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White Knight

Juliette Blancheneige

Alexander (Gaia)

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『Light My Fire/ignited 2(前)』

公開
2 『インフェルノ』

2-1

「クソ……ッ、国境を越えやがった」
 先頭を駆けていた竜騎士が立ち止まった。彼の視界には、邪竜スアーラとその眷属たちがクルザス国境を越え、黒衣森方面へと飛び去る様が映っていた。
「関係ねえ。行くぞ」
 追いついたエールはそれだけを告げると、再び走り出そうとする。
「待てエール!」
 竜騎士に腕を掴まれ、横をすり抜けようとしたエールは強引に止められる。自然に舌打ちが出た。
「我らはイシュガルドの国軍なんだぞ? 正規の軍人が、国境を簡単に越えるな!」
「ふざけんな。放っておいていいわけないだろ!」
 エールが抗弁したところで、他の竜騎士たちも追いついてきた。
「あとはグリダニアに任せようぜ」
「警告は?」
「外交ルートの問題だろ? 司令部に報告して、あとは上の仕事だよ」
 口々に交わされる諦めの言葉に、エールは激昂した。
「――ざけんな!」
 竜騎士団の仲間たちを睨みつける。
「こうしている間にヤツは新しい犠牲者を増やす。それでいいのか? それを見過ごすのか!?」
「落ち着け!」
 最初にエールを止めた竜騎士――セドリックがエールの両肩を掴んだ。
「アレが……スアーラがお前の仇だということは承知している。しかし、だからこそ慎重に行」
「うるせえ!」
 セドリックの言葉を遮って叫ぶ。その手を振り払い、エールは飛び退いた。セドリック以外の者たちは、明らかに一歩引いた様子だ。それが、さらにエールを苛立たせた。
「国なんざ知るか。殺すべきドラゴンがいるんだよ。なら殺せよ。それが竜騎士だ。竜を殺さねえ竜騎士に存在価値なんかあるか!」
「エール、俺たちは“竜騎士団”だ。大きな力を持った集団なんだ。制御無き力は暴徒と同じだ、使命と任務に従え!」
 そのセドリックの言葉が、きっかけだった。
 いや。
 それはずっと以前から分かっていたことだ。

 俺は、ここにいてはいけない。

「――わかった」
「……よかった。お前の気持ちはしっかり司令部に伝えるよ」

 ここで、牙を抜かれるわけにはいかない。

「俺は竜騎士団を抜ける」
 それだけを告げ、エールは走り出した。後ろからセドリックの制止の声、そして追いすがろうとする気配を感じる。だが、それもすぐに終わる。なぜならセドリックは国境を決して越えないからだ。
 さらに加速する。国境はとうに越えた。山道の向こうで、スアーラが吠えている。さらに多くの竜たちや、その眷属どもがあちこちから姿を現していた。
 上等だ。
 今ここで追いつき、どこへも行けないように叩き落してやる。
 エールは岩壁を蹴り、飛んでいる配下の竜目掛けて宙を駆けた。その背を蹴り、さらに別のドラゴンの背を踏み台にして、黒紫の鱗を持つ邪竜――スアーラへと襲い掛かった。
「スァアアァアアラ!!」
 絶叫と共に槍を振るう。視界の中の邪竜が嗤っていた。あの日と、同じように。
 
