僕たちが冒険するエオルゼアは、
蛮族や帝国など様々な脅威にさらされています。
そんな脅威の中でも特にヤバみあるのが蛮神です。
蛮神。 蛮族の奉じる神。
人々の祈りがクリスタルと交わることで顕現する祈りの獣です。
その一撃は地を砕き、嵐を呼び、全てを焼き尽くす……
まさに神。
しかもこの蛮神、倒すたびに強くなって登場する迷惑仕様。
帰ってくるたびに『真』だとか『極』だとか、やっかいそうな接頭語を
くっつけてくるので
煩わしいったらありゃしません。
そのたびに大量のクリスタルを消費しているというんですから、
この世界のエネルギー問題が心配になってきます。
さて、強くなって帰ってくる蛮神たちの最終形態が
『極蛮神』と呼ばれる、きわめてぱない力を持つアルティメットフォーム。
その力はすさまじく、カンストしている光の戦士すら一撃で沈むほどです。
ギミック怖い。よしだあああああああああ!!!
さすがの『極』。
きょく
〖極〗 キョク・ゴク・きわみ・きわめる・きわまる きまる・きめる
1.
《名・造》この上ないところ。頂点。限界点。「疲労の極」「極限・極点・終極・窮極」。
以下「ゴク」と読む。
「極上・極意・極寒・極暑・極熱・極月(ごくげつ)・極楽・極悪・極秘・至極」
2.
一方のはて。 「極地・極東・磁極・南極・北極・電極・対極・両極・消極・積極」 極蛮神とは極限の力を持つ蛮神。
極まってるんですってよ。
いやいや、そんなの倒せるわけないですって。
それを冒険者に倒してこいって言うんですから、エオルゼア民なかなか強かです。
とは言え、超える力を持つのが僕たち光の戦士です。
極だろうがなんだろうが超えてやろうじゃありませんか。
決意を込めてコンテンツをファインド! シャキーン!!
即シャキ即インで極蛮神に挑みます。
……一人で!! 一人で!? 入ってみたら僕一人しかいません。
突然の
ぼっち。
焦る気持ちを抑えつつ、胸に手を当てて考えます。
――心当たりは、ある。
一人でどこかに出かけては、誰はばかることなくダイブする活動、
通称フォーリンラブ活動。
今日も元気に落ちていた僕は、当然ながらコンテンツファインダーの
「人数制限解除」にチェックを入れていました。
その結果、突然の
ぼっち!!
人数制限解除のチェックを外し忘れていたのでした。
対峙するは極タイタン。
OK、そっちが極ならこっちだって極です。
極うっかり。 ……助けて。 しかし、改めて考えてみます。
極タイタンは名前からして極まっている感ありますが、その実レベルは50。
対して僕のレベルは60。
レベル60。
それは蒼天のイシュガルドにおけるプレイヤーのレベルキャップ。
即ち、レベルの極み。
言ってしまえば僕だって極なのです。
いえ、うっかりの方ではなく。
言わば
極光の戦士。
……なんだか極光術使えそうになりました。
フィブリル!
レベル差が10あったら大抵の敵は雑魚になるのがRPGの定め。
RPGにおける最強の戦術、
『レベルを上げて物理で殴る』とはレベル制RPGの真理を表しているのです。
即ち、レベルを上げればボスだって雑魚。
だから、大丈夫。
僕は、やれる。
笑みを浮かべると、不退転の決意でタイタンの前に立ちます。
なぁに、もし失敗したとしても舞台から落ちるだけ。
そんなの、いつもやっていることだろう?
