第16章 吼えろ、魔装ヒートテック!前回に引き続き、駅周辺を探索した結果、そこそこの青燐水を得ることができた。
十分な量とはいえずとも、今日明日を乗り越えることはできるハズ。
ユルスはまだ探索中のアルフィノとアリゼーの様子を見に行っている。
みんなが戻ってくるまで待機していると、突然聞き慣れた声が耳元に流れてきた。
サンクレッド「やっと監視役が離れたか。
……大丈夫か?」周囲に声の主の姿はない。
おそらく自前の隠密スキルか、ラハえもんのバニシュだろう。
みなさん優秀でありがたいことです。
駅の外での私たちの行動は把握しているらしいので、ひとまず駅構内での事情を伝えておく。
サンクレッド「なるほど、第I軍団長ときたか。
今しがた、派遣団の方に、ある報告が入ってな。
それを交渉材料にできる可能性が高いだろう。
ひとまずお前は、お前自身と、
アルフィノたちの命を護ることを最優先にしてくれ。
相手の要求は、基本的に呑んでくれていい。
頼んだぞ。
それじゃ、またあとで……だ。」さすがは暁の兄貴分、安心感がハンパじゃない。
そうやって多くの女を落としてきたのね、いけない人!
その後、アルフィノたちと合流してテルティウム駅へと帰還。
ユルスの同僚と思しき帝国兵士が迎えてくれた。
収穫はどうかという質問に、ユルスは私達の方を見るとバツが悪そうな顔で答える。
ユルス「少しはな。
こいつらが、よく働いてくれたから……。」よしよし、いい傾向だ。
もうちょっと押せばいい感じにデレてくれそう。
だったら早速魔導ヒーターをつけてあげなきゃ。
しかしそう思った矢先、奥から発せられた厳つい声が全員を押し留める。
(SS撮るの略)突然の命令にさすがのユルスたちも抗議の声を上げるが、その後に続く言葉には有無を言わせない凄みがあった。
クィントゥス「次の作戦が決まった。」その後、奥へと呼ばれるユルスたち。
しばらく待っていると、なにやら深刻そうな顔でもどってきた。
これはもう嫌な予感しかしないね。
アリゼー「ああもう、どうしてそうなっちゃうわけ……!」アリゼーに続いてアルフィノも説得を試みるが、ユルスは黙って例の装置を取り出し、見せつけるように指をかけた。
その手は震えていた。
表向きは従っていても、内心ではこの作戦に納得できないでいるのだろう。
あるいはこの兄妹に、この場にいない弟と妹の姿を重ねているのかもしれない。
でも間違って押しちゃいそうだからやめて。
言葉を飲み込むアルフィノたちを後目に、先程のサンクレッドの言葉を思い出す。
「自分とみんなを信じて待て」
そう言うと二人はひとまず納得し、だまって奥の部屋へと連れていかれた。
私はというと派遣団との交渉役を任された。
条件を提示して、撤退するよう説得する役らしい。
ユルス「では、派遣団のキャンプに向けて出発する……が、
途中、どうしても寄っておきたい場所があるんだ。
ウルバニッシマ区の外れで、一度止まってくれ。
……どうか頼む。」ユルスからの、初めての真摯な願いだった。
もちろんそれを断る理由はない。
指定の場所に着くと、無惨に焼け落ちた一軒の家の前で彼は佇んでいた。
ユルス「……家だったんだ、うちの家族の。
帝都が崩壊したあの夜、
俺はクイントゥス様と同じ場所にいて助かった。
けど、うちにはあのラジオはなかったんだ。」そう言って腰の銃剣に軽く触れる。
駅までの道中、襲ってきたテンパードに対して彼が徹底して無慈悲だった理由を察した。
ああ、これはツラい……。
ユルス「……ガレマールの旗には、
民族の団結を示す鎖が描かれてる。
血色の鎖は、犠牲になった同胞たち。
彼らも含めて、ガレマールって国なんだ。
でも……じゃあ、この国がなくなったら、
死んだ同胞たちが生きてたって証は、どこに残る?
お前たちみたいに神に祈れたら、答えを得られてたのか?」残念ながら私は国にも神にも依存しないただの冒険者だから、その問いに答えることはできない。
しかしその言葉に込められた想いは痛いほどわかる。
かつて、遥か東方の草原の地で、リセが子どもたちに聞かせた言葉を思い出す。
――国っていうのはね……
そこで生きた人たちが紡いできた歴史、文化、言葉、
そんな、無数の命の軌跡。
アタシたちは、そこに生まれて、それを受け継ぐ。
離れたりしたとしても、必ず人生のどこかと結ばれている、
先を生きた人たちとの絆なの。ユルス「……悪い、話がそれた。
寄り道はもう十分だ。
派遣団と交渉しにいくぞ。」踵を返して進み出すユルスは吹っ切れたのか、それとも吹っ切れたつもりなのか。
その足取りが心做しか重そうに感じるのは、降り積もる雪のせいだけではないように思えた。
一方、テルティウム駅某所。
固く閉ざされた部屋の中、寒さに身を寄せ合い、縮こまる兄妹がいた。
かわいそうに……私がいれば二人の間に入って温めてあげるのに!
アリゼー「……クイントゥスさんに聞かれたことを考えてたのよ。
どうして帝国の統治を受け入れなかったんだろうって。
彼は自分たちと私たちが違うからかって言ってたけど……
それを誰より恐れてたのは、
ガレアンの人たちだったんじゃないかと思うの。
違いをなくして、無理やりにでも同じものにしないと、
手を組むことはできないって感じてたのかもしれない。」――我々は、それぞれの種族に、長所と短所を併せ持つ。
不完全ゆえに他者を妬み、狭き視野で正義を定め、戦い、奪い合う。
かつてギムリトでヴァリスはそう言っていた。
アルフィノ「この世には問題があふれているから、
効率よくそれらをさばけるように、
段々と、物事の形を整理してしまうんじゃないかな。
人も「人とはこういうものだ」と整理される。
だから、割り切ったり諦めたりしやすいのかもしれない。
今は世界を作るひとつひとつのこと、
その時々の顔に、目を向けられるようになってきたと思う。
そうしたら、かつて掲げた「世界の救済」が、
前よりずっと複雑で難しいものになって……
でも、前よりずっと、成し遂げたいと思えるようになったんだ。」アリゼー「そっか……私もアルフィノも戦いたいのね。
もちろん、理不尽な暴力とか、
誰かを虐げるための武力には賛成しないわよ。
でも、私たちは、
本当に大切なもののために命を懸けた人たちを……
彼らの戦いを、愚かだったなんて思ってない。
そして自分も、叶えたい未来のために戦いたがってる。
これは必ずしも剣や魔法を振るうってことじゃなくて……」アルフィノ「かけがえのないものを、大切にして生きること……かな?」アリゼー「……ええ、きっとそうだわ。」アリゼー「だから貫けばいいんじゃない?
また変な方にズレはじめたら、
今度は私が、ブン殴って目を覚まさせてあげるわ。」アルフィノ「……ありがとう、アリゼー。」エオルゼアに来た当初は互いのやり方に反発してたのに(主にアリゼーが)、それが今では互いに認め合い、同じ目標を見据え、手を取り合う兄妹のなんと尊く愛おしいことだろう。
そして扉の外から突如鳴り響く打撃音と悲鳴。
開かれた扉の前に現れたのは鎧の下にヒートテックを纏った竜騎士。
……一体何者なんだ。