❖ 想いよ届け
テンパードの治療法は、ついに形になった。
だが、それが本当に効果を持つのかどうかは、実際に試してみなければわからない。
アリゼーが選んだのは、友であるガ・ブ。
まだ症状が軽い彼なら、初めての実践にふさわしいと。
彼女の眼差しには、揺るぎない決意が宿っていた。
リムサで再会したアルフィノとヤ・シュトラも、その取り組みに加わった。
幾重にも議論を重ね、術式を刻み、魔力を注ぎ込む。
その姿は、かつて絶望しかなかった「テンパード化」という現象に、
確かな希望を灯していくように見えた。
そして、祈るような静寂の中で――
ガ・ブの小さな声が、確かに響いた。
忘れかけていた家族のこと、仲間のこと、アリゼーのこと。
それは、彼の心が戻った証だった。
涙をにじませながら抱きしめるアリゼー。
「偉かったね」
その言葉に応えるように、ガ・ブは笑顔で彼女を讃えた。
もちろん、この治療法は万能ではない。
必要な魔力の多さ、肉体まで変異が及んだ場合には救えないという限界。
だが、それでも――「救えない」と切り捨てるしかなかったこれまでとは違う。
確かに、一歩を踏み出したのだ。
次の課題は、この術を広めること。
そして、治療を担うポークシーを原初世界でも作れるようにすること。
その名があがったのは……「本物のマトーヤ」。
アリゼーは、ガ・ブを黒渦団に預けると、また新たな道を歩き出す。
「うん! アリーゼ ありがとーう!」――小さな声が、確かに彼女の背に届いていた。