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Bulwark Between Worlds

Juliette Blancheneige

Alexander (Gaia)

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【魂を紡ぐもの セイン】1.5話後編『圧縮世界 フォルス・ヴォイド』2 憎悪の牢獄

公開
2 憎悪の牢獄

 洞窟をしばらく進むと、道幅は徐々に狭くなっていったが、それでもミッドランダーの大人が六、七人が並んで歩けるだけの幅があった。
 やがて洞窟は明らかに通路然とした形を整えていき、分岐や扉のある小部屋――玄室を備えていた。
「迷宮じゃんよ」
「ああ。明確に、ここへ引きずり込まれたと見ていいだろう」
 通路は分かれ道が多く、行き止まりや玄室で終わっているルートが多発する、難易度の高い迷宮となっていた。
 当然、探索だけ行えていたわけではない。
 道中には敵がいた。皆妖異だ。
 デーモン種だけではなく、下半身が蛇になった異形の蛇女コムサベラ種や、バルビエが召喚したものとは比べ物にならないくらい強力なナット種の妖異が一行に襲い掛かった。
 そして床は突然泥に変質する。一定時間でもとの地面に戻る仕掛けだが、その際に泥の中にいれば閉じ込められてしまう。
 また、泥は徐々に中にいるものを引きずり込もうとする。沈み切る前に出れば問題はないが、もし頭が沈むまで泥の中にいた場合、泥の中に潜む何かに寄生されてしまうようだ。これらはマジャの触手を使った解析で明らかになった。
「寄生されっとどーなんの?」
 ルーシーの問いに、分析を終えたマジャが答える。
「味方を攻撃するぜ。エスナじゃ治んねえから、自力で抵抗するしかねえ。あと、ガンガン体力と魔力奪われちまうみてえだ」
「うへ」
「そんなの分かるの!? すごいねーキミ! 戦闘も分析もできる! よっ! 文武両道!」
 ヴェスパがマジャを褒める。彼女は、マジャが喋ったことには一切驚いていなかった。
「おっ……おお! 分かる!? 分かるか! うっえへへへさすが一家の頭ともなると見る目があるな!」
 盛大に照れるマジャは褒められ慣れしていない。あからさまに鼻の下が伸びたマジャの顔面に、突然カーバンクル・サファイアが体当たりをした。
「!?!?!?」
 意味が分からず目を白黒させるマジャに、カーバンクル・サファイアは歯を剥き出して威嚇した。
「シャァッ!!」
「え……はい」
「サファイアは何て言ってるんだ」
 直接意思の疎通が取れないセインが訊いた。ルーシーが答えた。
「“ちょーしのんな単純バカ”、だってさ」
「成程」
 ツンケンした様子で前を行くカーバンクル・サファイアの後ろで、マジャが情けない顔で首を振っていた。
「解せねえ……」
 一行は次々と敵を撃破し、迷宮を踏破していく。仕掛けのようなものは無かったが、入り組んだ通路と敵の多さが厄介だった。
 しかしそれらを潜り抜け、セインたちはひときわ大きなドーム状の広間へと辿り着いていた。

