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White Knight

Juliette Blancheneige

Alexander (Gaia)

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『Sweetest Coma Again』10(4)(『Mon étoile』第二部四章)

公開
§

『幻光召喚』
 ソムヌスが宣言した直後、広間の四隅に光り輝くソムヌスの似姿が出現した。分身は一斉に呪文を唱え、本体は背の翼を広げた。
『『『『アレーセイア・ホーリー』』』』
『根絶刃』
 四隅を埋める円形範囲魔法と、背後の細い隙間だけが対象外となる範囲斬撃。
 一瞬でそれらの対処を求められても、対応できるものではない。
「ッ!!」
 安全地帯に最も近いヘカーテだけが辛うじて逃れたが、あとは全員根絶刃で切り刻まれた。直前にアレーセイア・トルネドがなく斬属性低下のデバフが付与されておらず、食らった全員がホーリーまでは踏んでいないため、それで戦闘不能には至らなかった。――しかし。
『アレーセイア・トルネド』
「今来るのぉ!?」
 痛みを堪えながら、全員が安全地帯――ソムヌスの足元へと走る。が、リリとセレーネは根絶刃のリカバリーのために魔法を行使している最中で出遅れた。
「うぁ……!」
 二人が吹きとばされる。それを、安全地帯にいる残り三人が対処しようとし――
『アレーセイア・ホーリー』
 ソムヌスの足元にいる彼女たちには、ホーリーの範囲外へ逃げる余裕はない。
「――!」
 白い光に打たれ、ソフィアが倒れる。ラヤ・オも瀕死だ。
「ソフィアをお願い!」
「うん!」
 リリとセレーネが分担して、立て直しを始めたときだった。
 青い渦巻のような魔法の幻影が、全員の頭上に出現した。
「え」
「これ」
「やば……!」
「――離れて!」
 リリの叫びと同時に、『粛清の一矢』が蛮神から放たれた。すでに戦闘不能に陥っているソフィア以外の四人は、その強力な一撃を受け、倒れた。盾役を担っていたヘカーテも耐え切れなかった。もとより、盾役としてダメージを受け続けていたのだ。
『…………』
 蛮神ソムヌスが、ゆっくりと周囲を見渡した。
『終わりましたか』
 その問いに返ってくるのは、呻き声だけだ。
『よろしい。……では、貴方たちをすべて、私の裡へと取り込みましょう』
 広間の明度が増していく。この戦いの初めから戦場を舞っていた光の粒子が増え、輝きを強めていく。
『“光の氾濫”。――その魂以外のものは、すべて輝きへと変わりなさい』
 世界が白く塗りつぶされる。停滞の光が溢れる。
 その寸前。
「だめだ!!」
 ソフィアが立ち上がったと同時に光臨武器を掃射した。先の戦闘不能時に、セレーネのレイズが届いてはいたのだ。だが、立ち上がる気力がなかった。勇気がなかった。諦めかかっていたのだ。
 でも。
 消えてなくなるなんて嫌だった。もう二度と、あのひとの顔も見られないなんて嫌だった。
 気が付いたら立ち上がっていた。立ち上がって、引き金を引いていた。
「うぁあああああああ!!!!」
 両腕に構えた短機関銃が、光弾をこれでもかとばら撒く。本来は、チャージされた魔力を使い切れば補充しなければならない。だが今ソフィアは己の魔力を直接光臨武器に注ぎ込んでいる。チャージするのは魔力を光弾に変換する効率の問題だったが、そんなことはもうどうでもよかった。
