スチールファルシオン。修行中ナイトの憧れの武器。
特別強かったり、特殊能力があったりするわけじゃないけど
ずっと短剣や野暮ったい木剣しか装備できなかった駆け出しが
最初に持てるようになる長剣。まさにナイトらしい剣。
それを装備できるようになることが修行中ナイトたちの夢なのだ。
「・・・よし、出来た」
あたしは何十回かの失敗の後、ようやくスチールファルシオンのHQを完成させることが出来た。
すごく時間がかかった。たくさん散財もした。でも、でも。
やっと、この剣を作ることが出来たんだ!
剣のステータスを見てみると、ちゃんとあたしの銘が入っている。やった!
あたしはすぐに無粋な鍛冶屋スタイルから街着に着替え、宿の外に飛び出した。
ウルダハのメインストリートに出て
集中するために切っていた各種チャットモードを全部オンにする。
するとそこへFCチャットの色で「スチールファルシオンおめでとう!」の文字が踊った。
あ、あれ? なんでみんな知ってるんだろ?
「ありがとう」とあたしが打つ間も無く、彼が「ありがとう」と答えていた。・・・え?
「正直さー、値段のつけ間違えだと思うんだよねー」
「NQとHQまちがえたー、みたいな?」
「たぶん。でも落札した以上、こいつは俺んだかんね!」
「あははは」
どうやら彼はマーケットでスチールファルシオンのHQを落札したようだ。
と、同時に彼のナイトレベルが31になっていることに気づいた。
そんなぁ・・・
今までの疲れがどっと出てくる。
なんとか彼が31に到達するまでに間に合わせるつもりだったのに・・・
「FCの共有倉庫に入れるからさ、超格安で入手した俺様の『ナイトの証』を見てくれよー」
「え、いいよそんなヒマじゃねーっつのw」
「なんだよお前らマスター愛が足りなくね?
・・・よし、とりあえず突っ込んだから全員見ろー! マスター命令っ!」
「うはwおーぼーwww」
「ただいまー」
「おかえり」
「おかえりー」
「マリーも見てくれよ、俺様のスチールファルシオンをさ!」
「おkおk」
あたしは平静を装って答えた。そして不滅隊の詰所へ走る。誰より早く。そして・・・
「ふうん、これがマスターのスチールファルシオンねぇ。HQとは言え、別に普通じゃない」
「これだから女は・・・ロマンっつーのをわかってない」
「はいはい、あたしはもう見たからね。じゃブレイフロクスいってきまー」
「あいよ」
「いってらー」
「いってらっしゃい」
「でもさ、HQをNQの値段で出したおっちょこちょいってどんなやつ?」
「あー流石に名前までは見てねえよ、興味ないし」
「じゃあ僕が見ようかな・・・あれ」
「どした」
「マリーじゃんwww」
「まじかw」
「し、知らないわよ、きっとあたしがマーケットに流したのを誰かが買って
そいつが間違えたんでしょ!」
「どーだかw」
「うるさい、うるさーい! こっちはピンチなんだから、ちょっと黙っててよね!」
「はいはいw」
知らない人の銘が入ったスチールファルシオンを振り回しながら
あたしは照れ隠しにキレてみせたのだった。