--- Area The Hall of the Novice --
「複数人が相手かっ!」
微かに潮風が吹き抜ける石造りの建物の中で、小規模な戦闘が行われていた。
肩に力が入り、気合が空回りしている猫騎士が複数人と対峙している。
猫騎士は白銀の騎士鎧を身に着けており、装備から推測すると、手練れのように見えるが。。。
「ここは、フラッ……」
「ありゃ!?発動しないっ!?」
「隙ありー!!!」
突如として大きな隙を見せた猫騎士に、格闘士の容赦ない一撃が飛んでくる。
戦場において一番のご法度である「迷い」を見せた猫騎士の惨敗であった。
「勝負あり!」
ここは西ラノシアにある「初心者の館」
近年益々増加する冒険者への志願者達が、基本的な身のこなしを学べる場所だ。
ビギナーの登龍門的な「サスタシャ浸食洞」もすぐ近くに存在している。
「さっきから言ってるように、"フラッシュ" はもう存在しないの!」
「複数人の "敵視" を取るには範囲攻撃をすること!」
「は、はぁい。。。」
「まぁ、7年間も眠っていたんだから、しょうがないか」
「もう一本いくよ、基本からやり直しだ!」
「はいっ!」
時の流れと共に「戦技」も変化していく。
ナイトが使用する「銀冑団」の戦技も例外では無い。
600年という長き時を超えて存在するには、常に進化し続ける必要があったのだろう。
味方の盾役として敵の矢面に立つには、常に最先端の戦い方が求められるのだ。
「初心者の館」では、長らく戦闘から遠ざかっていた冒険者のために
最先端の戦い方もレクチャーしてくれる。
7年もの間眠りについてた猫騎士も、戦闘の勘を取り戻すためにこの地を訪れていた。
今は複数人の敵を同時に相手にする "立ち回り" の研修中だ。
「あ、いっけね。」
「伝えるの忘れてたんだけど、もう一つの戦技 "ブルワー"」
「ここが正念場だ!"ブルワー"」
「そうそれ、"ブルワーク" ももう存在しないから」
「えぇぇぇ、そんなー(泣)」
格闘士のボディブローをまともに受けた猫騎士は、無念そうに再度天を仰ぐのであった。
遠くでは、到着を示す船の汽笛が高らかに鳴り響いていた。