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あるララフェルの冒険記録12 ある引きこもりモンクとザ・バーン

公開
これは、野菜を切る時はなるべく食べられる部分を多くしようとするような、あるララフェルの、ただの冒険記録です。


ツクヨミ討伐から、どれくらいの時が流れたのでしょうか。


……私は、軽い記憶喪失になっていました。


冒険者の基本的な心得を忘れてしまった私は、なんとかそれを取り戻そうと、ある山に籠もっていました。

そこには己の拳ひとつで強敵と戦うための力を授けてくれるという、ある拳法道場があり、私はそこの門下生になっていたのです。

「はい!はい!れんげき!そーしょーだ!はさいけん!はいー!」

その道場の中庭で、木人相手にいつものスキル回しを練習していると、同じ門下生のココさんがやってきました。

「いやー、やっぱりカレーは美味いっ!」

ココさんは、強靭な筋力を誇るアウラ族の男性です。最初に出会った瞬間に、全身にタトゥーを施し、真っ黒に日焼けしていたので、一目でパリピだと分かりました。でも、とっても気さくないい方です。

そして私と同じFCであり、格闘家としての鍛錬を積みたいと、この道場に一緒に入門した同期でもあります。

いつも「カレー」とかいう食べ物がどれだけおいしいか私に教えようとしてくれるのですが、残念ながら私はそれを食べた事がありません。

大体、オリーブ・オイルとトマトを使わずに、人間にそんなにおいしい物が作れるとは想像が出来ません。そう、考えるのもばかばかしいくらいに。

何だかんだと二人でスキル回しをしながら、たまに会話する私たち。

「本当にカレーってそんなに美味しいんですか?」

訝しげに質問する私に、

「ランブレッタさんも〜冒険者になって色んな土地に行けば食べられるよ!あのスパイスたまんねー!イェーッフゥ!」

「冒険者ですか」

そう、かつては私も色んな場所を旅する冒険者だったのです。

その記憶はあるんだけど、どうしてたのか思い出せない。そんな風に、冒険者に戻る事に二の足を踏んでいた私を、いつも厳しく鍛えてくれている老師が呼びました。

「ランブレッタ、ココ。お前さん方を、えふしーの仲間とやらが迎えに来ておるぞ。フォッフォッフォ」

「えっ?」「マジでー?」

慌てて道場の玄関に向かった私とココさんは、そこで懐かしい顔を見つけました。

「ランさん、そろそろいい加減にあそこに行くで。ココさんも手伝って?」

その人は、FC仲間のかじさんでした。

「あそこっすか!イイっすね!」

ココさんはもう行く気満々。しかし私はと言えば……。

「お久しぶりです。ザ・バーンですか」

ザ・バーン。それは前に行こうとして行けなかった、謎の地です。なんか波の音みたいな名前なので、多分、海の近くなんだと思いますけど、具体的な場所は知らなかったりします。

「うーん……まだ動けるかどうか……」

過去の自分の力を取り戻したとはとても思えない私は、まだそこに行く事を恐れていたのかもしれません。

「なんや、まだあかんのかいな」

少々呆れ気味のかじさん。ちょっと申し訳ないですね。でも……。

私がそれでもうーん、と唸っていると、ふと、かじさんの隣に見かけない顔があることに気づきました。

「絶対大丈夫ですよ!僕たちも行きます!ランブレッタさんも一緒にいきましょう!(^ ^)」

ゆうきさんと名乗ったそのミコッテ少女は見るからに重そうな両手剣を、その華奢な体で軽々と背負い、とにかく明るく私を誘ってくれました。少し心が動きましたが、まだ私には、それをやり遂げる自信がありませんでした。

「行こうや、な?アメちゃんあげるから」

かじさんも援護射撃をしてくれた様ですが、アメちゃんでは……。

「うーん……」

まだ無理だなぁ。やっぱり、お二人には悪いですけどお断りしようかしら。そんな風に考えていた時でした。

ゆうきさんが満面の笑みで、こう言ったのです。

「今日はですね、みんなにとっておきの弁当を持ってきました!ほら、カルボナーラスパゲッティです!ザ・バーンに来たらこれ、食べられますよ!」

「カルボナーラ?行きます!」

丁度、毎日毎日、道場の精進料理にうんざりしていたところのスパゲッティ・カルボナーラ。名前を聞くだけで、もうダメでした。私は、これには逆らえない。そんな、急にぴょんぴょん飛び跳ねながら参加表明を出した私を見て、

