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Bulwark Between Worlds

Juliette Blancheneige

Alexander (Gaia)

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【魂を紡ぐもの セイン】1.75話『初めての』後編

公開
 ロビーは広々としていた。清潔感のある空間は向かって左に受付カウンターを備え、奥に二階への階段、ロビーのさらに左には応接スペースが見える。
 入ってすぐに、二人の女性が三人を出迎えた。正面に立つのは赤毛のミッドランダー。長い髪は、毛先から半ばまで白いメッシュになっている。髪の色と同系色のシャツにスリムな黒のパンツ。柔和な顔立ちの中で、鼻上の傷が異彩を放っていた。秘書然とした眼鏡のデューンフォークがその横に控えている。
「やあセインとルーシー。いらっしゃい」
 ミッドランダーの挨拶とほぼ同時に、後ろのカウンターに座る受付の女性たちも立ち上がって礼をしていた。
「社長よっす!」
 ルーシーがミッドランダーに気軽に挨拶した。セインは無言で頷き返していた。
 ルーシーに片手を振って返しながら、
「それから、貴方がヴェスパ・アーヴァントだね。初めまして。この会社――ミードの社長をしてます、チスイ・ビャクヤです」
 にこやかに笑いかけて、ミード社長、チスイが手を差し出す。握手を求められているのだと気付いたヴェスパは慌てて手を出した。
「えっと……ヴェスパ・アーヴァントです。アーヴァント一家のその……代表、というか」
 チスイは笑みのまま、しどろもどろのヴェスパの手を握った。
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします……」
 緊張のあまり動きのぎこちないヴェスパを見て、ルーシーがくすくすと笑う。握手を終えたヴェスパが小声で「うっさい!」と言い、肘でルーシーを軽く小突いた。
「では、二階へ。ご案内します」
 チスイに促され、三人は階段を登る。チスイのすらりとした体躯が無駄なく動くのをみて、ヴェスパはチスイが手練れの冒険者であると悟った。

 マーチャントアドベンチャラーズ――通称ミードは、冒険者であるチスイ・ビャクヤによって創設された製作会社だ。冒険者やグランドカンパニーから依頼を受け、武器・防具・アクセサリといった装備品や、戦闘で使用するような錬金薬、家具や調度品までもを製作・販売する。
 無論、冒険者の中には製作の技を修めた者は数多にいる。だが、冒険者が修められる範囲の製作の技ほぼすべてを習得し、さらに採掘や採集といった収集者の技までも兼ね備えた者など、そうそういるものではない。
 製作品の中には複数の工程を――製作のカテゴリをまたがって――有するものも存在する。そんな時、複数の職人を訪ねて回るよりは、すべてを修めた個人に依頼したほうが時間を無駄にしない。その分の依頼料がかさんでも、それは手間を省く必要経費と割り切れる者が多い。
 こうして、チスイは有名になった。職人としても冒険者としても依頼が増えた彼女は会社を興す。彼女一人では、流通や会計といった商売に必要な処理をこなしきれなかったし、それらの処理を他人に任せなければ、冒険者と職人を両立することが難しかったからだ。
 結果としてその判断は正しく、また組織の長という「信用」は、更なる仕事を呼び込むことになった。当初冒険者やグランドカンパニーを相手にしていたミードは、今では一般の商人からも依頼を受けるほどになっていた。
 
