
「暁の血盟は小さな組織だ。それでも、一歩を踏み出せば世界を変えられる。」
アルフィノの言葉に、リセとアリゼーが静かに頷く。彼らの次なる目的地は、東方――帝国に支配されるドマへの支援を模索するための第一歩だった。
数日後、リムサ・ロミンサの港で待ち合わせたアルフィノたちは、タタルが連れてきた一人の男に目を見張る。
「みなさん、お待たせしました! この方が船主のカルヴァランさんです!」
タタルの紹介を受け、アリゼーは驚愕する。
「カルヴァラン……リムサの三大海賊『百鬼夜行』の頭目!? アルフィノ、海賊と取引するつもり?」
カルヴァランは冷ややかな視線を向けた。
「『暁』から話があると聞いて来てみれば、身内すらまとめきれていないとは……これでは交渉にすらならない。」
アルフィノはすぐに頭を下げる。
「妹が失礼を。カルヴァラン卿、私たちは帝国支配に苦しむドマへの支援のため、東方遠征を計画しています。そのために、あなたの航海経験を頼りたいのです。」
カルヴァランは腕を組み、静かに問いかける。
「ドマのために我々がリスクを取る理由があるのかね? 私たちはビジネスで動いている。それに見合う益がない限り、協力する気はない。」
その言葉を待っていたかのように、タタルが一歩前に出た。
「それについては、ご安心ください。カルヴァランさんにとっても、無視できない話をご用意しました。」
カルヴァランの興味を引くように、タタルは小さな声で続けた。
「イシュガルドの名門、デュランデル家の話をご存知ですか? 約20年前、嫡男が旅に出たまま行方不明になったそうです。その子がもし、生きていて、家には帰りたくないとしたら……」
その瞬間、カルヴァランの目が険しくなり、そしてすぐに不敵な笑みに変わった。
「……面白い。確かに噂は耳にしたことがある。だが、それをここで持ち出すとはね。」
タタルは微笑みを浮かべながら返す。
「情報収集は私の得意分野ですから。お話に興味を持っていただけたのなら、それだけで十分です。」
カルヴァランはしばらくの沈黙の後、低い声で言った。
「いいだろう。この取引を受ける。だが、こちらの条件を飲めるかどうかは別問題だ。」
取引は成立し、カルヴァランはクガネまでの航海を引き受けることとなった。準備が整うまでの間、タタルに対する感謝の言葉が絶えなかった。
「タタル、君の交渉術には本当に驚かされるよ。」
アルフィノが感嘆すると、タタルは謙遜しながらも笑みを浮かべる。
「いえいえ、これは私の仕事ですから。でも……大事なのは、みんなで支え合うことですからね!」