「なんや、ゲンキンな子やなぁ」

かじさんが呆れていました。

そんな騒々しい私たちのやりとりを、老師が優しげに見守っていました。そして、

「のぅランブレッタよ、これを持っていくのじゃ」

それは、金色に輝き、ふわふわの触り心地の、とても小さな雲でした。

「老師、これは?」

「フォッフォッフォ。これは我が道場に代々伝わりし伝説の空飛ぶマウントじゃ。大事に使うんじゃよ?迷えるララフェルよ」

「ありがとうございます、老師!」

ふわもこ雲を弄びながら老師にお礼を述べた私でしたが、さっきまでニコニコ笑っていた老師が、ふいに真面目な表情になり、

「天に星、地に花、人に愛。ランブレッタよ、どんな苦境にあっても、あのスキルだけは絶対に、使わない様に。後は、お前さんの好きにやりなさい。フォッフォッフォ」

「……はい、分かりました老師」

私も真面目な顔で、そんな風に答えました。

分かっています、あれはとても危険なスキルだから、私だって出来れば使いたくないですからね。

さて、本当にここにはお世話になりました。そう、私がなんとも晴れやかな気持ちで道場を見渡している時。後ろではココさんが何かを叫んでいた様でした。

「あっ、老師ずりーよ!俺様にもそのマウントくれよ!」


……こうして、私達は空を飛び、かの地に向かったのです。


「海じゃ無いんですね……」

ザ・バーン。

そこは真っ白な砂だらけの、見渡す限り何も無い、広大な砂漠でした。

海の近くだと思いこんでいた私が、一人で複雑な思いをしていると、

「さ、行きますよー!」

暗黒騎士のゆうきさんが先陣を切り、歩き始めました。気を取り直して、いよいよザ・バーンの攻略、開始です!


「ヒャッハー!俺様の魔法、特と味わうがいいぜ!イェーッフゥ!」

結局、マウントをもらえなかったココさんはいじけて赤魔道士として参加。ですが、その実力の程は確かでした。

細剣を巧みに操り、砂の中から突如現れるたくさんのモンスター達を、軽やかに処理。

「みんな集まれ!こっちだよ!」

そして、タンク役のゆうきさんも負けてはいません。四方八方に散らばるモンスター達の注目を一身に集め、戦いを有利に演出してくれていました。

「そら、ケアルやで!」

そんなゆうきさんに間断なく回復魔法をかけ続け、戦線を維持してくれる白魔道士のかじさん。抜群の安定力でパーティに安心安全を与えてくれていました。

「はぁあー!れんげき!そうしょうだ!はさいけん!」

そして私はというと、長いこと続いた道場での引きこもり生活が影響してか、連続して襲いくるモンスター達に対して、いまいち技のキレのないぬるい攻撃をしていました。

「やっぱり冒険者としては体がなまっていますね……」

道場で己を鍛える事と、道なき道を戦いながら進む事は、全然勝手が違うという事を実感。今更ながら仲間に負担をかけてしまっている事を恥ずかしく思いました。

「ゆっくりでええ。勘を取り戻していこうや」

「そうですよ、のんびりいきましょう!(^^)」

「ランブレッタさんの調子が戻ったら、世界一美味ぇカレー出す店を紹介しますぜ!ヒャッハァ!」

しかし、そんな私をパーティは温かく見守ってくれました。

「ありがとうございます!」

私達はそれからも歩みを止めず、機械仕掛けのトンネルを抜け、へんなエビみたいなモンスターをも打ち倒した頃、とうとうザ・バーンの最奥部まで辿り着いたのでした。そこで、

「みなさん、お弁当にしましょう(^^)」

ゆうきさんの休憩宣言。

「【やったー!】」

「なんや疲れたなぁ」

「あー!カレー食いてー!」

もういい加減、お腹がペコペコだったので、待ちに待ったご飯タイムでした。ついにカルボナーラが食べられる時が来たのです。

「モグモグ、スパゲッティ、ブォーノ!」

ゆうきさんが持ってきたスパゲッティ・カルボナーラは、もはや私はこれを食べる為だけに生まれてきたのかも?と思えるくらい、格別に美味しく感じられました。

その後は、みんなでしばらく取り留めのない話をして、休憩は終了。

「さて、この奥にはザ・バーンの主が潜んでいる様です。みなさん準備はいいですか?(^^)」

「「「おーー!」」」

そこにいたのは、一匹の純白の竜、ミストドラゴン。

その不気味なまでに白い鱗を輝かせ、自らの縄張りに進入した不届き者である私達を、執拗なまでに攻撃してきました。

ですが、そこはさすがに現役冒険者達、それほど危ない場面を見ることもなく、順調にドラゴンの体力を削っていきます。

「なんだ、どんな怖いドラゴンなのかと思ったら、普通じゃないですか」

ほとんど仲間任せなはずの私だったのですが、それでもそんな風に思ってしまうほど、ドラゴンはどんどん弱っていきました。

しかし。

「いや……こいつの真骨頂はまだ……」

かじさんが、少し不安そうな顔でそんな言葉を発した、まさにその時でした。

「えっ?」

突然、今の今まで戦っていたはずのドラゴンが、大量の真っ白い霧に、状態を変化させたのです!