 通されたのは、社長室だった。それなりに広いが飾り気は無い。
「席へどうぞ」
 大きなデスクの前に、応接用のソファと椅子、三大州の地図が描かれたローテーブルが置かれている。チスイはソファに座り、ヴェスパとルーシーが隣り合って向かいの椅子に腰を下ろした。セインはテーブルの短辺側の椅子に座った。
 各人が座ったところで、先ほどの秘書然としたデューンフォークが、もう一人のデューンフォーク女性を伴って現れた。そちらはメイドのような衣装を着て、給仕用のワゴンを引いていた。
「失礼します」
 メイド服のララフェルが、ワゴンに乗せられていた四人分のカップを手際よくテーブルに置いていく。秘書らしいほうのララフェルは、チスイの斜め後ろに立った。
「ありがとう、キルルさん」
 チスイの礼に、メイド服のデューンフォークは薄く微笑んだ。
 紅茶を口にしながら、セインがチスイに言った。
「久し振りだな、チスイ。『十二賢者の行進』作戦(マーチ・オブ・アルコンズ)振りか」
「そうだね。あの時は楽しかったな。久しぶりに『ブルームーンライト』の皆に会えて、ボクは嬉しかったよ」
 第七霊災以前のエオルゼアにおいて、名を馳せたリンクシェルがあった(当時はフリーカンパニーという形態は無く、リンクシェルがその地位を占めていた)。
 その名を、『ブルームーンライト』という。
 魔獣、蛮神、邪竜。様々な敵と戦い、魔境と化した場所を踏破する。犠牲を出しながらも勝利をもぎ取ってくる彼らは、当時の冒険者たちにも畏怖と感嘆を以て語られた。
 セインとチスイは、かつてそのブルームーンライトに所属していた。
 互いにまだ十七、八だったが、すでにどちらも冒険者として数年の経験がある手練れだった。当時のリンクシェルリーダーに誘われる形で入団した二人は、そこで更なる切磋琢磨を続けた。
 あの日――カルテノーの戦いまでは。
 多くの犠牲が出た。
 リンクシェルのリーダーを含め、名うての冒険者である仲間は次々と命を落とし、あるいは深く傷ついて撤退を余儀なくされた。
 チスイは重傷を負いながらも仲間の撤退を助け最後まで戦場にいて、賢人ルイゾワによる転移で一命を取り留めた。
 セインはバハムートの破壊光に呑まれ死んだと思われていた(その後ルーシーを伴って現れたことは、当時の生き残りのメンバーにはかなり衝撃を与える出来事だった)。
 戦後、生き残ったメンバーはそれぞれ独自の道を歩み始めた。
 請われて国家に所属したもの。例えば、黒渦団特務であるナクトロナ・グリムスウェルドウィン。
 あるいは戦闘行為以外――製作や採集等――を主体としたもの。チスイはやや特殊で、戦闘職としても職人としても活動している。
 また、完全に冒険者を引退し、孤児院や旅商人、あるいは劇作家になったものもいる。
 そうやって、大半のものが形を変えながら霊災後の復興期を支えることを選択した。そこが、ブルームーンライトの終焉だった。
 今現在、元ブルームーンライトのメンバーで、副業を持たず拠点も持たず、冒険者のみを続けているのはセインただ一人だ。
 三国いずれのグランドカンパニーにも属さない代わりに、三国いずれのグランドカンパニーとも協調する『灰狼記章』――カルテノー帰りの現役冒険者の証――を与えられた稀有な冒険者。カルテノー以前から今まで、ずっと冒険者であり続ける“ベテラン”。
 そして、その旧ブルームーンライトの生存メンバーが再集結したのが、先の一大反抗作戦『十二賢者の行進』作戦(マーチ・オブ・アルコンズ)だったのだ。
 エオルゼア同盟軍の満を持したこの作戦には数多くの冒険者たちが志願兵として参加した。そこで、ブルームーンライトとして参加をしようという呼びかけがあり、大勢の仲間が「一日復帰」して駆けつけた。ナクトロナさえ、この日は特務ではなくブルームーンライトのメンバーとして参加した。
 前線を退いたといっても様々で、ナクトロナのように依頼者が国家に移っただけの者、チスイのように現役の冒険者“でもある”者から、ブルームーンライト解散以降一切武器を持たなかった者まで幅が広い。
 当日は(主に、現役の戦闘者が)かなり苦労したようだ。
「ああいう形で集まることはもうないだろうな」
「そうだねえ。でもフランのおかげで繋がり直すことはできたし、いいんじゃない?」
 フランセット・アランブールはブルームーンライトの事務を取り仕切っていた女性で、現在は双蛇党本部で所属フリーカンパニーの補給担当官を務めている。呼びかけに応じ元メンバーに参加可否を問うたのが彼女で、発起人は別のメンバーなのだが、なぜか彼女が取り仕切ることになり――今回の件で最も苦労した人物と言える。
 『全員探し出すのが“とても”面倒だから、改めてリンクパールを配ります!』
 有無を言わせぬ迫力に、全員が受け取りを承知したのは言うまでもない。
 互いに苦笑したところで、セインとチスイはほぼ同時に紅茶のカップを置き、ヴェスパを見た。
「さて。本題に入りましょう」
「ふわっ!? あっはい!」
 紅茶の美味しさを堪能しすっかり油断していたヴェスパは慌ててカップを置く。隣でルーシーが笑う。笑いながら「今日ずっとそんなんな」と呟いた。ヴェスパは「うっさいわ」と小声で返しながら、傍らに置いた荷物から二つの物品を取り出した。
 一つは、飛空艇の模型だ。すべて木製だが、気嚢と船体を繋ぐ綱も再現されている。台座に取り付けられているその機体は、テーブルに置かれた衝撃でプロペラを回転させた。可動式らしい。
 もう一つは、機械部品のようだ。金属製のパイプに小さな時計のような円形の文字盤が取り付けられている。
「えっと、これがウチの子たちが造った作品です」
「手に取ってみても?」
「どうぞ」
 チスイはまず模型を手に取った。あちこちに柔らかく触れ、顔を近づけて細部を確認する。
「……うん」
 ぽつりとそう言うと、模型を置き、パイプを手に取る。パイプ脇のダイアルを回し、中を覗く。
「それ、なに?」
 見た目では用途が分からないルーシーがチスイに尋ねる。
「青燐機関の制御装置――の、部品だね」
「へえ」
 パイプをテーブルに戻したチスイが、ヴェスパを見た。
「ヴェスパさん」
「はい」
「二つともとても見事だ。この技術で、ウチと仕事をしたい、ということだね?」
「はい、そうです!」
 見事と言われ、緊張の面持ちだったヴェスパの顔がパッと明るくなる。――が。
「その前に、聞かせてほしい」
 続くチスイの言葉は、ヴェスパの顔を再び緊張のそれへと戻した。
「確認だけど。こっちの模型はイクサル、パイプはゴブリンが製作したものかな?」
「……その、通りです」
「そんなんよく分かるな?」
「どちらの蛮族が造ったモノも、見たことがあるからね。製作上のクセというか、特徴がある」
「ふーん?」
 ルーシーに頷き、それからことさら柔らかな笑顔でチスイは訊いた。
「よければ、事情を聞かせてもらえるかな?」

