ここは試験で出すぞ?」
 軽口を叩きながら、ルーシーは扉を開け放つ。
 元は在庫品置き場だったと思しいその部屋は、それなりの宿屋の一室程度の広さがあった。
 そして――彼らは見た。
 ベッドサイドのランプに照らされた薄暗い室内。その灯下に、怯えきったルガディンの男がいる。男は恐怖に目を見開き、ベッドの上で後じさりを続けている。背後はもはや壁であり、その後じさりにはなんの意味もないのだが、男は必死でそれを続けていた。
 男の身体に、黒い煙のようなものがまとわりついているのを、ポポヤンたちは見た。
 その闇は男の周りをたゆたうと、周囲にもゆっくりと広がっていく。
「あの闇は“口づけ”の副産物。触れたものはそれの影響を受け、様々な精神の変調をきたす。どんな変調を起こすかは、“口づけ”をした妖異によって異なる」
「これに触れたから……我々はおかしくなったというのか」
 闇はドアの外、ルーシーたちのほうへとゆっくり流れていく。が、途中で見えない壁に遮られ、室内へと戻っていく。
「出るとまた触ってややこいので、そこにいること」
 言い置いて、ルーシーは室内へと歩を進めた。残った青いカーバンクルが、わかったかおまえら、とでもいわんばかりに振り向いて小さく威嚇した。
「よう色男。ちゅーされた気分はどうよ?」
 ずかずかと大股で男へと歩むルーシーを見た男が、ひいっ、と裏返った声で悲鳴を上げ、うつぶせでうずくまった。
「いいいいっやだいやだああ! くびをっ、くびをもっていくのはやめてくれえええ!」
「いらんよ」
 呟きながら、ルーシーはベッドの上で亀の様にうずくまる男の首を掴むと、ひょいと持ち上げ――床に転がした。
 あまりに自然な動作だったため、銅刃団の四人は驚くのが遅れた。ルーシーが仰向けに転がした男の胸を踏みつけたところで、
「……冒険者って、みんなああなのか?」
 トゥイグがようやく呟いた。
 転がされた男も事態が把握できず、数瞬きょとんとしていた。が、すぐに元の様に――むしろそれよりも酷く――恐怖の悲鳴を上げ始めた。
「うるさい。それと動くな」
 冷ややかな一瞥と共に、氷刃の言葉が男に差し込まれた。
 ルーシーが右手のみで器用に魔道書をめくる。
 刻まれた魔紋が紫紺に輝き、ほんの一瞬、魔紋自体が頁の上でずるりと蠢いた。同時に、男の真下に魔道書と同様の魔紋が現れ、次の瞬間そこから無数の荊状の物体が吐き出された。
「ひぃ!」
 蠢く荊は男の両手両足、そして首に絡みつくと、再び魔紋へと潜っていく。男は完全に身動きを封じられていた。
「ひゃああ! たったすけて! ころさないでええ!」
「継続ダメージ切ってるから死なんよ」
 その呟きは男に聞かせるように言っているかどうか。
 男を見下ろすルーシーの瞳が淡く光っているのを、銅刃団の男たちは気付かなかった。
「――そこか」
 ルーシーの左手が、乱暴に男のシャツの胸元をちぎる。
 あらわになった胸には、禍々しい紋章が刻まれていた。
「それが――“闇のくちづけ”か」
「そ」
 黒い刺青のように見える紋章が、時折淡く――濃く、濃度を変える。その度に、男の身体から黒い靄がにじみ出ていた。
「で、今からコレ消す」
「消せるのか?」
「それ自体は造作もないさ。ただ、相手もソレを知るな」
「……つまり『邪魔者がいる』と知れる、ということか」
「そ。そのあと妖異がどう動くかで、妖異の格も……『ミリアム』が何パーセント残ってるかもある程度知れる」
 突き放すような冷たさをその物言いに感じ、ポポヤンは驚く。
「――助かる見込みは薄い、と言っているように聞こえるが?」
「うん。あたし個人は八割ダメだろと思ってるよ」
 ちらりとポポヤンを見るルーシーは、いつもの通りの笑みだった。それが、傍観者の冷笑かもしれないのだと、ポポヤンは思い至った。
「……ならばなぜ、アステルに依頼などさせたのだ? あの場で『まかせておけ』と言ったのは……」
「セインが」
 言いながら、ルーシーは顔を男に戻した。俯いたその顔から、表情はうかがえなかった。
「セインが諦めてないからさ。セインが諦めるまで、あたしも諦めない。それだけさ」
「それは――」
「充填完了。処理開始」
 突如、魔紋が鋭い光と轟音を発したので、ポポヤンの言葉は断ち切られた。
 無数の細かい電撃が、魔紋の中を灼いていた。
「ぎゃあああああああ!!!」
 男の絶叫が響き――胸の紋章が“焼失”して――唐突に声は途切れた。
 荊も焼き切れ、炭化したそれは靄となって消えていく。魔紋が薄れ、跡形もなくなった。
「…………姐さん、そいつ死んでねえすか」
 いつの間にかルーシーを姐さん呼ばわりしたトゥイグの問いに答える代わりに、ルーシーは男を蹴った。
「ぐほっ」
 息の塊を吐いて、男が目を覚まし――叫んだ。
「いってええええ! いてええよおお!」
 痛みからか、“くちづけ”の後遺症なのか、男は床から動けず、わずかに動く手足をバタバタさせて苦しみを表した。
「くっそおお! 俺が――俺たちが何したっていうんだよ?!」
「さあ? 難民殺し?」
「そんなの誰だってやってるだろ!? 難民なんてその辺でゴロゴロ死んでるし、他の奴らだって腹いせとか暇つぶしに難民ボコってるぞ!」
 はあっ、と盛大に溜息をついて、ポポヤンが首を横に振った。何度も何度も振った。
「なのになんで俺たちだけこんな目にあうんだよ?!」
「知らね。大人なんだから自分で考えろよそれくらい。――まあ、それよりもさ」
 腰に手を当て、男に顔を近付けながら、ルーシーは笑った。いつもの笑い方だった。
「ポポヤン、こいつ借りるぞ。今夜半まで」
「……どうする気だ?」
 くくっ、と喉の奥で笑うと、ルーシーはゆっくりと告げた。
「決まってるだろ。イケニエだよ。――今度こそしっかりひっかけろよ、色男」

改訂版【魂を紡ぐもの セイン】第一話『思慕のマテリア』4へ続く
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