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【第五部】第3話:行き止まり~~黒7番~~

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手元のメモに目を落としてから、シルフマールは口を開いた。

「アリム、具体的に聞くね。
『黒魔法の技術として"自然に"発展した結果、妖異に接触した』とすると、その接触のきっかけは何だと思う?
『極性に影響を受けやすい属性を扱う』だけで、妖異との接触まで到達する?」


「ああ、なるほど。そこなんだよね、引っかかってるの」

アリムは何度も頷いてから、眉根を寄せる。

「『自然に』というのは、普通に考えてかなり疑わしい。
技術の発展の方向性としては、『威力の上昇』『使用エーテルの省力化』『詠唱の簡易化』など、入力・出力・効率のどれかになるのが自然だよね。
そこにいきなり『妖異』が絡んでくるのは不自然」


「そう、そこが核心だと思う」

シルフマールは短く、確認するように言った。

「じゃあ、改めて聞くね。
『技術の発展』の方向性として妖異が絡んでくるのが不自然だとしたら、マハが妖異に接触した最初のきっかけは、『黒魔法の発展』じゃなかった可能性が出てくる。
FACTの中に、マハが妖異に接触した『別の動機』を示唆するものはある?」


問われてアリムは、眉根を寄せたまま腕を組み、少し首を傾げる。

「うーん。
マハに関する体験したテキストって、『シャドウ・オブ・マハ』にしかないんだよね。
だから、接触の動機は、ケットシーが言った『マハの魔法学は破壊の力を追い求めて発展してきた、そして行き着いた先は異界ヴォイドの妖異を使役し奴らの力を利用するという危険極まりないものだったのだ…』しかない。
逆に、妖異側からの接触の動機は、あるにはあるんだけど……」

と、アリムは顔をしかめる。

「それ、暁月編の知識になるんだよね。パッチ6.1~6.3の内容がそれにあたる。
だから、紅蓮編までしかない一次資料には書いてはないけど、これ考察に入れるか、すごく悩んでる」


「その判断、あなたに委ねる。
ただ一個だけ確認させて。
その暁月編の知識は、『黒の問い7番の空白を埋めるFACT』として使えるもの?
それとも、『仮説を補強するHYPO的な使い方』になる?
それによって、入れるかどうかの判断が変わる気がする」


アリムは軽く首を振る。

「いや、入れてもHYPOの材料にしかならない。6.1~6.3ではマハについて一切書いてないから。
あくまで妖異の習性や生態、みたいなFACTだね」


「じゃあ、一旦保留でいいと思う。
HYPOの材料としては使えるけど、今は空白を確認する段階だから。必要になったら持ち出す、でいい」

資料に目を戻しながら、シルフマールは続けた。

「で、ケットシーの発言に戻るね。
『破壊の力を追い求めて発展してきた、行き着いた先は妖異の使役』というFACTがある。
ここで聞く。
『破壊の力を追い求めた』という発展の方向性と、『妖異の使役に行き着いた』という結果の間に、論理的な接続はあると思う?
『破壊を求めたら自然と妖異使役に辿り着く』って、筋が通ってる?」


腕組みしたまま、眉根を寄せたアリムは首を大きく傾げる。

「私の感覚では『筋が通らない』んだけど……黒魔道士っていうのは総じて『破壊を求めている』という印象がある。
なので、彼らの価値観では『自然と』辿り着いた、のかもしれない、とは思ってる」


目を細めながら、シルフマールは続けた。

「面白い視点だね。
じゃあそこをもう少し掘るね。
『破壊を求める価値観』と『妖異の使役』を繋げるとしたら、間に何が必要だと思う?
『より強い破壊力が欲しい』→『妖異を使役する』って、一足飛びじゃない?」


アリムは思わず身を乗り出した。

「うん、飛んでるよね。そこに、エルヴェが提言し私が定義した『黒魔法を構成する属性には、極性の影響を極端に受けやすい性質がある』が関わってくると思う。
妖異ってものは、ヴォイド(第十三世界)に本来生息していて、そこは『星極性』で満たされているんだ」


「待って、そこで一回止まらせて」

アリムが話し始めたところで、シルフマールが手を上げた。

「『星極性で満たされたヴォイドに生息する妖異』と『極性の影響を受けやすい黒魔法の属性』を繋げようとしてるのはわかる。
でも、その接続の前に確認したいことがある。
『黒魔法の属性が極性の影響を受けやすい』という性質は、使い手側の話だよね。それが、なぜ『妖異との接触』に繋がる?
属性の性質と、別の世界の生物との接触って、どう繋がると思う?」


制止を受けて身を引いたアリムは、再び眉根を寄せる。

「うーん。
私はエーテル学には詳しくないし理解もできないけど……黒魔法の技術の発展のうち、威力を上げる研究を続けていった結果、極性の影響を最大化する、とかそういった方向には行ったんじゃないかな?と。
その経過で、ヴォイドクラックに偶然干渉して、低位の妖異との交信が成った、とか?」

