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紅蓮小話「土用の丑の日」

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※嘘設定あり。

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「土用の丑の日……でっすか?」

「ハイ!」

 オサード小大陸より東に進んだ海の先にある「ひんがしの国」と言う島国、長年鎖国状態を続けているそのひんがしの国で唯一の他国船の受け入れ口、交易港「クガネ」……。
 各国の人々が行き交う煌びやかな商人の街の一画でデューンフォーク族の女性が小首を傾げた。

「ひんがしの国の古くからの慣習でシテ、毎年立夏に「う」のつく食べ物を食べて……要するに良い物食べて暑い夏を乗り切ろうという行事デスネ」

「確かにエオルゼアと比べて随分と蒸し暑いでっすもんね……」

 困った様に小さな眉毛を下げるララフェルに、サングラスを付けたミッドランダーの男性も頷く。

「慣れない土地でこそ郷に従い、厳しい季節を乗り切る為の知恵を享受するのデス。……因みに土用と言うのは『木火土金水の五行によって万物は成り立っている』というひんがしの国独自の思想において『春・夏・秋・冬』を司る『木・火・金・水』を繋ぐ『季節の変わり目を司る土属性の時期』の事で……と、これ以上待たせるのは気の毒デスネ」

 サングラスの奥で苦笑する男の目線の先ではララフェルの女性がヒューランの小指の爪ほどに小さな鼻をクンクンと動かして店内に広がる香ばしい香りに心を奪われていた。

「くんくん……はっ、すっすみませんでっした! えっと、季節のお話でっしたか?」

 ワタワタと短い腕を振って慌てる女性に、掻い摘んだ程度のウンチクを語って変にボロが出る前に切り上げようと笑って流した男は店の給仕の女性を呼ぶと、壁から下がっている品書きを確認する仕草だけ見せてから「特上を一つ」と伝えた。

「アナタはどれに……どうしマシタ?」

 見てみれば小さな目を大きく見開いて随分と上にある品書きを見ていた。

「ぜ、ゼロがいち、に、さん、よん……えぇぇぇ、この一食だけで暁の皆さんをどれだけ賄えるか……」

「いや流石にそこまでデハ」

 思わず口を挟む。

「こ、ここのお客さん達はいつもこんなお高い昼食を……?」

「土用の丑の日ですからネ、年に一度の贅沢を楽しんでいる人達も多いでショウ」

 隣で表情を崩さないよう努める給仕の女性に気まずそうに愛想笑いをして、改めて男は尋ねた。

「お誘いしたのはこちらなので、気にせず選んでくだサイ。接待です経費で落としてしまいまショウ」

 胡散臭い顔で悪戯小僧の様に笑い口に指を当てる男に、女性もまた悪戯っぽく笑って答えるのだった。

「では私も特上でお願いしまっす!」

 それほど広くない店内に彼女の元気な声が響く。付け台の向こう側で調理をしている気難しそうな男が「あいよ」と小さく答えながら串をひっくり返した。
 クスクスとどこかから聞こえる声に顔を真っ赤にして小さな体をさらに縮める女性に彼もまた楽しそうに笑いながら、給仕の女性に「では特上二つで」と伝え直すのだった。

「ひ、酷いでっすハンコックさん! もう、顔が燃えそうでっす……」

「ハハハ。ではタタルさんがこれ以上の暑さで倒れない為にも、美味しい『うなぎ』をいただきましょうカ」


 客引き、叩き売り、喧嘩の声、荷車が走る音……蒸し暑くとも活気溢れるクガネの街で、今日もまた暁の血盟の事務・会計係は仲間の為に精一杯働くのだ。



 美味しいうなぎを食べてから。


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