 足りないなら。
 魂だって削る。
『――無駄です』
 叫びと共に撃ち込まれる光弾を受けながら、ソムヌスは冷ややかな視線をソフィアへと向けた。たしかにダメージを受けている。だが、取るに足らないものだ。それはソフィアも分かっているだろうに、なぜ無駄な足掻きをする?
「私は! 母様が怖かった! いつでも完璧で! なんでもできて! そんな母様に及ばない自分が恥ずかしかった。私は! 自分が! 大嫌いだった!!」
 叫びながら、そして魔力を光臨武器へと注ぎ込みながらも、ソフィアは魔力を分割して消費した。迅速魔。詠唱破棄したレイズが、リリへと届く。
「でも、自分を嫌いになるのと同じくらい、私は……私は、母様が! 厳しくて優しくて聡明で慈愛に溢れたあなたが! 大好きだったんだ!!!」
『……ならば、なぜ逆らうのです?』
「これは、貴方向けの言葉ではないからですよ、蛮神ソムヌス」
 リリが起き上がる。同時に、迅速魔とシンエアーを行使してレイズを唱える。――セレーネが起き上がった。
「そうだよ。私はあなたに言ってるんだよ! メリナ・コムヌス! 戦う前と逆のことを言うけど! ――私は、母様がわたしの母様であることが嬉しかった! だから!!」
 短機関銃が咆哮をやめる。短時間の急激な魔力消費に、ソフィアのエーテル体がついていけなくなったのだ。膝をついて荒い息を吐く彼女を、ラヤ・オが支えた。もう、全員が起き上がっていた。
「だから……かあさまにもどって……!」
 俯いたまま呟いたソフィアの目から、大粒の涙がこぼれた。
『――私はソムヌスであり、メリナである』
 ソムヌスが告げた。ことさら無機質に聞こえる。
『ソムヌスではないメリナの意志は存在せず、メリナではないソムヌスの意志もまた存在しない。ゆえにその説得は無駄です』
「……さて、ね。そう思うんなら」
 ラヤ・オが肩を竦めた。それから続けて言う。
「あんたどうして泣いてるの」
『――なに?』
 ソムヌスの右目から、一筋涙がこぼれ落ちた。それに気付いたとき、はじめて蛮神ソムヌスは動揺を露わにした。
『…………これ、は』
 そのときだった。
 周囲を埋め尽くしていた光は唐突に消え失せた。ソムヌス自身が纏う光も薄らいでいく。
『まさか……!?』
 背の翼が消失した。広間を覆いつくさんばかりだったソムヌスの魔力は揺らぎ、消えていく。七天の間は荘厳で神秘的な場所ではなく、古い古い様式の薄暗い場所になっていった。
「これって……!」
 セレーネの声に、リリが頷いた。
「うん。サイラスさんがやってくれたんだ」
『消えていく……テンパードたちの魂が……祈りが……千五百年の悲願が……!!!』
「――行きましょう」
 リリが決然と告げる。
「うん!」
 セレーネが力いっぱい頷いた。
「ええ。全部使い切るつもりでいくわよ」
 ラヤ・オが拳を自分の掌に打ち付けた。
「ソフィア、いける?」
 ヘカーテが、ようやく自分の足で立ったソフィアを気遣った。
「うん。もう大丈夫。ありがとう」
 ソフィアが微笑む。ヘカーテも笑顔で頷いた。――それから、二人とも笑みを消して蛮神を見上げた。
「いくよ。――合わせて」
 魔杖を構えたヘカーテが言い、蛮神へと走る。残り四人の白魔道士たちは、一斉に白い光を己の周囲に生み出し、叫んだ。
「「「「サンクティファイド・グレア!!」」」」