恐れることなんてあるわけない。
もう何も怖くない!相棒の妖精リリィベルを呼び出すと、すかさず駆け出してバイオ。
振るわれる剛腕をすんでで躱してバイオラ。
続けてミアズマ、エアロと持てる魔法を矢継ぎ早に繰り出しては
すかさず回避。
学者はヒーラーの中でもHPを回復させることに特化した
所謂ピュアヒーラーではなく、障壁を張りダメージそのものを
なかったことにする軽減特化型のヒーラーだ。
あらかじめ障壁を張ることで敵の攻撃を軽減、場合によっては
無効化するのがその本分と言っても過言ではない。
そして学者はその障壁がある限り回復を考える必要がなく、
多少のダメージならばフェアリーが回復してくれる。
自然、ヒーラーの中でも攻撃寄りに立ち回れるのが学者の特徴だ。
だからこそ、攻撃の手を緩めるわけにはいかない。
隣で懸命に癒しの魔法をかけてくれているリリィベルに視線を送りつつ、
溜まったエーテルフローのすべてを攻撃につぎ込む。
出し惜しみはなしだ。
極と名が示す通り、極タイタンの攻撃は熾烈を極める。
複数方向に範囲が広がるランドスライド、
連続で足元に発生する大地の重み、
フィールドを破壊するジオクラッシュ、
あらゆる攻撃が死の咆哮を上げ迫りくる。
それを躱し、あるいは障壁で受け止め、時にはスプリントで
戦場を縦横無尽に駆ける。
――体が軽い。
戦場に一人きり、無謀とも思える戦いに身を投じてなお
僕の闘志に陰りはなく、体の動きだって滑らかだ。
ちらと右手に光る本を見やる
それは人造精霊をその内に宿した意志ある武器。
煌めくアニマウェポン――もう一人の相棒だ。
妖精と精霊、二人の相棒とともにある僕に敗北なんてありえない。
絶対に負けないと視線に力をこめ睨みつけると、エーテルフローを溜める。
タイタンも拳を打ち鳴らしてそれに応じる。
その時不意に僕の視界が闇に染まった。
グラナイトジェイル。
対象を強固な岩に閉じ込めるタイタンの封印技だ。
閉じ込められたものはその岩を破壊するまで攻撃はおろか移動すらできなくなり、
一定時間経過すると岩が爆発し中のものに致死のダメージを与える。
拳を打ち鳴らしたのがその予兆だ。
しまったと思ったときには遅かった。
体にまとわりついた山吹色の魔法陣はその効果を存分に発揮し、
周囲のエーテルを硬い岩へと変質させて僕を包み込む。
それは幼子を慈しむ母の抱擁のように優し気なものではなく、
閉じ込めたものを絶対に逃がさんとする悪意の檻だ。
その悪意はやがて凝縮し爆ぜる。
爆発で体力の大半を失い膝をつく僕に、あたたかい光が降り注ぐ。
リリィベルの光の癒しだ。
淡い光に包まれ体に力が戻ってきたの感じるがまだ足りない。
なんとか体制を立て直し障壁で回復の時間を稼ごうと呪文の詠唱を始めるが、
タイタンはそれを許しはしなかった。
その剛腕を地中に潜らせると地面そのものを持ち上げ、
巨岩とも呼ぶべき砲弾を撃ち放す。
マウンテンバスター。
多くの騎士達を沈めてきた、タイタンの必殺の一撃だ。
たとえ必殺とはいかなくとも、その一撃は鎧を砕き肌を裂く。
その効果は被ダメージ上昇という形でもたらされ、一撃をしのいだとしても
次、あるいはその次は耐えきれないと騎士たちに絶望を植え付ける。
エオルゼアにおいてもっとも防御力に優れていると言われる騎士にしてそれだ。
重鎧はおろか、軽鎧すら身に着けていない軽装のヒーラーに耐えるすべはない。
けれど、ヒーラーだからこそ超えられる。
死を予感した僕は障壁の詠唱を破棄すると、これまで攻撃にしか
使っていなかったエーテルフローを回復に使うことを決断する。
使用するスキルは生命活性法。
エーテルフローを消費し瞬時に失われた体力を回復する学者の奥義だ。
刹那、暴風を纏った死の魔弾が直撃した。
巨大な質量の衝撃に体も意識も千々に砕けそうになる。
けれど――
まだ、負けてない。
膝をつき、崩れそうになりながらも僕はいまだ生きていた。
マウンテンバスターの着弾に割り込むように生命活性法が発動し
すんでのところで命をつないだのだ。
息を乱しながらも立ち上がろうとする僕を見やると、タイタンは口元をゆがめて
その巨体をものともせずに飛び上がった。
それはジオクラッシュの予兆。
飛び上がったタイタンが着地すると同時に大地震が発生し、
全体にダメージを与えた上周囲のフィールドが崩れ落ちる凶悪な技だ。
恐らくこれで勝負を決めようというのだろう。
けれど、それは悪手。
