「サヨナラ!」
3人組の最後のニンジャとなったゴスペルはクリスタリアの捨て身のホーリーバースト・ジツを受け、純白の光の中で爆発四散!
「ハァ…ハァ」
3人のニンジャとの死闘からサヴァイブしたクリスタリアの白きニンジャ装束は、自らの血と数多の敵からの返り血で朱に染まりポタポタと地面に血だまりを作る。
「ユキコ=サン!」
何度「出てくるな」という言葉を裏切ろうとしたことか。ナビア=サンは食いしばった唇から血を滴らせながら、ユキコ=サンに駆け寄る。
「ナビア=サン…ダイジョウブ?口から血が出てる」
ユキコ=サンはブルブルと震える手でナビア=サンの口元の血を拭う。
「私はダイジョウブ…ユキコ=サンは…」
ユキコ=サンは辛うじて自ら立ってはいるが、最早負っている傷は致命傷に近く同じく限界も近い事はモータルの目からみても明らかであった。
「流石に手練れが来ているわね…ちょっと辛いかな」
「ユキコ=サン!もう私のことは良いから、今すぐ一人で脱出して!ユキコ=サン一人なら…」
「少し遅かったわね…まあ元々アナタを置いて一人で逃げる気は一切なかったけれど」
ユキコ=サンは大きく息を付き、ナビア=サンの目を真っすぐと見る。
「ナビア=サン。前にニンジャに成りたいって、言っていたわよね」
「エ?ウン」
質問の意図がわからずに、茫然とするナビア=サン。
「今でも、そう思っている?」
「ウン。私がニンジャに成れれば、今だってユキコ=サンと一緒に戦えるし…」
その言葉を聞いて、ユキコ=サンは呼吸すらままならない中、意を決した様に笑顔を作る。
「それなら…ニンジャに成ろう。ゴメンネ。こんな方法でしかアナタをもう守れそうにない」
「それは…平気だけれど、どうやって?」
「それはね…こうやって!イヤーッ!」
ユキコ=サンは電撃的速度でナビア=サンの左胸にショウテイ=バンプを繰り出す!
「ンアーッ!」
だがナビア=サンは反射的に身をよじり、ユキコ=サンの衰弱も相まってハートブレイク・ショウテイを免れる!しかしながら、その衝撃でナビア=サンの体は5m程吹き飛ばされ、軽い脳震盪のような症状からそのまま倒れ込む。
「ナビア=サン…アナタを仮死状態にする。これだけニンジャソウルが宙を舞っている。アナタ程のヒトならきっとツヨイソウルが憑依しようとするわ」
「ダイジョウブ。心臓が止まっている最中はリジェネ・ジツを掛けて身体へのダメージは抑える様にするわ。ニンジャソウルが憑依しきるまでの間、必ず私が守る」
ユキコ=サンはままならぬ体を引きずって、ナビア=サンに近づく。
「ゲホッ!ゲホッ!」
「ナビア=サン。もし目が覚めて、他のニンジャに出会ったらこう言いなさい「ヴァルゴのゾディアークニンジャを殺した」と」
「アイ…エェ」
しゃがみ込むナビア=サンは恐怖に震える手をユキコ=サンに向ける。
クリスタリアは憐れめいた目でナビア=サンを見る。
「ごめんね。死んでいてもらわないと困るのよ」
KABOOOOOOM!どこからかまた爆発音が鳴り響く!クリスタリアはゆっくりとナビア=サンに近寄る。
「アイエエエエエ!」
ナビア=サンの悲鳴と同時にクリスタリアは自らの手刀をナビア=サンの胸に突き立てる。そしてゆっくりと中へ沈み込ませていく。
「アイ…エ」
クリスタリアの手には心臓の鼓動が、ナビア=サンには自らの心臓を握るクリスタリアの温かい手の感触が、同時に伝わる。
ナビア=サンは涙を流しながら、ゆっくりと横に崩れ落ちる。固いコンクリートの地面が彼女の身体を迎える。
その姿を見届けて、クリスタリアはその手を引き抜く。その目からも涙が零れ落ちていた。
激しい頭痛でナビア=サンは目を醒ました。クラクラして気持ちが悪い。敏感に音を拾うニンジャ聴力にもこの暗がりで遥か遠くを視認出来るニンジャ視力にも、ありとあらゆるニンジャの能力が想像していたよりも遥かに気分が悪い。
しかしながら確かに体にはカラテが漲り、今までの常識という枷は外れている様に感じる。爆発音は未だに鳴りやまぬ。まだイクサは続いているようだ。
「ユキコ=サン…?そうだ。ユキコ=サン!」
新たに得たニンジャ視力は、思ったよりも早く対象を発見する。