§

「なかなかに足掻いたが……ここまでだな」
 カリアスが呟いた。
 彼の目前で、エレフテリオスが片膝をついて荒い息を漏らしていた。あちこちを切り刻まれ、足元には血溜まりができていた。
 広間の壁際に、ゼノンが叩きつけられてほぼ機能停止している。
 デュカリオンが走る。最後のとどめ――心核を破壊するために。
「まずは、あちらが決着、というところだな」
 カリアスが淡々と言う。
 そのときだった。
「召喚陣起動」
 荒い息をつきながら、エレフテリオスが言った。
 命を受け、ゼノンの上半身が展開した。胸部が開く。頭部も腕も形を失い、そして心核を起動エーテルと成して、上半身があった場所へ召喚魔法陣を生み出した。
 その、中から。
 鳥型の魔道石像が飛び出した。頭部にあたる部分から、長く鋭いエーテルの刃が突き出ている。
「行け! オレイオス=ディプロサイノ!!!」
 その名は、エレフテリオスの親友であるゼクシウス・バルツァの魔動石像のものだ。そしてこれは、ゼクシウスが遺した彼の忘れ形見であった。
 今、オレイオス=ディプロサイノは魔法陣から加速して飛び出している。そのために調整した魔法陣だ。
 それは、とどめを刺すために突撃していたデュカリオンに躱せる速度とタイミングではなかった。
 エーテルの刃が、デュカリオンを貫く。だが、同時にその体はデュカリオンに掴まえられてしまう。
 エレフテリオスは動じなかった。これこそが彼のねらいであったのだから。
「エーテリック・バースト!!」
 エレフテリオスが叫ぶ。かつての親友のように。二人でこの仕様と技名を考えたときはあまりの酷さに爆笑したものだったが。
 デュカリオンを刺し貫いたまま、オレイオス=ディプロサイノは自爆した。
 貫いたエーテル刃を通じて爆発はデュカリオンの内部にも達し、二機は爆発四散した。
「な……!」
 見事な奇襲攻撃だった。一機目の心核を召喚陣起動のリソースとする機能。あまりにも鮮やかに決まったそれに、カリアスは一瞬だけ己の立場を忘れた。講師として、魔動石像の匠として、称賛を送りたい気持ちでいっぱいになる。
 そこへ。
 エレフテリオスが“糸”を放った。今までで最速。小細工なしの、迅さと鋭さに全てを賭けた一撃。視認されていようが構わない。最速なるがゆえに。
「――サンクティファイド・イレース!」
 その最速に、呪文を合わせるカリアスこそ魔人であった。どれほどの反応速度がそれを可能にするのか。詠唱破棄したイレースが、カリアスを護る。
 見切れないと悟ったからこそ、広域を護るサンクティファイド・イレースを使った。そしてそれは正解で、
 
 だからこそ、決まった。
 
 カリアスの首が、切断されていた。
 骨を断つまでに至らず、つまりは完全な斬首ではない。だが、血管と気管は断ち切った。
 これこそ、エレフテリオスの秘策。
 本物の鋼糸による斬撃。
 誰にも明かさずに鍛錬を続けた、光臨武器ではない物理の鋼糸。危険極まりなく、また難度も通常の武器の比ではない代物だ。修練の結果、彼はそれをたった一本だけ、操れるようになっていたのだ。
 奇しくも、カリアスの『聖天眼』はエーテルの流れを感知する能力。魔力の塊である光臨武器の糸ともに放てば、その存在は紛れる。そしてその目論見は成功したのだ。
「ヵ……ッ」
 首から血を噴き出し、カリアスは倒れた。
「…………」
 成し遂げた感慨はなかった。それよりも、出血と疲労でエレフテリオスも倒れかねない状況だった。
 震える声で詠唱し、傷を塞ぐ。
 そのとき。
 閉鎖空間が消失した。カリアスの死で魔力供給が途絶えたためだ。
 元の七天の間へと戻る。そこで、エレフテリオスは見た。
 神の敗北を。

§

『私は』

 光弾が雨霰と蛮神目掛け降り注ぐ。魔杖から放たれる魔剣技がソムヌスを切り裂く。

『この、不完全な世界で』

 アレーセイア・ホーリーが詠唱されるが、今までのような超速発動ではない。ヘカーテのインタージェクトが詠唱を中断させる。

『苦しむ人々を救済しようとしているのに』

 ラヤ・オが生み出した白光“スター・クラスタ”が、光弾を絶え間なく蛮神へと叩きつける。ラヤ・オも魔力が限界に近い。“スター・クラスタ”は二個しか生み出せていなかったが、それが安定したダメージソースであることは変わらなかった。

『眠りのまま』

 セレーネが唱えるサンクティファイド・トルネドが、ソムヌスに継続ダメージを与えていく。

『次元圧壊を迎えれば』

 ソムヌスが光る風――テンパード化のためのエーテル放射を放つ。だが、それは即座にリリの『超える力』に迎え撃たれ相殺される。

『すべての苦しみから解放されるというのに』

 盾役であるヘカーテへ与えられるダメージを、ソフィアが回復させていく。魔力が枯渇しかかっているが、その状態でも出来ることが白魔道士にはある。巧みなヒールワークで、ソフィアは着実に戦線を支える。