 ヴェスパが一家の事情を語る。自分が、どうやって彼らと巡り合ったか。そして、どうして彼らを率いる立場になったかを。
 ようやく歩けるような子供から大人まで、ヒト・獣人を問わず、様々な理由で共同体から排除され、あるいは孤独になり、流れついた者たちの集団。
 それを率いる自分さえもが正確な意味ではヒトではないことも、ヴェスパは語った。
 疎外されていようがいまいが、生きていくためには食料も物資も必要だ。そして、自給自足をするにも道具が必要で、それらを入手するには金が必要だ。
 金を入手するのは、大変だ。
 疎外されていなくても大変なのだ。疎外されているならば、なおさらだ。
 
「……だから、仕事が必要なんです。危ない橋を渡らなくていい、後ろ暗い連中に足元を見られて脅されるようなことのない仕事が」
 言い終えたヴェスパが紅茶を口にする。
 しばらく、チスイは無言だった。ルーシーは言い終えたヴェスパとチスイを交互に見ていた。セインは無言だったが、どこか余裕のある表情で全体を見ていた。
「すっかり冷めてしまいましたね。お代わりをお持ちしましょう」
 チスイの後ろに控えた秘書――カルルが、そう言って部屋を出て行く。カルルをちらりと見て目礼したチスイが、ヴェスパに向けて言う。
「お話は、わかりました。――貴方たちの技術力を買いましょう」
「……!」
 ヴェスパが息を呑んだ。それから、溢れてきた大粒の涙を拭って、チスイに礼を言った。
「ありがとうございます……!」
「こちらこそ。よろしくお願いします」
 穏やかに笑ったチスイが続ける。
「それと、食料や医薬品で不足しているものがあったら言ってくださいね。安く手配しますから」
「あああ何から何まで……! 是非お願いします!」
 ほっとした表情のヴェスパ。そしてチスイも、同じように安堵した表情を浮かべていた。