「……痛え」

 声が響いた。

「……つれえ……なんで俺が……こんな目に……!」

 部屋の中央には、巨大な肉の樹が屹立していた。
 触手が寄り集まって幹を、枝を造り上げている。樹は脈打ち、そして脈打つ度に、樹の中ほどに埋め込まれたララフェルが苦悶の声を上げていた。
「うっわ何アレ」
「あ? アイツどっかで見たな」
「――ムムショ・フフショ」
 ルーシーの疑問に、セインがその名を呼んで答える。それが、劇的な変化を樹とムムショにもたらした。
「てめえ……! てめえは……!」
 樹が震える。ざわざわと枝が蠢いた。ムムショの顔、今や眼帯もないその右目に嵌められた黒い石が、魔力を宿して青黒い光を放った。
「え!? 知り合い!?」
 驚くヴェスパに説明しながら、セインは抜刀し構えを取った。
「かつて俺とルーシーが壊滅させた犯罪組織の頭目だった男だ。一味は全滅させたが、この男にだけは逃げられていた」
「セイン……セイン・アルナック!!」
 ムムショの叫びが部屋中に響いた。同時に、触手の枝が一斉に伸び、セインたちへと襲い掛かった。
「おわあ!」
 マジャが慌てて障壁を張るが、触手の物量に押し切られる。各自散開して躱したが、すべてを回避することは不可能だった。それぞれがダメージを受け、吹き飛ばされた。
「――その後、今回の依頼人から聞いた顛末の中に、奴の名があった」
 立ち上がりながら、セインが言う。枝は一旦引いた。まるで己の動きを確かめるように、奇妙な人間臭さで枝を振るっている。
「依頼人を護衛するチームの一人としてヤフェームにいき、そこで行方不明になったと言っていた」
「はは……は!」
 ムムショが笑った。
「そうか……そういうことか! ――憎悪か! 憎悪でコイツを制すりゃあいいのか!」
 次の瞬間、忽然と肉の樹が消えた。
「え」
 樹があった場所には、ムムシュ・フフショが立っている。
「……よお、セイン。久しぶりだなあ」
 口の端を歪めて笑う。滾る憎悪を隠し切れぬように、こめかみに血管が浮き出ていた。
「ああ。三年振りか」
 淡々と返しながら、セインは仲間たちよりも数歩前へ出る。
「そうさ、テメエに組織を潰されて以来だ! この右目の礼がまだだったよな!」
「お前は今、自分の置かれた境遇を理解しているか」
「境遇ゥ!? んなもんに興味は無ェ! 俺は! テメエに恨みを晴らすために今日まで腕を磨いてきたんだ!」
 腕を振り、感極まったように叫ぶ。その身体から、黒く炎の幻像が吹き上がった。
「ヒ……ヒヒ……そうだ、御誂え向きじゃねえか……この体もよ……テメエを殺す、絶好のチャンスだ!!」
 右目の石が、強烈な光を発する。青黒い憎悪の光を。
「俺の魂をくれてやるぞ『堕ちた聖石』!! その代わり……力を寄越せえええええ!!!!」
 ムムショの体が、先ほどの肉の樹を造っていた組織に包まれる。ただし、今度は樹ではなく球体だ。
 球体は蠢き、増殖し、アーリマン種を無秩序にくっつけて球体のような形にした、異形の存在へと変容した。アーリマンとアーリマンの隙間から、細く先端に棘を持つ触手が無数に生えている。
「さあ殺してやるぞセイン! 俺の魔法で! 呪いで! 腕で! オマエを跡形も残さず消してやる!」
 アーリマンの口が一斉に叫び、瞳が一斉に光った。次の瞬間、瞳から放たれた破壊の光が無数にばら撒かれた。
 それを回避しながら、ルーシーがセインに問う。
「『堕ちた聖石』って何?」
「その身にヴォイドの妖異を憑依させるという、来歴不明の魔石だ。一度見たことがある。その時は使用者の肉体も精神も食われ、ただ妖異を召喚しただけだったが……」
「怨恨ってスゲー」
 感心したようにルーシーが言う。一見茶化しているように聞こえるが、ルーシーは素直に感嘆していた。それが自分には未知の感情だった場合、彼女はごく素直に称賛する。
「ああ。だが、命を差し出す気は毛頭ない。――いくぞ」
 セインが異形と化したムムショに接近する。フラッシュ。サークル・オブ・ドゥーム。流れるように繰り出さる攻撃が、セインへの敵視をさらに高める。