『どうして……!』

 やがて。
 蛮神ソムヌスの身体に無数の亀裂が走り始めた。魔力が漏出し、消えていく。一度崩れ始めれば、それは加速度的に広がっていく。

『……ああ……きえ……て……いく……』

 光が消えていく。いまや亀裂だらけになった蛮神は、エーテルを漏出させながら崩壊していく。
 
『真の世界が……消えていく……!』

 その嘆きを最後にして。
 蛮神ソムヌスは崩れ去った。
 エーテルが揺らいで消える。蛮神が立っていた場所に、メリナ・コムヌスが現れ、倒れた。
「母様……!」
 ソフィアが駆け出した――直後。
『触るな!』
 叫びと共に、エーテルの斬撃がメリナとソフィアの間を駆け抜けた。
「な……っ」
 驚きと共にそちらを見たリリたちは、そこに、異形へと変じたカリアスを見た。
 咎人(シナー)のような真っ白い肌に、異形の翼を生やしている。ただし、全身に入る細かなヒビが、崩壊の一歩手前のような印象を与えた。
「『断罪者(アドラスティア)』だ……!」
 カリアスからやや離れたところにいる、傷だらけのエレフテリオスが言った。ゆっくりと立ち上がるところだった。
「異形化で無理やり死を逃れるとは……」
 カリアスがエレフテリオスをじろりと見たが、何も言わずに動いた。メリナのかたわらへ。
『まだだ』
 声までもひび割れた音色で、カリアスがリリたちへ告げた。
『まだ、終わらぬ』
「カリアス師……! あんただけで何ができるっての?」
 ラヤ・オが叫ぶ。
『私だけではない!』
 倍する激しさで、カリアスは応じた。この男が――常に冷静沈着であった『四善』筆頭、カリアス・フェトファツィディスが絶叫するところなど、この場にいる誰も見たことがなかった。
『猊下はまだ生きている。私の命を猊下に捧げれば、再び蛮神召喚を行える!』
「あんた……!」
 ラヤ・オが構える。リリたちも続いた。魔力は枯渇し、とても戦える状態ではなかったが、それでも、それだけは阻止しなければならなかった。
 そのとき。
 七天の間の後方――メリナとカリアスに近い方にある扉が開いた。
「お待たせしました、『恪勤(ディリジェンス)』」
 広間に入ってきたのは、一人の女。『四善』の一、『清慎』カティア・ガブリスだ。
『おお! 『清慎』か!』
 カリアスは笑った。彼自身の余裕の無さからだろうか、カリアスのかたわらへ歩んでくるカティアが、今までとは印象が違うことに気が付いていなかった。
『これでこちらは盤石となった! この者たちを捕らえ贄として――』
「もう、いいでしょう」
 言葉と共に、カティアが手にした長い釘のような魔具で、カリアスの背を刺した。
『あ……?』
 次の瞬間。
『があああっ!?』
 カリアスが喉をかきむしるような動作をして膝をついた。断罪者の外装がすべて消える。呼吸すらままならない状態で、カリアスは身動きも取れずに震え続けた。
「なん……だ、これは……ッ!」
「テンパランス・ウェッジ。マナではなく、オドで抜くのだそうです」
 答えてから、カティアは自らが入ってきた扉の方を向いた。
 入ってきたボロボロの魔道石像――パステノスは、ミッドランダーの男を抱きかかえていた。
「サイラスさん!」
 リリの呼びかけにサイラスは応えない。赤魔道士は目を閉じたままだ。
「生きています。……まだ、目を醒ましませんが」
 カティアが告げ、パステノスからサイラスの細剣を受け取った。その切っ先を、カリアスに向ける。
「……!」
「終わりにしましょう、カリアス師。夢から――終わらない夢から、醒める時間が、きたのです」
 しばしの沈黙があった。
「……ここで終わりにすれば、貴方たちの命は奪わないわ。角尊の名にかけて保証します」
 ラヤ・オが慰るように言った。
「……」
 やがて、カリアスはゆっくりと頭を下ろした。
「……認めよう。我々の敗北を」
 はっきりとした声で告げる。
 歓声はなかった。誰もが、やっと終わった、というように溜息をついていた。