2-2

 国境沿いでの戦闘を端緒にして、エールはずっとスアーラとその一群を追撃してきた。
 たったひとりだ。
 味方はいない。
 だが――それがどうした。それがどうした!
 今度こそ逃がさない。
 今度こそ殺す。
 エールは雄叫びと共に突進し、跳躍した。
 その身体を、横合いから突進してきたワイバーンが噛み掴んだ。
「邪魔だ!」
 叫びと共に、槍を翻してワイバーンの頭部に突き立てる。エールの怒りに呼応してさらに燃え上がった槍は竜の鱗をやすやすと貫き、一撃でワイバーンを絶命させた。
「――!」
 叫び落ちるワイバーンの死体を蹴り、エールは再度跳躍しようとする。
 だが。
 降下してきたレッドドラゴン数匹が、一斉に炎のブレスをエールへと吐きかけた。
「チッ……!」
 ブレスを躱し、一旦地上へ。標的を求め空を見上げたエールは、そこで再度舌打ちをした。
 新たに十数匹のドラゴンたちが、スアーラの周囲に現れたからだ。
「なんという数だ!」
 グリダニア兵たちが動揺している。
 しかし、その動揺を断ち切る声がした。
「うろたえるな! 神勇隊前へ! 矢の雨でドラゴンどもを低空に押し留めよ! 鬼哭隊は降りた個体を谷へ誘導し各個撃破! 奴らを空へ戻すな!」
 角の生えた少年が、杖を輝かせ叫ぶ。慌てていた兵たちが冷静さを取り戻していくのをエールは見た。
「ではワシらもいくぞ。ロジェは一体でも多く竜どもの敵視を取れ。ワシが支える、恐れるな。鬼哭隊の誘導を手助けせよ」
「俺らは?」
 短く刈り込んだ赤髪の槍術士が訊くと、角の生えた少年はにやりと笑った。
「主らは今回指示なしじゃ。好きに暴れて、奴らの意識を乱せ。狙うべき対象が絞れなければ、攻撃の密度は下がる」
「応よ!」
「りょーかい」
「じゃあ、好きにするわね」
 黒衣の女が姿を消した。比喩ではなく、その場で忽然と消えて見せたのだ。そして、弓術士の女はチョコボを呼ぶと、戦場から離れていく。
「……!?」
 思わずその行く先を見つめてしまったエールは、走り寄ってきた赤髪の槍術士に肩を叩かれた。
「よう竜騎士! 勝負しようぜ!」
「ああ?」
「どっちが多く落とせるかだ! イシュガルドの槍術見せてくれよ!」  
 言うだけ言って、降下したドラゴンへ猛然と突撃していく。エールは何も答えてもいない。
「……チッ」
 まあいい。そんな勝負をする気は無い。自分の狙いは、初めからスアーラ以外には無いのだ。
 奴は遥かな高みにいる。配下の戦いを見つめ、自身は何もしていない。
「ふざけやがって……!」
 憎悪を滾らせ、跳躍する。目標は、グリダニア兵たちが落としきれていない竜たちだ。その背を踏み台にし、スアーラまでたどり着く。
「おおおッ!」
 槍を振るいながら叫ぶ。ここまでの連戦で体が悲鳴を上げたが、意志の力でそれを無理やりねじ伏せ、エールは再度跳躍した。
 
2-3

 焦らず、近付く。
 敵へ駆け寄り刃を振り抜きたい衝動を抑えて、歩く。
 呼吸と体捌き、そして体内エーテルに周囲のエーテルを取り込む技。今、アーシュラは不可視の状態にある。
 不可視とはいえ、物理攻撃が通じない訳ではない。あくまでも、視覚とエーテル感知へ欺瞞を与えているだけだ。
 それに、この技は精妙なエーテル操作を要求される。攻撃、あるいはそれに等しいような物理的な衝撃を受けるか、もしくは自身がそれを制御できないような激しい動きをすれば技は解ける。
 一歩。
 鬼哭隊と戦っている竜の尾が振るわれる。一瞬歩みを止めてやり過ごし、再度踏み込む。
 一歩。
 尾によって砕かれた岩の破片が飛んでくる。服をかすめるほどにぎりぎりの見切りで躱す。
 一歩。
 息を吸う。止める。
 跳躍。
 竜の喉に足を絡める。突然現れた人間に後頭部に組み付かれ、ドラゴンが動揺する。
 そのときにはもう、アーシュラの双剣は深々と突き立てられていた。――ドラゴンの双眸に。
「――!」
 刃を脳まで届かせ、一気に引き抜く。
 絶命する竜からふわりと離れると、地に降り立つ。
 息を吐いて、アーシュラは呟いた。
「ひとつ」

2-4

 風のエーテルを纏わせ、ワイバーンが急降下してくる。常套戦法を用いたというより、神勇隊による矢の牽制を嫌っての動きだ。ゆえに本来の勢いに欠ける。
 それを見切り、メイナードはむしろワイバーンの降下線上へ躍り出た。この低さなら届く。
 轟、と雄叫びを上げてワイバーンが襲いかかる。わざわざ前へやってきた愚か者はブレスで焼かず、直接噛み砕くことにしたようだ。
 怒濤の勢いで牙が迫る。
 タイミングを間違えればあれの餌食だ。
 そんなことは百も承知で、メイナードは更に加速して踏み込んだ。恐怖はある。あるから、乗り越えるのだ。
 切っ先に乗せるのは覚悟。
 踏み込む足に込めるのは勇気。
 刻んだ道を背負い、生き様を技に変えて叩き込む。
 唇が吊り上がる。躍動する魂が、燃え上がる意志が、自然と微笑を浮かべさせる。
 ここしか無いタイミングで、メイナードは跳躍し槍を突き上げる。フルスラスト。自身の降下の勢いも加わった一撃は、ワイバーンの頭部を完全に破砕した。
 それを見て取り、メイナードは着地と同時に吠えた。
「ふたぁつ!」

