イゼルさんに捧ぐ船は再び、魔大陸へ――――二回目の突入
意気込む一行
今度は、蒼(紅)の竜騎士と竜の眼がある
葉ネギうら若き10代の頃の記憶――
人生で一度は口にしてみたかった台詞を
エスティニアンが口にする
正直今も言ってみたい
竜の眼の力を源に、無事に魔法障壁を突破した
手筈通りに行くはずが、その道を阻む大きな影が帝国軍の軍艦である
さすが帝国軍、汚い
帝国の猛撃になすすべもない一行
機体は大きく揺れ、危機が迫る
そこへ――もう、わかっていたような気がする
彼女の行く末がどうなるか
漠然と、心の片隅にあったのだと思う
大儀のために罪を犯し、争いを生んだ
その目前で、見えぬところで数多の命が奪われた
それでも彼女はそれを為した
その願いを叶えるためにそうした
それは、幼き日の自分を救おうとする行為であったのかもしれない
でもたしかに彼女は望んだのだ
竜と人が共に生きる未来を見たのだ
天を見た
翼を広げた白亜の竜を駆るは氷の巫女――イゼルさんその人だった
かつて幻想と言い放ち、飛び立った竜ではなかった
シヴァというたったひとりの人間を愛した竜がそこにいた
帝国の攻撃から庇うように、彼女は落ちる――
その身を竜が護るように囲い、落ちていく
それがどんな意味を持つのか
共に旅をしたからわかる
その声は高らかに
彼女の意思と決意の強さが
その身を抱く氷となる
クリスタルのような輝きのそれが禍々しい空に広がる
無数の攻撃を防ぐ氷が弾けては、雲海に吸い込まれるように消えていく
最期の、彼女の微笑みが――
己の中の神を降ろし、一人で立ち向かうその人は
今度は傷つけるのではなく
守るために――
渾身の一撃だった
それでも、攻撃は止まない
力尽きた彼女を敵の砲撃が捉える
無数の砲撃を浴びた彼女は落ちていく
最後に感謝の言葉を口にして
それはこちらの台詞だよイゼルさん
わたしたちは仲間になれただろうか
一時でも、凍えるあなたをあたためる居場所となれただろうか
あなたにこそ、感謝を伝えたい
あなたの人柄が味に出ていた
おいしいシチューをありがとう
シチューの具材にしようとネギを鷲掴みにしたエスティニアンを
止めてくれてありがとう
とても短い旅路だったけれど
みんなで火を囲み、同じご飯をたべたあの時間は
きっとこれからも心をあたためてくれるのだと思う
モーグリのかわいさに悶絶していた愛らしい氷の乙女よ
アウラたちを守ってくれてありがとう
美しい空を、ありがとう
ありがとう
もう一人の光の戦士
旅の途中で幾度となく彼女と口論をしていた
エスティニアンの言葉が
彼女にとって、最大の餞だったのかもしれない
悲しむ暇などない
それでも苦しい
彼女は許されないことをした
でもそれは彼女だけじゃない
あなたのやさしさもあたたかさもわたしたちは知っている
だって共に旅をしたのだから
いろんなものを見たのだから
彼女なりの贖罪だったとしても
やっぱり寂しい
大切な人の存在が目に映らなくなってしまうのは
やはりつらくてくるしい
あなたは間違いなく、仲間の一人だった
後ろを振り向くことはできない
今は、ただ前に進むしかない
必ずあなたを弔うことを約束する
雪原のただ中で凍える少女はいない
人と竜が共存する世を、その光景を
必ずあなたに見せることを約束する
今はただ、あなたが守り導いてくれたこの道を進んでいく
目の前にそびえるは魔大陸
決戦の地
決着のその場所へ――
トールダン
来たぞ
お前を討つ『竜』が来たぞ