10-10

 リリ、ラヤ・オ、セレーネ、ヘカーテ。それから、ソフィアと、彼女のそばに立つエレフテリオス。
 ブリトルマティスが抱えたバティストと、パステノスが抱えたサイラス。
 そして、カティアと、メリナを抱きかかえたカリアス。
 それが、今この世界にいる人間のすべてだった。
 世界に暮らしていたテンパードたちの魂は消えた。世界に点在する村々には、魂を失った複製体たちが転がっているだろう。
 夢幻宮を支えて、行き交っていた司祭たちは皆、ソムヌスに魂を捧げて死んだ。
 アステラとマノスは行方が知れなかったが、カティアによれば「この結界世界にはいない」とのことだった。外へと逃亡したと思われる。
 多くの人々が命を落とした。
 そして。

「敗北は認める。だが、それだけだ。裁かれるつもりはない」
 テンパランス・ウェッジを抜かれたカリアスは、メリナを抱えたまま、七天の間最奥の階段を上り、玉座へと至った。目覚めぬメリナをそこへ座らせ、自らはその横へ立つ。
「我々は、ここに残る。この真世界へ至るすべての道を破壊し、この閉じた世界が朽ちゆくまでここにいよう」
「…………わかったわ」
 ラヤ・オが頷いた。
「黒衣森の角尊として認めましょう。地上にあるここへの通路はすべて塞ぎます。――もう、二度と会うことはないわね」
「で、あろうな。――エレフテリオス。カティア。そしてソフィア様」
 名を呼ばれた三人がカリアスのほうを見る。
「諸君らは、地上へと行くがいい。この世界は、猊下と、猊下に最後まで付き従ったものの世界だ」
 淡々と告げる。
「お前たちにはここにいる資格はない。生体複製ももはや出来ぬ。今の体のまま朽ちて死すべし」
「もとより、そのつもりです」
 エレフテリオスが言った。ソフィアが、彼の手をぎゅっと握った。
「――母様と話せなかったのが心残りだけど。さようなら、カリアス師。私はいきます」
 別れを告げる二人を見て、それから溜息を一つ。カティアは肩を竦めた。
「やむを得ないでしょうね。私は、死にたくないので」
 苦笑交じりに告げた後、カティアは魔道石像に抱えられたサイラスをちらりと見た。
「それでは、さらばだ。永遠の救済を拒んだお前たちの世界が滅びるのが先か。この世界が朽ちるのが先か。――楽しみだな」

 女神像のエーテライトで、リリたちは地上へと帰還した。
 その直後から、エーテライトは機能を停止していた。
「あそことの通路は、ここ以外にもあるんでしょう?」
 ラヤ・オの問いかけに、エレフテリオスが頷いた。
「ああ。十数か所はある」
「そんなにあったの! この分だとそれ全部機能停止してそうだけど、チェックはしなきゃね。手伝ってもらうわよ」
 エレフテリオスは意外そうにラヤ・オを見た。
「ん? なに?」
「……責任を取る人間が、必要なのでは? 少なくとも、最初から僕はそのつもりでいましたが」 
 千五百年の長きにわたり、二万に達そうという人々を誘拐し、テンパードにしていた組織。その中心にいたのだ。
「レフ?」
 不安そうにソフィアが見上げる。
「レフくん、自分が彼女の分まで責任を取って、ソフィアを生かそうと思ってるでしょう」
 リリが指摘した。その通りなので、エレフテリオスは微笑むくらいしかすることがない。
「だめだよレフ! 罪なら、私にもあるんだ! それを貴方だけが背負うなんて……!」
「だめだ。君は生きなければならない。押し付けられた生き方じゃない、自分自身の生き方を見つける権利が君にはある」
「だけど……!」
「だ、そうだけど? ラヤ・オ様?」
 ヘカーテが苦笑しながらラヤ・オを見た。
「あー、そういうのは全部、カヌ・エ姉様に任せるから!」
 ラヤ・オはとても面倒くさそうに言った。
「ちなみにカヌ・エ姉様のモットーは『赤心の前に道は開ける』だから、あんたたちの気持ちとかそういうの全部白状したら、きっとちょうどよく裁いてくれるわよ! それまではあたしの手伝いをしてもらうからね!」
「……あの」
 言い放ったラヤ・オに、カティアが小さく挙手した。
「私は、この人が回復するのを見届けたいのですが」
 視線の先には、眠り続けるサイラスがいる。
 カティアの言によれば、サイラスは魂までも燃焼させて、ソムヌスのテンパードたちを燃やし尽くしたのだという。
「そうね。こっちにも、魂が深く傷ついた人がいるから……」
 闘神オーディンの依り代となっていたバティストもまた、深い眠りについたままだった。
「それは、エ・スミ・ヤンとも相談しなきゃだわ。どのみち一緒に来てもらうことになるわよ」
「――わかりました」