 具体的な取引の内容に関しては、ミードの事務方も交えての話となる。二杯目の紅茶を飲みながら、場はしばしの休憩となった。

「これ、イシュガルドティーですよね。とても美味しい……茶葉も淹れ方も良いです……」
 嬉しそうに飲むヴェスパ。あとでキルルさんに伝えておこう、とチスイが呟く。
「そーいえばこないだまでウルダハにいてさ、ラザハン茶葉ってのが流行ってたけど」
「ああ、アレねえ……」
 ルーシーが何気なく言った話題に、チスイが難しい顔で応じた。
「含んだ言い方だな」
 セインが先を促す。
「うん。アレは厳密にはラザハン茶葉じゃないんだ。本物のラザハン茶葉は定義が厳密で、国家承認を受けた農場だけが名乗れる。そのレベルの農場は数が少ないから、基本国内需要で消費されて滅多なことでは輸出されないし、そもそも莫大な値で取引されるものだよ」
 チスイの解説を聞いて、ルーシーが首をひねる。
「あー? なんか場末の店でも出してたぞ?」
「そうだね。ボクもミードのウルダハ支社から送られたモノを飲んでみたよ。
 結論から言うとアレは『サベネア茶葉』とは言えるけど、『ラザハン茶葉』じゃない。サベネア本島じゃない、近縁の島の農場で生産されたものだろうね」
「ええ……それって詐欺では」
「名称としての『ラザハン茶葉』を名乗ることに制限があるのはあくまでラザハン国内だけなんだよ。だから違法じゃない。けど、これがラザハンに知られたらいい顔はされないだろうね。
 それと。ウチの社内で試飲したときに、とても苦味がある茶葉が混じっていたよ。品質管理に疑問を感じるよ」
「確か、仕入れはビアスト商会だったか」
 セインの問いにチスイが頷く。
「うん。ゴールデン・ビアストっていう最近名を上げてきた商人だけど、あんまりいい噂を聞かないんだよね。他人事ながら心配だなあ」

 話をしているうちに、ミードの事務方社員がやってきた。
 今回は契約の外枠を決め、より細かい個々の依頼に関しては後日、チスイと担当者がアーヴァント一家の本拠地へと出向いて決定することとなった。

 気が付けば時刻は夕刻へと向かっていた。
 チスイはヴェスパに食堂での夕食を勧めたが、ヴェスパは辞退した。洋上のコルベットで結果を待っている一家の者たちがいると言われれば、チスイも無理強いはしない。
 ヴェスパの見送りに一同が一階のロビーまで来たところで、セインがルーシーに言った。
「俺はまだチスイと話がある。悪いが、桟橋への見送りは一人で行ってくれ」
「そ? わかった」
 頷いたルーシーが、ヴェスパに行こうぜ、と促す。
 ヴェスパが、チスイに深々と礼をした。
「本当に――感謝します。ありがとう」
「いえ。こちらにも利がある話です。あまり恩に着ないで欲しい。――これから、よろしく」
 最後に握手をして、ヴェスパ・アーヴァントはルーシーと共にミードを辞した。

 社長室に二人で戻ったところで、チスイが言った。
「セインさあ」
「ん?」
「こうなることを分かって、ボクに彼女を紹介したでしょう」
 むくれたようなふりをして、チスイがセインに指を突き付ける。実際には全く怒ってはいないのだが、形式は大事だ。
「勿論。勝ち戦でも手を抜かない主義でな」
 悪びれる様子もなく、セインが言ってのける。
 チスイが案外情に流されやすい――つい、困っている人へ手を差し伸べてしまう――性格であることを知り抜いているからこそ、セインはここへヴェスパを連れてきたのだ。
 獣人であろうと評価をする偏見の無さ、実力本位な、ある意味冷徹な部分。それと、獣人であろうと困窮している者には手を差し伸べる優しさ。
 そのどちらもを兼ね備えているからこそ、セインはヴェスパを紹介した。
 彼の意図が十分に分かるし自覚しているチスイとしては、せめて一言は言っておかないと気が済まない。
「貸しだからね」
「いいとも」
 気軽に首肯するセインを睨みながら、チスイは社長用のデスクから何枚かの地図と紙束を取り出すと、テーブルに広げた。
「さて。始めようか」
「ああ。まず、ラウバーン局長の居場所だが、ハラタリで間違いない。『光の戦士』は?」
「イシュガルド入りしてから色々巻き込まれてるね。相変わらずというか……」