自分の倒れていた地点から数m先。クレーターめいて地面がえぐれている場所。そこにガレキや何かの機械のパーツのスクラップに混じって爆発四散したと思われるニンジャの手足が散らばっている。
散らばっている小さな小さな手足。その一つには、オソロイで買ったブレスレットが付いている。それはすっかり焼け焦げ、それを外すと纏わりつくような火傷の跡を残していた。その近くにはシンユであるニンジャが使っていたワンドも転がっていた。ワンドは先端の水晶が砕け、ただの金属の棒と化していた。
「そんなの…ウソ…チガウ」
周囲を見渡す。よく見るとそこら中にクレーターめいた爆発痕があり、あちこちコンクリートが黒く焼け焦げている。…自分が倒れていた場所を避けるように。
「アアアアア…」
ナビア=サンは涙を零す暇もなく、接近するニンジャソウルを感知する。
「ドーモ。クロスフェイト=デス」
「ドーモ。ナビア=デス」
インストラクションに倣い、ナビア=サンはアイサツを返す。どうやら相手に敵意はないようだ。
「その手に持っているのは…もしかしてゾディアークニンジャを?」
「ちがっ…!ンア…」
ナビア=サンはチクリと痛む頭を片手で押さえる。ニューロン内でユキコ=サンの姿がプレイバックされる。
(他のニンジャに出会ったら…)
(チガウ…)
ナビア=サンのニューロンをユキコ=サンが駆け巡る。
(私のタダシイはね。守りたいヒトを守り通すこと)(その人を失えばマケグミになってしまうわ)(今、一番守りたいと思うのはナビア=サン。アナタよ)
一部分だけ綺麗に原型を留めている区画に倒れる自分のミラージュが見える。そしてそれを、血まみれで守るユキコ=サンのミラージュも。
ナビア=サンは自らの舌を噛む。痛みと口内に広がる鉄の味が彼女を冷静にさせた。
(ユキコ=サンを…マケグミにしてたまるもんか!)
「ソウ。私がヴァルゴのゾディアークニンジャを殺した」
それは、彼女の本心だったのかも知れない。クロスフェイトは嬉しそうに語り掛ける。
「オオ!それは実際キンボシ・オオキイだ!早速報告を…手強かっただろう、本部まで連れて行こう」
「必要ナイデス。自分で行けます」
そのまま去ろうとするナビア=サンにクロスフェイトは声を掛ける。
「ここの離脱コードはO K A M Eだ。アイツの死を無駄にするなよ」
ナビア=サンは振り返る。が、既にクロスフェイトの姿はそこにはなかった。
―――――
「ユキコ=サン…良い子にゃああああ」
ウルスラ=サンはサケに口を付けながら、涙を流す。
「グゥ…グオーグオー」
「テメッ!オキロッコラー!」
ナビア=サンは既に空いている酒瓶を振りかぶりオソバ=サンの脳天に振り下ろす!
「グワーッ!」
SMASH!酒瓶が粉々に砕け散り、オソバ=サンは目を醒ます。
「アンタ話聞いてる途中で寝るなんて、ふてえ奴にゃ!」
ウルスラ=サンはまだ少し残る酒瓶の口を持ち始める!ナムアミダブツ!
「ちょ…!聞いてますって!ちょっと目を休憩させてただけですから!ウルスラ姐さん酒瓶置いて!」
「絶対寝てた」
「いやいや。それでナビア姐さんのシンユのニンジャ装束についていた刺繍とこの前のファッキンな石ころについてた模様が一緒だって言う事でしょ。何か聞いてないんですか?」
ナビア=サンは納得がいかない表情のまま、またサケを呷り始める。
「一度だけ聞いたことがあるんだけど「これは私が守りたいものを守るっていう証」だって言ってただけなのよね…」
「ふむふむ」
オソバ=サンはそこら中に散乱する酒瓶を振って、残っているものを探す。
「まあこれでナビア=サンがあれだけ夢中になったのもわかったにゃ」
「デスネー」
「ウン。ゴメンネ。でも私どうしても知りたいの。ひょっとしたらまたあの石を探しに行くかも」
ナビア=サンは申し訳なさそうに目を伏せる。
「そんときゃ協力するにゃ!」
「まあ…暇があれば私も手伝いますよ」
オソバ=サンは酒瓶を逆さに、わずかに残ったサケを飲み干す。
「アリガト。二人とも。今日は私が払うね」
その後3人は笑顔でオーガニック・スシバーの前で別れた。そしてその2か月後、ナビア=サンは二人の前から姿を消した。