<幕間編3へ> <目次へ> <第二十五話へ>アルザ王子が次に目を覚ましたのは、収穫祭が終わって2日目の夜だった。
ベッドからあたりを見回すと、眠っているマテウス王子や、部屋の入り口から
明かりがもれているのが見えた。 窓の方を見るとカーテンが掛けられている。
アルザ王子がマテウス王子の寝台の方を向くと、マテウス王子と目が合った。
「マテウス…… 目覚めたの?」
「うん… まだ傷が痛むけどね。 アルザも無事なようで良かった。」
マテウス王子は小さく微笑み、答えた。
「そういえば収穫祭の二日目に、これからのことで話したいことが
あるって言ってたね。 差し支えなかったら、今教えてくれないか?」
マテウスの質問に、アルザは少し間を置いて、答え始めた。
「僕はこの先、赤魔道士として研鑽(けんさん)を深めたいと考えているんだ。
タイガルドでは魔法の研究に力を注いでいるらしくて、赤魔法のギルドもあると聞いたんだ。
僕もそこで学んでいきたいと思っている。」
アルザ王子はそう答える。
「タイガルド…… 今は和平を結んでいるけど、かつては敵国として戦った国。
留学や長期の滞在を考えているのなら、その案は賛同できない。
レオニアとの関係の溝は、まだ埋まりきっていないだろうから、様々な問題に
巻き込まれる恐れがあるよ。」
マテウス王子はタイガルド王国について考えられる状況を語る。
「タイガルドで赤魔法を学ぶのは、現状を考えると厳しいか……。」
アルザ王子はため息をつく。 そして言葉を続けた。
「それなら、まだ考えがある。 赤魔道士の流派はオークレアにもあって、
オークレア各地を巡りながら技を磨き、各地にいる指導者達の認定を
受けるものだけど……。 こっちは実践的な分、脱落者が多いと聞いている。」
「いずれにしても、茨の道が待っている事になるのか。 それでも僕は後者の
方を選ぶのが良いと考えるよ。」
アルザ王子のもう一つの提案に、マテウス王子は答えた。
「僕はレオニアの王子としてではなく、一人の赤魔道士として旅に出ようと
思っている。 そして必ずこの流派を修めていく。」
アルザ王子が決意を込めたように言ったのを受けて、マテウス王子はこう答える。
「アルザ、僕は第二王子だけど、次期国王候補の一人。 これからのレオニアを背負う
責任がある。 国のことは僕に任せて、君自身が決めた道を進んで欲しい。」
「マテウス……。」
「僕はこれまでたくさんの人達に支えられてきたけど、これから支えていきたい人達も
いるんだ。 彼等のためにも、僕は全力を注いでいくよ。」
「ありがとう、マテウス。 君に話すことができて良かった。」
「僕の方こそ。 それじゃ、もう寝よう。」
「「おやすみなさい」」
二人が挨拶を交わした後、程なくしてどちらかともなく眠りについた。