 夕焼けに照らされた階段を、ルーシーとヴェスパは並んで歩いていた。
「ヴェスパよかったな? これで一安心な」
「うん! 正直助かったよ。ウチ大所帯だしさ、みんながそれぞれの得意技でお金を稼げるようになれば、今よりずっと楽になる」
 心底安心した表情のヴェスパ。ルーシーはそれを見て、さらに問う。
「そしたら、妹たちを探しに行ける?」
「そだね。すぐにじゃないけど……あの子たちがアタシ抜きでも生活ができるようになってきたら、行こうかな、って思ってる。もちろん、行ったらちゃんと帰るんだけどさ」
「そか。じゃあそのときはさ、あたしらを呼べよ。力になっから」
 微笑んで告げるルーシーに、ヴェスパは満面の笑みで返す。
「ぜひぜひ! 心強いよー!」
 互いに笑みを浮かべたまま、相手の顔を見て。それから、二人はまた階段を下りる。
 ちょっとだけ無言の間があった後、ヴェスパが言った。
「逆にさ」
「?」
「もしアタシの力が必要だったら、いつでも呼んでね」
「大変じゃね?」
 ルーシーは首を傾げる。それはそうだけど、と対するヴェスパは首を振る。
「でも、友達の力にはなりたいっしょ?」
 その一言が。
 どれほど、ルーシーの心に衝撃を与えたか。
 ヴェスパは、知る由もない。
「…………」
 ぽかんとした表情で立ち止まるルーシーを、ヴェスパは怪訝そうにのぞき込んだ。
「……どした?」
「あ……や、なんでもない」
 首を振るルーシー。二人はまた歩き出す。ほどなく、桟橋に着いた。見張りの兵は交代していたが、すでにミードから連絡が行っているのだろう。特に誰何されることはなかった。
「あ、そだ。コレ渡しておくね」
 言いながら、ヴェスパは桜色のリンクパールを取り出して、ルーシーに手渡す。
「それ、持ってるのアタシだけだから」
「へ?」
 意味を判じ損ねたルーシーがきょとんとしている間に、 
「ヤじゃなかったら持ってて! じゃあまたね!」
 そう言って、ヴェスパは小舟に飛び乗った。閉じていた帆を張ると、彼女の風の魔力を受けた小舟は見る間に桟橋を離れていく。
「あ……ああ!」
 我に返ったルーシーは、慌てて桟橋の端まで駆ける。
「またな!」
 叫んで手を振った。小さくなったヴェスパが手を振っているのが見える。
 彼女が見えなくなるまで、ルーシーはじっと海を見つめていた。
 あいつ、すごいな。
 自分が言えなかった言葉を簡単に言った。
 けど。
 もうわかった。もう、戸惑わずに言える。
 そっか。
 これが、

 これが「友達」か。

 もう見えなくなった小舟に手を振る。見えてるかなんかどうでもよかった。
 それは別れの挨拶ではなく、再会の約束だ。
 見えなくたって、あいつもあたしも、分かってる。
 赤い陽光が一際鋭く走って、消えた。
 星の輝きが天を埋め尽くすころ、ルーシーは小さく呟いた。 

 またな、ヴェスパ。
 あたしの、はじめての友達。



【魂を紡ぐもの セイン】1.75話『初めての』 完

時系列では『Mon étoile』第二部一章後編へ続きます。
【魂を紡ぐもの セイン】は第二話『明星のマテリア』へ。こちらも鋭意準備中です。

コメント(3)

Juliette Blancheneige

Alexander (Gaia)

Juliette's note
ちーちゃん…もといチスイはあくまでこの作品世界(メタ的には「ジュリエッタサーバー」とでも言いますか)のチスイです。本物はプレイヤーキャラクター、ヒカセンとしてのチスイさんですよ!
今回わたしのお願いを快諾してくださり、出演となりました。このミードの下りを全部オリジナル設定でやるのと既存のミードをアレンジさせていただくのでは労力が段違いなのです。
繰り返しますが、チスイおよびミードの設定はあくまでこの世界版のものです。本来の設定はちーちゃんのサイト『エオルゼアの日常』をご覧くださいね。
また、チスイがギャザクラカンストであることをとても凄いこととして描いているのはそれが『ヒカセン以外の人々にとっては』とても凄いことだからです。ヒカセン以外でそこまで到達している人は非常に少ない。
チスイもセインも『光の戦士』ではありません。『光の戦士』はこの“ジュリエッタサーバー”にはたった一人です。それを踏まえてお読みいただければ幸いです。

Juliette Blancheneige

Alexander (Gaia)

Juliette's note
フランセット・アランブール。
公式NPCに勝手に名前と設定を付ける暴挙。怒られないだろうか。彼女は双蛇党本部のフリカン補給担当官(カンパニーアクションを購入するとこ)です。馴染みの人も多いでしょう。

Juliette Blancheneige

Alexander (Gaia)

Juliette's note
『ラザハン茶葉』の設定は創作です。もし公式から異なる設定が来たら、そちらに沿えるように努力します。
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