 一拍遅れて、カーバンクル・サファイアとマジャが攻撃に参加する。
 ルーシーが雨霰のように繰り出す魔法――継続ダメージ及び状態異常魔法――が、じわじわとムムショを蝕んでいく。
 ヴェスパがセインを回復させる。その合間に繰り出す風の魔法が、さらにムムショを削り取る。
「無駄だ無駄だ無駄だぁ!」
 周囲に生えているアーリマンの体は、一つ落とされても次がすぐさま生えてくる。落とされる度に『堕ちた聖石』が光を放ち、ムムショに力を与えているのだ。
 アーリマンの口から、一斉にガスがばら撒かれた。離脱したセインだが、一瞬遅かった。麻痺だ。動きを止められる。すかさずヴェスパのエスナが飛ぶ。間一髪、触手の集中攻撃から逃れたセインだが、余波は喰らっていた。
「死ね……死ねセイン!」
 狂ったような哄笑を放ちながら、ムムショが魔力を解き放とうとする。
 だが。
「プラズマ・ブレイカーッ!」
 マジャの叫びと共に、紫の電流がムムショのすべてを同時に灼いた。
「があ……っ!」
 そこへ、自らの体を縦回転させ、まるで回転ノコギリのようになったカーバンクル・サファイアが襲い掛かる。マジャの攻撃でマヒしたアーリマンたちを次々に撃破していく。
 今やムムショは、地面すれすれを浮遊するまでに力を減じられていた。
「クソ……! クソッ……!! これだけしても! これだけ引き換えにしても! 及ばねえっていうのかぁ!」
 ムムショが叫ぶ。その叫びに応じ、残ったアーリマンの目が光る。
「認めねえ……認めねえ……そんなモノは、認められねえんだよオオオ!!」
 絶叫と共に、広間すべてに破壊光が放たれた。衝撃が空間全体を揺るがし、爆発ので吹き上がった土煙が周囲を埋め尽くした。
「……やった……」
 必殺の一撃の代償に、ムムショが纏っていたすべての妖異が霧消した。
「勝った!」
 地に降り立ったムムショが勝利を確信した、そのとき。
「そこか」
 土煙を割いて、セインの剣が突き込まれた。
「――そんな分かりやすいタイミングで撃たれて、守り切れないワケないでしょ」
 後方でヴェスパが勝ち誇る。全員が中程度の傷で済んでいる。ムムショの攻撃に合わせ、全体に治癒魔法が施されていたのだった。
「ま、あの人に関しては自前で無傷だけど」
 ナイトのスキル、インビンシブル。短時間だけ攻撃を無効化する技だ。セインはそれで破壊光をしのいでいた。
 そのセインの剣が、ムムショの頭部――右目に嵌る『堕ちた聖石』へと切っ先を入り込ませていた。
「……クソ……ッ!」
 ムムショは動けない。切っ先が入り込んだ聖石が、パキッと音を立てて割れていく。
「クソッ……セイン……セイン! 俺はお前を許さない! 俺の仲間を殺したお前を! 俺の妹を殺したお前を!」
 残る左目から涙を流し、ムムショは吠える。仲間を、家族を想い、本気で彼らを悼み、慟哭していた。
 だが。
 セインは一切動じていなかった。
「お前に虐殺された村の者は、今お前が抱いている感情を、お前に対して抱かなかったとでも思うのか?」
「……!」
「殺したことを正当化するつもりはない。恨んでくれていい。――だが、この剣を突き入れることに、躊躇は無い」
 宣言と共に、セインが踏み込んだ。刃が、聖石とムムショの脳を貫いた。
「あ……!」
 剣が抜かれる。膝を付き倒れゆきながら、ムムショの体はエーテルに還っていく。
「……どこで……まちがえたんだ……」
 最後の悔恨はあまりにも遅く。
 ムムショ・フフショは、消滅した。
「……」
 無言で剣を収めるセイン。そのとき、壁の一部が崩落した。激戦に耐えかねたのだろうか。
 そこには別の通路が出現していた。
「次の領域へご招待ってとこかしら?」
「そのようだな」
 頷いてから、セインは宣言する。
「小休憩ののち、探索を再開しよう」

(3へ続く)
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