リムサの地に降り立った俺は、一先ず宿の確保と
――旅の疲れを癒すために、一杯の冷えたエールを求めて、溺れた海豚亭に来ていた。
ところが、である。
「……!」妙な気配を察知した。
店主であるバデロンが多少語気を荒げて、対応している。
と、そこに――。
「おい、ちょっと来い」
と小声で俺を招くものがいた。
追っ手の声にも思えなかったので、招かれた方向に、注意しながら向かった。
店の裏側に呼び出されると、そこに居たのは元海賊のデンストンだった。
「エインザル大甲将からの伝言だ。 暫く街から出ろ、妙な連中が恐らくアンタを探している」
「なに……!」
――リムサ・ロミンサまで、やつらは手を回していたのか?
「街の中は決して安全じゃない。 ――寝込みでも襲われたら、あんたもタダじゃすまないだろ」
――くそっ。
いつもなら、そんな言葉を聞いても、なんとも思わなかった。
だが、今の俺は暗黒騎士としての、何かを失ってしまっていた。
「さあ、早く、まだ見つかってない。 ……死んだら何にもならんだろう!」
「くっ……」
俺は歯噛みした。
そうだな……恐らく、俺がここにいることで、バデロンやリムサ・ロミンサの連中まで危害が及ぶこともあるかもしれない。
一先ず、俺はリムサからも退避する事にした。
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俺は街の裏道を抜けて、低地ラノシアへと向かった。
此処から先は人気がない道のりが続く。
とぼとぼと、舗道を歩くと、空腹に腹がなった。
「くそ……」
そういえば、ウルダハを出てから殆ど何も食べてない。
街から離れる途中。
レッドルースター農場があった。
ここで何か食べ物を手に入れることが出来るだろうか?
「いや……」
今の俺は殆ど文無しだ。
それに、こんなところで買い物をして、足がついたら……。
と、
俺は足元に何かがいる事に気がついた。
マンドラゴラだ。
「こいつら食えるかな……?」
と俺は考えた。
あまり、旨くはなさそうだ。
と……。
珍しい固体を見つけた。
マンドラゴラの中でも香味がかぐわしいガーリック種だ。
「ニンニクを利かせた、ドードーのステーキで一杯やりたいぜ。 ……まてよ。 そういえば、低地ラノシアには野生のドードーがいたっけか」
……! 俺は思い立った。 ――許せ。
俺は、大剣をマンドラゴラに向けて振り上げ、そして――
続いてドードーを暗黒剣で粉砕した。
そしてそのまま、俺は低地ラノシアを北へと向かった。
東ラノシアに続く街道の脇に、見捨てられた廃屋があった。
今では時々コボルド族が使っているらしい。
一先ずは今日の仮宿を此処にする事にした。
とりあえず雨風が防げそうな事を確認した俺は、手に入れたドードーの笹身をガーリックマンドラゴラで焼いた。
わびしい食事だったが、まあ仕方なかった。
そういえばこの料理も、リングサスに教わったんだったな。
本当なら、ビスマルクのランチメニューだって食うつもりだったんだが。
窓から差し込む僅かな光に、俺はため息を付いた。
思えば俺はあの頃から、変わったのだろうか。
家族と死に別れてから、何も変わってないのではないだろうか。
なにも、できてないのではないだろうか。
帝国への復讐も出来ず、暗黒騎士としての使命も果たせそうに無い。
俺は――どうすればよいのか。
つづく。