ジオクラッシュは飛び上がってから落下してくるまでに数秒のタイムラグがある。
それだけの時間があれば体力を全快させることだって可能だ。
加えて僕は軽減特化型のヒーラーである学者。
体力を回復した上で障壁を張りなおすのもお手の物だ。
準備を終えた僕を待っていたかのように、タイタンが圧倒的な質量で落下してくる。
その衝撃を障壁と相殺することで被害なくやり過ごすと、気合を入れなおす。
それに呼応するようにタイタンもその心核を現した。
心核をあらわにしたタイタンはその力をチャージし、フェイズの最後に履行技である
「大地の怒り」を使用する。
大地の怒りまでに心核を破壊できなければ即死級のダメージで全滅し、
破壊できたとして大ダメージを受ける、正真正銘タイタンの必殺技だ。
けれど、心核を破壊できなかったとしても即死級のダメージを受けるだけだ。
レベル50であれば問答無用で全滅する攻撃であったとしても、今のレベルは60。
おおむね最大HP程度のダメージを受けるだけで、確実に一撃死するものではない。
言い換えればそれは「障壁を張ってさえいれば一撃で死ぬことはない」ことを意味する。
あらかじめ障壁を張ったうえで攻撃を受け、ダメージを負った瞬間に回復魔法を
発動させるカウンターヒールをあてることで見た目上の被害を0にすることだって出来る。
そしてそれは学者が得意とするところだった。
たとえ心核の破壊に失敗しても問題はない。
失敗してもいいという安心感からか、それからの立ち回りは
いつも以上にスムーズだった。
矢継ぎ早に繰り出す魔法もリズミカルに連鎖し、途切れることなく打ち出される。
瀕死の重傷を負わされたグラナイトジェイルだって予兆が見えた時点で
障壁の更新や即時回復魔法の準備をして備えることが出来る。
大地の重みやランドスライドに焦ることもない。
不思議な感覚だった。
頭の中でピースが埋まっていくのを感じる。
やがて飛び上がり大地の怒りを使用するタイタンだったが、その胸に心核はもうない。
大幅に威力を減衰された大地の怒りは、もはや必殺技と呼べるものではなかった。
これなら、勝てる。
当たると落ちる複数方向に範囲が広がるランドスライドも、
連続で足元に発生する大地の重みも、
場合によっては逃げ場のないボムボルダーも、
高威力な上被ダメージ上昇を付与するマウンテンバスターも、
自由を奪い最後には爆発するグラナイトジェイルも、
フィールド全てを巻き込み連続で放たれる激震も、
タイタンから放射状に大きく跳ね飛ばす大激震も、
倒してもダメージ+ヘヴィ床を残す子タイタンも、
全てが見えていた。
それらを回避するたびに、雪崩れるように打ち出される魔法が
ダメージを与えるたびに、頭の中のピースは埋まっていく。
それは絵だった。
脳裏に浮かぶのは豪奢な額縁に飾られた一枚の絵。
ジグソーパズルのようにモザイク状に切り取られたその絵は
ところどころが欠けていて全貌は見えない。
けれど僕は知っていた。
攻撃を避けるたびに、魔法が炸裂するたびに埋まっていくその絵の名前は――
バイオ、バイオラ、ミアズマ、エアロ、シャドウフレア……スリップダメージを
与える魔法がおよそ3秒ごとに少しずつ、けれど確実にタイタンの
体力を削っていく。
それと同時に学者最大の威力を誇る気炎法が火を噴き、
詠唱後にすかさずエナジードレインが炸裂しHPとMPを回復させる。
踊るようなステップで回避し、歌うように滑らかに詠唱する。
まるで終わらないワルツのようにくるくると巡る戦いは、けれど唐突に終わりを迎えた。
走り回りタイタンの猛攻を躱していたところで、唐突にタイタンが倒れたのだ。
あまりにもあっけない幕引き。
けれどそれは、学者にとってのいつもの、ありふれた風景で――
つまり、その絵は勝利だった。
学者にとっての勝利はいつも静かで密やかだ。
徐々に毒や病気で蝕まれた敵は、いつも静かに倒れていく。
崩れ落ちたタイタンの姿を見て、僕はその絵が完成したことを理解した。
僕は勝った、勝ったのだ。
戦闘開始から58分33秒。
うっかりから始まった僕の冒険は、時間切れすれすれに勝利で幕を閉じたのだ。
他には誰もいないその神殿で、僕は静かに勝利に酔うのだった。
そして――
まぁ、落ちるよね!
ということで、極タイタン、学者ソロ行けるって聞いてやってみたんですが、
よくよく調べてみたらアイテムレベル200ちょっとの時代にそれを
やってたっていうんだから驚きです。
プロ学者すごい……