頬杖をついたアリムは、思いつくままを並び立ててから、シルフマールに視線を戻した。


「なるほど。でもそこで一個前の話に戻るよ」

少し間を置いて、シルフマールは手元のメモを繰った。

「さっき『第五星歴のエーテル環境は現代より安定していた可能性がある』って言ったよね。
環境エーテルが安定していた時代に、『極性の最大化研究』がヴォイドクラックへの偶発的な干渉を引き起こせると思う?」


「あーまあ、それはそうか。んじゃ、『偶発的』よりかは『意図的』の方が可能性が上がるわけね」


「そう、そこが重要だと思う。
じゃあ聞くね。
『意図的にヴォイドクラックに干渉した』とすると、マハはヴォイドの存在をあらかじめ知っていた、ということになる。
その『知識』はどこから来たと思う?」


「うわ……そこに接続されるのか」

アリムは思わず半笑いで顔を引きつらせる。
が、すぐに表情を戻し、発想を言葉に乗せた。

「……アラグの知識が怪しいと思ってる。
マハの都市があったヤフェーム湿地は、現モードゥナの北西、及びクルザスの南西にあるんだけど、同じモードゥナのエリアマップの南東の端は、古代アラグ帝国が作り上げたクリスタルタワーがあるんだよね……。
モードゥナは銀泪湖に面しているし、マハとも地理的に近い。
……あれ、でもクリスタルタワーは第七霊災の影響で、つまり今から5年くらい前に『地中から姿を現した』というFACTがある。うーん?」

話しながら簡単に地理の位置関係を書いていたアリムは、思考の行き止まりで首を傾げた。


「面白い気づきだね」

シルフマールはアリムの簡易地図を覗き込んだ。

「でも、そこで一個確認させて。
『クリスタルタワーが地中から姿を現した』というFACTは、『それ以前はクリスタルタワーが存在しなかった』を意味する?
それとも『地中に隠れていた』だけ?」


問いの意味を計りかねたアリムは、盛大に首をひねった。

「『それ以前は存在しなかった』って、どういう意味?
第三星歴末に第四霊災によって地中に沈み、第七霊災のタイミングで『地中から姿を現した』以外、思ってもみなかった。
まさか、どこからか『転移してきた』なんて荒唐無稽なことを言ってるわけじゃないよね?」


「ごめん、私の問いが雑だった。『地中に沈んでいた』という前提は当然だね」

一拍おいて、シルフマールは言い直した。

「じゃあ整理し直すと、クリスタルタワーは第三星歴末から地中に沈んでいた。つまり第五星歴のマハが存在した時代には、地中にあった。
そこで聞くね。
地中に沈んでいたクリスタルタワーの知識が、第五星歴のマハに伝わるルートって、あると思う?」


突飛な妄想をしかけていたアリムは、安堵して頷いた。

「もちろん、タワーの知識がそのままマハに伝わったなんて思ってないよ。アラグの本拠地がタワーの場所だったとは、確実じゃないしね」

先程書きなぐった簡易地図にある南東をペンでつつく。

「でも、地中に沈んだことは不可抗力の事故なんだから、事前にアラグが知識の保全を出来ていたかは定かではない。
天空に浮かぶアジス・ラーに魔科学の研究施設を移したというFACTを設定集で確認したけど、それでも100%移せたことを保証するものでもない」

余白に「アジス・ラー」と書いてから斜線で消す。

「むしろ、マハは魔科学の知識ではなくて、その手前の『ヴォイドの知識を何かに発展させる』というメソッド自体を見たんじゃないかなーと。
それなら、アラグは『魔科学に至る前』の研究内容だから、そこまで価値を置いていなかった可能性もあるよね。
多くは破棄されたりしていただろうけど、雑なメモとしてその辺に残ってた可能性もある」

南東の「クリスタルタワー」をぐるぐると囲んでから、シルフマールに視線を移した。


「なるほど、面白い発想だね。
でも一個確認させて。
『ヴォイドの知識を何かに発展させるというメソッドを見た』とすると、マハはそのメモなり資料なりを、どこで、どうやって入手したと思う?」


「どこ、なんだろうなあ……」

囲いで強調された「クリスタルタワー」をペン先でつついていたが、ふいにその動きが止まる。

「でも、アラグの保存媒体って、紙や石碑よりも『チップ』のような機構的な媒体である可能性の方が高いよね。つまり、マハには読めなさそう。
うーん。振り出しに戻ったね」

アリムは、言いながらペンを机に転がした。


「そうだね。アラグ経由は一旦行き詰まった」

シルフマールも、メモの上でペンを止めた。


【第3話・完】

※本作品の一部には、AI(Claude, Anthropic)との対話ログを使用しています。ログの使用は、Anthropicの利用規約に基づいています。
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