冒険者商人アリシアの日記2
「空腹は、レザーでは満たされない」
駆け出し冒険者として、ウルダハの家を出た私。
クエスト依頼を達成しながら、ウルダハ周辺のモンスターを倒して少し調子に乗っていた。
というか、怖いくらいに、怒涛のように、冒険者としてステップアップしている。
白髪のイケメンからナンパされたと思ったら、暁の血盟とかいう組織の勧誘をされ、
あれよあれよと、蛮神討伐に駆り出された。
特に、リーダーのあの人が少し怖い。
リンクシェルで通信がくるたびに、笑顔で格安仕事を依頼してくる。
ブラックな商会の店主みたいな匂いがするわ!
そうして、戦闘ばかりしていたら、ギルが尽きた・・・。
おかしい、生活はできるだけ切り詰めていたはずなのに。
食事だって、家にいたときより一段階グレードを落としているのに!
駆け出し冒険者の収入から見れば、更に数段グレードを落とす必要があったと、
街道沿いで焚火をしながら、お腹がグーグー鳴っている今気がついた。
所持金は10ギル、家を出て2週間で死にそうになるとは、さすが私。
箱入りのお嬢さまは、一味違う・・・と現実逃避していたが、
ついに空腹で耐えられなくなってきた。
このままでは死んでしまうと、自分の荷物を漁ってみた。
モンスターから剥いで、街の革細工師になめしてもらったアルドゴートレザーと目が合った。
革製品だし、そもそも目が合うことはないのだが、ボクヲタベテ!と聞こえた。
・・・お腹がすきすぎて、幻聴が聞こえたのかもしれない。
いくらなんでも、私はお嬢様の自分を見失ったりはしていない。
でも、元は動物よね。アルドゴートの肩ロースは、大山羊のステーキの材料でもあるし!
気づいたら、夕方、虚ろな目をした私が、鍋でレザーを茹でていた。
生まれて初めて、ギルに土下座したくなった。お父様には断じてしないけど。
茹でても堅かったけど、蛮神イフリートを倒した私の腕力でちぎり、食べてみた。
おいしくない、むしろまずい。そして夜中腹痛で死にかけた。
お腹の痛みが和らいだ頃、馬車に乗った行商人のヒューランの女の子と出会った。
名前はカイリーといった。長髪ロングで、どこか幸薄そうな女の子。
それと、サザーランド商会の一員といっていた。
アインツベルン商会のライバル商会であるが、積み荷はお世辞にも良品は積んでいなかった。
おそらく、商会に参加することがやっとの、三流商人なのだろう。
パンと水を分けてもらい、親身になってくれたカイリーに事情を説明した。
家を出て、冒険者になったこと。ブラック組織に加入し、蛮神を討伐したこと。
途中から、笑顔が引きつり始めていたが、アルドゴートレザーの話を終えたところで、
可哀そうと泣き出してしまった。
え?私の冒険は泣かれるほどひどいのだろうか・・・私が泣きたくなってきた。
朝になり、お礼にウルダハまで護衛した。
モンスターを余裕で倒すと、実力はあるのにレザーを食べるなんてと、最後まで同情された。
貧乏商人に同情され、自分のことは棚に上げて、1発殴っておけばよかったと思った。
カイリーとウルダハに戻った私は、決意した。
少しギルを稼ごう、手に職を!
いざ、彫金士ギルドへ!
備考:現在の所持金 10ギル+1万ギル(カイリーから借金)