2-5

「ここにするわ」
 シャルロットはそう言ってチョコボから降りた。戦場全体を見下ろせる岩場。敵集団の頭領であろう邪竜――あの竜騎士がスアーラと言っていた――からは遠ざかってしまったが、それはそれだ。余計なものを片付けて綺麗にしてから相対するつもりだからだ。
 風はやや強く、下方――戦場へ吹き下ろしている。あの竜騎士が跳ぶには不利だろうが、自分にとっては好条件だ。
 優美なフォルムの長弓を構える。木工師としても優秀なシャルロットが、園芸師ギルドに通い詰め自ら厳選した木を用い製作した一点物だ。長さ、重心、弦の張り。全てをシャルロット用に調整してある。
「見ていてね、アルス・ノーヴァ」
 チョコボにそう言って、嘴を撫でる。クエ、と鳴いて頷くように頭を振る愛鳥に微笑を返すと、シャルロットは弓を構えた。
 打ち下ろしになるため、通常の射形とは異なる。弓術士ギルドには射形の美しさに拘り、変則的な打ち方を嫌う者もいる。が、それはシャルロットには気にならない。
 弓術の神髄とは、目標をいかに射抜くかにある。
 どれほど射形が美しかろうと、外れる矢を打つ者は醜い。目標の位置、周囲の条件。射形はそれらから逆算されるはずだ。
 すべては、一撃で射抜くために。
 それがシャルロットの考える美しい弓術だ。
 今、シャルロットの視界の中には、神勇隊の牽制をものともせず、矢を風のエーテルで逸らしながらをブレスを吐いている中型のワイバーンがいる。
 ここへ登りながら戦場を見ていて、あれを標的にしようと思ったのだ。
 姿勢を整える。風の強さを考慮し、力を微調整する。初めて来た土地なら、ここで一度試射をして読み取りたいところだ。だが、幸いにしてここは黒衣森。であれば、どこであろうとシャルロットの庭だ。この位置からの射撃も初めてではない。
 周囲に渦巻く風のエーテルを感じる。
 その風に乗せるように、己のエーテルを内側で収束させる。腕を通じて弓に、矢にそのエーテルを徹す。
 標的を数秒見つめ、動きの癖を読む。
 神域の集中は、すでに呼吸を忘れさせ、その視界さえ拡大させる。
 ワイバーンがブレスを吐くため一瞬止まる。――放つは、今。
 ひょうと射られた入神の一射は、狙い違わずワイバーンの目を射抜いた。
「――」
 口を開け、吐くはずだったブレスの炎をだらしなく漏らしながら、ワイバーンが動きを止め――堕ちた。
 殺到した鬼哭隊に打ち取られる。
 その様子を見て、再びシャルロットは微笑んだ。
 自身の美を追求し、味方の利も得る。最高だ。賞賛されてしかるべきだ。
「行くわよ、アルス・ノーヴァ」
 チョコボに跨る。次の射撃地点へ向かう。
「うふふ」
 笑いが零れた。もっとだ。もっと、美しさを極めなくては。
 あの日見た、あのひとの弓にはまだまだ及ばないから。

2-6

「クソが……ッ!」
 苛立ちを罵倒に変えて、エールは槍を振るう。思うように体が動かない。跳躍する脚に痛みが走る。意識して槍を握りしめねば、突き立てる強さが保てない。
 何匹殺したろうか。邪魔をする雑魚に阻まれ、スアーラには辿り着けない。
 だが、もう少しだ。
 邪魔をするドラゴンたちは確実に減っている。グリダニアの兵たちは良くやっている。それは賞賛に値するが、それを喜ぶ余裕は無い。そんなものはスアーラを打ち取った後に思えばいいことだ。
 エールが着地したところを狙って、ウェアドラゴン種の眷属が拳を振るう。それを躱しざまに槍を一閃させ、眷属の頭部を切り裂く。
「ウェアドラゴンだと……!?」
 先ほどまではいなかったはずだ。だとすると、この期に及んで増援なのか。
 焦りが心を乱す。
 怒りが動きを乱す。
 エールが地上の敵にてこずっている間に、頭上のスアーラの周囲には更なるドラゴンたちが集結してきていた。
「――!」
 高らかに、スアーラが吠えた。
 戦闘していたドラゴンたちが一斉に引いていく。
「待て……!」
 また逃がすのか? 焦燥の叫びをあげて、エールが跳ぶ。――だが。
 増援で現れたドラゴンたちが、スアーラと共に一斉にブレスを吐いた。主であるスアーラの雷のブレスと、同じように雷のブレスであったり炎であったりの差はあれど、それら一斉に放たれた投射攻撃は戦場全体を灼いた。
 グリダニア兵たちは巨大な結界に包まれて防護されたが、それですべてを遮断できたわけではない。その結界の外にいたエールは弾き飛ばされ、地に落ちた。
「ぐあッ!」
 地に倒れたエールを、スアーラが見た。少なくとも、エールはそう感じた。視線が合った。
「……」
 スアーラが吠える。あの時と同じ、勝ち誇った嘲りの声だ。
「……ぁああ!」
 その声に、その挑発に触発され、エールは跳ね起きた。走る。仇の姿を追って。しかし、敵は空を行く。遥か高みを、悠々と。
「待て――待て――」
 俺と戦え。逃げるな。待て――待てスアーラ。
 伸ばした手は届くはずも無く。
 エール・レッドグレイヴは倒れ、地に伏した。