「そろそろ、かな?」
 エレフテリオスたちを待たせるかたちで、リリとラヤ・オ、セレーネとヘカーテは少し離れた場所まで歩いていた。
 セレーネの言葉に、ヘカーテが頷く。
「だね。――もう一回会えるなんて思ってもみなかったから、実感がないなあ」
 二人はそもそも、夢幻球の力で現界していたエーテル体に過ぎない。
「向こう――って、つまりは夢幻球の中だけど、そこへ戻って、今度こそ完全にアレを止めなきゃね」
「うんうん。それやらないと、私たちの魂は星に還れない」
 明るく言ってから、セレーネはリリを抱き締めた。
「これが、ほんとにほんとの最後だと思う」
「うん」
「ほんのちょっとの間だけど、楽しかったよ」
「うん」
「リリ?」
「うん」
 泣かないように。笑顔で別れよう。そう思っていたのに。
 泣かないように。なんて、無理な話だった。
「もー! つられるじゃん! ……そんなの! つられちゃうでしょ……っ」
 セレーネも泣き出した。二人は抱き合ったまま泣き続ける。
「…………」
「…………」
 それを、ヘカーテとラヤ・オはずっと見ていた。
 互いに無言だった。けれど、握った手だけは離さなかった。

 やがて。
 二人の体は光に包まれ、ゆっくりと消えていった。

 残った二人は、肩を寄せ合って泣いた。
 夕日が落ち、空には月が――優しい光を湛えながら、昇り始めていた。

『Sweetest Coma Again』(完)

 長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。ソフィアたちの処遇など、顛末として語られていないことはまだまだあるのですが、それらは本編や外伝等で触れていこうと思っています。ですので、物語としてはここで幕を引かせていただきます。
 二部四章も残すところあと一話。実質本編であるノノノ編『Fire after Fire』です。お楽しみに!
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Juliette Blancheneige

Alexander (Gaia)

おまけ
『ソムヌス討滅戦』
技一覧

アレーセイア・ホーリー
円範囲、スタン、詠唱爆速、体感一秒くらい。(間に合えば)沈黙止め可能。

アレーセイア・グレア
全体範囲

ディバイン・ロア
タンク単体強攻撃、光の塔が地から天へ

粛清の一矢
青マーカー、一人受け、被ダメアップ、蘇生後に発動する昏睡(仕様としては強力なマヒ)デバフ(エスナが効かない)時間式

アレーセイア・トルネド
足元安置、斬耐性ダウン、ノックバック

根絶刃
予兆なし範囲、三百度が攻撃範囲、安置は背後の翼の無い方六十度範囲。発動前に前後左右いずれかを向く。斬属性

アレーセイア・スリプガ
デバフ黄泉の睡眠(エスナが効かない)時間式、視線攻撃

幻光召喚
四隅に分身、四体でアレーセイア・ホーリー
中央本体もアレーセイア・ホーリーのパターンと、中央が根絶刃のパターン
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