以前から気になってはいたアダマンタスという魔物、なかなかに愛嬌がある。
甲羅の上に乗ってみたらどんな反応をするのだろうか。
力強く大地を踏みしめる歩みにそんなことを考えながら、私は吊り橋を渡っていく。
グリダニアとウルダハの交易路、その中継地点であるキャンプ・トランキルだ。
キャンプは根渡り沼という湿地帯の上に築かれており、いくつかの長い吊り橋で結ばれている。
一帯が深いぬかるみになっているため、交易品を満載した荷車にとってこの吊り橋は欠かせない。
また、根渡り沼には多くの魔物が生息しており、安易に近づくことは極めて危険だ。
そのため鬼哭隊六番槍所属の隊士たちが、付近の警備および吊り橋の整備を行っている。
巨大なエーテライトが設置されたキャンプの中心に到着し、辺りをぐるりと見渡して依頼主を探す。
「キャンプ・トランキル付近の安全は、我々に任せろ」
初めてこの地を訪れたのだと思われる冒険者に、堂々とした口調で語る女性ミコッテ。
私の依頼主、鬼哭隊六番槍所属のデト・モシュロカである。
その様子を遠巻きに眺めていると、彼女がこちらに気づいたようで目が合った。
即座にしっぽをピンと立て、ソワソワと落ち着かない様子になる彼女。
先程までの堂々とした雰囲気からの急変に、思わず笑いそうになる私である。
事の始まりは一時間前。
グリダニアからウルダハへと移動するため、私はこのキャンプに立ち寄っていた。
「お前、冒険者だろう。 ……ちょっとこっちへ来て欲しい!」
六番槍隊長のランドゥネルに見つかりたくなかったのだろうか。
きょろきょろと周囲を警戒しつつ、チョコボにギサールの野菜を与えている私に声をかけてきた。
かなりの挙動不審であったのはいうまでもない。
話を聞いてみると、冒険者である私に一つ依頼を頼みたいとのことだった。
キャンプ・トランキルの南方に、ウルダハ商人が品卸しに来ているのだという。
生まれてこのかた黒衣森を離れたことがないという彼女。
鬼哭隊として森を守ることに誇りをもちながらも、他都市への関心は以前からあったらしい。
そこで任務のため持ち場を離れることができない彼女に代わって、
私に何かウルダハ様式の物を貰ってきてほしいということだった。
依頼を済ませた私を見つけた彼女は、冒険者への対応を早々に切り上げた。
そして私の元へと駆け寄ってくるやいなや、期待を抑えれない様子で問いかけてきた。
「な、何か貰えたか……? ウウ、ウルダハを感じられるものだといいな……」
ついつい口元が緩んでしまう私である。
ここで何も貰えなかったと言ったら、一体彼女はどんな表情をするのだろうか。
そんな悪戯心を抑えつつ、私はウルダハ商人から貰った『砂都の香』を彼女に手渡した。
「おお、これは……ウルダハの香か!」
興奮した様子の彼女は、そういって一息にその香りを確かめる。
「うっ……な、なるほど……ックシュン! ウルダハの民は、強い匂いの物を好むのだな……」
あまりにも予定調和な結果に、私はまたしても笑いを堪えることができなかった。
少し涙目になった様子の彼女だが、その顔には喜びの感情が溢れていた。
「しかし、隊長の言っていたとおりだ…… エオルゼアは広く、まだ私の知らぬことばかり!」
弾むような楽しげな声に、思わず私まで嬉しくなってしまう。
冒険者である私とて、まだまだエオルゼアは広く果てしないと感じる。
この森で生まれ育ってきた彼女にとって、その衝撃は計り知れないものなのだろう。
「ありがとう、冒険者よ! ……ックシュン!」
快活とした声でそういうと、くしゃみと闘いながら任務へと戻っていった。
そんな彼女の背中を見送って、相棒のチョコボであるスオミに乗ってキャンプを出発する。
さて、次にキャンプ・トランキルを訪れるときは何を持ってくるとしようか。
しっぽをピンと立て、瞳を好奇心で輝かせる彼女を思いながら、私は黒衣森を後にした。
百合を尋ねて三千ヤルム デト・モシュロカ
南部森林 キャンプ・トランキル X:16 Y:28
(三枚目のSSはごちゃごちゃとしていますが、すごく可愛かったので外せませんでした!)