2-7

 エールが増援に気付くよりも前に、リ・ジン・キナは神勇隊の斥候部隊より「クルザス国境側から新たな魔物襲来」の報告を受けていた。
「増援か!」
 しばし戦場を眺め黙考する。地上近くのドラゴンたちはかなり数を減らしている。スアーラと、その周囲にいる者たちは動かない。報告によれば、増援は二足歩行の竜のようなモノだという。シリクタもしくはウェアドラゴンだろう。どちらにせよ地上戦力だ。
「第十四小隊を除き、鬼哭隊・神勇隊は後退せよ。神勇隊は二隊に別れ、側面から増援を撃つ。鬼哭隊は正面から増援を受け、やや引き気味に下がりながら敵と対せよ。側面からの削りで数を減らすぞ!」
「あたしらは?」
 いつの間にか横にいたアーシュラに問われる。
「第十四小隊はそのまま地上のドラゴン族を殲滅! そろそろ上空の親玉が動く頃合いじゃ!」
『待って』
 シャルロットからのリンクパール通信だ。
『上空、さらにドラゴン族よ』
「なんと!」
 スアーラの周囲に、更なる高空から新たなドラゴンが降下してきていた。現在の兵力では限界以上のキャパシティだ。
「むう……」
 さしものリ・ジンが唸る。既に周囲ではウェアドラゴンと鬼哭隊士の戦闘が開始されている。これに手を取られていては、ドラゴンたちを迎撃するのもままならない。
 そのとき、スアーラが吠えた。
 地上で戦闘を行っていたドラゴンたちが、一斉に引いていく。
 同時に、入れ代わるように高空にいたドラゴンたちと――スアーラ自身がブレスを放った。
「いかん!」
 リ・ジンは咄嗟に杖を掲げた。巨大な結界がグリダニア兵たちを覆う。それですべてを遮断はできなかったが、ブレスはその威力を大きく減じて降り注いだ。
 もう一度吠えると、スアーラとドラゴンたちは上昇を始めた。今のは友軍の撤退を助けるための支援射撃だった、というわけだ。ウェアドラゴンたちもその空隙を突くように後退していた。
「リ・ジン様」
 戻ってきたロジェに頷く。
「各隊損害をまとめよ。幻術士隊はすまんがもうひと働きじゃ。助かる命は助けよ」
 杖を通じ全体に指令をすると、ロジェに肉声で言う。
「双蛇党本部へ戦闘経緯を報告。並びに、至急ユージニア監視硝とフォールゴウドへ増援を乞う、と告げよ。あまりに疲弊しすぎた」
「は」
「アーシュラ」
「うん」
「邪竜スアーラとその一団、追えるところまででいい、追ってくれ」
「わかった」
「神勇隊斥候部隊はウェアドラゴンを追え。現在の戦力では交戦は難しいため監視が主だ。敵に発見された場合は速やかに撤退せよ」
 矢継ぎ早に指示を飛ばしたリ・ジンは軽く溜息を吐く。
「リ・ジン、こっちに来てくれ」
 メイナードの呼び声に目を向けると、彼の足元に件の竜騎士が倒れている。エーテルが霧散していない。生きてはいるようだ。
「酷い外傷はないようじゃな。エーテルの枯渇度からすると、疲労じゃな。おそらく連戦に連戦を重ねてきたのだろう」
 歩きながら診て、到着してから実際に接触して確かめる。
「じゃあ、連れてってやるか」
 メイナードが言って竜騎士を抱えた。こういうときに一切迷わないのがこの男のいいところだ。
「うむ。詰め所として使う予定であった『浮かぶコルク亭』の部屋がある。そこへ運ぼう」
「おう」
 メイナードと並んで歩きながら、リ・ジン・キナは厳しい目で空を見つめた。――これで済むとは、到底思えない。

(後編に続く)
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