「えっ、えっ!どこに消えたんですか!?」

慌てふためく私。ドラゴンがどこにもいない!どこいったの!?

全員で、周囲に猛烈な勢いで広がり続ける白い霧の中、ドラゴンの姿を探しました。

いない、どこ!?

「くそ、こっち来た!」

視界を封じられた私達は、ココさんの声を聞きました。どうやら今、狙われているのはココさんだった様です、助けないと!でも、ココさんはどこにいるの!?

分からない、分からない!

「うわぁーーーっ!!」

ドサッ、という音とともに、一部の霧が薄れて、地面に何かが落ちてきたのが見えました。

……それはアウラ男性の冒険者の姿をしていました。

「ココさぁーん!大丈夫ですか!」

私が近寄ると、ココさんは全身に砂と氷を張り付かせ、真白になって、でもそのあちこちから、血が、噴き出していて……。

「……ランブレッタさん……俺様、ゴホっ!もう、ダメみたいだ……ハハ……」

口から血を吐きながら、それでも笑みを浮かべるココさん」

「そんな……ココさん、しっかりしてください!」

「最後に……ずっとランブレッタさんに言いたかった事があるんだ……き、聞いて……ほし……」

「ココさん、なんですか!何を言いたかったんですか!?」

私はココさんの手をしっかり握りしめて、砂嵐の大轟音の中その最後の言葉を聞き逃すまいと、耳を澄ませました。

「……実は俺様……ララフェル女だったことがあるんだ……」

「!?」

突然のマッスルガイからの予想外の告白に、私は目を白黒させながら、

「ココさん、それって、どういう事ですか!?」

しかし、ココさんは謎の爆弾発言を残したまま、既に事切れていました。

その手に細剣を握ったまま、とても綺麗な姿勢で……。

「くっ……ココさん、世界一おいしいカレーのお店を教えてくれるって言ってたじゃないですかー!」

そんな私の叫びがようやく残り二人に届いたらしく、

「ココさん、ホンマ!?」

「えっ、ココさんがやられた!?ちくしょー、ドラゴンめー!」

仲間の死を知った二人は怒り、悲しみ、せめてココさんの仇を討とうと、霧の中の敵の姿を探し求めました。

しかし見つからない。どこから攻撃が来るのか分からない。気体になったドラゴンの恐怖の攻撃は、それからも執拗に続きました。

「くっ!こいつめ、こっちを向けー!」

ようやく霧が薄まってくると、挑発スキル全開で、ターゲットを固定しようとするゆうきさんの姿が見えてきました。再び実体化したドラゴンは、狙いを快活なミコッテ娘に定めました。

「はい!はい!はさいけん!そーりゅーきゃく!そーしょーだ!はいー!」

私もここぞとばかりに怒りの連撃を叩き込みます!

「そーしょーだ!そーりゅーきゃく!はい!はいー!あたたたぁ!」

もう、体がなまってるとか、そんな事言ってられません。やるか、やられるか。全神経を集中させ、大胆に、そして正確に!

打て!

打て!!

打てー!!!

「ほわたぁー!」

私の拳に鱗を砕かれ、激痛に唸り声を上げるドラゴン。もう、あれからかなりの体力を削りました。

もう少し!もう少しなんです!!

「あとちょっとや!ここがふんばりどころやで!」

ドラゴンの攻撃は激しいものでしたが、かじさんのケアルでパーティは安定を取り戻しました。

しかし、

「わーーー!?」

ドラゴンは再び、霧に姿を変えたのです。

とっておきのカルボナーラを食べて元気いっぱいだったゆうきさんも、ついにその霧に捕まり、どこにいるのか分からなくなりました。

「あかんで、ゆうきさんも見えへん!どこや、どこにおるんや!?」

返事しぃや!と、かじさんも必死で探すも、足元の地吹雪と全ての視界を遮断する霧、そして耳に痛いほどの、風による大轟音のせいで、我がパーティのタンクを見つける事が出来ませんでした。私も攻撃の手を止め、防御に徹するしかありませんでした。

しばらくしてその砂嵐が弱まって来た頃、真っ白い雪の結晶を、全身に薄く張り付かせたゆうきさんが、大地に倒れている姿を見つけたのです。

「あかん、あれもう魂があらへんやんけ……」

まるで苦虫を噛み潰したような表情で、かじさんが悔しそうに言葉を吐きました。

「そんな……」

その元気さで、そして極上のスパゲッティ・カルボナーラで、私を冒険者の道に戻してくれたゆうきさんが、こんな、こんな何もない場所で……。

「そんなの、悲しすぎます!」

私は涙を流しそうになるのをぐっと堪え、拳に力を込めました。

「見つけました!」

空気中に散らばっていた霧が、どんどんどんどん集まりだして、一つの形を作ろうとしていました。そう、あのドラゴンです。

「はい!れんげき!そーりゅーきゃく!はさ……」

そこまで言って、私は異変に気づきました。
真横から、凄まじい速度で、強烈な吹雪が近づいてくる!

一瞬のホワイトアウト。これは、体力をみんな持っていかれたかも!あー!もうだめです!

しかし、気がつくと私は、その場にしっかりと立っていました。

「あ……!」

すぐに悟りました。今、何が起こったのかを。

それは、かじさんのケアルが、私の体力が一気に減った瞬間、それを補い余るほどに回復してくれていた事を。

私はすぐさま、後ろにいたかじさんに振り向き、感謝の言葉を伝えました。

「ありがとうございました!」

すると、かじさんは笑顔で、

「ええんやで」

そう答えてくれました。

いえ、正確には、そう言ってくれたような気が、したのです。

なぜなら、かじさんは巨大な氷柱の中で、笑顔のまま、既に死んでいたのですから。

(回復でけへんで、堪忍な)

そんな声が聞こえた気がしました。 

「……さない……」

その時です。

ごうごうと吹き荒ぶ砂嵐の中、私のグリーンの瞳が、怒りに燃えて真っ赤に光り始めました。

……許さない。絶対に許さない。

ココさんを、ゆうきさんを、かじさんを……よくも!よくも!!

「グエエアアア〜ーーー!!」

真っ白いドラゴンが、自分よりはるかに小さな私を、その巨体ゆえの大咆哮で威嚇しました。

「……はあぁぁぁぁ……!」

でも、そんな脅しは、もう私には効きません。

「天に星、地に花、人に愛!すみません老師、わたくし、あのスキルを使います!」

そして、現界まで練り上げたすべての「気」を両手の平に集中させた私は、あのドラゴンめがけてその「気」を、全力で放出したのです……!

「はあぁぁぁぁーーーーっ!!」











次回!あるララフェルの冒険記録・第13話!

『ザ・バーン、砂嵐の大逆転!
なぜなんだ!?戦いに命散らせた戦友達の涙!
ミストドラゴン、お前の相手はわたくしだ!
打て!あるララフェルよ!究極奥義・夢双阿修羅拳!!』

に、ご期待下さい!




…そんなテロップが入った様な気がしましたが、それから5回目の挑戦で、なんとかミストドラゴンを倒せたとか、倒せなかったとか。

でも、それはまた、別の話。
コメント(4)

Riku Ak

Aegis [Elemental]

笑ったw

ランブレッタ版はそんな死闘だったのか^_^


IDひとつでここまで笑える日記を書けるとは天才ですな^_^
またどっかいきましょう!今度は下限で^_^

Lambretta Innocenti

Aegis [Elemental]

りくさん、ありがとうございます。

全然覚えてない組で「みんなで伝説になろう」と話し合い、勢いで突入したら、こんな感じでした(笑)

でも、とても楽しかったです。大笑いしながら何度も再戦を挑んでいました。

あまりにも長い時間、私たちがザ・バーンから出てこないので、ゆーりさんが心配してくれていたのが印象深かったです。

下限ですか、こんな私が行ったら怒られますよ(笑)
でも、またどこかお付き合いお願いします!

Ichi Maru

Ixion [Mana]

日記おもしろすぎるwww

ミストドラゴン強かったですねっ
わちゃわちゃしてたのしかったですw

Lambretta Innocenti

Aegis [Elemental]

ココさん、ありがとうございます。

毎回毎回、誰かに怒られるんじゃないかとひやひやしながら書いてます(笑)

でも、あるララフェルにとって世界がこう見えているのだから、しょうがないんです。主観で綴られた物語なので、事実かどうかは本人にしか分からないのです!

最後の次回予告は、頭の血管が切れそうなくらいのハイテンションで、大声で読み上げてくれると嬉しいです!
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